医師が専門医の資格を取ったり、職場での地位をある程度確保するのは30代からになります。
そのタイミングでは、結婚や子育てなどのライフイベントも並行して発生する方が多いでしょう。
そしてその時に最も出費が多いのが「家」ではないでしょうか。
「医師が住宅ローンを借りる際に知っておきたいことは?」
「医師の平均年収で借りられる金額は?」
「医師ならではの優遇などはある?」
この記事では、医師の住宅ローンについての基本知識や注意点をご紹介します。
「医師は高収入」とよく言われますが、そんな医師でも住宅ローン審査に通らないケースはあります。
住宅ローン審査に通るために知っておきたい点も解説しますので、参考にしてください。
医師と住宅ローンの基礎知識・借りられる金額や優遇は?
まずは住宅ローンを検討する前に知っておきたい基本的な知識をご紹介します。
基本知識を事前に知っておくことは、実際に住宅ローンを検討する際に役に立ちますのでおすすめです。
ここでは、以下のポイントについて解説します。
- 住宅ローンでいくら借りられるのか
- 医師用の住宅ローンはあるのか
- 住宅ローン利用時に受けられる優遇などについて
医師の平均収入と住宅ローンで借りられる金額は?
住宅ローンを借りる際、いくら借りることができるのかは気になるところです。
住宅金融公庫が公表している「フラット35利用者調査」を参照すると、フラット35を利用した人の年収倍率(年収の何倍の額か)がわかります。
住宅種別 | 年収倍率 |
---|---|
土地付き注文住宅 | 7.5倍 |
新築マンション | 7.2倍 |
新築建売住宅 | 7.0倍 |
注文住宅 | 6.8倍 |
中古マンション | 5.8倍 |
中古戸建 | 5.7倍 |
*住宅金融公庫「2021年度 フラット35利用者調査」(P14)より抜粋
住宅種別によって異なりますが、大体年収の5〜7倍程度の資金を借りることが可能ということになります。
医師の平均年収は1,378.2万円(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)となっていますので、単純計算で融資可能額の目安をまとめてみました。
住宅種別 | 融資可能額の目安 |
---|---|
土地付き注文住宅 | 1億336.5万円 |
新築マンション | 9,923万円 |
新築建売住宅 | 9,647.4万円 |
注文住宅 | 9,371.7万円 |
中古マンション | 7,993.5万円 |
中古戸建 | 7,855.7万円 |
また、住宅ローンでいくら借りられるかについては、「返済比率」も検討する必要があります。
これは、ローンの年間返済金額が年収の何割を占めるかという数値で、この比率を審査基準に取り込んでいる金融機関は少なくありません。
目安としては年収の25〜35%と言われていて、医師の平均年収で考えると、年間返済額が344.5万〜482.3万円程度に収まる必要があります。
ここで気をつけたいのが、この返済比率は、住宅ローンの返済額だけではないということです。
金融機関によって条件は異なりますが、車のローンや奨学金返済など、住宅購入以外に借入がある場合、この返済額も合算されるので注意が必要です。
なお、医師の年収事情についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。 あわせて読みたい
医師用の住宅ローンってあるの?
住宅ローンを申し込めるのは銀行や信販会社などいろいろあります。
しかし、銀行などの住宅ローンは融資限度額が1億円以内というケースが多くなっています。
医師の場合、年収が高い分だけ融資可能額も増えてきますが、申し込んだ銀行の上限額以上を借りるのは難しく、結果として希望額でローンが組めないということもあるかもしれません。
こうした高額融資を希望する場合は、医師信用組合を利用するという方法があります。
各都道府県で限度額に違いはありますが、多いところだと2億円まで借りられるという場合もあります。
医師信用組合に加入している医師であれば申し込みが可能ですので、問い合わせてみるといいでしょう。
住宅ローン利用時のおすすめや優遇はある?
住宅ローンを利用するためには、金融機関の審査に通らなくてはなりません。
医師は国家資格保有者であり、年収も平均して高い水準にある職業ですので、これだけでも有利だと言えます。
また、医師信用組合経由で申し込むことで優遇が受けられるケースもあります。 あわせて読みたい
医師が住宅ローンを組む時の注意点
医師は住宅ローンに通りやすい職業であるというのは一般的にも知られています。
しかし、医師なら誰でも審査に通るというわけではありません。
ここからは、住宅ローンを申し込む際に気をつけたいポイントを見ていきます。
医師でも審査が通らないこともある
社会的ステータスが高いと評価される医師であっても、住宅ローン審査に通らない事例はいくつもあります。
代表的なものとしては、非常勤の医師の場合です。
いくら収入が高く国家資格を有していても、フリーランス医師などの非常勤メインで働いている人の場合は、審査に通らないケースもあります。
この点は他業種の会社員とも同じで、安定した収入があるとは判断されません。
実際のところは医療業界は慢性的に人手不足ですし、非常勤を渡り歩くスタイルで働いていても、仕事が途切れてしまうということはあまりないでしょう。
しかし、金融機関の審査という点から考えると、不安定と判断されてしまうので注意が必要です。
また、大手銀行の審査では、転勤直後の医師も審査に通らないということもあります。
これには、審査の際に申し込みをした医師の診療科までチェックしているパターンと、医局人事で本人的には「転勤」のつもりでも、一般的にみると「転職」になってしまっているパターンがあります。
前者の場合、勤め先の転勤で診療科や部門などが変わることで、大きく年収が変わるケースがあるためで、金融機関は転勤前後の年収の比較もした上で審査を行っているようです。
後者では、転勤ではなく転職として扱うため、新しい職場に就職したばかりという判断になり審査が通りにくくなってしまうのです。
住宅ローンを申し込む前に確認すべきこと
住宅ローンを申し込む際は、事前に審査条件に合っているかを確認しておくとよいでしょう。
申し込む際に条件として提示されている項目はクリアしていることが大前提ですが、それ以外にも返済比率が高くなっていないかは確認しておきましょう。
返済比率が35%を超えていると、常勤医師でも審査に通らない可能性が高くなります。
返済比率の確認は、住宅ローンの返済額だけでなく、車のローンなど他の借り入れがあればそれも合算して試算しておかなくてはなりません。
また、申し込むローンの年数と完済時の年齢も忘れずにチェックしておきましょう。 あわせて読みたい
住宅ローン商品には、団体信用生命保険(団信)の加入を条件としているものもたくさんあります。
この場合、健康状態が良好であることも必要になってきます。
住宅ローンの審査・4つのポイント
ここまで解説してきたものも含め、住宅ローンの審査に通るために必要なポイントとしては以下の4点があります。
- 継続的な安定所得と返済比率
- 信用情報
- 物件の担保価値
- 健康状態
おさらいも兼ねて、ここまでに触れていない部分もまとめてご紹介します。
①継続的な安定所得と返済比率
勤務医であれば常勤であることが求められます。
開業医の場合は、直近の3期程度が黒字経営であれば審査に通りやすくなるでしょう。
また、返済比率は住宅ローン以外のすべての借入も含めて35%以内になることが、審査に通りやすくなるポイントです。
非常勤医師や転勤(転職)して間もない医師の場合は、「継続的な安定所得」と見なされないこともあり、注意が必要です。
②信用情報
住宅ローン審査に申し込むと、社会保険料や税金、それにクレジットカード利用や開業資金のローンといった、これまでの借入や滞納の情報が調査されます。
過去にこうした租税関係の滞納や、借入金の滞納がある場合は審査に影響してしまいます。
また、仮に滞納した経験がなくても、現在の借入額がどれくらいあるかも分かってしまいますので、申し込み時には借入の有無を申告しましょう。たいした借入額でなくとも、虚偽の申し込みと判断されれば審査には通りません。
うっかり忘れがちなのが、クレジットカードのリボルビング払いです。
毎月の支払額が一定になるという分かりやすさから気軽に利用していると、それも借入扱いになります。
③物件の担保価値
住宅ローン審査では、申込者本人の審査だけでなく、購入予定の物件も審査の対象となります。
物件の担保価値は、申込者が万一ローンを払えない事態に陥った際に備えるものなので、ローンの残額を補填できる価値が必要となります。
新築ではあまり気にすることはありませんが、中古住宅や中古のクリニックの建物などを購入する場合は、築年数が古くなるほど担保価値が下がってしまうのです。
④健康状態
申し込むローンの条件として団体信用生命保険(団信)に加入する必要がある場合はもちろんのこと、仮に団信加入が必要なくても、健康状態のチェックは必要になってきます。
すぐさま命に関わる疾患を抱えていなくとも、高血圧で降圧剤を服用しているなど、生活習慣病を持っているという人の場合は、保険会社の診断を受けるようなケースもあります。
一方、団信加入が必要ない場合は、健康チェックは比較的緩やかです。
ですので、基礎疾患をお持ちの方の場合は団信加入を条件としていない「フラット35」を選択するといいでしょう。
まとめ(医師の住宅ローンについて)
住宅ローンの条件は他の借り入れに比べると、融資可能額や返済期間が大きく取られているという特徴があります。
このため、利用には厳正な審査が欠かせず、決してハードルは低くないのです。
医師の場合、審査に有利に働く条件として、収入水準の高さや医師免許という社会的ステータスがあります。
しかし、医師でも金融機関に「安定して継続した収入がある」と判断されないと審査には通りません。
記事本編では触れませんでしたが、住宅ローンを組む際には頭金(自己資金)をいくら準備するかによっても審査の通りやすさが変わってきます。
貯金があることが大前提となりますが、年収をしっかり上げて、自己資金を準備しておくことも、住宅ローン審査に通りやすくなるポイントと言えるでしょう。
年収アップのために転職する医師も少なくありませんが、転職を検討するなら医師専門の転職エージェント「メッドアイ」の利用がおすすめです。
キャリアプランを守りながら収入をアップさせるような転職を叶える早道となるでしょう。