医師が診療科を決めるには、目標やキャリアプランに沿うことが多いのではないでしょうか。
しかし、働き始めてみて、想像よりもハードであったり難しいと感じたりする方もいると思います。

「転科を考えているが、医師にとって何科が一番難しいのか知りたい」
「働く上で一番大変な診療科はどこなのか知りたい」
「転職が難しい科はあるのか知りたい」

この記事では、医者にとってきつい、しんどいと感じる診療科とはどこなのかについて考察します。
現場で活躍中の医師から集めたアンケート結果もご紹介しますので参考にしてください。

診療の難易度が高いと言われている科とは

ハードな診療科、難易度が高い診療科と感じる要因には、いくつか種類があります。
その1つが、診療技術の難易度です。
まず技術的に難易度が高い診療科について見ていきましょう。

脳神経外科

診療技術の難易度では、脳神経外科はかなり上位にくる診療科です。
脳や脊髄、血管など、特殊な臓器に対して、顕微鏡を使った手術を行うため、高度な手技が必要になります。

さらに、神経系の治療では、脳だけでなく全身に影響を及ぼすため、幅広い知識も欠かせません。
専門医資格の取得も難しく、筆記問題数の多さや、合格率の低さも知られています。

ただし、基礎医療から内科知識、急患対応など幅広い知見を得られるため、専門医として一線を退いたとしても、別のキャリアプランを描きやすい点はメリットです。

心臓外科及び麻酔科

心臓外科医も資格取得までの道のりが長く、難易度が高い診療科です。
外科の専門医取得後でないと専門医資格が取れないため、卒業後最短でも7年の期間が必要となります。
心臓や血管の繊細な手術に対応できる高度な技術も求められ、手技の修業を積まなくてはなりません。

また、心臓手術で必要な麻酔を受け持つ麻酔科も難易度が高くなります。
心臓手術の場合、手術中の体の変化に対応するため、10種類以上の麻酔薬を使い分けながら進行をサポートしているのです。
患者さんの状態の変化に機微に対応できる能力が必要で、豊富な知識や判断力がないと務まりません。


学会・研究会への参加頻度が多い診療科は?

知識の習得や情報収集量が多いことも、大変だと感じる要因の1つです。
医師といえば学会や研究会など、交流や情報収集、学びの機会が多いことが特徴ですが、学会の機会が多い診療科にはどのような科があるでしょうか。

労働政策研究・研修機構が発表している「勤務医の就労実態と意識に関する調査」に、診療科別の学会参加日数のデータがあります。
その中から、学会や研究会などに参加する日数が多い診療科をまとめました。

診療科平均日数(年間)
全体平均9.5日
整形外科11.4日
呼吸器・消化器・循環器科10.3日
小児科10.2日
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科9.9日
産科・婦人科9.7日

全体の平均を上回った診療科は上表のとおりです。
上に挙げた診療科の中では、整形外科と小児科で特に学会参加日数の多さが目立っていて、平均日数以上の日数を要している比率が高めとなっています。


【医師へのアンケート調査】一番きついと思う科トップ3

実際に臨床現場で働く医師は、どの診療科がきついと感じているのでしょうか。
メドピア株式会社が実施したアンケートの結果では、以下のようなランキングになりました。

順位回答割合
1位どの科も同じ24.4%
2位産婦人科医21.9%
3位外科医14.5%
4位救急科医11.6%
5位小児科医7.1%

メドピア株式会社プレスリリースより一部抜粋して引用)

回答割合の高かった上位3つについて、どんなところがきついと感じるのか、アンケートに寄せられた声をご紹介します。
なお、寄せられているコメントは、すべてメドピア株式会社のプレスリリースを参考にしております。

1.どの科も同じ

  • どの科もそれぞれの大変さがあるから、一概には言えないと思う。
  • 配置されている人数や、配属されている医師の技量次第だと思います。
  • 医師の取り組み次第と思います。
  • 専門性を追求すればどの科もおなじ。
  • 自分に興味のない科が一番つらいでしょう。

「どの科も同じ」と答えた医師の多くが、環境によるので一概に言えないといった意見や、人それぞれの捉え方だという考えを述べていました。

楽だと感じている業務でも、人手が足りなければ大変になるのは当たり前のことです。
自分と向き合う上で、大切な考え方ではないでしょうか。

2.産婦人科

  • 分娩も手掛けていると時間的制約もきつく訴訟リスクも高いから
  • 赤ちゃんにちょっとでも異変があったり、全く問題ないようなことでもクレーム対象になり、その対応が心身を疲れさせる、本来業務でない「きつさ」は他科の比ではないと思う。
  • 特に産科では24時間待機となり、労働時間が不規則
  • どの科も大変ですが、一度に2つの命を預かるので大変のように思います。

産婦人科を挙げた医師の多くは、現在産婦人科医でない方が多い印象でした。
医療技術が進歩しても、出産は命の危険を伴う出来事です。
しかも、出産タイミングは時間を選ばないため、拘束時間が長くなることにも「きつそうだ」という意見が集まっています。

3.外科医

  • 手術時間が長く、時に緊急手術もあり心臓血管外科がきついと感じます。その分やりがいもあるでしょうが。
  • 心臓血管外科の先生はほとんど家に帰ってません。
  • 手術をして術後管理や外来フォローもされています。当たり前のように長時間労働をされているのに驚きです。
  • 技術の習得に時間がかかり、勤務時間も長い。

外科を挙げた医師の中には、特に心臓血管外科の大変さを気にしている方が見られました。
手術に必要な高度な手技の体得にまつわる苦労や、手術にかかる時間の長さなどが「きつい」と感じるようです。

診療科による勤務時間の長さの違い

仕事がきついと感じる要因には、勤務時間の長さも挙げられます。
厚生労働省の調査によれば、常勤勤務医の週あたり労働時間が多い診療科は以下のとおりです。

診療科週あたり勤務時間(平均)
全診療科平均56時間22分
外科61時間54分
脳神経外科61時間52分
救急科60時間57分
整形外科58時間50分
産婦人科58時間47分

(厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料」より一部抜粋して作成)

勤務時間が長い科ベスト3

上の表で週あたり勤務時間が長かった上位3つの診療科について、特徴をご紹介します。

1.外科

外科医の勤務時間が長くなる要因には、手術と緊急対応があります。
内訳を見ると、勤務時間の8割以上が診療時間で、技術研鑽などに充てる時間は1割強程度とあまり多くありません。

また、週あたり勤務時間が60時間を超える医師が全体の半数を超えています。
大学病院と民間病院を比較すると、民間病院の方が60時間越えの医師の割合が高めです。
外科医はどの医師もみんな忙しい、という状況がピッタリ当てはまるようです。

2.脳神経外科

脳神経外科も、外科とほぼ同じ状況です。
外科と異なるポイントは、技術研鑽に充てる診療外時間の割合が若干多く14%程度あります。
また、週あたり勤務時間が60時間を超える医師の割合も外科と同様53%ほどとなりますが、比率としては大学病院のほうが高くなっています。
設備が整った医療機関ほど、高度な手術ができるために起こっている現象です。

3.救急科

救急科医の労働時間の特徴は、診療外時間が若干長めであるという点です。
診療外時間には、研究や研修時間も含まれますが、当直中の業務外時間も含まれます。
週あたり勤務時間の60時間超えは49.5%とほぼ半数の医師に見られます。

待機や他診療科との連携などにかかる時間が多く、時間帯を問わず仕事が発生するという点が、勤務時間を長引かせる要因となっているようです。

勤務時間が短い科ベスト3

週あたりの勤務時間が短い診療科についても見てみましょう。
あくまでも平均値ですので、必ずしも労働時間が短くなるわけではないかもしれません。
また、体力的な負担や精神的な負担を考慮すると、「楽な診療科」と言い切るのは難しいです。
しかし、ワークライフバランスを考える上での参考にはなるのではないでしょうか。

1.臨床検査科

臨床検査科の週あたり勤務時間は46時間10分となっていて、全診療科の平均を下回っています。
60時間オーバーの医師の割合も6.3%と低く、全体的に長時間労働の傾向が少ないと言えるでしょう。
勤務時間の内訳では、診療時間が6割で診療外時間が4割となっていて、研鑽や研究時間が多いことが特徴です。

2.精神科

精神科の週あたり勤務時間は47時間50分でした。
ただし、60時間オーバーの医師は19%とやや高く、特に大学病院で高くなる傾向があります。
環境によっては忙しいことが想定される結果です。
勤務時間の内訳は、外科などとあまり変わりませんが、待機時間が1割近くとやや多めなのが特徴です。

3.リハビリ科

リハビリテーション科では、週あたり勤務時間は50時間24分でした。
こちらも精神科と同様に60時間オーバーの医師は21.1%ほどいて、そのほとんどが大学病院という結果です。
高度なリハビリや、入院しながら長期のリハビリが行える大学病院の負担が大きいことがわかります。
一方で、クリニックなど時間が決まっている職場も多いため、職場を選べば長時間労働を避けられる環境でもあると言えるでしょう。

医師にとって転科は難しい?

医師は長いスパンでキャリアプランを考えていく必要がある職業です。
しかし、いざ歩み始めた道が、自分に合っていないと感じることもあるでしょう。
そんな時の方向転換できる方法として「転科」があります。
転科は難しいイメージがありますが、これまでのキャリアが活かせる診療科に移る場合と、まったく新しい診療科に移る場合では難易度が異なります。
このため、転科が簡単か難しいかは一概には言えないのです。

自身がこれまで積んできた経験が活かせる分野に行くのであれば、スムーズに転科できるケースもたくさんあります。
その一方で、サブスペシャリティが必要となるような専門性の高い領域への転科は、研修から受け直す必要が出てくるのです。

また、自分に適性があるかどうかも、転科して頑張りとおせるかを左右するポイントです。
今までの医師としての活動を通して、手技の適性があるかどうかや、患者の話をじっくり聞くのが得意かどうかなど、向き不向きを慎重に考える必要があるでしょう。

自分に合う診療科を探すなら専門の転職エージェントを活用しよう

転科や転職は、医師の多くが一度は検討したことがあるのではないでしょうか。
医師の場合は同じ診療科で転職するだけでも情報収集が大変ですから、プロの手を借りるのがおすすめです。

まして転科を伴う場合は、採用する病院側も慎重になりますので、なおさら自分一人で転職活動をするのは難易度が高くなるでしょう。

どうして転科したいのかや、転科して目指す働き方が明確でないと、転職してから「こんなはずではなかった」ということにもなりかねません。
そこで、転科や転職を考えるときは、医師の転職に特化した専門のエージェントの利用をおすすめします。

メッドアイでは、非公開を含む多数の求人情報から、医師一人ひとりの悩みや希望に合わせた職場をマッチングしています。
転科したいと考えているのであれば、新しいキャリアプランを考える必要があります。
メッドアイのアドバイザーにご相談いただければ、一緒に目指す道筋を考え、それに沿った転職先をご紹介できます。

まとめ(医者にとって診療難易度が高いのは何科?)

医師が働いていて「きつい」と感じる要因には、主に以下のものが挙げられます。

  • 診療難易度が高く、業務遂行がきつい
  • 長時間労働が多く、労働環境がきつい
  • 学会参加など、業務外ですることが多いのがきつい

診療科では外科や産婦人科がこれらの条件を兼ね備えていて「きつい」と思われていることがわかりました。
しかし結局は、どの診療科にいても大変さは同じであると考えている医師も多いようです。

医師が仕事を続けていく上で、体力や精神力の強さは必要不可欠です。
しかし、仕事がきつすぎると、限界を感じてしまうこともあるでしょう。
どうしても続けていくのがしんどいのであれば、転職で環境を変えるという方法があります。

医師はキャリア形成の過程で転職することが珍しくない職業です。
キャリアプランを見直したい時や、転職で環境を変えてワークライフバランスを整えたいときは、医師専門転職エージェント「メッドアイ」に相談してみるのが1番の早道ではないでしょうか。
相談は無料ですので、まずは今の悩みを打ち明けてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。