放射線科医
は、需要が高い専門科の1つです。

高い専門性と技術をもつ放射線科医は手術以外にも活躍の場が増えており、年々その重要性が高まっています。
では、放射線科医になるにはどのような条件をクリアすればよいのでしょうか?

「どのような人が放射線科医に向いているの?」
「放射線科医としてキャリアアップするにはどのようにすればいいの?」

今回はこのような疑問をお持ちの方に向けて、医師専門の転職エージェントが放射線科医の適性について解説します。

放射線科医とは

放射線科医とは、適切な検査を行うためにCTやMRIの撮影方法を指示したり、撮影された画像を元にレポートを作成・診断し、他の科の医師への報告業務などを行う医師のことを指します。

3つの専門医資格がある放射線科

放射線科には以下の3つの専門医資格があります。

  • 放射線科専門医
  • 放射線診断専門医
  • 放射線治療専門医

専門医資格取得の流れとしては、「放射線科専門医」資格を取得した後に「放射線診断専門医」または「放射線治療専門医」 のいずれか1つを選択し取得を目指す形になります。

放射線科専門医

放射線科において基礎となる専門医資格が「放射線科専門医」です。
将来的に診断・治療のどちらを選択する場合でも共通して取得する必要があります。 
放射線科専門医の受験資格は以下の通りです。

  1. 日本医学放射線学会の会員であること
  2. 日本国の医師免許を有すること
  3. 医師法(昭和23年法律201号)第3条および第4条の規定に該当しないこと
  4. 申請時において、初期臨床研修期間を含め5年以上の臨床経験を有すること
  5.  申請時において、3年以上本学会正会員であること
  6. 定められた研修期間、研修内容、研修施設等の条件を満たしていること
  7. 上記のうち少なくとも3年(36か月)は、日本医学放射線学会の新規程下で認定した総合修練機関および修練機関において修練が必要です。研修期間3年間のうち、最低1年間は総合修練機関において、研修指導医のもとで臨床研修することが必要となります。

参考:公益社団法人日本医学放射線学会

放射線診断専門医

放射線診断専門医」とは、検査画像から患者さんの病態や状況を判断し、主治医や病院に所見を伝える専門医のことを指します。
放射線科専門医資格を取得後、2年以上の修練期間を経て認定試験に合格すると取得できます。

主な仕事内容は、X線写真、CT、MRI、超音波検査などの画像読影や、がん患者などへのIVR(X線透視、X線CT、超音波などの画像診断装置を用いて、穿刺部位から挿入したカテーテル等のデバイスを目的部位に誘導し、局所治療を行う技法)、適切な撮像の指示や造影剤の投与などです。

受験資格は以下の通りです。

  1. 日本医学放射線学会の会員であること
  2. 日本国の医師免許を有すること
  3. 医師法(昭和23年法律201号)第3条および第4条の規定に該当しないこと
  4. 一次試験合格者で、その後2年間以上、日本医学放射線学会の放射線科専門医制度の旧規程下で認定した修練機関もしくは修練協力機関、または新規程下で認定した総合修練機関もしくは修練機関において、画像診断学、核医学、IVRを研修した者
  5. 診 断・核医学の試験受験者は、(1)日本医学放射線学会雑誌(Japanese Journal of Radiology)またはRadiation Medicine誌への投稿論文(主著者)、(2)放射線画像データ管理システム(日本医学放射線学会ホームページからアクセス)に一例の症例登録のいずれかを必要とします。

参考:公益社団法人日本医学放射線学会

放射線治療専門医

放射線治療専門医」とは放射線腫瘍学に関する専門知識と、高水準の放射線治療技術を有すると認定された高位の放射線科医のことを指します。

こちらも放射線診断専門医と同様に、放射線科専門医資格を取得後、2年以上の修練期間を経て認定試験に合格すると取得することができます。

主な仕事内容は、X線を使用したがん患者の治療です。
主治医から依頼を受けた患者さんを診察し、がんの周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えつつがん治療を行うためのX線照射を行います。

受験資格は以下の通りです。

  1. 申請時において5年以上の日本医学放射線学会正会員であり、かつ2年以上の日本放射線腫瘍学会正会員であること
  2. 日本国の医師免許を有すること
  3. 医師法(昭和23年法律201号)第3条および第4条の規定に該当しないこと
  4. 日本医学放射線学会放射線科認定医認定試験(旧一次試験)もしくは日本医学放射線学会放射線科専門医認定試験の合格者で、その後2年間以上、日本医学放射線学会の放射線科専門医制度の旧規程下で認定した修練機関もしくは協力機関、または新規程下で認定した総合修練機関もしくは修練機関(放射線治療)、特殊修練機関(放射線治療)において、放射線治療を研修した者

参考:公益社団法人日本医学放射線学会

放射線科医に向いている人の特徴

放射線科医に向いている人の特徴は大きく分けて以下の4つになります。

  • 新しい知識を継続的に習得するのが苦にならない人
  • 電子工学やコンピュータの知識に詳しい人
  • 知的好奇心が強く気配りのできる人

新しい知識を継続的に習得するのが苦にならない人

1つ目の特徴は、新しい知識を継続的に習得するのが苦にならない人です。
放射線治療の現場では、日々新しい知識の発見や技術の獲得が行われています。

放射線科医には、それらの情報を意欲的に吸収できる精神性を持つことが求められます。

電子工学やコンピュータの知識に詳しい人

3つ目の特徴は、電子工学やコンピュータの知識に詳しい人です。

放射線治療には大型の電子機器や最新のコンピュータ技術が搭載された機材が多く使用されます。
それらの機材を十分に活用するための情報や、もしもの時のイレギュラーに対応できるだけの知識を有していることは、放射線科医にとっての大きな強みになるでしょう。

知的好奇心が強く気配りのできる人

4つ目の特徴は、知的好奇心が強く気配りのできる人です。
放射線診断や放射線治療は、時に患者さんの命に直結する大変シビアな医療行為になります。

厳格な現場においては、自身の技術力向上のために絶えず知識を吸収しようとする知的好奇心と、周りの変化に良く気づき、気配りができる視野の広さは大変重宝されます。

放射線科医の仕事内容

放射線科医の主な仕事内容は、大きく分けて以下の3つです。

  • 画像診断
  • IVR
  • 放射線治療

画像診断

画像診断とは、主治医の先生より検査依頼を受けた患者さんの病態を正確に把握し、検査適応や内容を判断・レポートにまとめて提出するという業務です。

取り扱う画像は単純X線写真、CT、MRI、血管撮影など多岐にわたります。
撮影といえば、従来は現像したフィルムのみを読影していましたが、現在ではコンピュータを使用した立体表示や動画表示された画像を元にした多様で詳細な観察が可能になっています。

IVR

IVRとは、インターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略で、X線透視やCTなどの画像で体の中を見ながら、針やカテーテルを使って行う治療のことを指します。

低侵襲であるため、身体への負担が少なく、高齢の患者さんも安心して治療を受けられます。
そのような低リスクでありながらも、外科手術と同程度の治療効果が期待できるのが最大の特徴です。

IVRが対象とする疾患には、下記のようなものが挙げられます。

  • 脳動脈瘤
  • 大動脈瘤
  • 血管閉塞
  • 良悪性腫瘍
  • 血管奇形

放射線治療

放射線治療とは、放射線を照射してがん細胞内のDNAにダメージを与えて、がん細胞を死滅させることを目的とした治療です。

放射線には、がん細胞のような細胞分裂が活発に行われる細胞ほど殺傷しやすいという性質があるため、正常な細胞にあまり影響を与えないでがん細胞を殺傷できる利点があります。

放射線科医の年収事情

放射線科医の年収事情を、下記の項目別にご紹介します。

  • 放射線治療医の常勤求人から見る年収の傾向
  • 画像診断の常勤医師求人の傾向
  • 画像診断の非常勤(アルバイト)医師求人の傾向

放射線治療医の常勤求人から見る年収の傾向

放射線治療医の常勤求人における年収相場は、1,237.7万~1,860万円です。(マイナビDOCTOR内「放射線治療」の求人情報2022年5月14日時点で年収記載のある全50件を参考に算出)

参考:マイナビDOCTOR

上記金額はあくまでも目安であり「臨床経験や専門技術の有無、希望する業務形態などに応じて年収の変動あり」と記載がある案件も多く見られましたのでご留意ください。

画像診断の常勤医師求人の傾向

画像診断の常勤医師求人の年収相場は、1,201.9万~1,795.4万円です。

*前項と同様に、画像診断を行う常勤医師を募集する求人情報のうち、2022年5月14日時点で年収記載のある全50件を基に算出。

こちらも臨床経験やスキルの有無、希望する業務形態に応じて年収が変動する場合があります。

参考:マイナビDOCTOR

画像診断の非常勤(アルバイト)医師求人の傾向

画像診断の非常勤(アルバイト)医師求人では常勤とは違い、日給、時給、読影枚数の単価による3通りの報酬体系が用意されています。

それぞれの平均単価は以下の通りです。

  • 平均日給:約5万9,000円
  • 平均時給:約1万1,000円
  • 読影枚数に応じた報酬:1件当たり約2,000円

*画像診断の非常勤(アルバイト)求人の情報より、2022年5月14日時点で50件のうち収入目安が記載されたものの平均を基に算出。

読影する画像によって単価が異なるため、上記金額はあくまでも目安になります。
検診の場合は1件あたり数百円、CTやMRIでは千円~数千円程度が目安となります。

出来高制の場合は枚数ではなく件数でのカウントとなるため、都度確認が必要です。
参考:マイナビDOCTOR

放射線科医のやりがいは?

放射線科医のやりがいとしては、大きく分けて3つが挙げられます。

1つ目に、これまでの診断方法では発見できなかった病気をも発見することが可能になったこと。
新しい病気を発見・研究し、対処法を見出していくという作業は、医者冥利に尽きる行為であると言えるのではないでしょうか。

2つ目に、常にスキルアップのために意欲と向上心を燃やしながら仕事に取り組めること。
放射線科では、日々の知識のアップデートや最新の技術を獲得しながら業務に取り組むことが求められるため、自身が医療の最先端にいる実感を得られます。

3つ目に、多くの科の医療にかかわることで医師として幅広い知識と経験を身に付けられるということ。
業務上、さまざまな診療科の主治医及び患者さんと交流することが可能なことから、他科の専門医よりも広い知識や経験を獲得できます。

放射線科専門医になるには

放射線科専門医になるためには、「公益社団法人日本医学放射線学会」の定める条件をクリアした上で、所定の研修プログラムの修了および規定の臨床経験を経て、放射線科専門医試験に合格する必要があります。

詳しい情報は学会のホームページをご参照ください→公益社団法人日本医学放射線学会

放射線科医の現状

他国と比較して日本には医療機器が群を抜いて多く存在しています。

人口当たりのCT数は先進国平均の4.5倍、MRIは3倍にもおよびます。
参考:Health at a Glance 2021. OECD

放射線科医の数は世界の最低レベルで、人口当たりの数では先進国平均の半分以下です。
参考:日本放射線科専門医会・医会

このため、すべての病院に放射線科医が常勤できず、医療現場が地域の中核病院に限られているという状況に陥っています。

放射線科医として収入UPを狙うには?

放射線科医としてキャリアアップするには、常勤で長く勤務し、自身のスキルや経験を深めていくことが基本となります。
医師の収入はどのような環境で勤務するかによっても変わってくるので、キャリアアップと同時に転職を考えてみるのも一つの手です。

民間病院は、大学病院や国立病院より高給なことが多いので、選択肢として十分候補に入るでしょう。
開業医なら場合によっては勤務医の数倍もの年収を得ることも可能です。

しかし、放射線科の独立開業は他の診療科に比べて非常に多くの資金を要するなど、リスクが高いこともあるので注意が必要になります
最近では乳がんや膵臓がんなどの読影ができる画像診断医が重宝されており、専門次第でも収入は変わるということも留意しておきましょう。

まとめ(放射線科医はどのような人が向いている?)

今回は、放射線科医に向いている人の特徴や放射線科医になる方法などについて解説してきました。

放射線科医に向いている人

  • 新しい知識を継続的に習得するのが苦にならない人
  • 患者とのコミュニケーション力がある人
  • 電子工学やコンピュータの知識に詳しい人
  • 知的好奇心が強く気配りのできる人

現在日本では放射線科医の数が圧倒的に足りておらず、慢性的な人手不足に悩まされています。

今後も需要が高まるであろう専門科の1つであるため、自身の適性に合うかもしれないと興味を持った方は、ぜひ前向きに放射線科医への就職・転職を考えてみてはいかがでしょうか。

自分1人で悩むのではなく、プロの転職エージェントを利用されることをおすすめします。
医師専門転職エージェント「メッドアイ」なら、医師のキャリアプランに合った職場探しを全力でサポートします。