当直勤務は、多くの医師が一度は経験しています。

「医師の当直は何してるの?」
「当直の頻度はどれくらいが平均なの?」
「当直に対する医師のホンネが聞きたい」

この記事では、当直にまつわる疑問や、医師の率直な意見を集めました。

当直には常勤先で担当する場合と、アルバイトとして外部の病院で行う場合があります。
どちらも前日の勤務から続けて当直を行い、翌日の勤務もこなすという非常にハードなものです。
他の業界でも夜勤や宿直はありますが、ここまで連続拘束時間が長いのは医師ぐらいでしょう。

どうして医師の当直はハードなのか、その実態に迫ります。


医師の当直は何してる? 当直の業務内容とは

医師は当直勤務中、何をして過ごしているのでしょうか。
当直は拘束時間が長くなるため、仮眠の時間も設定されています。
しかし、全く眠れないようなケースもあれば、睡眠時間が多く取れるケースもあり、忙しさは様々です。ここでは、医師の当直とはどのような業務かを紐解いていきましょう。

そもそも当直とは?

当直という言葉の本来の意味は「当番制で、日直又は宿直を担当すること」です。
病院営業日の夜間と営業時間外に勤務する場合は「宿直」、休業日の日中を担当する場合は「日直」と言います。
労働基準法では、宿直と日直を合わせて「宿日直」と呼びます。

当直の仕事内容

当直医は、診療時間外の病院で勤務し、夜間の入院患者の急変や急患に対応することが主な仕事です。
当直中、入院している患者に何事もなく、外部からも急患などが来なければ、対応することがないため待機しています。

緩和ケアや療養型病院などでは、定期的な夜間巡回を行う程度の業務で、仮眠時間も取りやすい傾向があります。
しかし、急性期病院や二次救急対応の病院では、対応が多くなり忙しい当直となりがちです。

当直のスケジュール例

当直(宿直)に入る医師のスケジュールは、簡単にまとめると以下のようになります。

時間帯スケジュール
18:00ごろ通常勤務を終了し、当直開始
夕食をとり、引き継ぎなどを行う
19:00〜カルテの確認や、治療方針の打ち合わせなど
21:00ごろ病棟消灯のタイミングで休憩を挟む
23:00ごろ夜食を挟んでカンファレンスや学習など
〜朝4:00ごろ病棟巡回と待機
急変や呼び出しがあれば対応する
〜8:00仮眠をとったのち、日勤医師に申し送り
8:30〜朝食後、翌日の日勤開始

通常勤務を終えた医師がそのまま当直に入り、当直明けに日勤を引き続き行うのがよくあるケースです。
当直があることで、拘束時間が30時間を超えることも珍しくありません。

外科医であれば、翌日の日勤で診察以外にも検査や手術が入ることがあるでしょう。
体力的に相当ハードな勤務となるため、仮眠をいかにきちんと取れるかが重要です。

医師の当直はきつい? 当直の実態

当直のキツさは、診療科や担当する病棟によっても変わってきます。
しかし、長時間拘束と仮眠の長さを考えると、楽なケースは少ないでしょう。

株式会社メディウェルが2017年に行ったアンケート調査には、医師の当直の実態がよく表れています。
ここからは、医師がどのくらいのペースで当直をこなしているのかを見ていきます。

当直している医師は4人に3人

*株式会社メディウェル「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」より引用

勤務先の病院で当直業務に当たっている医師は、全体の約3/4に当たる73.2%でした。
ほとんどの医師にとって、当直は避けられない業務となっているのがわかります。

当直の平均回数は月3.5回

当直の平均回数は月3.5回で、週に約1回という計算になります。
内訳を以下の表にまとめました。

当直回数割合
0〜1回27.2%
1〜2回13.4%
2〜3回17.8%
3〜4回10.6%
4〜5回15.8%
5〜6回5.3%
6〜7回3.2%
7回以上6.7%

*株式会社メディウェル「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」より引用

月に2〜3回と4〜5回の割合が高くなっており、週に1回以上は当直勤務をしている医師が多いというのが実態です。

診療科によって異なる当直の回数

当直の回数は、診療科によっても異なります。
特に当直回数が多かった科は、次の通りでした。

診療科平均当直回数(月)
産科・産婦人科6回
救命救急科5.5回
総合診療科4.5回

*株式会社メディウェル「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」をもとに作成

産科も救命救急科も、時間帯を問わずに対応が必要な診療科です。
このため、当直医の必要性も高く、回数が大きな負担となっています。
夜間外来などを受け付ける総合診療科も、当直回数が多い傾向が見られました。

月7回以上当直があると回答した医師の割合が多いのは、以下の診療科です。

診療科当直月7回以上と答えた割合
救命救急科35%
産科・産婦人科25%
総合診療科10%
脳神経外科10%

*株式会社メディウェル「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」をもとに作成

月に7回以上の当直が3割を超える救命救急科は、深刻な負担が浮き彫りになっています。
これだけ当直があると、前後の日勤もこなすと仮定すると、月の半分程度しか家に帰れない計算になります。

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医師に聞いてみた当直へのホンネ

医師が適切だと思う当直回数は月に2.5回で、実態よりも少ない数字です。
また、連続勤務の疲れから、当直明けの「ヒヤリ・ハット」経験があると答えた医師は半数以上で、危機感を感じている医師が多い状態です。

当直勤務に対する医師の本音を紹介します。

*株式会社メディウェル「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」より引用

「当直明けの勤務を軽減してほしい」という要望が、圧倒的に多くなっています。
さらに、以下のような意見も多く見られました。

  • 寝当直でなければ時間外労働とみなす法律を遵守すべき
  • 遅出勤務や、夜勤専用など、看護師さんみたいな勤務体型になればよいと思う
  • 当直代は非常勤と同じぐらい出して欲しい
  • 外部から積極的に募集すればいいと思うのに、内部で安く回そうとしているのが問題
  • 当直の日程が決まるのが遅いため、当直翌日はいつも通りの予約をこなさなければならない

*株式会社メディウェル「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」より一部抜粋

医師一人当たりの当直業務が過重になってしまう背景には、医師が足りないという根本的な問題があります。
しかし、病院側の体制や考え方にも問題があると思っている方が一定数いるようです。

当直は、法律上ではあくまで実働を伴わない拘束時間となっています。
このため、常勤医師に当直をさせる場合、安価な当直手当を支払えば済むのです。

しかし、実態は救急対応や残業の一部を行うなど、当直勤務中の実働が発生していて、金銭面でも割に合わないと感じている医師が大勢います。

医師の負担を軽減するためには、人員補充を行うか、外部から当直アルバイトを雇う必要があります。
当直アルバイトは、当直の時間帯が業務時間となるため、常勤医師の当直手当よりはるかに多い時間給を支払う必要があります。

経営が苦しい病院の場合、アルバイトの募集を躊躇してしまうこともあるでしょう。
こうした悪循環で、医師の負担を軽減できないまま当直勤務が続けられています。

中には、以下のような切実な声もありました。

  • 50歳を過ぎたら、給与を削減してでも、当直は免除して欲しい
  • やせ我慢でなく勤務交代制の工夫が必要
  • 掃除が行き届いていない当直室が多く、ハウスダストで寝ても疲れが取れない

*株式会社メディウェル「医師の当直の実態とは?1,649人の医師のアンケート回答結果」より一部抜粋

年齢を重ねれば、徹夜での仕事は辛くなる一方です。
今いる医師の責任感に頼るだけではなく、根本的な対策をしないとこうした声は減らないでしょう。
また、仮眠場所の環境が悪く、本来体を休めるはずの当直室が役に立たないのも問題です。
アルバイト当直を雇うにしても、当直室の環境が悪ければ人が寄り付いてくれないということにもなりかねません。


当直をしていない医師もいる

医師の4人に3人は当直をしていますが、逆に言えば4人に1人は当直がない勤務形態です。
若いうちは体力があっても、年齢を重ねれば同じように働けなくなってきます。
体力の限界を感じる前に、当直のない働き方へシフトチェンジしてみてはいかがでしょうか。

当直のない仕事を探すなら、転職エージェントの利用をおすすめします。
転職エージェントなら、同じような悩みを持った多数の医師をサポートしてきた実績があります。
医師一人ひとりの悩みに寄り添い、解決までサポートしてくれる心強い存在となるでしょう。
また、医療機関の情報も豊富に持っているので、転職先を探す際にも、よりたくさんの選択肢から選ぶことが可能になります。



まとめ(医師の当直は何をしているのか)

医師の当直の実態について見てきました。
医師の3/4が当直をしていて、平均で月3.5回割り当てられています。
中には月に7回以上も当直している医師もいることがわかりました。

医師の当直勤務は、前日の日勤からそのまま入り、当直明けの翌日も引き続き通常勤務を行うという長時間拘束がほとんどです。
拘束時間は平均32時間と、他の業種ではなかなか見ない長さとなります。

一方で、常勤医師に対する当直手当は安価のため、割に合わないという声が聞かれます。
当直アルバイトを雇う場合は高額な時間給が支払われますが、常勤医師の当直の場合は1回いくらの手当てとなってしまうためです。

業界の構造自体が変わらないと、医師の当直の過酷さはなかなか改善されないでしょう。
2024年の働き方改革に向けた、スピード感のある対策が待たれます。


当直勤務が辛く耐えられないと感じるのであれば、当直がない仕事に転職するという解決策があります。
医師としてのキャリアプランを維持しながら働き方をシフトするなら、情報量豊富な転職エージェントを利用するのがおすすめです。