災害時に医療支援をするJMATとDMATについて、両チームの違いや役割に関心を持つ方も多いことでしょう。災害や緊急事態において、スピーディーかつ精度の高い医療チームの行動は、生命を救うために不可欠です。

この記事では、JMATとDMATの違いについて解説します。災害時の医療現場における医師の役割や報酬、JMATやDMATとして働くためには、どのような手続きが必要なのか把握できるよう具体的にご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

JMATとDMATの違いについて深く理解し、災害時の医療支援に関する知識を広げましょう。

JMATとDMATの違いとは?

JMAT(日本医師会災害医療チーム)とDMAT(災害派遣医療チーム)は、災害時に医療支援をするために編成されたチームですが、役割と活動にはいくつかの違いがあります。

JMATは、DMATの活動後に災害現場での医療体制の復興が主な活動です。
JMATは、災害発生後の長期間にわたって、被災地の医療支援や健康管理を担当します。
JMATの主な役割は以下の通りです。

  • 救護所や避難所、被災地の病院などでの医療支援
  • 避難者の健康状態の確認や公衆衛生対策
  • 医療支援が必要な地域の巡回診察

また、JMATは被災地の医師会や行政と連携し、医療ニーズの把握や情報の共有、支援の提供も実施します。

一方、DMATは、災害が発生してから原則48時間以内に迅速に派遣されます。
主な任務は、災害現場での緊急医療対応です。被災者の命を救うために被災地での救命処置や手術などの急性期の医療ニーズに対応しています。

JMATとDMATのメンバーは、災害が発生していないときは他の医師と同じく医療機関で勤務しています。普段は一般の医療機関で医師や看護師として働いており、災害や事故が発生した場合にのみ招集され、現場での活動に参加するのです。

JMATとDMATは、それぞれ異なる段階で災害医療を担当します。DMATは災害の超急性期に緊急医療を提供し、JMATは災害後の長期間にわたって医療支援と健康管理に従事します。
両チームは、被災地の医療体制を確立するために連携し、迅速かつ継続的な医療支援を実施するのです。

JMATとDMATの給料について

JMATやDMATの給料は、基本的には派遣元の病院から支給されることが多いようです。
そのため、一般的な病院で働く場合の給料とほぼ同じと考えて良いでしょう。
給料は勤務先が変わるだけで出向のような形態となります。

ただし、緊急時には残業代や手当が加算される場合もあります。
したがって、JMATやDMATの報酬は急激に上がることはないかもしれませんが、選抜されたことは高い医療スキルを証明するものであり、将来的なキャリアアップや給料アップの可能性があると言えます。

JMAT(日本医師会災害医療チーム)について

JMAT(日本派遣医療チーム  Japan Medical Association Team)は、厚生労働省や各都道府県医師会によって組織される災害時の医療チームで、DMAT(災害派遣医療チーム)の後継として活動しています。
ここでは、JMAT要綱にも掲載されている内容について詳しく解説します。

JMATのチーム構成と派遣期間

JMATは、各都道府県の医師会がそれぞれチームを編成しており、災害時に被災地の医師会から要請を受けて派遣され、避難所や救護所などで医療活動をします。

チームは、専門的なトレーニングを受けた医師1名、看護職員2名、事務職員1名の構成です。また、必要に応じて薬剤師や理学療法士、栄養士などが派遣されることもあります。
JMATの派遣期間は
一般的に3〜7日程度であり、派遣要請が出される期間は災害の規模によっては数か月から数年にわたる場合もあるでしょう。

JMATの派遣期間は、現地の医療体制が回復し、必要な医療支援が確保されるまでとされています。
長期にわたる派遣要請が出される場合でも、JMATは被災地の医療ニーズに応えるために努力し、専門知識と経験を活かして医療支援を実施するのです。

JMATの主な活動とは

JMATは被災地の救護所や医療機関、避難所、社会福祉施設、介護施設などでの医療支援が主な活動内容です。
巡回診療で被災者の健康状態を確認し、持病や人工透析などの治療が必要な患者さんに対してもサポートを提供します。
また、災害は被災者のメンタルヘルスにも大きな影響を与えるため、JMATは重点的なメンタルケアも含みます。

公衆衛生支援もJMATの重要な役割です
。避難所や被災地では不衛生な状況が生じやすく、感染症対策や廃用症候群の予防などに力を注ぎます。
また、避難者の栄養状態の把握や改善、不足している物資の送付要請なども実施します。

さらに、JMATは被災地の医師会や行政と連携し、医療ニーズの把握や避難者の健康状態の情報収集をすることも重要な役割です。被災地医師会の支援や行政支援にも協力し、医療体制の復興を支援します。また、情報の発信や共有も重要な役割であり、被災地の情報を収集し、関係者に提供します。追加の派遣要請の妥当性と、最適な撤収時期についての検討も必要です。

JMATは経験豊富なチームや参加者がDMATなどからコーディネート機能を引き継ぎ、必要な地域で指揮を執ることも活動の1つです。

JMATは過去の災害でも活躍しており、東日本大震災令和元年台風19号などで派遣され、医療支援や健康管理、公衆衛生支援、行政への支援など幅広い活動を実施しました。また、新型コロナウイルス対応のために「COVID-19 JMAT」として活動しています。

DMAT(災害医療派遣チーム)について

DMAT(災害医療派遣チーム Disaster Medical Assistance Team)は、災害の初動段階で即座に行動できる機動性を獲得するため、専門的なトレーニングを受けた医療チームと定義されています。
DMATは阪神・淡路大震災をきっかけに発足し、災害時における初期医療体制の重要性が浮き彫りとなりました。

その後、厚生労働省によって平成17年に日本DMATが発足し、災害医療の標準化と充実が進められています。
現在では、現場での医療活動だけでなく、被災地の病院機能の支援や広域医療搬送など、多岐にわたる医療的支援を展開することとなりました。
DMATは「一人でも多くの命を助けよう」という使命を掲げ、災害時の医療活動に貢献しています。

ここでは、DMATについて詳しく解説します。

DMATのチーム構成と派遣期間

DMAT(災害医療派遣チーム)は、災害発生直後の急性期から活動が可能な機動性を持ち、専門的な研修と訓練を受けた医療チームです。
通常、DMATは医師1名、看護職員2名、業務調整員1名から構成されています。
DMAT本部、医療機関、SCU(Secondary Care Unit)、災害現場などで
本部活動搬送情報収集・共有診療などを実施します。
チームでの活動が基本であり、一人での活動はほとんどありません。

DMAT隊員になるためには、普段から専門的な訓練を積む必要があります。
DMAT派遣は被災地の都道府県の要請に基づく場合もありますが、
緊急の必要性がある場合は要請なしでも派遣されることがあるのです。
したがって、災害発生時に即座に活動できるよう、隊員は訓練を重ねています。

DMATの派遣期間は、災害の状況によって異なります
派遣要請があった場合、隊員は派遣先に向かい医療支援に努めるのです。
派遣期間は災害の規模や被害状況に応じて変動するため、確定的な期間を一般化することはできません。

DMATの主な活動とは

DMAT(災害医療派遣チーム)の活動は、通常時には都道府県と医療機関などとの間で合意された協定や厚生労働省、文部科学省、都道府県、国立病院機構などが策定した防災計画などに基づくものです。

地震や他の災害が発生した際に、被災地域の都道府県からの派遣要請に応じて活動します。
ただし、都道府県からの要請がなくても、「DMATの緊急派遣が必要」と認められれば、
厚生労働省が都道府県に対して派遣要請をします。
DMATが被災地域に派遣された場合、主な活動は以下の4つです。

現場活動:災害現場での医療活動です。トリアージや緊急治療など、傷病の緊急度や重症度に応じて治療の優先順位を決定します。また、がれき下での医療も現場活動です。

病院支援:被災地域の医療機関への支援活動です。とくに災害拠点病院の支援・強化が重要な任務となります。被災地域内の病院からの情報発信やトリアージ、診療の支援、広域医療搬送や地域医療搬送のためのトリアージなどがされます。

広域医療搬送:被災地域で対応が困難な重症患者を被災地域外に搬送し、緊急治療をします。国や自衛隊の協力のもと、拠点となる臨時医療施設(SCU)が設置されるのです。DMATは、患者さんの症状の安定化や搬送のためのトリアージを実施します。

地域医療搬送:災害現場から被災地域内の医療機関への搬送や、被災地域内の医療機関から近隣地域やSCUへの搬送をします。東日本大震災の例では、DMATにより福島県内の病院からの約300名以上の搬送や、原発周辺病院の入院患者の避難がされました。

DMATの活動は、災害の規模や状況に応じて派遣され、現場活動、病院支援、広域医療搬送、地域医療搬送の中心になります。DMATは、迅速かつ専門的な医療支援を提供し、被災地域の救援活動に貢献しています。

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JMATになるには

JMAT(医療支援チーム)の参加はプロフェッショナル・オートノミー制度(専門職としての自律性)に基づいています。
プロフェッショナル・オートノミー制度とは医師が診療活動を遂行する際に、外部の第三者や個人からの不当または不適切な影響を受けず、独自の専門的判断を自由に行使するためのプロセスを指します。
医療従事者であれば特に日本医師会への参加は必要ありません。また、病院の規模や所属先も関係ありません。

JMATへの参加を希望する場合、事前登録をすることで訓練や研修の受講が可能となります。具体的には、各地方の医師会が調整を実施しており、参加希望者は日本医師会を通じて申し込みが可能です。

JMATの派遣要請は、災害対策本部から出され、その要請を受けてJMATチームが結成されます。
参加希望者がJMATチームに組み込まれた場合、必要な手続き(保険など)を取った後、現地に向かうのです。

JMATの活動は基本的に災害発生後数日経ってからとなるため、災害発生後でも参加の申し込みは間に合います

JMATに参加するために必要な資格はとくにありませんが、被災地での活動には意識や倫理、体力、そして最低限の知識が必要です。これに対して、DMATでは資格や訓練が必要であり、大きな病院での勤務経験が求められます。

JMATは中小規模の病院や薬局で働いている医療従事者でも参加できる点が特徴です。
災害支援に貢献したい意欲と適切な倫理観、そして最低限の知識があれば、
誰でもJMATの一員となることが可能です。

DMATになるには

DMAT(災害派遣医療チーム)への参加には、国が指定する「災害拠点病院」での勤務が最低条件です。
自分が希望する病院に就職または転職することで、この条件を満たせます。

すでに災害指定病院で働いている場合は、病院内での選抜に選ばれることが必須です。選抜の基準は病院ごとに異なるため、先輩や上司に相談することが重要です。
一般的に、救急外来(ER)、救急科、救命センター、集中治療室、外科などで勤務しているスタッフが選ばれやすいと言われています。
とくに医師の場合、救急科医が最も多く参加しています。もし該当する部署に所属していない場合は、病院内での異動を検討することもおすすめです。

DMAT隊員に選ばれたら、指定された研修を受けなければなりません。
この研修は座学と実技が組み合わされており、日本DMATでは約3. 5日間東京DMATでは約1. 5日間です。

組織によって異なる場合もありますが、短期間に多くの知識を学ぶ集中的な研修です。研修終了後に試験に合格すれば、正式にDMAT隊員となれます。

DMAT隊員として活動を始めた後も、定期的に研修を受けて知識を更新し、スキルアップに努めましょう。また、DMATの資格は5年ごとに更新が必要です。

研修に参加するためには病院からの推薦が必要となるため、事前に希望する勤務先の病院に意向を伝えることが重要です。

DMATになるためには必要に応じて転職も視野に

近年、自然災害や災害事故の発生頻度が増える中、DMAT(災害派遣医療チーム)の存在がますます注目を浴びています。
もしもDMATとして活動し、災害時に医療支援に貢献したいと考えているなら、必要に応じて転職も視野に入れることが重要です。

DMATへの参加を希望する場合、まずは国が指定した特定の「災害拠点病院」での勤務が必要です。現在の勤務先が災害拠点病院である場合、DMATへの参加の道が開ける可能性もあります。
しかし、もし
現在の勤務先が災害拠点病院でない場合は、DMATとして活動するためには転職が必要になるでしょう

災害拠点病院での勤務は、高度な技術と知識を磨く絶好の機会です。
そのためには、必要に応じて転職も視野に入れ、
指定医療機関での勤務を目指すことが重要です。
自身のキャリアに合った環境でスキルを磨き、DMATとしての活動に貢献しましょう。

転職を考えるなら医師専門のエージェントがおすすめ

転職を検討している医療関係者にとって、正しい情報や適切なサポートを得ることは重要です。
そのような場面で頼りになるのが、
医師専門のエージェントです。

転職を考える際には、自身の希望やキャリア目標を明確化することが重要ですが、加えて専門家のアドバイスを受けることも大切といえます。
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まとめ(JMATとDMATは何が違う?)

今回は、JMATとDMATの違いについて解説しました。

JMAT(日本医療支援チーム)は、海外での災害や緊急事態時に活動し、被災地の医療機関を支援します。
DMAT(災害派遣医療チーム)は、国内の災害発生時に即応して出動し、迅速な救急・災害医療を実施するチームです。DMATは災害発生から48時間以内に出動し、被災地での救急治療や医療的な支援を担当します。

JMATへの参加には、とくに日本医師会への参加は必要ありません
各地域の医師会に事前登録をしておくと、訓練や研修の機会を獲得できます。実際の災害時には、災害対策本部からの要請を受けて調整されます。
DMATへの参加には指定された災害拠点病院での勤務が必要です。
災害時に選抜されるため、該当する部署での経験や異動も視野に入れるべきです。

このようにJMATとDMATは異なる役割を果たし、それぞれのチームには求められるスキルや経験があります。
興味がある方は、所属する病院や関連機関にお問い合わせし、参加の道筋を探ってみることをおすすめします。

また、JMATやDMATを目指す医療従事者にとって、転職は自己のスキル向上と社会貢献を追求するための選択肢の1つと言えるでしょう。
JMATやDMATでの活躍を目指す場合には、医師専門のエージェント「メッドアイ」を利用することをおすすめします。

この記事が皆様にとって有益な情報となりましたら幸いです。