医師が長時間労働や当直などの過酷な労働環境で働いているということはよく知られている事実でしょう。
これから医師としてのキャリアをスタートさせる方の中には、将来の忙しさや収入を心配する人も少なくないのではないでしょうか。
また、今いる職場環境は他の病院と比べてどうなのかと考える方もいるかと思います。
「診療科によって忙しさはどの程度差があるのか?」
「激務の診療科だとやはりプライベートに影響があるか?」
「忙しい診療科ならではの大変なことは?」
この記事では、診療科別の忙しさや、忙しさと収入の関係について、転職エージェントの視点から解説します。 あわせて読みたい
自分の進みたい道がどのくらい忙しいのか、また、忙しいほど年収が良くなるものなのかといった疑問についてお答えします。
キャリアプランをこれから考えるという医師の参考になれば幸いです。
忙しい診療科はどこ?
まずは診療科別に忙しさの状況をデータで分析してみましょう。 あわせて読みたい
自分の勤める診療科や、これから目指したい診療科がどのくらいの忙しさなのかをある程度判断できるよう、ランキング形式にしてみました。
診療科別・労働に関するランキング
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」をもとに、診療科別の労働時間について見ていきましょう。
①週当たり労働時間のランキング(平均で多い順)
診療科 | 週当たり平均労働時間 | 中央値(週当たり労働時間) |
---|---|---|
全体平均 | 46.6時間 | 50〜60時間 |
救急科 | 54.0時間 | 40〜50時間 |
脳神経外科 | 53.3時間 | 40〜50時間 |
外科 | 52.5時間 | 50〜60時間 |
小児科 | 52.0時間 | 50〜60時間 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 49.4時間 | 50〜60時間 |
産科・婦人科 | 49.4時間 | 40〜50時間 |
*労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」より一部抜粋 あわせて読みたい
②年次有給休暇取得日数のランキング(3日以下割合の高い順)
診療科 | 3日以下取得割合 | 取得日数中央値 | 7日以上取得割合 |
---|---|---|---|
全体平均 | 47.2% | 4〜6日 | 27.0% |
脳神経外科 | 55.2% | 0〜3日 | 22.7% |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 52.8% | 1〜3日 | 20.9% |
救急科 | 52.0% | 1〜6日 | 22.2% |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 49.1% | 0日 | 28.8% |
内科 | 48.8% | 0日 | 26.1% |
外科 | 47.6% | 4〜6日 | 23.9% |
*労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」より一部抜粋 あわせて読みたい
③宿直・日直回数のランキング(宿直日直ありの割合が高い順)
<日直>
診療科 | 日直ありの割合 | 日直回数(中央値) |
---|---|---|
全体平均 | 61.8% | 1〜2回 |
救急科 | 91.8% | 1〜2回 |
小児科 | 73.6% | 1〜2回 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 70.0% | 1〜2回 |
<宿直>
診療科 | 当直ありの割合 | 当直回数(中央値) |
---|---|---|
全体平均 | 67.4% | 1〜2回 |
救急科 | 94.4% | 5回以上 |
脳神経外科 | 78.0% | 1〜2回 |
精神科 | 75.0% | 3〜4回 |
*労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」より一部抜粋(日直、宿直とも) あわせて読みたい
④オンコール回数のランキング(月4回以上割合の高い順)
診療科 | 月4回以上の割合 | 月当たりオンコール回数(中央値) |
---|---|---|
全体平均 | 21.0% | 1〜3回 |
産科・婦人科 | 31.3% | 1〜3回 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 30.9% | 1〜3回 |
外科 | 29.0% | 1〜3回 |
*労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」より一部抜粋 あわせて読みたい
データからわかる忙しい診療科
週当たりの労働時間や有給日数などをランキング形式でご紹介しましたが、ここからわかる「忙しい診療科」のポイントを解説していきます。
まず、どのランキングでも上位に入ってくる救急科と脳神経外科についてです。
週当たり労働時間も宿直・日直回数も多く、トップクラスに忙しいことが伺えます。
有給取得率も低く、休日が満足に取れていないこともわかる状態です。
逆にオンコールのランキングには入っていませんが、常に病院にいるため、オンコールする必要がないという解釈ができると思います。
ただし、日直についてはそもそも病院の休診日が対象となるため、どの病院でもたいてい月に4〜8日程度しか発生しません。
よほど人手不足の病院でない限り、日直回数は似たような結果となりますので、参考程度にとどめた方がいいでしょう。
一般外科や産婦人科などは、宿直回数ではランクインしていないものの、その分オンコールでランキングしています。
オンコール待機はその責任から休日としてリラックスすることができず、結局勤務日と同じような感覚になってしまいがちで、こちらも辛い状況であることに変わりはありません。
このほか、有給休暇の取得日数が少ない診療科として、呼吸器科・消化器科・循環器科などがあります。これらの診療科では、一線で活躍している間はプライベートを楽しむゆとりを持つのは難しい科なのではないかと感じられます。
また、こうした数字から読み解く状況は、医師の肌感覚でも似たように捉えられているようです。
メドピア株式会社が実施した医師へのアンケートで、「一番きついと思う診療科」を答えてもらったところ、以下のような結果となっています。
順位 | 一番きついと思う診療科 | 回答数 |
---|---|---|
1 | どの科も同じ | 1,010 |
2 | 産婦人科医 | 906 |
3 | 外科医 | 601 |
4 | 救急科医 | 480 |
5 | 小児科医 | 293 |
*メドピア株式会社「【医師アンケート調査】「一番きついと思う診療科目は?」―1位「どの科も同じ」、2位「産婦人科医」、3位「外科医」」より一部抜粋して引用
これらの情報を総合すると、「忙しい診療科」と言えるのは、次のような科になります。
- 救急科
- 脳神経外科
- 小児科
- 産婦人科
- 呼吸器、消化器、循環器科
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忙しさと年収の関係は?
続いては、忙しさと年収の関係性を見ていきます。
一般的に忙しいと言われる診療科として、救急科や脳外科、小児科や産婦人科が挙げられていますが、年収はどうなっているのでしょうか?
診療科別・年収ランキング
労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」から、診療科別の年収額をランキング形式でまとめました。
診療科 | 平均年収額 |
---|---|
全体平均 | 1,261.1万円 |
脳神経外科 | 1,480.3万円 |
産科・婦人科 | 1,466.3万円 |
外科 | 1,374.2万円 |
麻酔科 | 1,335.2万円 |
整形外科 | 1,289.9万円 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2万円 |
内科 | 1,247.4万円 |
精神科 | 1,230.2万円 |
小児科 | 1,220.5万円 |
救急科 | 1,215.3万円 |
放射線科 | 1,103.3万円 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7万円 |
*労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」より一部抜粋 あわせて読みたい
忙しさと年収は必ずしもイコールではない
上記ランキングを詳しく見ていくと、忙しい診療科でトップクラスだった救急科の年収が他と比べてもかなり低いことがお分かりいただけるでしょう。
同様に小児科の年収も低く、医師全体の平均年収を下回っています。
忙しいからといって必ずしも年収が高くなるとは限らないことがデータでわかります。
これらの診療科では、体力的にも有利な若手がメインで活躍しています。
そして、医師は若手のうちは収入額があまり高くありません。
これが、忙しい診療科の平均年収を押し下げている要因と言えるでしょう。
一方で、年収ランキングでは最下位となった眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科ですが、週あたり労働時間ランキングには上がってこない、比較的忙しくない診療科と言えます。
また、医師の不足度も低いことから、働きやすさなどで人気があり、医師の数も多いことが窺えます。
皮膚科などは美容分野を選んだりすることで収入額を上げることもできるので、こちらも一概には言えないというのが正解でしょう。
もしも労働量に対して収入が少ないと感じているのであれば、より良い条件を求めて転職を考えるのも一つの選択肢です。 あわせて読みたい
こうした悩みを感じた場合、一度転職エージェントに相談してみることをおすすめします。
必ず転職するという固い決意でなくても、求人情報をチェックしてみることで、他の病院ではどのような条件で働けるのかを知ることができます。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談することで、相場観や自分が転職したら年収がどれくらいアップできるのかという市場価値も知ることができるので、キャリアプランを見直すきっかけとなるかもしれません。
まとめ(忙しい診療科と大変なこと)
この記事では「忙しい診療科」についてまとめました。
長時間労働や休日が少ないなどの過酷な環境は、体力的にもしんどいものです。
しかし、そこにやりがいを見出す人もいますし、忙しいからこそ多様な経験を積むことができ、スキルアップにつながる側面もあります。
さまざまなデータを総合すると、忙しい診療科としてあげられるのは以下の通りです。
- 救急科
- 脳神経外科
- 小児科
- 産婦人科
- 呼吸器、消化器、循環器科
また、忙しさは必ずしも年収額とは比例しないこともご紹介しました。
診療科別に年収額を比較すると、上位に来るのは以下の診療科です。
- 脳神経外科
- 産婦人科
- 外科
- 麻酔科
- 整形外科
両方に名前が上がる診療科は「忙しいが年収も高い」と言えますが、救急科などは平均年収が低くなっています。
仕事量に対して収入が満足できないと考える場合、よりよい条件を求めて転職を検討するという選択肢もあります。
医師が転職を考えたときや、アルバイトを探したいと思った時には、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」の活用が早道です。
特に転職を考えている場合、今後のキャリア形成にも影響が出てきますので、慎重な情報収集と検討が必要になります。
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