脳神経外科は脳や脊髄に関わる病気の診断・治療を行う診療科です。
長時間に及ぶ手術やオンコール対応など、労働時間が長くなりがちで体力を要する診療科ですが、チーム医療にも貢献できるため、医師としてのやりがいは大きいと言えます。

脳神経外科医は労働条件が厳しく、ピークを迎える年齢が早いため、セカンドキャリアを早い段階から模索しておくことをおすすめします。
脳神経外科医は人手不足のため、しっかりとした診療技術と手術経験があれば勤務先は引く手数多となるでしょう。

  • 脳神経外科の仕事に興味があるが、どのような生活を送ることになるのか気になる
  • 脳神経外科医は忙しいのか、働き方などを知りたい

このように思っている方に向けて、脳神経外科医の生活スタイル、転職活動でチェックするべきポイントなどを詳しく解説します。
脳神経外科医に興味のある方、研修医の方は、ぜひ参考にしてください。

脳神経外科医の仕事とは

脳神経外科医は病態の複雑さや手術の難易度の高さから、担い手が少ない診療科と言われます。
外科的治療がメインと思われがちですが、アルツハイマーやパーキンソン症候群など、内服薬で治療する疾患も取り扱うため、内科の知識も必要です。
ここでは、脳神経外科医の年収と働き方について詳しく解説します。

年収について

脳神経外科医の年収は他の診療科と比較して高い傾向にあります。厚生労働省の調査によると、平均年収は1,480万円となっていますが、開業している医師はこれ以上の収入を得ることが可能でしょう。

脳神経外科医の年収が高い理由として、以下が挙げられます。

  • 緊急性を要する患者のオンコール対応が多い
  • 外科手術の手当がつく
  • 長時間労働による残業手当がつく
  • 医師が慢性的に不足しているため、待遇が手厚くなる傾向にある

特に、医師偏在が問題となっているような地方では、2,000万円レベルの年収を提示して募集をかけている医療機関も存在しています。
参考:厚労省 勤務医の就労実態と意識に関する調査 

働き方について

脳神経外科医は、くも膜下出血や脳出血など緊急性の高い疾患を多く扱います。
開頭手術や、カテーテルによる手術など術式はさまざまですが、脳や脊髄は神経が張り巡らされている部位であるため難易度が高く、手術時間も長くなりがちです。
予定手術にプラスして緊急手術の対応に追われることが多いため、長時間労働をやりぬく集中力や体力は必須です。

オンコールや時間外対応も多いため、ライフワークバランスが良い診療科とは言い難く、プライベートな時間を十分に確保することも難しいかもしれません。

また小児患者もいるため、小児病態や薬剤の投与量なども把握しておく必要があります。子どもにとって安心感が得られる先生であって、保護者からも頼られる存在として、日々最先端の医学知識をつける必要があります。

脳神経外科医が忙しいと言われる理由

脳神経外科が忙しいと言われる理由として、労働時間の長さや当直やオンコールが多いことが挙げられます。具体的な内容を解説します。

1.週の労働時間が長い

厚生労働省の調査によると診療科全体の平均労働時間が46.6時間であることに対して、脳神経外科医の労働時間は53.3時間と、平均よりも長くなっていることがわかります。
このアンケートは、主たる勤務先の労働時間であって、非常勤やアルバイトをしている医師は、これ以上に労働時間が長くなる場合もあるでしょう。

診療科別でみた有給取得率からも脳神経外科の忙しさがわかります。取得日数が3日以下である平均が47.2%であることに対し、脳神経外科の平均は55.2%と高くなっています。
また、取得日数が7日以上の平均が27%であるのに対して脳神経外科の平均値は22.7%に留まっています。
有給取得日数も他の診療科と比べて少ないため、必然的に労働時間が長くなっていることがわかります。
参考:厚労省 勤務医の就労実態と意識に関する調査

2.当直やオンコールが多い

オンコールの状況と月当たりのオンコール出勤回数に関する調査からも、脳神経外科医が多忙を極める理由がわかります。

オンコール対応をしている医師の割合の平均が88.2%であることに対し、脳神経外科医は97.6%の医師が対応していると回答しています。
さらに、
オンコール出勤回数が月に4回以上である割合の平均値が21.0%であることに対して、脳神経外科医の平均は36.7%です。
これらの数値はいずれも全診療科のなかでトップ
であり、いかに緊急対応が必要な診療科であることかがわかります。

したがって、脳神経外科医を目指す医師は24時間いつでも対応できるような体制でいることが求められ、居住地も勤務先の近隣にする医師が多いです。

3.手術が多い、または手術の時間が長い

脳神経外科医は手術の件数が多く、かつ24時間体制で患者の受け入れを行っていることもあるため時間外勤務も増えやすいことが特徴です。

手術時間は、未破裂脳動脈瘤ネッククリッピング術に対しては約2~4時間、破裂脳動脈瘤に対しては約2~6時間と、症例や難易度によってさまざまです。
中等度の大きさの頭蓋底腫瘍に対する切除術は6~8時間に及び、さらに大きな頭蓋底腫瘍の治療は2日に分けて20時間かけて行うものもあります。

前例のない症例では、術式から考えなければならない場合もあります。
術後合併症や麻痺が残らないような手術を遂行するためには、術前の下準備が重要です。そのため脳神経外科医は常に勉強をし、手術前に徹底的に病態を把握していなければなりません。
ただし、最近では長時間に及ぶ手術に対しては交代制をとって労働環境の改善に努めている医療機関もあります。

専門医を目指す医師や、学会発表を行う医師にとっては、これらの通常業務を行った上で症例発表用のスライド作成や専門医試験に向けての対策が必要です。
長時間働いた状態でプライベートも勉強に追われるためかなり忙しい生活になるでしょう。

脳神経外科医への転職の際に見るべき5つのポイント

脳神経外科へ転職する時にチェックしておくポイントは、休暇の取りやすさや、手術件数の多さ、他科との連携状況などです。
また、ローテーションとして大学病院、医局に属している場合は関連病院に異動する機会もあるでしょう。勤務先によってカラーが変わるので、事前に情報を集めることがおすすめです。

1.休暇が取りやすい職場か

脳神経外科は緊急性を要する診療科であるため、日曜、盆暮れ、正月などの祝日などに関係なくオンコールで呼び出しがかかることがあります。
有給取得率が低いデータもあるため、プライベートな時間も充実させたい医師にとっては働きづらさを感じてしまうかもしれません。

転職を考える場合は、有給、長期休暇、産休、育休などの休暇を取りやすい環境であるかどうかをチェックしましょう。
休暇が取れない環境であると、プライベートの時間どころか、過労で体や精神を壊してしまう可能性もあります。

2.緊急手術の多い病院かどうか

各病院のホームページの診療実績ページには、緊急入院や緊急手術の件数、診療科ごとの手術件数などが統計としてまとめられていることが多いです。
病院の規模、常勤医の人数などには差があり、一概に基準点を決めることは難しいですが、
現職と比較してイメージするとよいでしょう。

緊急手術が多ければ多いほど、さまざまな症例の治療に携わるチャンスが多くなり、医師としてのスキルが上がることは間違いありません。
規模が大きい病院であれば、取り扱う領域も拡がるため、さまざまな経験が積めるでしょう。
自分がどのくらいのペースで手術の対応ができるかざっくり決めた上で、病院選びの参考にしてください。

3.人口の数と周りに手術可能な病院があるか

勤務先の病院の近隣に脳神経外科の手術を受け入れる病院があるかどうかは、忙しさを決める背景要因の1つとなります。

例えば、東京の都市部では大学病院も中規模の病院も数多くあるため、患者の受け入れが困難な場合は転院により負担を軽減させることが可能です。
しかし、周囲に脳神経外科がない場合、地域の患者はすべて担当しなければならないため、本当に休む暇もなくなる可能性があります。周辺の人口や年齢層も併せて把握しておくと安心です。

4.オンコールや当直の数はどうか

脳神経外科医の多忙さの大きな理由としてオンコ-ルや当直の回数があります。
これらは、人員不足により負担が大きくなるため、まずは診療科に従事する医師の人数を確認しておきましょう。
当直明けは休務日扱いになるのかどうか、それとも出勤日扱いになるのかどうかまで確認しておくと安心です。

また、病院によっては、セカンドコール体制を取っているところもあります。ファーストコールがつながらなかった時のための連絡先のことですが、これがあるのとないのでは一人にかかる負担が桁違いに軽くなります。

また、女性の場合、出産や育児のため当直やオンコール対応ができない場合もあるでしょう。
そういった場合、子どもが何歳になるまで当直やオンコールが免除されるのか、施設に確認しておくと良いでしょう。

5.他の科との連携状況はどうか

脳神経外科の仕事はほかの職種との連携が不可欠ですので、連携がスムーズにいきそうな職場かどうかも大切な判断基準です。

医師のほか、看護師や放射線技師、理学療法士、作業療法士など、連携すべき職種はさまざまです。
各スタッフの雰囲気や連携体制について、実際に見学に行くなどして確かめておき、入職後のギャップを防ぎましょう。

脳神経外科医として働く際の注意点

脳神経外科医は、激務かつ繊細な技術が求められるため、他の診療科よりもピークが短いというデメリットがあります。
具体的に解説するので参考にしてください。

活躍できる期間が他科よりも短い

脳神経外科は緊急手術の件数が多く、かつ内容も難しいため、集中力や体力が必要です。歳を取ると視力が落ちてくることもあるため、40〜50歳代でピークを迎えてしまうことが多いでしょう。
そのため、30歳代中盤ごろからは、第一線で活躍できるように、診療スキルと手術のスキルを上げられるように努力しましょう。

セカンドキャリアを早めに考える必要がある

脳神経外科医は、外科医としてのピークを過ぎたあとでも需要は多いです。セカンドキャリアとして、外来診察の医師、リハビリテーション科への転科、さらには開業の道もあります。
アルツハイマーやもの忘れなどの予防として処方を出し、さらに脳腫瘍や脳動脈瘤などの早期発見目的で脳ドックを行うところもあります。

いずれにせよ、何歳の時にはこうなっていたい、という明確なビジョンを持ち続けながら日々の業務に取り組むことが大切です。

働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう

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まとめ(脳神経外科医の生活とは?)

脳神経外科は多忙を極める診療科であり、体力も必要です。
労働時間が長く、人手不足ということもあって年収は高めに設定されることが多く、人の命を直接救うことができるため、やりがいも感じるでしょう。

脳・神経・脊髄領域の専門家として、各種チーム医療に参加することも可能なので、多職種との連携に興味がある医師はおすすめです。
ただし、外科医としてのピークは早く訪れるため、若いうちからセカンドキャリアを見据えた行動をしてくことが重要です。
転職の際には、休暇の取りやすさや緊急手術の受け入れ件数、オンコールや当直回数の確認を行っておくとよいでしょう。