「リハビリテーション科」は、「内科」などと同様に医療施設に看板を出せる標榜科ですが、リハビリ科の医師についてはあまり知られていないのではないでしょうか。
- リハビリテーション科はどんな診療科?
- リハビリテーション科の医師の仕事や年収は?
- リハビリ科医になるメリットやデメリットは?
今回は、このような疑問を持っている方に向けて、プロの転職エージェントが詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。
リハビリテーション科はどんな診療科?
リハビリテーション科(以下、リハビリ科)は、病気や怪我による身体機能障害を改善し社会復帰を図るため、医学的治療や治療的訓練を実施する診療科です。
リハビリ科の主な対象は、
- 脳血管障害・頭部外傷
- 運動器疾患・外傷
- 脊髄損傷
- 神経筋疾患
- 切断(外傷・血行障害・腫瘍など)
- 小児疾患
- リウマチ性疾患
- 循環器疾患・呼吸器疾患・腎疾患・糖尿病・肥満
- 周術期の身体機能障害
- 摂食嚥下障害
- 聴覚・前庭・顔面神経・嗅覚・音声障害
- がん(悪性腫瘍)
- スポーツ外傷・障害
- 骨粗鬆症・熱傷・サルコペニア・ロコモティブシンドローム・フレイル
と、多岐に渡ります。
リハビリ科の治療法は、基本動作能力や移動能力の回復を目的とする理学療法、日常生活能力や社会適応能力の回復を目的とした作業療法、言語および認知能力の回復を目的とした言語聴覚療法の三部門により構成されています。
リハビリ科は、治療後の経過観察など、患者さんの生活に寄り添いながら、社会復帰を目指す診療科でもあります。 あわせて読みたい
リハビリ医の仕事内容
リハビリ科の医師は、外来もしくは入院中の患者さんの身体機能の評価、ADL(日常生活動作)、医学的リスク、ADLの変化の予測などをしながら、患者さんそれぞれのリハビリテーション計画を立案して治療を実施します。リハビリテーション計画を立案する際には、患者さんとご家族の要望や悩みに耳を傾け、状況の変化に応じて柔軟に対応することが求められます。
リハビリ科には、専門医制度があります。 あわせて読みたい あわせて読みたい
リハビリ科専門医は、病気や外傷の結果生じる障害を医学的に診断治療し、機能回復と社会復帰を総合的に提供することを専門とする医師です。
専門医になるためには、リハビリ科が関与する全ての領域について、定められた卒後研修カリキュラムにより3年以上の研修を修め、資格試験に合格する必要があります。
在宅ケアも、リハビリ科医の重要な仕事です。
病院によっては、訪問リハビリテーション、訪問診療の仕事もあります。訪問治療の際は、慢性期(生活期)の患者さんを長期的に治療するため、マネジメント能力が求められます。
依頼を受け、他診療科の患者さんを診察する機会が多いこともリハビリ科の特徴です。
救急対応や急性期の全身管理の必要もあり、内科・外科を問わずさまざまな疾患に対する知見が求められる診療科といえるでしょう。
リハビリ医の年収は? 高年収の理由
リハビリ医の平均年収は1,560万円です。
厚生労働省が毎年公表している「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、医師全体の平均年収は1,378.3万円で、リハビリ医は高年収であることがわかります。
厚生労働省「平成30(2018)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、リハビリ科を主たる診療科として従事する医師の数は2,705人で、そのうちの9割以上は総合病院などの病院の勤務医です。そのため診療所などではリハビリ医が不足しており、医師確保のために高報酬を提示している医療機関もあります。
また、同調査では、リハビリ医の平均年齢は54.2歳で、医師全体の平均年齢49.9歳を大きく上回っています。医師は年齢を重ねるごとに年収が上がるため、リハビリ医の年収が高い理由の一つであると推測されます。 あわせて読みたい
リハビリ医の5つのメリット
リハビリ医のメリットは、以下の5つが挙げられます。
- 患者さんと深く関われる
- 社会的ニーズが高い
- 他診療科と比べ、習得までの時間が短い
- 高齢になっても続けられる
- 自分のペースで働ける
それぞれ、詳しく解説します。
患者さんと深く関われる
リハビリテーション医療・医学の対象は「障害を抱えた患者さんの全身」です。
診察するのは、身体機能だけではなく、精神機能や認知機能も対象です。
障害を抱えて生きる患者さんにとってはリハビリ医が最後の砦です。
そのためリハビリ医は患者さんに対して大きな影響を与えうる存在となるため、責任は非常に重いでしょう。
また、リハビリ科は患者さんがその人らしく生きることをサポートできる唯一の診療科です。
リハビリテーション治療を通し、患者さんの人生を前向きに変えられる医療に携わることは、やりがいを感じられるのではないでしょうか。
また、さまざまな症例の患者さんを長期に渡って治療することで、医師として必要な経験を多く得られるのもリハビリ科の魅力の一つです。
患者さんの人生を診察する機会の多いリハビリテーション科は、他診療科では味わえないやりがいを感じられる診療科であると言えます。
社会的ニーズが高い
日本では、高齢化社会が進んでおり、リハビリ医のニーズは高まりつつあります。
現状ではリハビリ医の数が足りていない状況であるため、リハビリ医を探している施設や病院は非常に多く、高報酬を提示されている場合もあります。
2025年には約800万人が後期高齢者になるという予測もあり(2025年問題)、リハビリ医のニーズはますます増えるでしょう。
リハビリ医は将来的にも引く手数多であることが予想されるため、就職先には困らないといえそうです。
またリハビリ科は、他の診療科と比べて競争社会ではないため、部長職や教授職などのポジションを得やすいのも魅力です。
他の診療科と比べ、習得までの時間が短い
他診療科では、習得するまで数十年と時間がかかりますが、リハビリ医は、全般的に早熟です。 あわせて読みたい
部長、医長、教授などの役職に就くまでの経験年数も短くなる傾向にあるようです。
高齢になっても続けられる
他診療科ではバーンアウト(燃え尽き)が問題視されることがよくあります。
バーンアウトの主な原因は、
- 業務が忙しすぎる
- 加齢に伴う手技や視力の衰え
- 体力的な限界
- 競争に対する疲れ
- 仕事に対する飽き
- 訴訟を起こされた
などがあります。
リハビリ科は、競争社会ではなく、業務が忙しすぎる診療科ではありません。 あわせて読みたい
そのためリハビリ医はバーンアウトすることは稀で、リハビリ医として長年活躍している医師もいます。
リハビリ医は生涯通して働きやすい診療科と言えるでしょう。
自分のペースで働ける
リハビリ科は他診療科と違い、基本的にオンコールや夜勤はありません。
外来で急患対応することもないため、ワークライフバランスを保ちやすい診療科です。
回復期リハビリテーション病棟を担当する場合は、他科と連携しチームをまとめるマネジメント力が必要とされますが、救急や急変などによる夜間対応の負担は少ないため、体力的には負担が少ない診療科と言えるでしょう。 あわせて読みたい
リハビリ医の意外なデメリット
リハビリ医は若手医師が少ないため、年齢が近い先輩医師が少なく気軽にアドバイスをもらう環境がないというデメリットがあります。
以下は、厚生労働省「平成28(2016)年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より、リハビリ医の年齢別割合を表したものです。
年齢 | 人数 | 全科に占める割合(%) |
---|---|---|
29歳以下 | 46 | 0.2% |
30~39歳 | 320 | 0.5% |
40~49歳 | 675 | 1.0% |
50~59歳 | 679 | 1.0% |
60~69歳 | 483 | 1.0% |
70歳以上 | 281 | 1.0% |
全年齢合計 | 2484 | 0.8% |
引用:https://www.dr-10.com/lab/reasons-for-a-shortage-of-rehabilitation-doctors/
日本医師会の必要医師数の調査では、リハビリ医はもっとも医師の不足している診療科です。さらに、上の表からは20〜30代の若手医師が極端に少ないことがわかります。
若手医師がリハビリ医を目指さない背景には、他診療科医師から下に見られる風潮があるようです。
近年はリハビリ医のニーズが高いことも手伝い、リハビリ医の重要性は認識されつつありますが、このような風潮は完全には消え去っていないと考えられ、若手医師が少ない要因の一つと考えられます。
また、中堅や若手が少ないため、年齢の近い先輩医師との接点が少ない点も、リハビリ科を専攻する医師が少ない要因の一つかもしれません。 あわせて読みたい
現在活躍している医師はベテラン世代が中心で、年齢の近い先輩医師との接点が少なく、気軽にアドバイスを受けられる環境ではありません。
同年代が少ないことで競争率が低い診療科ではありますが、年齢の近い先輩が少なく、気軽にアドバイスを受けられないことはリハビリ科のデメリットと言えるでしょう。
まとめ(リハビリ医について)
今回は、リハビリ医について紹介しました。
リハビリ科は、病気や怪我による身体機能障害を改善し社会復帰を図るため、医学的治療や治療的訓練を実施する診療科です。
リハビリ医の平均年収は1,560万円です。
リハビリ科には、リハビリ専門医がいます。機能回復と社会復帰を総合的に提供することが専門の医師で、卒後研修カリキュラムのあと3年間の研修を終えることで、専門医試験を受けられます。
リハビリ医はもともと高収入といえますが、勤務先の経営母体を変えることでより高収入を目指すことも可能です。
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本記事が、リハビリ医についての疑問を解消するきっかけになれば、幸いです。