医師研修ではさまざまな診療科を渡り歩きながら経験を積んでいくことになり、この段階で将来のキャリアプランを考えるという方も多いのではないでしょうか。
医師としてどのような道を歩いていくか考えるとき、臨床医かそれ以外かが大きな分かれ道です。
「臨床医とは?」
「臨床医と臨床研修医との違いとは?」
「臨床医の仕事内容や担当する症状とは?」
この記事では、臨床医の仕事内容や担当する症例などについて転職エージェントの視点から解説します。
気になる臨床医の年収についてもご紹介しますので、参考にしてください。
臨床医とは?主な仕事内容
臨床医とは、直接患者さんと向き合い、診察・治療を行う医師を指します。
一般的な「お医者さん」は、臨床医師のことを表していると言えるでしょう。
臨床医の仕事内容は診療科によって異なりますが、投薬や手術、外傷の消毒や縫合などの治療です。
患者さんの訴えをもとに聴診や触診、検査などの結果から病状を診断して治療していきます。
自分の病院で対応できない場合は、設備の整った大病院などで診察・治療をしてもらえるよう紹介状(診療情報提供書)の作成をするのも臨床医の仕事です。
一方、患者さんとは直接相対しない「研究医」という働き方もあります。 あわせて読みたい
まだ治療法がわかっていない病気や難病症例の研究などを行い、治療法を確立することなどが主な仕事で、どちらも医療業界において重要な役割です。
臨床医が担当する症状や病気とは?
臨床医が担当する病気や症状はさまざまですが、多い症例としては発熱や咳といった風邪のような症状と、頭痛、腹痛などの痛みが挙げられます。
そのほか、切り傷や骨折といった外傷も担当します。
こうした症状の原因を探り、見極めて、適切な治療を行っていきます。
診療科によって担当する臓器や部位が変わってきますが、これらの症状は初期症状として共通していることもよくあることです。
臨床医は、問診や検査などから患者さんの不調の原因を見極めていかなくてはなりません。
治療は診療科ごとにさまざまで、内科であれば投薬や注射などで対応します。
外科なら外傷や手術といった手技を用いた治療がメインです。
耳鼻科や眼科など、担当部位が定まっている診療科の場合は、担当部位に関するあらゆる症例の治療にあたります。
特に内科の臨床医は、広範囲の症例を担当すると言えます。
「目が痛い」「歯が痛い」と不調部位が明らかではない場合、「とりあえず内科のお医者さんにかかる」という患者さんが少なくないためです。
臨床医と臨床研修医の違い
医師の国家試験に合格すると、まずは臨床研修を受けることになります。
この時期の医師を「臨床研修医」と呼び、臨床医と呼称が似ていますが、あくまでも研修医です。
文字通り臨床の現場を学ぶ研修期間で、さまざまな診療科で経験を積んでいきます。
この臨床研修を修了しないと、臨床の現場で働くことはできません。
臨床の仕事がない研究医を目指す場合は、臨床研修は必須ではありません。
しかし、将来的に臨床の現場に立ちたい場合は、臨床研修を受ける必要があります。
臨床研修を修了していないと、病院や診療所の管理者となることができなくなります。
これは医療法で定められており、開業のためにも基本的に臨床研修の修了が必要です。修了していない場合は、届出方法が複雑になるというデメリットがあります。
臨床医になるには?
臨床医になるためには、医師の国家試験に合格後、臨床研修を最低2年間履修します。
研修期間中は「研修医」という立場です。
臨床研修を修了すると、臨床医として働くことが可能になりますが、多くの医師がその後の専門医研修へと進みます。
医師の仕事は担当する部位や臓器ごとに細分化されていて、それぞれの専門医研修を修了することで「専門医」の資格試験を受けることができるようになるためです。
専門医研修は3〜5年程度かかります。
外科のような手技を伴う診療科を目指す場合は、専門医資格取得後も技術の習得のために私淑する医師の元へ弟子入りし、技術を磨く医師が多いでしょう。
大学で6年、臨床研修で2年、専門医研修で3年と最短コースで進んだとしても、一人前の医師になる頃には30歳を超えています。
臨床医になるためには、長い期間をかけ多大な努力をする必要があるのです。
気になる臨床医の年収平均とは?
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」を見ると、勤務医全体の平均年収は1,338万円です。
こちらの統計には研究系の職種が入っていないため、この数字をほぼ「臨床医の平均年収」と言い換えて差し支えがないでしょう。
臨床医の収入は、診療科や勤務する病院の規模、地域によっても大きく変わってきますが、平均額をまとめると以下の表のようになります。
<臨床医の収入>
平均年収 | 1,338万円 |
---|---|
平均月収 | 102.5万円 |
平均時給 | 5,930円 |
男性平均年収 | 1,449万円 |
女性平均年収 | 1,039万円 |
総務省統計局「令和6年賃金構造基本統計調査」を参照し作成
臨床医の収入は、年齢によっても大きく変わってきます。
医師の研修は専門医研修まで入れると5〜8年程度かかり、研修期間中は収入が低いためです。
専門医研修を終えて一人前になるのが30代後半〜40代で、その頃から年収額が平均を上回るようになります。
年齢・性別ごとの平均年収データもまとめました。
年齢 | 男性平均年収 | 女性平均年収 |
---|---|---|
30〜34歳 | 931万円 | 747万円 |
35〜39歳 | 1,226万円 | 1,522万円 |
40〜44歳 | 1,502万円 | 1,000万円 |
45〜49歳 | 1,934万円 | 1,291万円 |
50〜54歳 | 1,872万円 | 1,452万円 |
55〜59歳 | 2,013万円 | 1,569万円 |
60〜64歳 | 1,933万円 | 1,541万円 |
65〜69歳 | 1,866万円 | 761万円 |
70歳〜 | 1,560万円 | 1,455万円 |
参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種「医師」企業規模10人以上・きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額で計算)
年収は30代から着実に上昇し、40代以降で1,500万円前後に到達するケースも多く、リタイアに至るまで高収入を維持できるのが特徴です。
男女差について見ると、基本的には同じような推移をたどりますが、年代によって差が大きく現れることもあります。例えば35〜39歳では女性勤務医の平均年収が男性を大きく上回っている一方、40代以降では男性が女性を上回る傾向が続きます。
女性医師の年収が相対的に低くなる背景には、出産や育児に伴う非常勤勤務やパート勤務への切り替えなど、ライフステージに応じた働き方の影響があると考えられます。
もちろん、医師を目指す目的は収入だけではありません。しかし、高い収入はモチベーションの維持や、結婚・子育てなどライフイベントへの備えにおいて重要な要素です。
どの診療科で働くのか、どのような医療機関に勤めるのか、あるいは将来的に開業するのかといったキャリアプランを立てる際には、収入面もあわせて検討することをおすすめします。
医師のキャリアプランの重要性については、こちらの記事でも詳しく解説しています。 あわせて読みたい
臨床医に関してのよくある質問(FAQ)
Q 臨床医と勤務医は同じ意味ですか?
一般的には「勤務医=臨床医」として扱われます。臨床医は患者を診察・治療する医師の総称で、その中に病院勤務の医師(勤務医)や開業医が含まれます。
Q 臨床医と研究医の違いは何ですか?
臨床医は患者を直接診療し治療を行う医師、研究医は患者と直接関わらず病気のメカニズムや治療法を研究する医師を指します。両者は役割が異なりますが、医療の発展にはどちらも欠かせません。
Q 臨床研修医と臨床医の違いは?
臨床研修医は医師国家試験に合格した直後に臨床現場で研修を行っている医師を指します。臨床医は臨床現場で働いている医師のことです。
Q 臨床医の年収はどれくらいですか?
令和6年賃金構造基本統計調査によると、勤務医全体の平均年収は約1,338万円です。診療科や地域、年齢によって差があり、50代以降では2,000万円を超えるケースもあります。
Q 女性の臨床医は収入が低いのですか?
男女で給与体系に差はありませんが、出産・育児による働き方の変化から、結果的に平均年収は男性より低くなる傾向があります。
まとめ(臨床医の仕事内容や年収)
この記事では臨床医の仕事や給与についてご紹介しました。
臨床医とは一般の方が言う「お医者さん」のことで、患者さんと向き合いながら病気を診断・治療していく医師を指します。
臨床医は担当部位ごとに診療科が分かれていて、それぞれで仕事に必要なスキルや勤務環境が変わってきます。
ですが、患者さんと直接コミュニケーションを取り、病気を見極めて適切な治療を施していくという基本は一緒です。
臨床医として一人前になるためには、大学を卒業して国家試験に合格した後にも臨床医研修、専門医研修といった過程を経る必要があります。
一人前として認められるのは、早くても30代半ばごろとなるハードな道のりです。
そんな臨床医の年収は、平均で1,338万円というデータがあります。
医師の年収は、診療科や勤務先の形態や規模、それに年齢や地域などさまざまな条件で違ってきます。
もし現在収入が低いと感じているのであれば、より良い待遇や環境を求めて転職するのも一つの解決策です。
収入もキャリアプランを考える上で大切な要素です。
キャリアの進め方に迷ったら、転職エージェントに相談してみることをおすすめします。
あわせて読みたい
