総合診療科が注目される中、2018年から開始した「新専門医制度」に「総合専門医」が新たに加わりました。
「総合専門医」は地域医療を下支えすることが期待されている分野です。

「総合診療科はどんな診療科?」
「総合診療科で働くデメリット・メリットは?」
「総合診療医に転科するには?」

この記事では、総合診療科で働きたいと考えている方や、総合診療医への興味や疑問を抱いている方に、転職エージェントの視点からお答えします。
新しい分野である総合診療医として総合診療科で働くには、まだまだデメリットや難しさもあると感じている方もおられるでしょう。
どんな点がデメリットなのかや、それを超えたメリットについてもご紹介していきます。

総合診療科はどんな診療科?

まず総合診療科についてご紹介します。
日本の医療機関は、消化器内科や小児科、耳鼻咽喉科、婦人科など、体の部位や専門の部門ごとに診療科が分かれています。
患者さん側から見ると、どの診療科にかかればいいのか判断が難しい時もあるものです。

これに対し、総合診療科は「なんでも相談に乗ってもらえるプライマリケア」を基本としています。
患者さんが体調に不安を感じながらも、どの診療科を受診すればいいか判断できないという時に、最初に対応する窓口となります。
従来は内科が似たような役割を果たしていた側面がありますが、よりプライマリケアに特化した診療科です。

総合診療科で働くデメリット

総合診療科で働くことには、デメリットと感じられる難しさが存在します。
大きく分けると以下の2点です。

  • 新しい制度のためキャリアパスが描きづらい
  • 特定の疾患や臓器に対するスペシャリティが得られない

①描きづらいキャリアパス

総合診療医制度はまだ始まって間もないため、専門医の数も多くありません。
患者さんひとりを丸ごと診ることができるという多様性があり、注目されてはいるものの、前例はまだ少ない状態です。
理想とされるキャリアパスの例が十分に蓄積されていないため、自分で道を切り開いていく必要があります。

すでに内科などで総合診療的な活動をしている医師が、さらに知見を深めるためであれば、総合専門医の資格取得が役に立ちます。
しかし、これから医師になる若手が最初から総合診療の道に進むためには、未知の領域に足を踏み入れる覚悟も必要であり、難しさが感じられる状態です。
また、病気の原因は一つではないことも多く、多角的な診療ができるようになる必要もあり、ハードルの高さもあります。

②特定分野へのスペシャリティになれない不安

そしてもう一つが、臨床医としての専門性の深さを極められないのではないかという不安感です。
総合診療科では、特定の臓器や疾患など狭い専門範囲を深く極めるということがあまりありません。
患者さんの状態を全体的に診て、大きな病気や高度な専門性が必要な症状の場合は、専門医にバトンを繋ぐ役割を果たします。
このため、広い知見は必要ですが、特定の症例や疾患に特化することができないのではないかという不安や疑問を持つ医師が多いかもしれません。

広い範囲の知識を得ても専門性に欠けてしまい、結果として「中途半端な立ち位置の医師になってしまうかもしれない」という将来性への不安も感じる方がいるかもしれません。
キャリアパスが描きづらいという点にも通じていて、地域医療に携わりたいなどの明確な目標がない場合は、選択肢として考えづらくなってしまうのではないでしょうか。

総合診療科で働くメリット

続いて総合診療科で働くメリットを見ていきます。
デメリットの裏返しになりますが、以下の2点が挙げられます。

  1. 患者さん一人ひとりを深く理解でき、地域に頼られる存在になれる
  2. 地域医療や予防医療など、活動の幅を自ら広げていくことが可能

①地域に頼られる存在になれる

最大のメリットは、患者さんを多角的に診療することができるという点です。
高齢化社会に突入している日本では、総合診療科のニーズは高まっていると言えます。
高齢者の場合、疾患は一つでないことも珍しくありません。患者さんの疾患や外傷をまとめて診療できる立場である総合診療科は、一人の患者さんをより深く理解することが可能です。

過疎化が進む地域や僻地での医療活動でも、患者さんの世代や症状の区別なく診療ができ、患者さんの普段の状況なども知りやすくなります。
結果として、健康状態を把握し、予防医療などに繋げることもできるようになってきます。

②自分で活動の幅を広げていける

もう一つのメリットとして、自分で道を切り開いていける魅力があります。
総合診療科は、さまざまな病気や症状への対応力を持ちながらも、各専門医と連携してより深い医療に繋げる役割を果たすことになります。
急性期や慢性期の違いなく対応できる能力を求められる分野です。

こうした高い能力を身につけることで、その病院や地域における総合診療科のあるべき姿を自分で作り上げていくことが可能です。

総合診療医に転科するには?

医師としてのキャリアの目標点で、総合診療科や地域医療を目指す人にとっては、総合診療医は魅力的な資格に映るのではないでしょうか。
総合診療科が担う役割は、これまで多くの内科や循環器系のクリニックなどが負ってきたという側面があります。

しかし、こうした医療機関で経験を積むことで、地域の患者さんのプライマリケアができるようになるまでには多大な時間も必要となります。
総合診療医はその高い能力を身につけることで、病院や地域における総合診療科のあるべき姿を自分で作り上げていくことが可能になります。

これはデメリットで説明した「まだ前例が蓄積されていない」部分でもあります。
つまり、逆境を力に変えられる方には、デメリットがメリットになるのです。

まとめ(地域医療の構築をリードする総合診療科)

主に地域医療での活躍を期待される総合診療医は、幅広い知識やスキルが必要とされます。
総合専門医制度は、まだ始まったばかりの制度のため「キャリアプランが描きづらい」「診断のみで治療には関わらないのでは」といったイメージも先行しているのではないでしょうか。

しかし、本来総合診療科で働く総合診療医に求められるのは、地域医療の構築をリードする役割です。
開業を目指したり、地域医療への貢献を考えたりしている医師にとっては、実に有益な資格と言えるでしょう。

これから総合診療科で経験を積みたいという方や、総合診療医を目指したいという方は、転職や転科で実現する方法があります。
医師が転職や転科を考える場合、転職エージェント「メッドアイ」を利用することがおすすめです。
キャリアプランを決めていく過程でも、医師のさまざまな悩みに寄り添ってきた実績があるメッドアイに相談することは有益と言えます。
また、総合診療医の資格取得後に、より活躍ができる職場を探すのにも大きな助けになるでしょう。