医師不足や働き方改革など、医療業界における課題点はたくさんあります。
そんな中で働く場所を選ぶために、どういったポイントに気をつけるべきなのでしょうか。

「日本の医療における問題点と、それに伴う医師としての働き方への影響を知りたい」
「現代医療の問題点と、それに対し医師としてどう対応していくべきかを知りたい」

この記事では、日本の現代医療における問題点と、その解決に向けた取り組みについてご紹介します。
課題が多い医療業界で自分らしく働くために考えておくべきポイントの解説もしますので参考にしてください。

高齢化社会に伴い増える日本の現代医療の問題点

日本の医療が抱える問題を考える上で、まず認識しておくべきなのが、高齢化社会の到来による影響です。
「2025年問題」という言葉で表現される、日本社会の超高齢化が目の前に迫っている状態で、医療ニーズの急増が起こっています。

人口推移の問題は、医療業界だけが対策すれば良いというものではありません。
2025年問題とは、日本の人口の中で最も多くの比率がある団塊の世代(1947年〜1949年生まれの方)が、後期高齢者になる年を指したものです。
全人口の5分の1が75歳以上になるこの現象は、世界でも類がない状況と言えます。
医療業界や介護業界への影響は非常に高く、早急に対応すべき課題です。

現代医療における5つの問題点

医療業界で問題とされているポイントは、主に以下の5つです。

  • 医療費や保険料負担の増加
  • 医療従事者の不足
  • 医師に対する責任の増加
  • 医療体制の地域格差
  • 広く浅い医療体制

先に触れた高齢化によるニーズの増大と、若い世代の減少による医師不足が、医療体制の維持そのものを困難にしています。
ここからは5つの問題点について解説します。

1.医療費や保険料負担の増加

少子高齢化が進むことで、医療ニーズは増加します。
高齢者は体力が衰えたり、生活習慣病にかかりやすくなったりすることから、医療や介護をより多く必要とするケースが多いからです。

そして、医療ニーズが増大した結果、医療や薬にかかる費用の増加につながります。
日本では国民皆保険制度が採用されていますので、保険から捻出する医療費が大きくなることは、制度運営に支障をきたすのです。
若い世代では支払う保険料が増加していて、今後の安定運用も課題です。

2.医療従事者の不足

少子高齢化という言葉通り、日本では高齢者比率が上がり、若年層比率が低い状態です。
働き盛りの若い世代が足りない状況の中、医師の世界も人手不足が続いているのは周知の通りでしょう。
医師そのものの高齢化問題もあり、新たななり手も増やしていかなくてはなりません。

その一方で高齢化で医療ニーズは増しているため、需要に供給が追いつかない状況があります。
需給バランスが取れていない状況が長く続くことが予想され、人手不足から経営を断念する病院が増える懸念もあるのです。

3.医師に対する責任の増加

医師不足の状態でありながら、医療ニーズの増大により業務は増えているのが現状です。
当然医師一人当たりの負担は大きくなり、責任も問われる場面が多くなってきます。
さらに近年では医療訴訟も増えていて、訴えられるリスクが高い状況でもあるのです。

病院や医師の評判をSNSなどで身近に見たり、発信したりすることが普通になってきた昨今では、患者側も医療訴訟への心理的ハードルが下がっていると言えます。
医師の負担の増加によるミスや事故などのリスクの高さや、患者側の訴えやすさが相まって、医師が気を使わなくてはならない場面が多くなっていることも問題です。

4.医療体制の地域格差

医療体制の地域格差も大きな問題です。
医師の地域偏在は、新臨床研修制度の影響で、医局に所属せず研修を受ける医師が増えたことが背景にあります。
医局所属の医師が減ってしまうと、大学病院が地方の関連病院に医師を派遣することが難しくなり、結果として地方で医師不足が加速してしまうのです。

また、開業医も集患を考えて大都市圏に開業するケースが多く、これも地方に医師が流れない要因と言えるでしょう。
開業医が都市部に集中する一方で、地方では無医村ができてしまうといった状況が起こっているのです。

5.広く浅い医療体制

医療機関の病床数の多さも問題と言っていいでしょう。
本来の必要数や対応可能な病床数を上回ってしまうことで、医師の負担は増大します。
また、高齢化による入院の長期化や、高齢者が退院した後の地域包括ケアの不足など、いわゆる「出口問題」があることも課題です。

出口問題が解決しないと、入院期間の長期化も解消されず、医師の負担を減らすことができません。
長期入院患者は、高齢化の進行度合いを考えると、今後も増えていくことが予想されます。
結果として、医師は多数の患者を診ることで、自分の専門分野だけでなく、広く浅い対応を求められるのです。

現代医療3つの課題

現代医療の問題点を解決するためには、医療業界だけが対策すればいいというわけではありません。
しかし、医療業界が何もせずに手をこまねいていれば、ますます状況は悪化するだけです。
ここからは、医療業界からアプローチできる課題についてご紹介します。

1.個々への健康指導と管理

予防医療や生活習慣を通した健康指導が行き届けば、地域住民が健康に暮らせることになります。
そして、医師にかかる人の母数を減らす効果が期待できるでしょう。
医師がすでに多数の患者を受け持ち、激務をこなしている現状は仕方のないことです。

しかし、多忙な中でもできるだけ健康管理指導に力を入れたり、生活習慣病予防のための指導の機会を増やす工夫が必要です。
昨今は生活習慣病を抱える患者が増加しています。
これを減らすための抜本的な対策が取れれば、医療機関の負担は軽減できるでしょう。

2.在宅医療や地域福祉体制の充実化

高齢化により負担が増しているのは、医療だけでなく介護の業界も同様です。
高齢者が病気や怪我により生活サポートを必要としても、介護施設への入居待ちや、介護サービス利用の順番待ちをしなくてはなりません。

スムーズな介護サービスを受けるためには、介護業界だけが対策すればいいわけではありません。
医療側からも、在宅診療の充実化といったアプローチ方法があります。
地域福祉の体制を介護業界や行政と連携して充実させることで、医療機関の負担を減らす効果が期待できます。

3.介護と医療の連携

地域全体で健康管理のためのネットワークを充実させることができれば、医療と介護の連携もスムーズになります。
在宅医療の患者や介護施設に入居している方の、一時的な病院への入院もよくあることです。

こうした時の連携がスムーズに行えるようになれば、先にあげた地域全体の福祉体制の強化につながります。
医療業界や介護業界だけでなく、高齢者の介護が必要な家庭の負担も大きいものです。
地域や医療機関、介護施設、行政が連携したサービスをスムーズに展開できれば、こうした家族の負担も減らすことにつながります。

医療機関において今後必要となる取り組み

患者の増加による医療機関の負担増は、そこで働く医療者にとっても大きな負担です。
ましてや医師不足と言われている中で、少ない人員で現場を守るのが困難な現場も少なくありません。
医師に過重な負担を強いていることで、医師本人の健康に問題が生じることもあります。
そうした事態を少しでも解消するため、医療機関が取り組んでいくべき課題について解説します。

医療AIの導入について

医師が少ない地域でもスムーズな受診ができるオンライン診療や、医療機関同士の連携を助ける電子カルテのデータ連携など、ITやAIの導入を積極的に推進していく必要があります。

人が足りないのであれば、システムによるサポートで、医師の負担を軽くする工夫をするとよいでしょう。
医療だけでなく、予防医療としての健康管理アプリなどを患者に周知することも、医療機関の負担軽減に効果が期待できます。

働き方改革とのバランスについて

医師の時間外労働に制限がかかる「働き方改革」の施工が2024年4月と、後わずかなところまで迫っています。
しかし、人手が足りていない病院では、未だ十分な対策が取れていないところもあります。
医師の労働時間に制限がかかることで、今までできていた診療が回しきれなくなるケースもあり、一部診療科を縮小するといった動きもあるのです。

働き方改革を進めていく上で、患者の受け入れ態勢をどこまで維持できるかや、人手が足りない現場でどう実現するかは大きな課題です。
地域の医療ニーズと、医師や看護師の人員数のバランスをとった対策が必要です。

医師として働く上で考えたいこと

医師が仕事を続けていく上で考えるべきポイントは、キャリアプランに基づいた仕事ができるかどうかです。
そして、どうすれば理想のキャリア形成ができるのかを考える時、働き方が適しているかは重要なポイントだと言えます。
ここからは、医療業界の課題や問題点と向き合いながら働く医師が、考慮しておきたいポイントについてご紹介します。

1.どの地域で働くか

どの地域で働くかについては、人それぞれの事情もあり、キャリアプランだけで決められないケースもありますが、選べる範囲で慎重に選びたいものです。

一般的に人手不足に悩む地方で働くと、受け持ち患者数が多くなり激務になるという印象があります。
しかし、都市部で働いたとしても、人口の母数が多いため、一概に負担が軽くなるとは言いきれません。
この後で触れるワークライフバランスと、求める仕事内容を考慮しながら、働く地域を選ぶことが大切です。

2.どこの医療機関で働くか

医師数が不足している医療機関では、医師を確保するために好条件の求人を出しているケースをよく見かけます。
過酷な労働になることを受け入れて、こうした条件を享受するのも1つの選択肢です。

また、同じ人手不足でも、IT導入を進めている病院もあり、できる限り医師の負担軽減に努めている姿勢が見えるケースもあります。
地域だけでなく、どの病院で働くかについても、慎重な検討が必要です。
働きやすいか、望んでいる経験が積める場所か、設備はどうかといった情報をより多く知ることで、判断しやすくなります。

3.自分の価値観と労働環境のバランス

自分自身が「何に重きを置いて働くのか」を明確化することも大切です。
若い世代の意思でしたら、多少忙しくても経験をより多く積める働き方を望むでしょう。

逆に家庭やプライベートを重視したワークライフバランスを望む方もいると思います。
自分が望んだペースで仕事ができるかどうかは、モチベーションの維持にも大きく関わるため、決して無視できない要素です。
どこの医療機関で働くのかを考える際に、必ず検討すべきでしょう。

働き方に悩んだら転職の検討も視野に

今の働き方が自分に合っているか、これからも働き続けられるかは、時折考えておく癖をつけることがおすすめです。
キャリア形成が順調にできているかを知り、その上で無理なく働けているかどうかを定期的に振り返ることで、今後のモチベーションも維持しやすくなります。
もし無理がある働き方をしていたり、今の職場で思ったような経験が積めていないと思ったりしたら、転職を考えるのも1つの方法です。

医師が転職活動をするのは、忙しい仕事の中で大量の情報収集をすることになり、かなりの労力が必要になります。
しかし、医師の転職に特化したエージェントに相談すれば、その労力がかなり軽減できます。

メッドアイでは、医師一人ひとりの悩みや希望に寄り添いながら、非公開情報を含む豊富な求人の中から最適なものをマッチングすることが可能です。
また、今すぐ転職という段階でなくても、キャリアプランのご相談から無料でお受けしています。
今後の働き方を考えたいと思ったら、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ(現代医療の問題点と課題とは?)

現代医療の課題は、医療業界だけが対応すれば良いという底の浅いものではありません。
しかし、何もせずにいては、社会の高齢化の加速によって、より苦しい状況に陥るだけです。
苦しい状況である医療業界に身を置く医師は、その苦境の中で自分を守ることも考える必要があります。
今の働き方でいいのか、このまま激務を続けて体力が保てるのか、という心配をしている方も少なくないでしょう。

勤務医として働き続けるのであれば、より良い環境に身を置けるよう、転職を考えるのも選択肢の1つです。
豊富なノウハウが提供できる転職エージェント「メッドアイ」に相談することで、今後の道が開きやすくなるでしょう。