「2040年問題」とは、2040年には日本の人口における高齢者の割合がピークになる一方で、医療や介護の担い手が急減する問題のことです。生産年齢人口は減少し、社会保障や経済に大きな影響を与える恐れがあります。
このような少子高齢化がもたらす人口構成の変化は、大きな社会問題となっています。

「2040年問題における医療現場の課題について知りたい」
「2040年問題に対する医師の役割や考えておくべきことについて知りたい」

この記事では、2040年問題についてクローズアップし、医療現場への影響や、とりうる対策について解説します。
2040年問題に向けて、医師個人ができることや考え方についてもご紹介しますので参考にしてください。

2040年問題とは

2040年問題とは、医療業界だけの問題ではなく、社会全体に影響を与える問題です。
少子高齢化が引き起こす問題点には、労働力の不足や財源不足などが挙げられます。
これに加えて既存の社会インフラの老朽化も深刻になると考えられるのが2040年ごろとされています。
2040年に予測される人口比データを以下にまとめました。

世代推計人口割合
総人口1億1,283万人
0〜14歳1,141万人10.1%
15〜64歳6,213万人55.1%
65歳以上3,928万人34.8%

(参照:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」

2040年には生産年齢と呼ばれる15歳〜64歳の人口割合が約半数になってしまうことで、労働力が大幅に不足すると予測されています。
また、高齢者数が4割近くに上り、福祉や医療といった社会保障にかかる費用がますます増加することも明らかです。
さらにその先の次世代を担う若年層の割合が1割程度と極端に少なく、2040年問題をクリアしても、将来への持続が難しいと考えられています。

2025年問題との違い

2025年は、いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる1949年までに生まれた世代が後期高齢者になるタイミングです。高齢者の割合が3割ほどに達することで、増加する社会保障費が問題の焦点となっています。

問題の本質は2040年と同じですが、2025年問題の場合に論じられるのは、目の前の不足している社会保障費を補うための財源です。

一方、2040年問題では、人口構造の大きな変化に伴い、現在の社会保障制度そのものの維持が難しくなるという違いがあります。
社会保障面だけでなく、現在の社会インフラの老朽化や、労働者不足によるその持続の難しさも課題です。

2040年問題が医療現場に与える3つの影響

2040年問題が医療現場に与える影響も、決して少なくありません。
増加した高齢者に必要な社会保障のうちでも、医療の提供は大きな割合を占めるからです。
ここからは、2040年問題と医療現場の関係を、3つの視点から解説します。

1.医療費が増大する

高齢化社会の到来がもたらす医療ニーズの増加は、そのまま医療費の増加を招きます。
内閣府や財務省、厚生労働省などが協業で立てている見通しでは、予想される増加の度合いは以下の通りです。

年度医療費見通し(過去分は実績)対GDP比率
2018年度39.2兆円7.0%
2025年度48.7兆円7.5%
2040年度68.3兆円8.6%

(内閣府「2040年を見据えた社会保障費の将来見通し(議論の素材)」を参考に作成)

2018年度から2025年度までの伸び率が約1.24倍なのに対し、2025年度から2040年度の伸び率は約1.4倍と加速していることがわかります。
医療費が急増することで財源が圧迫され、結果として社会保障制度に対する国民一人ひとりの負担も増加することになるのは自明の理です。
こちらも試算がなされていて、まとめると以下の通りです。

年度保険料見通し(過去分は実績)
2018年度70.2兆円
2025年度81.3〜81.6兆円
2040年度106.3〜107.3兆円

(内閣府「2040年を見据えた社会保障費の将来見通し(議論の素材)」を参考に作成)

保険負担額は2018年〜2025年度の増加率が約1.15倍、2025年〜2040年度については約1.3倍となっています。
2040年問題では、高齢者の増加だけでなく、人口構成における現役世代の割合の減少も問題になる要因がここにあります。

2.医師一人当たりの患者数が増加する

医療ニーズが増加すれば、費用の問題だけでなく、人手の問題も出てきます。
厚生労働省が発表している労働白書では、2040年には就業人口の5人に1人が医療や福祉サービスの分野で働くことが必要とされるという予測も出ています。
高齢化社会の到来は、単に高齢者の数が増えるだけでなく、医療技術発展による寿命の延伸も考えられます。
今でもすでに医師不足が叫ばれている医療業界では、医師の増加に向けた取り組みも行われています。

しかし、2040年問題を迎える頃には、そもそもの就業人口が減っていることからも、なり手の確保が引き続き課題となるのは避けられません。
高齢者数増加のスピードには対応できていないと見る向きもあり、医師一人当たりが受け持つ患者数が増えることは避けられないでしょう。

3.適切な医療を受けられない可能性がある

医療費の増加、保険料の負担増加、医師不足といった要素が組み合わさることで考えられるのが、医療サービスの提供が行き届かなくなるという事態です。
地域に医師がいない、病院が通える範囲にないといった事情で医療を受けられない人が出てくる可能性があります。

また、金銭面の不安から医療を受けられない人が出てくるというケースも想定できます。
2040年問題やその後のさらなる高齢化や人口減少は、現在の社会保障制度そのものの維持を危ぶむ状況を招く恐れがあると考えるべきです。

2040年問題に向けた3つの対策

社会全体の問題となる2040年の到来を見据え、国や行政でも対策を検討し始めている状態です。
ここからは、社会全体で必要とされる2040年問題に向けた対策をご紹介します。

1.生産性の向上と体制の見直しをする

2040年問題のさまざまなリスクの中で、医療や介護の分野への影響は大きなウエイトを占めると言われています。
人手不足や医療費の増加による負担だけでなく、都市部に医師が集中してしまう医師偏在にも対策が必要です。
高齢者が自宅で医療を受けられる在宅医療や、健康的に暮らすための地域包括ケアシステムの推進が進められています。
高齢化が進むと必要度が増してくるため、回復期医療や慢性期医療への対応も重要です。
需要に合わせた分野への増強や、各現場の生産性を上げるための体制の見直しも検討されています。

2.医療ITの導入やDXを推進する

働く世代の減少がもたらす人手不足を補うため、デジタル化やICT化はさまざまな職種で欠かせない対策の1つです。
こうした対策をデジタルトランスフォーメーション(DX)と言い、AIの活用やIoT導入などで生産現場の効率を上げるとともに、少ない人材でも円滑に運用できる仕組みづくりが進められています。
医療の現場も同様で、電子カルテのフォーマット化による医療情報の共有や医療機関同士のシームレスな連携を目指しているのは周知の通りです。
その他、オンライン診療やお薬手帳アプリなど、医療を受ける側の利便性も高めるデジタル技術の活用も進められています。

3.女性や高齢者などの潜在労働力を活用する

2040年問題で重要な鍵となる労働力不足についての対策も、潜在労働人口を上げることで緩和ができると期待されています。
結婚や出産を機に第一線を退いた女性の現場復帰や、定年を迎えた方の延長雇用の仕組みを整えることで、働き手を増やしていこうという考え方です。
実現のためには、子育て中の方が働きやすい環境を作ったり、シニアの方が自分のペースを守って働けるような職場作りが求められています。
実際に、一般的な定年年齢である60〜65歳を超えても、仕事を続けたいと考えている方は少なくないのではないでしょうか。
国や行政による制度作りも大切ですが、各病院がそうした人材も活用していけるような職場を作っていくことが重要になってきます。

2040年問題に向けて医師ができること

ここからは、2040年問題に向け、医師一人ひとりができることについてご紹介します。

1.プライマリケアや医療ITのスキルを身につける

高齢化や医師不足といった、現時点での医療業界の問題点は、2040年問題を経てさらに悪化すると考えておくべきでしょう。
そういった事態に対応するためには、医師一人ひとりが、幅広い対応ができるスキルを磨いておくことが大切です。
自分の専門分野だけでなく、地域の高齢者に対応できるプライマリケア認定医や、在宅医療専門医といった資格の取得を目指すのもおすすめです。

また、各病院で今後進んでいくと思われるIT化にスムーズに対応できるスキルも磨いておくと、どんな職場でもすぐに戦力になれるでしょう。

2.適切な役割分担を行う

医師一人だけでは難しいことかもしれませんが、職場全体で適切な役割分担を進めることも、少ない人数で現場を回す効率化につながります。
医師には何かと雑務も多くなりがちですが、看護師や理学療法士、技師といったスタッフにその役割を委譲することで、医師の負担を軽くできます。
医師の負担が減れば、より多くの患者に時間を使え、結果として医療サービスの提供スピードを早める効果が期待できます。

ただし、忙しく人手が足りないのは医師に限ったことではありません。
周囲のコメディカルスタッフも同様に、人手が足りずに負荷が増しているケースも少なくないため、バランスが取れた分担をすることが大切です。

3.予防医療の積極的な推進を行う

2040年問題で増えていくことが確実な高齢者の患者を、今のままの医療リソースで対応するのは難しいことです。
しかし、高齢者が増えても患者を増やさないという考え方を実践することで、医療現場の負荷増大を抑えることができます。
そのために必要なのが、予防医療や健康指導です。
地域包括ケアシステムと連携し、地域住民の健康維持を図る活動に力を入れ、健康寿命を伸ばすことができれば、急激な負担増加につながりにくくなることが期待できます。
こちらも医師一人で完結する対策ではありませんが、そうした場に積極的に関わっていけるよう、知識やスキルを磨いておくといいでしょう。

働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう

今の職場での働き方に悩んでいたり、2040年問題を見据えたスキルアップを考えたりする医師の中には、転職が必要になってくるケースもあるかもしれません。
しかし、毎日忙しい中で、転職活動や転職に必要な情報収集をするのはハードルが高いと感じる方もいるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、転職エージェントの利用です。
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まとめ(医療における2040年問題とは?)

高齢者の増加と現役世代の減少という2つの危機を孕んでいる2040年問題は、社会全体に大きな影響を与えることが危惧されています。
高齢者が増え、加齢に伴って衰える体を支えるために、医療サービスの需要は増加し、医療従事者の負担は大きく増えていくことが考えられます。

医師一人の力でどうにかできる問題ではありませんが、どんな状況にも対応できるようにスキルを磨いておくことが重要となってくるでしょう。
今の専門領域以外のスキルを得るために、場合によっては転職を考えるケースも出てくるかもしれません。
転職を考える場合は、転職によってどのようなキャリアを積んでいきたいのかを明確にすることが大切です。
そしてそのビジョンをプロである転職エージェントと共有し、ビジョンに合った転職先を見つけることが成功の秘訣となります。
転職を考え始めたら、まずは医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談することから始めてください。