慢性的な医師不足や、高齢化による医療ニーズの増加など、医療業界を取り囲む課題は数多くあります。
地域住民の健康を維持し、適切な医療サービスを提供するための地域医療体制構築にもさまざまな課題があるのです。

「地域医療に関する問題点を知りたい」
「地域医療の問題点と、それを解決するにあたっての医師の役割を知りたい」

この記事では、地域医療における問題点や、それに対する取り組みについてご紹介します。
また、地域医療の現場で働く医師に求められる役割についても解説しますので、地域医療で働きたいと考えている方は参考にしてください。

地域医療とは

はじめに、地域医療の定義について改めてご紹介します。
元々、地域医療は田舎や過疎化が進んでいる地方で働くというイメージがある言葉ですが、現在の定義とは少し異なっているのです。
2014年に医療介護総合確保推進法という法律の施行を受け、各自治体がそれぞれの地域で包括的に地域住民の健康を維持できるよう「地域医療構想」を策定しました。

地域包括ケアシステムと医療提供体制を通じ、地域内(二次医療圏)の医療と介護を確保すべく、医療機関の役割分担や連携を整備しています。
医療機関側が自院の病棟の機能を行政に申告することで、適切な入院が受け入れられるようになり、病院業務の効率を上げることが目的です。
また、健康指導や生活支援など、医療機関以外の団体も連携し、健康に暮らしていける地域づくりを目指しています。

地域医療における5つの問題点

地域住民や医療業界にとってスムーズな医療提供ができ、健康維持にもつながる地域医療の構築は理想の形と言えます。
しかし、その実現にはさまざまな課題があり、適切に機能できているかというと難しい面もあるのです。
ここからは、地域医療における問題点について、5つのポイントに分けて解説します。

1.地域により医療格差があること

都市部には多くの医療機関があり、そこで暮らす住民は必要に応じて医療を受けることができます。
しかし地方では病院が少ない地域もあり、中には大きな病院がないため、専門的な治療が受けられないケースも見られるのです。
さらに、地方で交通の便が悪いところだと、通院の負担も大きくなり、高齢者が自力で通院することが難しいといった事情も出てきます。

また、都心に隣接するベッドタウンでは、医師が都心に通勤してしまうため、利便性が高い地域でも医師の数が不足しがちです。
こうした地域ごとの医療格差があることから、すべての地域で満足な地域医療体制が構築できていない状況があります。

2.慢性的な医師不足であること

医師不足が叫ばれて久しいですが、実は日本の医師数は、世界的に見ても少なめだと言えます。
日医総研が発表しているレポートによれば、日本の人口1,000人あたりの医師数は2.4人です。

経済協力開発機構(OECD)平均では3.5人なので、かなり低めであることがわかります。
さらに、前項でご紹介した地域格差があることから、医師不足の地域ではさらに少ない状況になっているところもあるでしょう。
厚生労働省の調査では、医師数はここ20年で微増はしていますが、OECD平均に近づく見通しは2030年以降になるとも言われています。

3.診療科の医師数に偏りがあること

医師数の偏りは、地域差だけではありません。
診療科によっても医師数にムラがあることが問題です。
小児科や産科、麻酔科など医師数が足りていないと言われる診療科があります。

特に産科と小児外科は厚生労働省の調査でも医師数が少ないことがわかっています。
しかし、少子化を食い止めるためにも、子育てがしやすい地域となるよう、拡充を望まずにはいられません。

4.医療機関により業務負担の差が大きいこと

地域中核病院や二次救急医療機関など、一部の医療機関に過重な業務負担が発生するケースもあります。
救急医療の分野では、受け入れが集中する病院とそうでない病院の二極化も起こっていて、働く医療機関によっては医師の負担が大きくなってしまうのです。

地域医療体制を構築することで、こうしたムラを解消することが喫緊の課題です。
しかしながら、元々の医療機関の数が少ない地域では、負荷の大きい病院の負荷部分を振り分ける先が足りないケースも見られます。

5.地域医療連携がスムーズに行えていないこと

人手不足で地域医療に関わる病院や企業の間でうまく連携が取れないといった問題もあります。

また、共通のフォーマットで情報共有するための仕組みがスムーズに導入できていないケースも聞かれますし、医師や病院スタッフのITリテラシーが追いつかないという場面もあるようです。
診療所など規模の小さい機関では、資金面でもこうした情報システムの導入が難しいと感じているところがあります。

地域医療の問題点を解決するための主な取り組み

地域医療体制を構築するにあたって発生するさまざまな問題に対しては、国や自治体でも対応を進めています。
ここからは、地域医療の問題点を解決するために行われている取り組みをご紹介します。

1.医学部の定員数の増加

慢性的な医師不足の解消を目指し、医学部の暫定的な定員増が決定されたのが2008年のことでした。
その際に、元々あった地域枠(卒業後に特定の地域や診療科で診療を行うことを条件とした選抜枠)を増やすことで、医師専門を防ぐ狙いも兼ねています。
今後についてはさらなる検討を行うことになっていますが、2022年時点では、都道府県と大学が連携した「地域枠」と「地元出身枠」で医学生確保を進めています。

2.医療ITシステムの導入

医療業界のIT化も急務となっていて、病院や自治体で取り組みが進んでいます。
電子カルテ導入をはじめとして、新型コロナウイルス感染症をきっかけに注目が集まったオンライン診療や、他の医療機関との情報共有を図るためのシステム導入などが知られています。
これらの取り組みは、機能分化と各機関の連携という、地域医療体制構築に欠かせない要素をカバーできるものとして、期待が集まっているのです。

3.地方勤務の医師の報酬の増加

医学部定員を増やしても、医師の地域や診療科による偏在が解消したとは言えない状態です。
そこで、厚生労働省は医師が少ない地域での勤務を促すべく、インセンティブ制度の導入を各自治体に呼びかけていました。
自治体が進める医師確保計画の中で、一定期間以上その地域で勤務する医師に対して認定制度を設け、それに応じてインセンティブを設定しています。

しかし、すべての医師不足の地域で導入が進んでいるわけではなく、病院が独自に高い給与を設定して求人しているところも少なくありません。

地域医療における医師の3つの役割

地域医療の現場で働いてみたいと考える医師は意外と多くいます。
厚生労働省の調査によれば、40%以上の医師が地方勤務を希望するという結果でした。

そこで、地方での勤務や地域医療に携わる医師に求められる役割とはどのようなものなのかをご紹介します。

1.適切な治療と信頼関係を構築する

医師として必要な心構えは、基本的にどこで働いていても変わりません。
常に最新分野の情報を知って研究しながら、知見を広めて治療に役立てる努力が必要です。

そして、地域医療では患者に深く関わり合うことが多くなります。
その地域に住む多くの人から信頼される医師となっていくために、一人ひとりの患者とのコミュニケーションが重要です。
人の悩みに寄り添い、困った時には相談しやすい存在であることを目指す気持ちを持って職務に向き合いましょう。

2.予防医療と健康増進の指導をする

地域医療の現場では、患者と医師の関係性が強くなる傾向があります。
その背景にあるのが、病気の治療だけでなく健康維持の支えにもなる役割です。
前項でも触れましたが、患者と信頼関係をしっかり築くことで、健康指導やアドバイスもしやすくなります。
目の前の症状に向き合うだけでなく、日頃の健診や診察を通して知ったことを活かして、生活習慣の改善指導を行うことも必要です。

地域医療が目指すのは「健康的な生活ができ、必要なときに医療がスムーズに受けられる」状態です。
そのためには、日頃の健康維持が重要であり、医師も積極的に関わっていくことを求められます。

3.地域医療連携を強化する

地域医療のもう1つの重要なポイントは、各機関との連携です。
治療においては診療所から中核病院への連携があり、健康指導や生活習慣の改善には地域包括ケアを担う団体や行政とも連携します。

また、スポーツジムや地域活動団体など、医療業界以外の団体とも必要に応じて連携することがあり、視野を広く持つことが必要です。
介護業界とも密接な関わり合いを持って働くケースが多く、各機関や団体との情報連携も重要になってきます。
地域にそうした統一システムを導入する際には、積極的に検討に参加していくことが重要です。

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地域医療の現場で働くことを目指すとなると、前提として転職が必要になってきます。
医師の転職では、収集すべき情報が多くなりますし、忙しく時間がないという方も少なくないでしょう。
自分一人で転職活動を行うのは難しいと感じる人も多いと思います。
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地方勤務をしてみたいと思ったら、まずはその希望理由や目指す姿などを相談するところから始めてみてください。

まとめ(地域医療の問題点と課題への取り組みとは?)

医師不足の地域では、医師一人当たりの業務負担が多く、過重労働を強いられるケースも聞かれます。
そして、そうした状況を解消するために働き方改革が進められているものの、人手不足でうまくいっていないという負の連鎖も見られることです。
それは地域医療の現場でも同じことで、課題はまだまだたくさんあります。
しかし、その必要性ややりがいを思い、地方勤務を希望する医師が多いことは一筋の光だと言えるでしょう。

医師が少ない地域に医師が増えることで、1つ1つ課題を解決する道筋となり、地域医療体制の構築が少しずつでも前進すれば、そこに携わる医師にとっても達成感を感じ入られます。
地域医療に携わってみたいと思ったら、転職エージェントの無料相談を活用して、どんな働き方があるのかを知るところから始めてみてください。