医師不足には明確な地域格差があり、都道府県によって医師数には約1.8倍の差があります。
つまり、日本では「医師が足りている地域」と「深刻に不足している地域」がはっきり分かれているのが現状です。
「医師不足に地域格差はあるのか、現状を知りたい」
「医師不足の地域格差により、労働環境や待遇にも差が生まれるのか知りたい」
この記事では、医師不足の地域格差についての現状や、どうして地域格差が起こるのかについて解説していきます。
また、医師が働いていく上で、地域の特色に応じたキャリア形成はどのようにしていくべきかについてもご紹介しますので参考にしてください。
医師不足の地域格差の現状
はじめに、医師の不足具合の地域差についてご紹介します。
結論から言うと、日本の医師不足には明確な地域格差があり、都道府県によって医師数に大きな差があります。
最新データでは、人口10万人あたりの医師数は最多の地域と最少の地域で約1.8倍の開きがあり、地域によって医療体制に大きな違いが生じているのが現状です。
ここでは、最新の統計データをもとに、医師数の多い都道府県と少ない都道府県をランキング形式で紹介します。
<医師数の多い都道府県ランキング>
| 順位 | 都道府県 | 人口10万人あたり医師数 |
|---|---|---|
| – | 全国平均 | 267.4人 |
| 1位 | 徳島県 | 345.4人 |
| 2位 | 長崎県 | 333.8人 |
| 3位 | 京都府 | 333.2人 |
| 4位 | 和歌山県 | 327.7人 |
| 5位 | 高知県 | 325.2人 |
<医師数の少ない都道府県ランキング>
| 順位 | 都道府県 | 人口10万人あたり医師数 |
|---|---|---|
| – | 全国平均 | 267.4人 |
| 1位 | 埼玉県 | 189.1人 |
| 2位 | 茨城県 | 198.1人 |
| 3位 | 千葉県 | 213.3人 |
| 4位 | 新潟県 | 222.2人 |
| 5位 | 岩手県 | 223.8人 |
(厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」を参考に作成)
10万人あたり医師数が少ない都道府県に関東地方の3県が入っていますが、これは、通勤で都内に行くケースが多いことが考えられます。
また、医師数が324.1人と多い東京都でも、23区だけの統計では371.1人と高くなるのに対し、八王子市では195.7人とかなり低く、各都道府県内でもムラがある状態です。
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医師不足の地域格差が起きる3つの主な要因
医師数が地域によって偏ってしまうのはなぜなのでしょうか。
その原因となる要素はいくつかあり、複数の要因が絡み合っていることもあり若干複雑です。
ここでは、主な3つの要因について解説します。
1.医師が都市部に集中している
医師は、症例数が多く設備の整った医療機関や、専門性を高めやすい環境を求める傾向があります。
そのため、研修先や就職先として都市部を選ぶ医師が多く、結果として地方から都市部へ医師が流出しやすくなっています。生活利便性や教育環境なども影響し、都市部志向は強まる傾向にあります。
また近年では、美容医療など自由診療分野を選択する医師が増えている点も、都市部への集中を強める要因の1つとされています。
美容外科や美容皮膚科は都市部に需要が集中しやすく、勤務条件や報酬面で魅力があるため、若手医師を中心に選択されるケースが増えています。
その結果、本来は地域医療を担う可能性のあった医師が都市部にとどまる傾向が強まり、地方との医師数の差が広がる一因となっています。
2.地方に医師を供給する仕組みが機能しにくくなっている
地方の医療機関では、医師を安定的に確保する仕組みが弱くなっており、人材が補充されにくい状況が続いています。
その背景の1つが、大学医局による医師派遣機能の変化です。かつては大学医局が中心となり、関連病院へ医師を派遣することで地域間のバランスが保たれていました。
しかし、2004年に始まった新臨床研修制度の影響により、都市部の民間病院で研修を受ける医師が増加し、医局に所属する医師は減少傾向となりました。その結果、医局から地方へ派遣される医師数も減少しています。
医局制度が機能していた時期には、全国に点在する大学病院を拠点に医師が各地域へ分配されていたため、現在ほど大きな地域格差は生じにくい構造でした。
また、医局員が関連病院に派遣されることで、同一都道府県内の医師数の偏りも一定程度抑えられていました。
さらに、近年は診療所の開設者・代表者(開業医)の割合も減少傾向にあり、2024年時点では20.1%となっています。
新たに医療機関を開設する動きも限定的であるため、地方における医療資源が増えにくく、医師不足が解消されにくい要因の1つとなっています。
| 調査年 | 医療施設に従事する医師総数 | 診療所の開設者または代表者数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2014年 | 296,845人 | 72,074人 | 24.3% |
| 2016年 | 304,759人 | 71,888人 | 23.6% |
| 2018年 | 311,963人 | 71,709人 | 23.0% |
| 2020年 | 323,700人 | 72,586人 | 22.4% |
| 2022年 | 327,444人 | 70,360人 | 20.5% |
| 2024年 | 331,092人 | 70,046人 | 20.1% |
(厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」を参考に作成) あわせて読みたい
3.地域と診療科の“需要と供給がズレている
地域によって人口構成や医療ニーズは大きく異なります。特に高齢化が進む地域では、慢性疾患や在宅医療のニーズが高まる一方で、それに対応できる医師が十分に確保されていないケースが多く見られます。
このように、必要とされる医療と実際の医師配置との間にズレが生じていることが、地域格差の一因となっています。
また、診療科ごとの医師数の偏りも、このミスマッチを拡大させる要因です。
外科や産婦人科、救急医療などは業務負担や訴訟リスクの高さから敬遠されやすく、慢性的な人手不足に陥りやすい傾向があります。
一方で、比較的働き方の自由度が高い診療科や美容医療などの自由診療分野に医師が集中する動きも見られます。
その結果、地域によっては特定の診療科の医師が不足し、必要な医療サービスが十分に提供できない状況が生じています。 あわせて読みたい
このような診療科間の偏在と地域ごとの医療ニーズのズレが重なることで、医療の地域格差はさらに拡大しやすくなっています。 
医師不足の地域格差をなくすための厚生労働省の取り組み
地域による医師数の偏りは、人が健康的に過ごすために必要な医療が行き届かないリスクを引き起こします。
そして、それだけではなく医師の働き方にも無理な長時間労働を招くなどの弊害があります
1.独自の医師偏在指標を導入する
2018年の医師法改正で導入されたのが、「医師偏在指標」です。
元々は2036年に向けて医師偏在の解消を目指すために設けられた指標で、人口10万人あたりの医師数と医療ニーズや将来の人口構成の変化など5つの要素を加味した数値となっています。
また、産科と小児科についてはそれぞれ分娩件数や年少者人口を加味した医師偏在指標を算定していて、都道府県別のほか、二次医療圏別に指標値が公表されています。
さらに、診療所の医師数偏在を見るための外来医師偏在指標も設けられました。
これにより、医師偏在の実態を数値化して可視化することができるようになりましたが、その対策についてはまだ議論が繰り返されている最中です。
対策の内容については次の項で詳しく見ていきます。
2.医師が少ない地域での勤務のインセンティブを導入する
各都道府県においては、医師法に基づいた医師確保計画を、厚生労働省のガイドラインに沿って作成しています。
この策定においても、先に挙げた医師偏在指標を使って偏在状況を把握した上で進めるようにとされているのです。
この中で、医師数が少ない地域に一定期間以上勤務する医師に対する認定制度を設け、それに応じたインセンティブが設定されています。 あわせて読みたい
対象医師の認定は厚生労働大臣によって行われ、その医師が地域医療支援病院や医師が少ない地域で診療する際の支援を行うという内容です。
また、医師派遣に応じる医療機関へのインセンティブも設けることで、医師偏在の是正につながるよう取り組みが進んでいます。
3.時間外労働を制限する
2024問題と呼ばれることもある、いわゆる「医師の働き方改革」も、医師偏在是正の取り組みの一環として期待されています。
これは、医師の時間外労働時間に上限を設ける規制で、原則として月間45時間以下です。
さらに、連続勤務時間を28時間までに制限し、勤務間のインターバルに9時間確保するなどの規制がかかってきます。
実現のためには、医療機関自体の努力が不可欠で、現場で医師が不足している医療機関にはハードルが高い条件となってしまっています。 あわせて読みたい
医師一人ひとりの労働条件の改善は確かに待ったなしの問題です。
しかし、これが偏在是正につながるかどうかはまた別の問題だという声も少なくありません。
4.キャリア形成プログラムを推進する
医師数の少ない地域でもキャリア形成ができるようにする「キャリア形成プログラム」も、各都道府県で進められている施策です。
都道府県ごとに異なるポイントもありますが、大筋としては、初期臨床研修修了後の7年間を専門医資格を目指しながら対象地域に勤務する仕組みです。自治体側で医師不足が起こっている地域に医師を派遣できるようにします。
プログラムを利用する医師は、あらかじめキャリアプランを共有した上で、自治体側から提示されるプログラムの中から理想に近いものを選択するスタイルとなっています。 あわせて読みたい
希望する診療科の専攻医取得もできるため、地域を離れずにキャリア形成ができるシステムです。
プログラムを満了することで、医大の修学資金の返済が免除になる特典もあります。
医師不足の地域格差を踏まえた上でのキャリア形成
医師がキャリアを積んでいくにあたって、勤務先選びはとても重要です。
どの診療科で働くか、そしてどの地域で働くかによって、最適な職場は変わってきます。
医師偏在がある中で、どのようにキャリア形成をしていけばいいのかも、慎重に考えておきたいポイントです。
ここからは、医師のキャリア形成を考える上で、医師不足の地域格差をどのように考えるべきかをご紹介します。
1.自身の働く地域をよく見極める
自分が住んでいたり働こうとしていたりする地域で、医師が不足しているかどうかは事前に知っておいたほうがいいでしょう。 あわせて読みたい
地域のニーズによって医師数が多い診療科や少ない診療科は変わってきます。
地域のニーズと現状をしっかり把握し、もしも医師が少ない地域であるならば、勤務条件や労働環境をできるだけ把握した上で勤務先を探すのがおすすめです。
ニーズがあっても医師数が多いと給与があまり高くなかったり、医師数が少ないことで収入は良くても勤務条件がハードだったりします。
キャリアプランを築いていくために必要な環境があるかどうかという点と合わせて、地域の特色をチェックすることで、スムーズにキャリア形成を進める助けとなります。
2.人手不足に対する対策がなされているかよく調べる
自分が希望する研修先や勤務先で人手が不足しているという場合は、それに対するフォロー体制があるかどうかを知っておくと安心です。 あわせて読みたい
長時間勤務はどうしても発生するがその分収入がいいとか、ハードな環境だけど教育体制だけはしっかりしているなど、なにかしらフォローになるポイントがあれば、頑張りがいも出てきます。
収入アップを目指していて、ハードワークには耐えられる自信があるのであれば、医師不足に悩んでいる職場を選ぶことでチャンスを生むきっかけになるかもしれません。
職場側からは歓迎されますし、さまざまな経験を積む機会にも恵まれる可能性があります。
3.自身のワークライフバランスから考える
ワークライフバランスを重要視したいのであれば、希望する職場の医師数は把握しておきましょう。 あわせて読みたい
地域格差が出ているとわかっているのであれば、その中でも働きやすい診療科に転科することを視野に入れるのもいいでしょう。
診療科は変えずにキャリアを積んでいきたいのであれば、地域格差のデメリットを受けない場所にある医療機関への転職を考える方法もあります。
医師偏在の状況は数値データである程度把握はできますが、具体的なその土地の医師のリソース状況は、転職エージェントなどを頼ることで把握することができます。
医師専門の転職エージェントなら「メッドアイ」
地域格差や医師不足を感じながら働いている方の中には、転職を考えているという方もいるのではないでしょうか。
医師が転職をする場合、求人情報を見ただけではわからない部分も情報収集しておいたほうが失敗が少なくなります。
職場やその地域の医師数が十分かどうかや、たとえ少なくても無理なく仕事を回していく仕組みがあるかどうかなどは、なかなか調べるのも大変です。
働きやすい職場や、望んだキャリア形成ができる職場を探すためには、転職エージェントの力を借りることがおすすめです。
メッドアイでは、医師専門の転職エージェントとしてのノウハウを活かして、医師一人ひとりの希望や悩みに寄り添ったマッチングをしています。
さらに、一般に公開されていない非公開求人も豊富ですし、各医療機関の情報にも精通しているので、希望に合った転職先を紹介することが可能です。
キャリアプランのご相談なども無料で気軽に受けていただけます。
まとめ(医師不足に地域格差はある)
医師不足や医師の長時間労働など、医師が置かれた環境の厳しさには、実はムラがあるということがおわかりいただけたかと思います。
地域による医師偏在や、診療科による医師数の偏りは、医療を受ける側にも影響を及ぼしますが、働く医師にとっても重要な問題です。
自分自身が医師として何を重要視して働くのかにもよりますが、働きやすい環境を求めるのであれば、地域格差の問題はチェックしておくべきでしょう。
逆に、医師の少ない地域で貢献したいと考えている方の場合も、どの地域のどの診療科に医師が不足しているのかをキャッチアップしないとなりません。
医師が理想の職場で働くためには、自分のキャリアプランや重要視している要素を明確にし、その希望を叶える職場を探すことが大切です。
転職エージェント「メッドアイ」に丸ごと相談することで、より良い職場を探してみるのはいかがでしょうか。




















