医療業界にとって医師数の慢性的な不足が課題となって久しいです。
特に都市部に医師が集中してしまい、地方での医師不足が深刻な問題と言えるでしょう。
このため、高待遇の求人で医師を募集する医療機関は少なくありません。
では、そもそもどうして医師が不足しているのでしょうか。

「なぜ地方では医者が不足しているのか?」
「地方の病院で働いた場合の年収は?」
「移住して田舎の病院で働くメリット・デメリットは?」

この記事では、地方で働くメリットやデメリットを転職エージェントの視点から解説します。
UターンやIターン転職に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

医師が地方で働く3つのメリット

近年、UターンやIターン転職に興味を持つという声も聞かれます。
医師が地方で働く場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まずは地方勤務のメリットをご紹介します。

都会よりも年収アップが期待できる

「医師は高収入」とよく言われますが、実際に医師の収入が上がってくるのは30代後半ぐらいからとなっています。
若手のうちは、大学病院で働くケースなどを中心に、一般的なサラリーマンと大差ない年収レベルであることがほとんどです。

ところが同じような年代でも地方の場合はサラリーマン以上の年収が得られることも珍しくありません。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を見ると、岩手県や鹿児島県、福井県などの地方が平均年収ランキングのトップに並んでいるのが実情です。
地方では人手不足が顕著な分、医師を募集するのにも好条件を提示している求人が見られます。

また、都会の病院で働いていると、医師の数も多いので、役職まで出世するのはほんの一握りです。
しかし地方であれば、そういった競争に神経を使う必要がありません。
つまり、長く腰を落ち着けて働いた後、そのまま院長職や部長職などの役職に出世しやすい環境でもあります。

ライバルが少ないため開業しやすい

地方の場合、開業がしやすいというメリットもあります。
そもそも病院数が少ないというところも多くありますし、競争相手が都心部に比べると圧倒的に少ないという特徴があるのです。
さらに、地方のほうが人口に占める高齢者の割合が高く、医療ニーズは高いと言えます。
このため、開業後の集患もしやすく、安定した経営が期待できるという点が魅力です。

また、都会に比べて地代や家賃の相場も低く、事務スタッフなどの人件費も低めに抑えることが可能です。
開業時の必要資金や運転資金も、都市部で開業するよりは低く抑えることができ、開業のハードルも下がると言えます。

地方で開業する場合は、駐車場の有無や幹線道路に近いかどうかなど、車での通院に利便性があるかどうかは大きなポイントです。
開業したい地域で求められる医療ニーズをリサーチするとともに、こうした車社会での利便性を担保できる物件を探す必要があります。

生活費が安く仕事のやりがいも得られやすい

地域によって多少の違いはあるものの、一般的に地方のほうが居住費や食費といった生活費も低く抑えられることが多いです。
さらに収入は高めの傾向にありますから、生活面ではかなりゆとりを持つことができるのも、地方勤務のメリットと言えるでしょう。

また、地方では人同士の繋がりが強く、人間関係が濃密なところも少なくありません。
そして、そもそもの医師数が少ないため、患者側も医師を覚えやすいのです。
このため、休日に買い物をしていたら患者さんに偶然会う、ということも日常的に起こるでしょう。
医師はその地域になくてはならない職業ですので、勤務時以外でも日常で感謝されることも多く感じられます。
こうした何気ない出来事からも、地域に貢献していることをダイレクトに感じられ、やりがいを実感しやすい環境であると言えるのです。

医師が地方で働くデメリット

魅力的な面が多い地方勤務ですが、当然ながらデメリットもあります。
ここからは、地方で働くことでデメリットを感じやすいポイントをご紹介します。

キャリアアップが難しい

地方で働く場合、キャリアアップを優先に考えていると、ジレンマを感じてしまうこともあるかもしれません。
田舎の病院では医師の研修や教育といった機能を持たないところも少なくないからです。
そもそも医師数が足りていないので、若手医師を十分に育てることができる環境を構築できないという状況があります。
専門医やサブスペシャリティをどんどん取得してスキルを向上させていきたいと考えている医師にとっては、ハードルの高い環境ということになります。

しかし、ある程度経験を積んだ状態であれば、着任して即戦力として働けますし、十分な年収や福利厚生、行政支援などが受けられます。
都会でしっかり修行して、一人前になってから「故郷に錦を飾る」心持ちで地方勤務を目指すコースがおすすめと言えるでしょう。

周囲に相談できる人がいない

キャリアアップと関連して、経験が足りない医師が地方で奮闘するとなると、難しい症例に当たっても相談相手がいないといったことも起こり得ます。
勤務する病院の規模にもよりますが、一人診療部長状態になるような職場も珍しくありません。
こうなると一人で全て判断して治療を進めていく必要があります。

もちろん都会で働いていた時の人脈を駆使して相談したり、地域連携している他の病院の先生に相談するといった工夫で乗り切れるケースもあるでしょう。
しかし緊急時などはそうもいっていられない場面も出てきます。
どんな状況にも対応していくという経験値は強まりますが、まだ自信がないという人には難しいとも言えるのです。

地方の医師不足・大きな原因は?

地方での医師不足は何が原因なのでしょうか。
もちろん少子高齢化で、地域を問わず、医師そのものの数が不足しているという状況ですが、都市部に医師が集中してしまう偏在状態であるのは明らかです。
原因はいくつか複合的に考えられますが、その一つとして医療業界を取り巻く制度に問題があると考えることができます。
ここからは、医師不足や偏在を招いていると考えられる、医療業界にまつわる制度について解説します。

制度変更の影響で医師不足に

医師不足の原因と考えられる大きな制度変更の一つ目は、1982年と1997年に行われた、医学部定員の抑制です。

文部科学省は当時、将来的な医師余りを想定し、最小で7,600人程度まで医学部入学人数を抑制したのですが、この期間に医学部に入学した世代は、現在40代半ばから50代後半になっています。(参照:文部科学省「これまでの医学部入学定員増等の取組について」

つまり、医師として最も脂の乗っている世代の医師数が減少するという現象が起こっていることになります。
そして、都市部に医師が集中する状態を生み出す要因と考えられる制度変更が、新臨床研修制度です。
この制度変更により、大学医局が差配していた地方への医師派遣数が減少したことで、地方の医師数が足りないことが露見しました。
また、研修医が自分で研修先を選ぶ「医局離れ」の傾向も出始め、優れた技術が学べる環境のある都市部の病院に集中する現象も出てくることになります。
その対策として医師数が少ない都道府県に対しては、2006年から医学部定員の増員が始まりました。

2008年以降はこうした医師不足の状況を受け、医学部定員は過去最大の規模で増員されています。
それに加えて医師不足地域の増加や対象地域への定員割合を増やしたことで、現在は医師数は増加曲線に入っています。(参照:厚生労働省「医師偏在対策について」
しかし、過去の医師不足はまだ解決には至っておらず、第一線で活躍して然るべき世代の医師数が足りない現状は変わらないのです。
この状況は、若手を育てる指導医の世代が足りないということに直結していて、医師数不足の課題解決にはまだ時間がかかると言えるでしょう。

地方の病院で働くには?

これまでのUターン転職というと、実家の医院や病院を継ぐためというケースがほとんどでした。
しかし昨今では、医学部時代に地域医療について学び、純粋な興味からUターンして地元の病院で働いたり、Iターンで医療過疎地域へ出向くことに興味を持つ医師も増えてきています。

地方の病院で働きたいと思ったら、転職活動が難しいと感じる方は少なくないでしょう。
その背景には、田舎にはそもそも病院が少ないため、求人数もさほど多くないという実態があります。
それに加え、地方では都市部のようにネット上で求人を出すということ自体をしていないケースもあるのです。
転職サイトで探してみて、地方の求人はあまりヒットしなかったという経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。

地方の病院への転職を希望するのであれば、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を利用するのがおすすめです。
医師の転職に特化したエージェントであれば、こうした地方の医療機関の求人情報を持っていることも少なくありません。
ネット上で公開されていない非公開求人として情報を持っていることも多いため、まずは相談してみるといいでしょう。
メッドアイでも、足で稼いだ情報を豊富に持っていて、医師一人一人の希望や悩みに向き合って最適と思われる医療機関をご紹介しています。
働きたい地域や、地域医療で貢献したい具体的な分野、希望するキャリアプランなどを伝えることで、最適な条件の病院の情報を得ることが可能です。

まとめ(地方の医師不足について)

医師にとって地方で働くことは、単純に収入アップできるといった魅力だけでなく、さまざまなメリットがあります。
地方ならではの人間関係が生み出す、地域に貢献できるというやりがいや、開業のしやすさ、生活のしやすさなどその魅力は意外と大きいものです。
医師それぞれの性格や向き不向き、目指すキャリアなどで違いはあるものの、「医者」として大きく成長できる環境であることに変わりはありません。
地方勤務が向いているのは、ある程度医師としてのスキルを身につけた方と言えるでしょう。

ただし、地方の病院に勤務を希望する場合、難しいのが転職活動です。
転職先との距離があるというのはもちろんですが、そもそもの求人数が見た目的にはあまり多くないためです。
そこで、情報量が豊富な転職エージェント「メッドアイ」を活用することで、ネット上では見つからない、高条件の求人を見つけやすくなります。
ぜひ有効に活用して、納得できる形での転職を実現してください。