医師として働くと、複数の病院でアルバイトをしたり、年収が2000万円を超えたりすることもあります。その場合、自分で税金の申告をしなければならないことをご存じでしょうか?

  • 医師で確定申告が必要になる条件が知りたい
  • 医師が確定申告を行う際の注意点が知りたい

このように思っている方に向けて、本記事では医師としての収入に応じた確定申告の必要性や、確定申告の手順を紹介します。

確定申告とは

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの一年間の所得と、それに応じた所得税を計算し、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、その過不足を精算する手続きのことです。
収入が給与所得のみである場合は通常、年末調整によって課税に関する処理が完了します。
しかし、
個人事業主や副業の所得がある人など、一定の条件を満たす人は確定申告を行わなければなりません。

確定申告により所得税や住民税の正しい額が決まり、納めすぎた税金が還付されたり、不足している税金を追加で納税したりします。

確定申告の期間は原則として、対象となる年の翌年2月16日から3月15日までです。
提出が遅れると税務署からペナルティを受ける可能性があり、無申告加算税や遅延税が課せられます。
確定申告の方法は、インターネット上で行うe-Tax、郵送、税務署に持ち込みのいずれかで可能です。確定申告に必要な書類や手順は、所得の種類や申告の方法によって異なります。 

医師の確定申告が必要になる条件

以下では、医師が確定申告を行う必要が生じる条件を解説します。

1.複数の病院に勤めている

医師が複数の病院やクリニックで勤務している場合、それぞれの勤務先から得た給料について確定申告が必要です。たとえ正規雇用でなくとも、別の医療機関でアルバイトや研修医として働いて得た給与も確定申告の対象となります。

例えば、ある病院で正規採用されている医師が、他の病院やクリニックでアルバイトをして給料を得ている場合、収入は確定申告の対象となります。

2.年収が2,000万円以上ある

勤務医の給与収入が2,000万円を超える場合も、確定申告が必要です。
通常、勤務医は病院から給料として報酬を受け取り、報酬から所得税が天引きされます。
そのため、基本的には確定申告の必要はありません。

しかし、年間の給与収入が2,000万円を超えると確定申告が必要となることが、高額所得者に対する税制上の取り扱いとして定められています。

勤務医に限ったことではなく、給与収入がこの範囲を超えるすべての個人が、所得の申告を行うことが義務づけられています。

3.年間20万円以上の副収入がある

副収入が年間合計で20万円を超える場合、確定申告が必要となります。
副収入とは、本業以外で得た収入のことを指し、例えば執筆活動や講演会での講演料、メディア出演料、業務委託料などが該当します。また給料ではなく報酬として得られる場合も適用されます。
一方、副業収入が年間20万円以下であれば確定申告の必要はありません。

4.各種控除を受けたい場合

所得から各種控除を引くことで税額を減らせます。所得控除には15種類あり、ほとんどの所得控除は年末調整で申請が可能ですが、「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」については控除を受けるためには確定申告が必要です。

  • 雑損控除:震災や風水害などの自然災害、火災や爆発などの人災・盗難などで資産に損害を受けた場合に適用できます。
  • 医療費控除:病院や薬局に支払った金額が年間10万円以上となった場合に一部を控除として申告できます。
  • 寄付金控除:ふるさと納税をしている医師は、寄附金控除の対象です。ワンストップ特例制度を利用していない場合、確定申告をしないと税金の還付が受けられないので注意が必要です。

また住宅ローン等を利用しマイホームの新築・取得をした医師は、一定の要件を満たすと住宅ローン控除が受けられる可能性があります。
住宅ローンを開始した年は、年末調整では住宅ローン控除の対応ができません。そのため、その年だけは確定申告で手続きをする必要があります。

5.不動産収入がある

不動産投資で収入を得ている場合、所得金額が年間20万円を超えると確定申告が必要となります。

不動産投資とは、アパートやマンションなどの不動産を購入し、そこから得られる家賃収入を収益とする投資手法を指します。
また、不動産投資により損失が発生した場合でも、損失分を通常の事業所得から差し引くことが可能です。これを損益通算といい、所得が減少するため支払う税金も少なくなります。
さらに、不動産投資には多くの経費計上が可能な項目があり、特に減価償却費は所得を減少させる効果が高いため、節税対策として利用されます。

6.開業医

開業医の確定申告が必要な条件は、所得が事業所得に該当する場合です。
開業医でも所得が事業所得ではなく、給与所得に該当する場合は確定申告は不要です。

開業医においては、青色申告と白色申告の選択が可能です。
青色申告は簿記処理が必要ですが、特別控除や専従者控除などの節税メリットがあります。白色申告は簡易版で簿記処理が不要ですが、節税メリットはありません。
青色申告を希望する場合は、税務署に青色申告承認申請書を提出する必要があり、青色申告特別控除を受けるには特定の条件を満たさなければなりません。

医師の確定申告のやり方

医師の確定申告について、必要な書類の準備から勤務医と開業医で認められる経費の違い、申告の手順までを解説します。

必要な書類について

医師の確定申告に必要な書類は以下の通りです。

  • 確定申告書:税務署や国税庁のホームページから入手できます。
  • 源泉徴収票:勤務する病院から発行されます。1年間に受け取った収入と源泉徴収税額を証明する書類です。
  • 控除のための書類:寄付金控除や生命保険料控除などの控除を受ける場合は、それぞれの証明書類が必要です。
  • 経費に関する領収証や請求書:個人事業主として経営をしている場合、必要経費として認められる項目の証明になります。

経費について

勤務医と開業医では認められる経費が異なります。それぞれ認められる経費について、順に紹介します。

勤務医に認められる経費

勤務医は、自分で必要経費を支払っている場合があります。例えば、書籍を購入したり、セミナーに参加したり、資格を取ったりなどです。
自分で支払った必要経費は、特定支出控除という制度により税額を減らせます。 
特定支出控除とは、確定申告をすることで、給与所得から一定の金額を控除できる制度です。

控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 経費の合計額が、給与所得控除額の2分の1 (最高125万円)を超えること
  • 経費の内容が、勤務医としての業務に必要で自己負担であること
  • 経費の証明書類があること

特定支出控除で認められる経費の項目は以下の通りです。

  • 通勤費:自宅と勤務先の間の交通費
  • 転居費:勤務先の変更に伴う引越し費用
  • 研修費:スキルアップのための研修やセミナーの参加費
  • 資格取得費:専門医資格などの取得や更新にかかる費用
  • 帰宅旅費:遠方に勤務する場合の帰省費用
  • 図書費:医学書や専門誌などの購入費用
  • 衣服費:白衣や術衣などの購入やクリーニング費用
  • 交際費:関係先との接待費

開業医にのみ認められる経費

開業医は、自分で医院を経営することから、勤務医とは異なる経費を計上できます。
開業医にのみ認められる経費の代表的な例を紹介します。

  • 医院の経営に関する経費:医院の家賃や光熱費、設備や備品の購入費、広告宣伝費、会計士や税理士の報酬など、医院の経営に必要な経費は全額を経費として計上できます。
  • 医療に関する経費:医療機器や医薬品の購入費、医療保険料、医療関係の書籍や雑誌の購読費、医療関係の研修や学会の参加費など、医療に関する経費は全額を経費として計上できます。
  • 社会保険料や年金保険料:従業員の社会保険料や年金保険料を経費として計上できます。しかし、個人事業主自身が支払った社会保険料は、経費としては計上できません。確定申告時に社会保険料控除として申告しましょう。
  • 交際費や接待費:医院の経営に関係する交際費や接待費を経費として計上できます。ただし、計上できる金額は限られている場合があります。

主な手順について

医師の確定申告手順は以下の通りです。

  1. 領収書や支払い証明書の整理:医師業に関連した経費や医療費などの控除を受けるためには、領収書や支払い証明書などの書類を保管しておく必要があります。年末までに集めておくとスムーズです。
  2. 経費の計上:自分で経理ソフトなどに経費を入力している場合は、年末までに8割程度の経費の計上が終わっていることを目安にし、毎月少しずつ入力しておくことが大切です。
  3. 申告書類の作成申告書類の作成は以下の5つの方法があります。
    • 手書きで自分で作成する:無料でパソコンやインターネットが苦手な人でもできます。ただ手で記載・計算すると計算ミスや記載ミスや漏れ、転記ミスを発生する可能性があるので注意が必要です。
    • 会計ソフトを使って自分で作成する:会計ソフトを利用すると、簿記の知識がなくても確定申告書が作れます。また、サポート窓口がある場合は困ったときに相談できます。
    • 確定申告書等作成コーナーを利用する:国税庁のWebサイト「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の案内に従って金額等を入力します。帳簿作成や金額の集計、各種控除額の計算はあらかじめ自分で行う必要があります。
    • 税理士に依頼する:プロに任せられるため安心ですが、費用がかかります。
    • 税務署に行く:無料で、係員に教えてもらいながら作成できます。事前に入場整理券が必要なことも多く、税務署が混雑している場合は時間がかかる可能性もあります。
    以上の方法を参考に、自分に合った方法で申告書類を作成しましょう。
  4. 申告書類の提出:税務署へ直接持参するか、郵送するか、インターネットで提出するかの方法があります。インターネットで提出する場合は、e-Taxというシステムを利用します。期間は毎年2月16日〜3月15日です。
  5. 納付または払い戻し:申告書類に基づいて税額が決定されます。納付すべき税額がある場合は、期限までに支払いましょう。払い戻される場合は、指定した口座に振り込まれます。
  6. 確定申告書類の保管:青色申告の帳簿は7年間、白色申告も基本的に7年間保管が義務づけられています。書類の保存期間に留意し、整理して保管しましょう。

まとめ(医師で確定申告が必要になる場合とは?)

今回は、医師が確定申告が必要になる条件や手順について解説しました。

主な条件として、複数の病院での勤務、年収2,000万円以上、年間20万円以上の副収入、各種控除の利用、不動産収入などが挙げられます。条件に当てはまる医師は、確定申告が必要です。
確定申告には、確定申告書や源泉徴収票、各種控除のための書類などが必要です。また、計上できる経費は、勤務医か開業医かによって異なります。

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