外科医は、手術や処置など高い専門性と判断力が求められる診療科です。
この記事では「外科医に向いている人の特徴7選」を中心に、外科医になるまでの流れや、外科医からのキャリアチェンジ例まで詳しく解説します。
「外科医として働けるか適性を知りたい」
「将来のキャリアが不安」
「向いてないと感じたとき、どんな道がある?」
そんな悩みを持つ方に向けて、外科医のリアルをお伝えします。
【適正を知る前に】外科医の仕事とは?
一口に外科医といっても、担当臓器によって細分化されていて、仕事内容も変わってきます。この記事では、外科全般に共通するものをまとめました。
外科医の仕事内容
外科医の仕事は、主に3つに分けられます。
- 診察及び検査
- 手術及び処置
- 学術的業務
診察と検査については、他の診療科と大きくは変わりません。
患者やその家族から症状や怪我の状態などを聞き取り、必要な検査をした上で傷病名を診断します。
そして、治療方法を検討し、手術が必要かどうかなどを判断しながら治療計画を立てていきます。
方針を患者や家族に説明し、同意を得ながら治療を進めるのも他の診療科と同じです。
処置は、患部の洗浄や切開・縫合といった簡素な処置から、複数の医師でチームを組んで行う大掛かりな手術まで様々です。
手術では、患部の切除や外傷部位の修復などを行います。
また、手術後の経過を確認しながら、投薬やリハビリなどの指示や、患者への説明なども丁寧におこなっていく必要があります。
学術的業務とは、いわゆるカンファレンスや症例検討会といった情報収集や自己研鑽にあたる業務です。
こちらも診療科を問わず必要な業務ですが、外科医の場合は技術研鑽も含まれます。
手技の訓練や、機器の取り扱いの修練などを行い、自身の技術向上を目指していきます。
外科医の平均年収
外科医の年収は、年齢や細かい診療科によっても変わります。
労働政策研究・研修機構実施の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、一般外科の平均年収は1,374万円です。
年収トップは脳神経外科の1,480万円ですが、外科は3位で高収入の部類に入ります。
ただし、勤務している病院の規模によっても違いがあり、大学病院や公的病院の場合はもう少し低めの傾向です。
外科医になるには?
外科医になるには、医師免許取得後に研修医として臨床研修を積むことが必要です。
臨床研修終了後、外科に就職することで外科医としてスタートすることができます。
外科医の必須スキルである手術や処置などの手技は、ここからが修行のスタートと考えるのが一般的です。 あわせて読みたい
専門医研修では、難易度の低い手術などから執刀を経験していきます。
3年の専門医研修終了後、外科専門医の資格を取得して、初めて外科医としての基礎を習得したと言えるでしょう。
外科医に向いている人の特徴7つ|適性がわかるチェックリスト
それではいよいよ、外科医に向いているのはどんな人かを見ていきましょう。
よく、外科医は「手先が器用な方が有利」などと言われます。
確かにそうした側面はありますが、実は意外と重要視されていません。
外科医に向いているかをチェックするポイントは、以下の7つが挙げられます。
特徴 | 理由 |
---|---|
①人の役に立ちたい | 手術で命を救うことに直結するやりがいが大きい |
②プレッシャーに強い | 一瞬の判断が命に直結するため |
③練習熱心 | 手技の上達には地道な訓練が不可欠 |
④コミュ力が高い | 問診力・説明力・チーム連携が重要 |
⑤忍耐力と向上心 | 常に進化する医療に追いつく努力が必要 |
⑥ハードワークに耐えられる | 長時間労働・オンコールに対応できる体力が必要 |
⑦お金以外の価値観重視 | 労働量に対して年収が割に合わないことも多い |
①人の役に立ちたい人
医師という職業は常に人の命と向き合う仕事ですが、中でも外科は人命救助の最先端という位置付けです。
患者の命を救いたい、病状を緩和させたいという強い思いがないと務まらないでしょう。
病気から回復した患者の笑顔や感謝の言葉をやりがいと感じる医師も多くいます。
②プレッシャーに強い人
人の命に直接関わる仕事であるがゆえ、医師が感じるプレッシャーは並大抵ではありません。
一瞬の判断ミスが重大事故につながる危険性があり、常に緊張を強いられる職業でもあります。
こうしたプレッシャーの中で、命と向き合っていく過酷な仕事です。
プレッシャーに耐えられる強いメンタルが必要です。
③勉強だけでなく練習にも熱心な人
医学部を卒業し、医師免許を取得して、臨床研修を終えれば医師にはなれます。
しかし、外科医に必要な手技のスキルは、研修だけでは身につきません。
臨床研修を終えて初めて、外科医としての修行が始まるのです。
手術や処置をこなしていけるようになるには、指導医から一つ一つ技を教わっていかなくてはなりません。
知識だけではなく実際に自分の手を動かすスキルのため、日々の練習もおろそかにはできません。
日々、マウスの血管を縫い合わせたり、細かい癒着の剥離作業をしたりといったトレーニングを欠かさずに続けられる胆力も必要です。
④コミュニケーション能力が高い人
医師に必要なコミュニケーション能力は、単に病状を上手に患者に説明することだけではありません。
患者の話を理解する力に加えて、本当に訴えたいことを導き出す問診力も求められます。
医師側が行いたい治療方針に対して合意を得るためにも、患者との信頼関係を築き上げていくことも大切です。
こうしたことから、コミュニケーション能力の高さが必要になってきます。
⑤忍耐力と向上心を併せ持っている人
医師になるには、長い時間と努力が必要です。
大学で6年学び、医師免許取得後に臨床研修を2年こなしても、外科医としてはまだスタートラインに立ったに過ぎません。
そこからさらに専門医資格を取得し、やっと外科医として独り立ちできるようになるのです。
しかも、医療の世界は日進月歩で進んでいるため、外科医となった後も学びと修行の日々が続きます。
新薬や新しい医療機器、最新の手術の手法など、学ばなければならないことが常にあります。
自ら行動して、学会などで最新の情報を得るための活動も欠かせません。
常に学び続けられる向上心と、終わりのない情報収集をやり切る忍耐力が求められます。
⑥ハードワークに耐えられる人
外科医の仕事は、他の診療科に比べると労働時間が長いとされています。
オンコール対応が多いことや、手術の長時間化などが主な理由です。
また、患者の高齢化に伴い、急変の対応なども増えることも要因です。
労働政策研究・研修機構実施の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」は、医師の労働時間を週あたり平均46.6時間としています。
しかし、外科だけで見ると、週あたりの平均時間は52.5時間と平均を上回っています。
長時間労働の疲労で心身がもたないケースも珍しくなく、医療事故のリスクもあることなどから、外科医を志す人は減少傾向です。
ハードワークに耐えられる人でないと厳しい診療科と言えるでしょう。
参考:外科医希望者の伸び悩みについての再考|日本外科学会
⑦お金を稼ぐことを重視していない人
外科医は他の診療科に比べると収入が多いように見えますが、長時間労働で時間外手当が多いことが理由と言えます。
高収入を目標にしていると、外科医の労働量の多さは割に合わないと感じてしまうでしょう。
外科医になるまでの道のりもハードで、なってからの責任の重さやストレスも他の診療科よりきついものです。
お金を稼ぐことが目的であれば、自由診療が多く、収入がアップしやすい他の診療科を目指した方がいいでしょう。
外科医は、お金には変えられないものを求めている人の方が向いています。
外科医として働くメリット・デメリット
外科医は医師の中でも特殊なスキルと体力が求められる職種です。
ここでは、実際に外科医として働いた場合に感じやすい「やりがい」や「負担」を、両面から整理して紹介します。
外科医として働くメリット
① 手術で直接患者の命を救える達成感
外科医の最大の魅力は、自分の手で患者の命や生活の質(QOL)を改善できる点にあります。
手術という技術介入で劇的な改善が得られたときの達成感は、他の診療科では味わいにくいものです。
② 高度な専門性とスキルが身につく
手術手技、解剖学的知識、チーム医療での連携力など、幅広くかつ深い専門性が求められます。
その分、長期的に高い医療スキルを持つ医師として評価されやすく、社会的信頼も得やすいです。
③ 比較的高い収入水準
診療報酬上、手術を多くこなす外科医は年収水準が高くなりやすい傾向があります。
病院にもよりますが、管理職や医長クラスになれば1,500万円以上も十分に狙えます。
④ チーム医療の中心になれる
手術は一人ではできません。麻酔科医、看護師、臨床工学技士など多職種との連携が不可欠です。
その中で外科医は中心的な存在となり、マネジメントスキルやコミュニケーション能力も自然と養われます。
外科医として働くデメリット
① 肉体的・精神的負担が大きい
外科医の業務は長時間労働や当直、緊急対応が多く、体力的にハードです。
さらに、手術中の集中力維持や患者の命に関わる責任から、精神的ストレスも大きくなりがちです。
② 手技習得に時間がかかる
手術は数をこなしてこそ上達するもの。
若手のうちは見学・介助が中心で、自分で執刀できるようになるまでに年単位の時間がかかります。
また、医局の文化によっては上下関係が厳しいことも。
③ ワークライフバランスがとりづらい
当直・オンコール・緊急手術など、不規則な勤務が常態化している施設も多いです。
そのため、家庭との両立や自分の時間を確保しづらいという声も少なくありません。
④ 年齢とともに継続が難しくなる
手術は細かい操作や長時間の集中を必要とするため、年齢による体力や視力の変化が業務に影響することもあります。
そのため、将来的には転科やマネジメント職への移行を考える外科医も多くいます。
外科医の働き方は「覚悟」と「戦略」が重要
外科医は、医師としてのやりがい・誇り・収入をすべて得られる反面、犠牲や負担も大きい職種です。
だからこそ、自分の適性を見極めたうえで、無理のないキャリア戦略を立てることが重要です。
- 「今は情熱があるけど、10年後どうなるか不安」
- 「今の働き方はきついが、外科は好き」
そういった悩みを持つ方は、一人で抱え込まず、外科医経験者やキャリアアドバイザーに相談するのも一つの手です。
外科医からのキャリアチェンジ先3選
ここまで、外科医に向いているタイプを見てきました。
努力して外科医になったものの、向いていなかった場合は、キャリアチェンジするという選択肢もあります。
ここからは、外科医のキャリアチェンジについて解説します。 あわせて読みたい
外科と同領域の内科へ転科
スムーズに転身できる方法として、同領域の内科へ転科するというものがあります。
例えば、消化器外科から消化器内科への転科や、心臓外科から循環器内科への転科です。
外科で診ていた経験が役に立つため、容易なキャリアチェンジと言えるでしょう。
ただし、民間病院へ転職する場合は、求人の門戸が広くないというデメリットもあります。 あわせて読みたい
病院の規模によっては、専門領域だけでなく、一般内科的に幅広く診療できる医師の方が求められているためです。
医師として幅広く診療できるようになれば、道がひらけやすくなるでしょう。
緩和ケア医療へ
外科医はがん治療の現場に関わることが多いので、緩和ケアの必要性をよく理解しています。
実際にチーム医療で緩和ケアに携わっていた医師もいるでしょう。
このことから、緩和ケア領域への転進も、外科医にとっては抵抗のない転科先として人気があります。
しかし、緩和ケアの専門外来や病棟を持つ医療機関は少なく、就職が難しいというデメリットがあります。
さらに、緩和ケア領域は、内科医や麻酔科医にも人気のある転科先です。
緩和ケアへ転科する外科医は、比較的早い段階で転科する傾向があります。
臨床医以外への転職も
思い切って、臨床医をやめてしまうというキャリアチェンジもあります。
臨床の現場を離れても、医師免許が役に立つ仕事はたくさんあります。
例えば産業医や保険会社の社医など、企業に所属して働く方法もあります。
産業医は医師の転職先として人気がありますが、内科系の医師に有利な転職先と言えます。
外科医の場合は、保険会社で査定や審査を担当する社医の方が向いているでしょう。
また、最近では医療系ベンチャー企業もたくさん出てきています。
ビジネスアイデアがあるのであれば、起業するのもいいかもしれません。
医師を辞めた後の転職先については、こちらの記事でも解説しています。
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キャリアについての相談なら転職エージェントがおすすめ
「自分にはどの科での就業が向いているのか?」
「今の年収は十分なのか? 周りと比べて損をしていないか?」
「今の自分の市場価値はどのくらいなんだろうか?」
など、多くの医師はキャリアに関する悩みを抱えています。
今のキャリア形成の道が自分に合っているかわからなくなってしまったら、転職エージェントに相談することがおすすめです。
転職エージェントは、同じような悩みを持った医師にたくさん寄り添ってきています。
そして、納得のいくキャリアプランを作れるようサポートしてきた実績があります。
キャリア形成に迷った時、必ずしも転職する必要はありません。
しかし、転職エージェントに相談することで、一度自分の人生設計を見つめ直すことができます。
そして、適切なアドバイスを受けながら、理想のキャリアプランづくりを進めることができるのです。
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まとめ(外科医に向いてる人の特徴)
外科医への道のりは、長く厳しいものです。
晴れて外科医となった後も、常に大きなプレッシャーと闘いながら、ハードワークに耐えていくタフさが必要になってきます。
決して容易ではない外科医への道ですが、やりがいを求めてチャレンジするのは素晴らしいことです。
しかし、外科医は手技を伴うという特性から、生涯現役を貫き通すのは難しいとされています。
キャリアチェンジを考えるのであれば、転職エージェント「メッドアイ」へ相談することをおすすめします。
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医師のキャリアプランについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
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