日本では、20歳から60歳まで保険料を納める公的年金制度があります。しかしこれは、サラリーマンだけの年金制度と思っている方も多いのではないでしょうか。
医師の年金はサラリーマンとは若干異なるため、以下のような疑問を抱くでしょう。
- 医者の年金の種類や評判は?
- 医師年金はどのような仕組み?
- iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?
今回はこのような疑問を持っている方に向けて、プロの転職エージェントが詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
医師の年金の種類は?
一般に、日本の年金制度は「3階建ての構造」と言われています。
1階部分は、20歳以上60歳未満の国民が加入する「国民年金(基礎年金)」、2階部分は会社員と公務員に給付される「厚生年金」、3階は企業や団体が独自に運営している「企業年金」です。
労働者は厚生年金まで支給されるのが一般的とされていますが、医師の年金はどのようになっているのでしょうか。詳しく解説します。
勤務医は厚生年金、開業医は国民年金が多い
病院などから雇用されている勤務医は厚生年金に、自らが経営者の開業医は国民年金(基礎年金)に加入しています。
会社員とフリーランスの違いと同じように捉えて良いでしょう。
年金は、10年以上(2017年8月1日、受給資格期間が25年から10年に改正されました)の納付で65歳から受け取りができます。しかし、満額を受け取りたい場合は、40年以上納付する必要があります。
支払う保険料の違いとしては、国民年金は全国民一律の保険料です(収入により免除制度もあり)。厚生年金の保険料は、所得(給与や賞与の金額)をもとに決定されるため、収入によって差があります。 あわせて読みたい
医師ならではの「医師年金」制度もある
基礎年金と厚生年金に加入している会社員と比べると、基礎年金のみの自営業者などは将来もらえる年金が少なくなる可能性もあります。
年金額を増やす手段の1つが企業年金です。
企業年金にはさまざまなものがありますが、医師には医師年金という制度があります。
次の章で詳しく解説します。
医師年金とは?
医師年金とは、日本医師会が運営する年金制度で、64歳4ヵ月未満までが加入できます。
- 医師年金のメリット
- 医師年金のデメリット
それぞれ見ていきましょう。 あわせて読みたい
医師年金のメリット
医師年金のメリットは、掛け金の額や年金の受け取り方を選べることが挙げられます。
医師年金を運営している日本医師会は非営利事業で、年金事業での事業収入は全て加入者に還元されています。予定利率1.5%と効率的な資産運用が可能であることも大きなメリットです。
医師年金の基本年金保険料は月額12,000円(年払いは138,000円)ですが、必要に応じて加算することもできます。
加算年金保険料は、月払いは6,000円単位、随時払いは10万円単位で加算できますが、上限はなく、増額や減額、払い込みの中止は自由に設定できます。
医師年金は、受け取る際に4つの受け取り方を選べることも特徴です。
- 養老年金
- 育英年金
- 傷病年金
- 遺族年金
それぞれ、詳しく解説します。
養老年金
満65歳から受給可能な年金で、満75歳まで受給開始を遅らせることが可能です。
また、加入期間3年以上かつ満56歳以上で、やむを得ない事情がある場合は、受給額は減額されますが満65歳前から受給することもできます。
育英年金
加算年金の原資全部または一部が、選択した期間中(4・7・10年間)毎月支給されます。
現役世代の弟子の教育資金や、子供や孫の学資保険として活用もできます。
傷病年金
加入者本人が病気によって働けなくなった場合に受け取れる年金です。
加算年金の原資全部または一部が、選択した期間中(2・3・4・5年間)毎月支給されます。
遺族年金(遺族一時金)
加入者本人が死亡した場合に遺族に対して支払われます。
養老年金受給前に死亡した場合:払込済保険料と利息相当額が、遺族脱退一時金として遺族に支給されます。
加入期間3年以上かつ満56歳以上の加入者、または受給延長者が死亡した場合、遺族年金を選択することも可能です。
養老年金受給後に死亡した場合:保証期間の残余給付期間中、同額の年金が遺族年金として支給されます。遺族年金の代わりに、遺族清算一時金を支給してもらうことも可能です。 あわせて読みたい
医師年金のデメリット
企業年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金控除や小規模企業等掛金控除の対象ですが、医師年金は所得控除の対象外です。
医師は高収入で所得税率が高いため、医師年金が所得控除の対象とならない点は大きなデメリットと言えるでしょう。
また、2015年3月時点での加入者は約18,000人と急速に減少しており、存続できなくなるリスクも考えられます。 あわせて読みたい
その他の年金制度も詳しく知った上で、自分のライフスタイルに合った制度を選択していくことが重要です。
知っておきたいiDeCo(個人型確定拠出年金)の話
医師の3階部分の年金制度として、医師年金があることを紹介しました。
医師は医師年金だけでなく、iDeCoという年金制度にも加入できます。
iDeCoの基礎知識
iDeCo(英語表記「Individual-type Defined Contribution pension Plan」、個人型確定拠出年金)とは、国が用意した私的年金制度です。
加入者は毎月積み立てる掛け金を元手に、定期預金、保険、投資信託などを運用し、得た利益分を含む資産を60歳以降に受け取ることが可能です。
これまでは自営業者などに限られていた加入者の範囲が、2017年1月以降、会社員や公務員、専業主婦/夫などにも広がり、20歳以上60歳未満の現役世代のほとんどが利用できるようになりました。
拠出限度額は国民年金の被保険者区分によって異なり、第一号被保険者の自営業者等(開業医)は月額68,000円まで、第二号被保険者の会社員等(勤務医)は月額23,000円までとなっています。
iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象となり、またiDeCoで得た運用益(配当金など)への課税もありません。
多くのメリットがあるiDeCoですが、一度払い込んだ掛け金は60歳まで引き出せないなどの理由で、さまざまな評判があります。
以下で紹介するiDeCoのメリット・デメリットを踏まえて、加入を検討することをおすすめします。
iDeCoのメリット
iDeCoのメリットとして、以下が挙げられます。
- 税制の優遇がある
- 運用方法、拠出額を加入者が設定できる
- 運用が好調だと年金が増える
- 遺族が死亡一時金を受け取れる
それぞれ、詳しく解説します。
税制の優遇がある
iDeCoの大きな特徴は、さまざまな税制優遇があることです。
まず、iDeCoは掛け金の全額が所得控除の対象です。
iDeCoは、小規模企業共済等掛金控除の対象で、給与所得控除や基礎控除に加えて
所得控除できるため、節税効果を期待できます。
また、iDeCoで得た運用益が非課税になることもメリットです。
通常、証券口座等で運用した場合、個人の配当所得の税率は約20%ですが、iDeCoで得た利益・配当・売却益などの運用益は全額非課税になり、複利運用できます。
iDeCoは、受け取る際も節税効果があります。原則60歳以降に受け取りが可能で、年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金としてまとめて受け取る場合は退職所得控除の対象となり、所得控除が可能です。
iDeCoのさまざまな節税効果は、高所得である医師にとって大きなメリットと言えるでしょう。
運用方法、拠出額を加入者が設定できる
iDeCoは、加入者が拠出額を設定できるのも特徴です。
拠出限度額や最低拠出額が設けられてはいますが、自由に拠出額が設定できるため、無理のない範囲で運用できます。
また、運用商品や運用方法の変更も可能であるため、ハイリターンを狙う積極的な運用も可能です。
運用が好調だと年金額が増える
前項でも触れましたが、iDeCoで得た運用益は非課税となり、そのまま運用に回すことも可能です。受給時に利益が生じていれば、年金の増額が期待できます。
遺族が死亡一時金を受け取れる
iDeCoにも死亡一時金があり、加入者が60歳になる前に死亡した場合が対象です。
ただし、医師年金と違い、年金としてではなく一時金としてまとめて支払われます。また、受け取るためには死亡後5年以内に遺族が申請する必要があることも注意点です。
iDeCoのデメリット
iDeCoのデメリットは、主に以下のような部分です。
- 投資のリスクがある
- 引き出しができない
- コストがかかる
それぞれ、詳しく解説します。
投資のリスクがある
iDeCoは国が用意した私的年金制度ですが、本質的には投資と変わらないため、リターンもあればリスクも考えられます。
不況などの影響を受け、運用が不調になった場合、元本割れをしてしまう可能性もあるため、最大限の配慮が必要です。
引き出しができない
iDeCoは、老後の資産形成のために用意された制度であるため、原則60歳まで引き出しはできません。
また、毎年、拠出金を支払う必要もあるため、加入を検討する場合は十分に留意したい点と言えます。
コストがかかる
iDeCoは、加入時の手数料や口座管理の手数料が拠出額から引かれます。
利益の少ない運用商品の場合、それらのコストが上回ってしまい、損失になることも考えられます。コストを踏まえた拠出や運用商品の選別も必要です。
また、受け取り方によっては課税されることも覚えておきましょう。
iDeCoは、一括受け取りと年金のように分割して受け取る方法があります。
分割で受け取る場合、国民年金や厚生年金などと合計して年間70万円を超えると公的年金等控除の対象ではなくなり、課税される可能性があります。
税制優遇などさまざまなメリットがあるiDeCoですが、投資などの知識が必要であるため、少々難しい制度と言えるでしょう。
将来の貯蓄を増やすなら転職という選択肢もある
存続が危ぶまれ、度々問題になっている日本の年金制度。今の現役世代が高齢者になる時代には、年金制度はないかもしれないとの噂もあり、老後に不安を抱いている方は多いのではないでしょうか。
しかし、医師年金やiDeCoでの資産運用は少々難しいため、諦めてしまう方も多いかもしれません。
そのような方には、転職して貯蓄を増やす方法もおすすめです。
転職して収入をアップすれば、投資の難しい勉強をする必要もなく、貯蓄を増やせる可能性もあります。
転職する際には、より給与水準が高く、より労働環境や条件のよい転職をしたいと考える方は少なくないでしょう。
納得のいく転職を実現するには、医療専門職に特化した転職エージェントを利用することがおすすめです。
転職エージェントの「メッドアイ」なら、医師の転職に特化したアドバイスや求人情報を掲示するなどのサポートを受けられます。収入面はもちろん、転職市場の動向をもとに自分の市場価値を把握することもできます。
将来の資産形成に不安があり、転職を考えている方は、ぜひ登録してみてください。
まとめ(医師の年金について)
勤務医は厚生年金、開業医は国民年金(基礎年金)に加入しています。
日本の年金制度は「3階建ての構造」と言われており、医師にも医師年金という企業年金があります。
医師年金とは、日本医師会会員のみが加入できる制度で、64歳4ヵ月未満まで加入が可能です。
医師年金のメリットは掛け金の額や年金の受け取り方を選べること、医師年金のデメリットは所得控除の対象外になることです。
また医師は医師年金だけでなく、iDeCoという年金制度にも加入できます。
iDeCoのメリットには、以下があります。
- 税制の優遇がある
- 運用方法、拠出額を加入者が設定できる
- 運用が好調だと年金が増える
- 遺族が死亡一時金を受け取れる
iDeCoのデメリットには、以下があります。
- 投資のリスクがある
- 引き出しができない
- コストがかかる
医師年金やiDeCoには、投資の知識が必要であるため、老後の貯蓄を増やしたい方には転職もおすすめです。
転職エージェントの「メッドアイ」を活用することで、医師の転職に特化したアドバイスを受けながら希望に合った求人を見つけることが可能です。
より高い収入を実現できるだけでなく、転職市場の動きを把握したうえで自分の市場価値などを客観するきっかけにもなるでしょう。