医師免許を持っている人は、臨床の仕事をしているというイメージが多いかと思います。
実際ほぼその通りで、医師免許保有者の大多数が臨床現場で医師として働いています。
しかし、中には医師以外の職業を選ぶ人もいて、医師免許が役立つ仕事というのは意外と多いものなのです。

「臨床医が転職するならどんな仕事がある?」
「医師免許を持っている人が対象の他職種は?」
「医師が臨床以外の仕事をするメリット・デメリットは?」

この記事では、医師免許を持つ人の他業種での働き方について、転職エージェントの視点から解説します。
医師が臨床以外の道を選ぶことによるメリットやデメリットもご紹介しますので、参考にしてください。

医者から他職種へ転職する人はどのくらいいるのか

医師免許を取るためには長い道のりが必要で、大抵の人は医者になるためにその道を目指しています。
このため、実際は医療業界以外で就職するために医師免許を取得するという人はほとんどいないのが実情です。

しかし、いざ医者として働き始めてから、長時間勤務などの激務に耐えられなかったり、人の命を預かる仕事への精神的負担を感じたりして、継続を困難に感じるという方もいます。
それでも、医師としてより負担が少ない仕事を探して転職するケースの方が多く、医師から全くの異業種へ転職するというケースはまだまだ少ないと言えます。

医師免許でできる他職種の仕事6つ

医師が他業種へ転職するというケースは少ないものの、以前のように医師の仕事先は臨床現場か研究者や教授といった限られたものではなくなってきています。
医師免許や医師としての経験が活かせる仕事は、医療業界以外にも多くなってきています。
医師免許があることで就くことができる多くの業種の中から、いくつかをご紹介します。

1.製薬会社のメディカルドクター

メディカルドクター(MD)とは、製薬会社で働く医師のことです。
新薬の開発に必要な臨床試験やモニタリングなどを仕事とし、既存薬や新薬の製造に関わっていきます。
会社員として働くため、当直やオンコールといった病院独特の業務が発生しません
このため、ワークライフバランスを整えやすく、医師の転職先として人気がある職業の一つです。

メディカルドクターとして採用されるためには、製薬会社によって条件は異なります。
業種的には医師免許があれば応募可能ですが、外資系が多い業界ですので、英語力を求められるケースはよく見られます。

2.保険会社の社医

保険会社で働く社医の仕事も、サラリーマンスタイルで働ける人気の業種です。
社医の主な仕事は、保険加入者に対する健康状態の診査や、保険金支払い時の妥当性判断や査定です。

医師の仕事と大きく異なる点として、診療科に関わらない広い知識が必要なことが挙げられます。
また、医師の場合常に患者さんのためを思って向き合いますが、社医の場合は視点が変わり、保険業務遂行が主眼点となることも特徴です。
冷静に状況を見極め顧客の健康状態を判断することが責務となり、顧客の健康を慮るという医師の視点とのギャップがあります。

3.厚生労働省の医系技官

国家公務員として厚生労働省で働く医療技官は、保険医療に関する仕組みや法制度の立案に関わります。
保険医療政策を立案する際に必要な専門的な見地を提供し、事務官や政治家にそれらが分かりやすく伝わるように資料を作成するといった業務が主となります。
専門外の関係者との橋渡しも必要で、コミュニケーションスキルが高いと有利です。
昨今の感染症対策などでも分かる通り、医療技官の仕事は対応範囲が広くハードなものです。
また、医師としての知見だけでなく、公衆衛生や法制度など幅広い知識が必要となります。

4.研究職

従来からあり、医師の臨床以外の仕事として最も知られているのが基礎研究職です。
大学や研究機関などで治療法や難病発見などの研究を責務とします。
研究職の仕事に就くためには、大学院の博士課程に進むコースが一般的で、講師や助手として働きながら研究を進めていきます。
大学以外でも官民の研究機関に就職するという方法もありますが、募集の数は多くなく、それなりに狭き門であると言えるでしょう。

研究職に就くと、その研究の成果を学会などに論文発表することになりますので、高い英語スキルが必要です。
臨床の現場にいなくても、病気の原因や治療法を見出していく仕事なので、日々コツコツと研究を積み重ねることが性に合っていれば、やりがいを感じられる職業です。

5.コンサルタント

意外なイメージもあるかもしれませんが、コンサルティング業界でも、医師免許を持ったコンサルタントが増えてきています。
医師としての知見を活かし、医療サービス系企業や民間病院などのコンサルティング案件をこなせるということで、採用側の需要が増えているのです。
また、病気を治すために培ってきた論理的な思考力は、企業の戦略実行や業務改善を考える際にも有利に活用できます。
直接医師免許が役に立つ仕事ではありませんが、今後も需要が伸びそうな注目の業界と言えます。

6.医療関係の民間企業

医師免許を活かした民間企業への就職先として、ベンチャー企業なども増えてきています。
健康管理ができるスマホアプリの開発や、医療情報を提供するサービス、医療機器の開発など、ITの発達をきっかけに様々な企業が医療サービス進出を果たしています。
こうした企業が提供するサービスの開発や信頼性の根拠に医師免許が役に立つのです。
社会ニーズにうまくマッチして事業がヒットすれば、ベテラン医師にも劣らない収入になるケースもあります。

患者さんと相対する責任感を感じることなく、人の健康に役立つ仕事ができるので、精神面での負担から医師を続けにくいと感じている人などには向いていると言えるのではないでしょうか。

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医師免許でできる臨床医以外の仕事4つ

医師から異業種へ転職するのはちょっとハードルが高いと感じている場合、医療業界でも臨床仕事のない職業につくという方法もあります。
医療業界で臨床医師以外の働き方ができる職業にはどのようなものがあるかを見ていきましょう。

1.産業医

産業医は医師の転職先や副業としてもよく知られている職業です。
産業医の仕事は、会社組織で働く労働者の健康管理を行い、労働者の心身の健康を保つことが責務となります。
50人以上の労働者を雇用している事業者は、必ず1名以上産業医を選任しなくてはならないことが労働安全衛生法で定められていて、産業医は事業者から専属または嘱託で業務を請け負います。
嘱託で請け負う場合は月1回程度の職場巡回や適宜従業員の面談などを行い、何箇所かの事業所を掛け持ちで請け負っている産業医も少なくありません。
大企業の場合は専属契約で産業医を雇い、週に4〜5日程度常勤で勤めることになります。
専属の産業医になることができれば、残業も少ない環境で働けるため、育児中の医師にも人気がある働き方です。

しかし、産業医になるためには医師免許の他に産業医の資格認定を受ける必要があります。
医師の場合は医師会などが主催する研修を履修するか、労働衛生コンサルタントの保健衛生区分試験に合格しなくてはなりません。

2.介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)でも、入所者100人あたり常勤医師を1名配置する必要があります。
介護老人保健施設は、高齢者がリハビリや医療ケアを受けながら、在宅に戻るための準備をすることが目的の施設です。
リハビリテーション関連やソーシャルワーカーなどさまざまな分野のスタッフと連携しながら高齢者ケアを行うため、医師のスキル以外にもコミュニケーション力や調整力が求められます。
また、医師が介護老人保健施設に所属する場合、施設長などの管理者ポストにつくことも多く、管理職の能力が必要になってくることもあるでしょう。
臨床現場とは違った苦労はあるものの、チームで働くことが得意であれば、ワークライフバランスも良好に保てる職場と言えます。

3.公衆衛生医師

公衆衛生医師は保健所など地域保健の分野で働く医師です。
業務としては母子保健や生活習慣病などの分野で、地域での健康管理の課題解決に向け、注意喚起を行うなど、地域住民の健康を守る活動を行います。
保健所の所長は医師である必要があるため、トップのポストにつきやすいという特性があります。
特に臨床経験がある医師が公衆衛生医師になる場合、最初から役職がつくことも珍しくありません。
しかしながら、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行などでも分かるように、地域住民にとっての健康維持に問題が発生する場面では、少ない人数で対処していかねばならないというハードな面もある職業です。

4.矯正医官

矯正医官とは、刑務所などの矯正施設で働く医師のことです。
入所者の健康管理や病気の治療などを行っています。
ある意味臨床現場とも言えますが、通常の病院と異なる点がいくつかあり、ワークライフバランスを良好に保てる職場です。
最大の特徴は、国家公務員でありながら副業が認められている点で、週あたり最大19時間までを兼業や研究などに充てることができます。
また、国家公務員であることから福利厚生も充実していて、育児休暇取得や時短勤務もしやすくなっています。

医師が臨床医以外に転職するメリット

医師免許を活かして臨床以外の仕事に転職することで、以下のようなメリットが得られる可能性があります。

  • 激務からの解放
  • 人間関係の改善
  • 新しい視点を得られる

臨床現場で働く医師に共通するのが、当直やオンコールなどに代表される長時間労働です。
少なくとも臨床の現場から離れることで、こうしたハードワークからは解放される可能性が高く、ワークライフバランスを良好にすることができるようになります。
また、転職することで一旦人間関係がリセットされることもメリットに感じる人がいるでしょう。
医局に所属していた場合などは、別の病院に転職したとしても、何かしらの人間関係を引きずるケースが見受けられます。
しかし、臨床現場や医療業界から離れてしまうことで、医局の複雑な人間関係も一旦リセットすることができるのです。

また、他業種との連携や、他業種に就職するということは、今までとは全く違った世界を知るきっかけにもなります。
新たな目標ややりがいを見出す近道となると感じる人も少なくないようです。

医師が臨床医以外に転職するデメリットと注意点

心機一転を目指して臨床の現場を離れることには、リスクやデメリットも少なからず存在します。
人によって状況に違いはあるため、一概にデメリットと言い切ることは難しいですが、代表的なものとしては以下のふたつが挙げられます。

  • 収入ダウンの可能性
  • 臨床現場に再度戻ることが難しい

医師の収入は、他業種に比べると高い水準です。
若手のうちはそうでなくても、ある程度臨床現場で経験を積んでいくことで、他業種よりも高い年収を得ることが可能になります。
しかし、他業種に転職してしまうと、医師ほどに年収が上がっていくケースは少ないと思っていた方がいいでしょう。
転職先を決める際に、給与についてしっかり確認し、その収入で今後の生活が維持できるのかは慎重に検討することをおすすめします。

また、一度臨床現場を離れてしまうと、当然のことながら診療スキルは下がってしまいます。
医師は常に最新の医療情報を収集しながら研鑽していく職業ですので、一度その歩みを止めてしまうと、現場で頑張っている医師とはどうしても差が出てきてしまうのです。
臨床から離れても、また戻るかもしれないという考えがある場合は、医療業界内で近い職種につくなどの工夫が必要でしょう。
例えば人間関係に苦労して臨床現場から離れたいと考えたのであれば、人間関係を気にせず働けるフリーランス医としての働き方もあります。
臨床の仕事そのものを苦にしているのでなければ、安易に他業種を目指すのではなく、転職エージェントに悩みを丸ごと相談してみるのもおすすめです。


まとめ(医師免許でできる仕事について)

IT技術の進歩やベンチャー企業の台頭などにより、医師免許が他業種で活用できる場面も大きく広がりました。
このため、医師としての経験を活かして、異業種で活躍するということも、以前に比べると格段にやりやすくなっています。

しかし、医師免許をとることを志した根本には、ほとんどの人が臨床現場で働く医師を目指すという目標があるのではないでしょうか。
確かに医師の仕事はハードで、その上難しい人間関係や、患者さんの健康を預かる重責があります。
臨床の仕事を続けることが難しいと感じたら、無理をしすぎずに転職を考えることは悪いことではありません。
それでも、医師になった当初に描いたキャリアプランを無駄にしないよう、一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。

転職した方がいいのか、異業種を目指すべきなのか迷ったときには、医師専門の転職エージェントにぜひ相談してみてください。
転職エージェントには、医師一人ひとりの悩みに寄り添い最適解を提供してきた実績があります。
たとえ転職しないという結果になっても、キャリアプランや悩み事を共有して相談することで、きっと自分に合った働き方を見出すことができるはずです。