研修医は初期研修期間に、2年かけてさまざまな診療科を回りながら学びます。
学ぶ内容も量も、医学生時代とは大きく異なってきますし、学び方も変えていかなくてはなりません。

「研修医におすすめの勉強方法が知りたい」
「研修医として働いているが、思うように勉強がはかどらず困っている」

この記事では、研修医として効果的な勉強方法に悩む方のために、効率よく勉強に取り組むコツや、おすすめの勉強方法をご紹介します。
研修医におすすめな医学書もご紹介しますので、参考にしてください。

研修医が効率よく勉強に取り組むためには

働きながら学ぶ形となる研修医の学習スタイルは、学生時代のようにはいきません。
じっくり腰を据えて学習する時間を持つことも難しいですし、環境によってはほとんど自習時間が取れないケースもあります。
ここでは、限られた時間で効率よく勉強を進めるために必要なポイントをご紹介します。

1.研修期間に学びたい内容を絞る

研修医は2年間の研修期間で、最低でも7つの診療科を回ります。
特に2年目は小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療を1カ月単位で回るハードなスケジュールです。
1つの診療科で学べることが時間的に限られているため、優先順位をはっきりさせる必要があります。

どの診療科にも覚えておくべき重要なポイントがありますが、各診療科で最もよくある対応パターンを優先的に学ぶといいでしょう。
抗菌薬や感染症、輸液や心肺蘇生など、診療科が違っても共通する項目もあります。
何を優先したらいいか判断が難しいと感じたら、先にローテーションを終えている同期や先輩などに相談するのもおすすめです。

2.一人で解決しようとせず積極的に教わる

医大生の間は国家試験合格に向けて、医学の基礎を徹底的に学びました。
研修医になると、その知識をベースとして、目の前の患者にどう対応するべきかを学ぶことになります。
ここまで培ってきた知識で知っていることであっても、いきなり実践の場で処置ができるわけではありません。
うまくいかなかったり、わからないときに、自分一人で解決しようと思わないことが大切です。
先輩や上司、指導医に積極的に相談し、教わる姿勢を持つことを心がけましょう。

また、同期とも積極的にコミュニケーションを取り情報交換することで、自分が学べなかった内容を知るチャンスも増えます。

研修医におすすめの勉強方法4選

実際の臨床現場で働きながら学ぶ研修医は、学生のような勉強時間の確保が難しくなります。
診療科のローテーションもあり、次々と環境も変わっていくため、効率のよい勉強方法を確立することが重要です。
ここからは、研修医が効率よく勉強するために必要なポイントをご紹介します。

1.インプットとアウトプットのバランスを取る

学生時代の勉強は、試験合格をゴール地点とした知識のインプットが中心です。
しかし、研修医になると、医師として働くことを見据えた実践を覚えていく必要があります。
実際の臨床現場で対応できる術を身につけるためには、知識のインプットだけでなく、学んだ知識を活用できるアウトプットにも重きを置くことが大切です。

おすすめの方法としては、学んだ知識をスライド化したり、SNSで発信したりして、誰かに伝わるアウトプットを作る方法です。
人に伝えられるということは、自分の身になったということでもあります。
また、作成したアウトプットを整理してまとめておけば、自分のためのマニュアルとしても活用可能です。

2.読み返してわかりやすいノートを作成する

研修医の勉強で欠かせないのが「わかりやすく使いやすいノート」でしょう。
教わったことをその場でメモに取り、後でわかりやすくまとめることで、後から必要な時に参照できます。
また、「知識として知っておくべきこと」と「臨床現場で対応するために必要なこと」を分けて情報整理したノートを作るとより効果的です。

持ち運びがしやすく、視覚的にわかりやすいノートを作ることで、勉強が進めやすくなり、後からの参照もしやすくなります。
タブレットやPCなど、デジタルデバイスを活用すると、大容量のデータも手軽に持ち運べるのでおすすめです。

勉強ノートの作り方については下記記事でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

3.論文は要約されたものを読む

勉強を進めていく上で、論文を読む機会も多くなるかと思います。
しかし、英文の論文を隅から隅までじっくり読む時間を割くのはもったいないことです。
論文を読む際には、要旨(アプストラクト)やシステマティックレビューを読むようにして、その論文の要点を効率よく掴むようにしましょう。
その上で、興味あるポイントがある場合は、必要な部分だけ本文も読むようにすれば、時間が節約でき、他の勉強に充てることができます。
研修医の勉強時間はスキマ時間を活用することがよくあるため、こうした時間節約術も身につけておくと効果的です。

4.同期と協力する

研修医はいろいろな診療科をローテーションして行きます。
同期の研修医がいる場合は、お互いのローテーション先の情報交換を定期的にすることがおすすめです。
自分がまだ行っていない診療科の情報や知識を予習できますし、自分が回った診療科の情報をシェアすることで、アウトプット化が可能です。

また、その都度患者さんが異なるため、未経験の症例も出てきます。
そうした症例を同期が経験していれば、貴重な情報収集の場ともなるのです。
お互いにとってプラスになるため、積極的なコミュニケーションを取るように心がけましょう。

研修医におすすめの医学書5選

研修医の学習に欠かせない医学書にも、さまざまな種類があります。
最終的には見やすい医学書の定義は人により異なりますので、自分に合ったものを見つけることが大切です。
ここでは医学書の中でも人気があり、研修医におすすめのものをいくつかピックアップしてご紹介します。

『内科レジデントの鉄則 第3版』

よく知られた参考書で、研修医なら一度は読むという方が多いベストセラーです。
内科で働く上で必要な対応が俯瞰的に網羅されていて、初期臨床研修医向けに書かれています。
内科の臨床現場で対応する機会が多い症例の対応方法や、救急の現場で役に立つ知識が学べる良書です。
また、症状別の対応法や、治療薬の選び方や投与量など、必要な情報が見やすく整理されていて、読みやすい構成になっているのもおすすめポイントです。

『当直ハンドブック Ver.2』

「現場の疑問が2分で解決」をコンセプトに、当直中や救急外来の現場でよくあるケースに対応できるノウハウを詰め込んだハンドブックです。
単行本サイズで扱いやすく、各症例での具体的なオーダーや対処法が網羅されています。
読みやすさも抜群で、必要な時にすぐ情報を見て理解できる作りになっています。

当直中に救急外来や搬送があると知らされたらすぐ調べ、すべき対応がシミュレートできる優れものです。
情報量が多く500ページを超えるボリュームがあるため、どこに何が書いてあるかをある程度把握しておくと、より効果的に使いこなせるでしょう。

『病棟指示と頻用薬の使い方 決定版』

医大生の時に習うことがない、実際の病院での業務内容がわかる良書として人気がある参考書です。
病棟管理業務の肝となる病棟指示や入院管理のノウハウが網羅されています。
入院患者の発熱や脈の異常といった、よくあるシーンでどのように対応するかや、どんな投薬や処置の指示を出すかを具体的に知ることができ、学びが多い一冊です。

また、転倒や患者の持参薬への対応といった、トラブル対応のノウハウも豊富に掲載されています。
病棟業務に就く前に、一度は目を通しておきたいおすすめの医学書です。

『ねじ子のヒミツ手技 1st Lesson』

医師だけでなく看護師からも絶大な支持を集める、基本的な手技を解説した参考書です。
漫画やイラストも多用した作りになっていて、見やすくて頭に入りやすいのが特徴です。
自分の役に立つだけでなく、患者に説明する際にも理解が得やすかったというレビューもありました。
現役の女医さんが書いている本であり、現役ならではのちょっとしたコツなども豊富に記載されています。
手技に不安がある人に必携してほしいおすすめの一冊です。

『「型」が身につくカルテの書き方』

診療科を問わず、臨床現場で欠かせないスキルの1つである、カルテの書き方を学ぶための参考書です。
SOAP形式のカルテの基本的な書き方の「型」を解説しながら、問題リスト形式や応用が効くカルテ記載法を体系的に学ぶことができます。
カルテの書き方は医師によって個性が出てくるため、当たる指導医によってわかりやすさが変わってくるのが一般的です。
この本は、カルテの作成スピードを上げたり、わかりやすいカルテ造りができるよう、基本の型を身につけられる構成になっています。

働き方と勉強のバランスに悩んだら転職も視野に

研修医は実務を通して技術を学ぶ一方で、予習復習といった自習のための時間は、スキマ時間を活用するなど、自分で作り出していく必要があります。

しかし、研修先の病院が人手不足だったり忙しい病院だったりした場合には、その時間の確保も難しくなることがあるのです。
どうしても勉強時間が確保できないとか、自分が学びたいことが学べないといった事態に遭遇してしまったら、転職を考えるのも1つの方法です。

初期臨床研修で研修を中断する人は、全体の1.3%とあまり多いとは言えません。(厚生労働省資料参照

しかし、中断した人の内訳を見ると、自分自身の病気療養が多いものの、人間関係のトラブルや研修内容への不満を理由にしたものも多く、以下のような内訳となっています。

中断理由中断者数比率
病気療養11037.4%
研修内容への不満124.1%
妊娠・出産・育児299.9%
家族等の介護72.4%
研修体制の不備10.3%
その他13545.9%

※病気療養については、メンタルヘルス上の事情を有する研修医が多い。
※その他の内容としては、プログラム変更、自己都合及び研修医同士のトラブル等が多く挙げられる。
(厚生労働省「臨床研修の中断・未修了について」より抜粋して引用)

どうしても研修が思ったように進められないと悩んだら、そのまま無理をするのではなく、転職を視野に入れて環境改善を考えることも必要になってくるでしょう。

将来のキャリアプランに悩んだら

研修中にうまくいかないと悩んだり、診療科があっていないと感じたりする場合は、キャリアプランそのものの見直しもおすすめです。
その上で、環境を変えるために転職を考えるのであれば、ぜひ専門のエージェントに相談してください。

メッドアイでは、無料で転職のご相談に対応しています。
今すぐ転職をするわけでなくとも、キャリアプランの見直しや、転職のメリットデメリットなど、医師一人ひとりの悩みに寄り添った提案が可能です。
豊富なノウハウや非公開を含む求人情報がありますので、情報収集だけでもしてみると、進むべき道が見えやすくなります。

まとめ(研修医におすすめの勉強方法)

医大生時代と研修医では、勉強する内容や勉強する環境が大きく変わります。
特に勉強時間の捻出が大変になるため、勉強方法の見直しは必ずといっていいほど必要です。
効率的な勉強方法の最適解は、当然ながら人によって異なってきます。
この記事でご紹介した勉強法や医学書が参考になれば幸いです。

臨床現場で実務に触れながら経験を積む研修医ですが、研修先の病院の環境によっては、勉強時間が取れなかったり、思ったような経験が積めないケースもあるかもしれません。
この先医師として働いていくために必要な勉強がしづらい環境であれば、研修先の変更や転職を視野に入れて、環境作りを考えることも必要です。

研修中ですぐに転職するイメージがわかなくても、まずは一度転職エージェントに相談してみることをおすすめします。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談すれば、今のままの環境で進むべきかそうでないかの答えを見つける早道にもなるでしょう。