「児童精神科医に向いている人って、どんな性格や特徴があるのだろう」
「児童精神科医と精神科医ではどんな違いがあるのかが知りたい」
「児童精神科医を目指すつもりだけど、働き方はハードかどうかが気になる」
子どものメンタルヘルスに寄り添う児童精神科医は、近年注目を集めている領域です。児童精神科医に求められる能力は、医学的知識だけでなく、コミュニケーション力や共感力など多岐にわたります。
この記事では、児童精神科医に、なるまでの道のり、必要な素質や適性について詳しく解説します。そのやりがいや将来性についてもご紹介しますので、参考にしてください。
児童精神科医とは
児童精神科医は、子どもの心の健康を専門とする医師です。幼児期から、思春期までの間に起こりうる、発達障害や不登校、いじめなど、現代社会で増加する子どものメンタルヘルスの問題に向き合い、治療やケアを行います。
診療の対象となる主な症状や疾患には以下のようなものがあります。
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 注意欠如・多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
- 不登校
- 摂食障害
- うつ病
- 不安障害
診療では子どもだけでなく、保護者とも面談を行うのが一般的です。家庭環境や学校生活など、子どもを取り巻く環境全体を考慮した治療アプローチが求められます。 あわせて読みたい
治療方法は薬物療法だけでなく、心理療法やカウンセリング、作業療法など、様々な手法を組み合わせるのが主流です。子どもの年齢や発達段階、症状の程度に応じて、最適な治療法を選択します。
また保護者や学校の教職員、ソーシャルワーカーなどとの連携も重要な業務です。チーム医療の中心として、子どもの成長を多角的に支援する役割を担います。
児童精神科医の将来性
児童精神科医は社会的需要の高まりと医師不足が続く現状から、将来性の高い医療専門職として注目される分野です。
子どものメンタルヘルスケアの重要性が増す中、キャリアの選択肢も広がっています。
従来子どもの心のケアについては、小児科医の中で心の問題のサブスペシャリティを選ぶ医師や、児童思春期の領域をサブスペシャリティとする精神科医が、認定医として担ってきました。
しかし昨今のニーズの増加を受け、「子どものこころ専門医」制度が始まり、2025年度には最初の専門医が誕生する予定です。
現在、児童精神科医は不足しています。児童精神科認定医は2024年時点で約626人にとどまり、地域による偏在も大きな課題です。特に地方では深刻な人材不足が続いており、ニーズが非常に高い状況です。(参照:「一般社団法人日本児童青年精神医学会認定医」
年収面では児童精神科医に絞ったデータはないものの、いくつかの求人情報をピックアップしてみると、常勤で1,300万円〜1,500万円程度のものが目立ちました。厚生労働省が公表している医師全体の2023年平均年収が1,436万円ですので、ちょうど平均程度の収入が一応の目安となります。 あわせて読みたい
児童精神科医になるには?
児童精神科医になるための道筋は、現在過渡期にあります。
2024年11月時点では条件を満たした小児科専門医又は精神科専門医が暫定的に専門医試験を受けられますが、この制度は2025年3月をもって終了予定です。
それと並行して2022年度から「子どものこころ専門医」としての専門医研修がはじまりました。
子どものこころ専門医を取得するためには、小児科あるいは精神科の専門医資格が必須となります。
子どものこころ専門医機構によれば、2025年度からの専門医試験の受験資格は以下の通りです。
- 小児科専門医あるいは精神科専門医を所持していること
- 子どものこころ専門医研修施設群における3年以上、36単位以上の研修を修了していること
- 筆頭者として、子どものこころの診療に関する学会発表2回以上、あるいは論文発表1編以上の研究業績があること
(一般社団法人 子どものこころ専門医機構より引用)
医学部大学卒業後に他科を選ばず真っ直ぐこの道を目指したとして、最短で精神科経由で10年、小児科経由で8年かかることになります。 あわせて読みたい
また児童精神科医として働いていくにあたっては、精神保健指定医資格を持っていると強みになります。これは医療保護入院や行動制限の判断など、重要な医療行為を行うために必要な資格です。
他の診療科から転科する場合
あわせて読みたい他の診療科(外科や内科など)から児童精神科への転科は可能ですが、転科を希望する場合はいくつかの要件を満たす必要があります。
まず児童精神科への転科には、精神科または小児科の専門医資格が必須です。もしこれらの資格を持っていない場合、転科前に専門医資格を取得する必要があります。
また転科を希望する病院や医療機関によっては、精神保健指定医資格が求められる場合があるため、方針を確認することが重要です。
施設によって転科の受け入れ方針が異なるため、事前に担当上司や研修責任者に相談し、転科の可能性を確認しましょう。
転科後は子どもたちの精神的なサポートを提供するために、新しい知識やスキルを習得し、現場での経験を積むことが求められます。
転科には時間と努力が必要ですが、専門医資格を取得することで、児童精神科の分野で活躍するための確かな道が開けます。
児童精神科医の魅力ややりがい5つ
児童精神科医は子どもたちの心の健康を支える重要な専門職です。その仕事には独自の魅力ややりがいがあります。ここからは児童精神科医として働く上での魅力とやりがいをご紹介します。
子供の成長と変化を感じられる
子どもたちの成長過程に寄り添い、その変化を目の当たりにできることは大きな魅力です。 あわせて読みたい
不登校だった子どもが学校に通えるようになったり、コミュニケーションが改善されたりする姿を見られることは、医師として大きな喜びとなります。
他の領域とは違ったアプローチ
児童精神科の診療では、薬物療法だけでなく、遊戯療法やカウンセリングなど、多様な治療アプローチを用います。
子どもの年齢や発達段階、置かれている環境など、さまざまな要素に応じて、創造的な治療方法を選択できる点が特徴的です。
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人や社会の役に立てている実感が大きい
発達障害や不登校など、現代社会で増加している子どものメンタルヘルスの問題に直接関わることができます。
家族や教育機関との連携を通じて、次代を担う子どもたちの将来に大きな影響を与えられる、社会貢献度の高い仕事です。
人生経験が仕事に生きる
児童精神科医は、自身の過去の経験や知見を診療に活かせます。子育ての経験や自分が子ども時代に辛かった記憶などを、より深い患者理解に役立てられる仕事です。
キャリアを重ねるほど症例経験も増え、専門性が深まっていきます。
患者から人生の糧を得ることも多い
児童精神科で働いていると、子どもたちとの関わりを通じて、医師自身も多くの学びを得られる点も大きな魅力です。
純粋な子どもたちの反応や予想外の気づきは、医師としての成長だけでなく、人間としての成長にもつながり、それを魅力に感じる医師がたくさんいます。
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児童精神科医に求められる能力
児童精神科医には、医学的知識に加えて、子どもたちの心を理解し支援するための特別なスキルが必要です。ここからは、児童精神科医に求められる主な能力についてご紹介します。
じっくり話を聴く力
患者である子どもや保護者の話に、時間をかけて耳を傾けることが重要です。じっくりと耳を傾け、問題を見抜ける力が求められます。子どもの話だけでなく、かといって保護者の話だけでもいけません。
両者の言葉から、どこに問題があるのかを感じ取ることができるようになれば、児童精神科医として働く上で大きな武器となります。
観察力
子どもは大人より言語化が拙くなることがめずらしくありません。会話や言葉だけでなく、行動やこちらの語りかけへの反応などにも注意を払う必要があります。
子どもの表情、しぐさ、遊び方など、非言語的なコミュニケーションから心の状態を読み取る力が必要です。
また家族関係や学校での様子など、子どもを取り巻く環境全体を観察する目も求められます。
コミュニケーション能力
子どもの年齢や発達段階、症状や状況に応じて、適切なコミュニケーション方法を選択する必要があります。 あわせて読みたい
また保護者や学校、行政などとの連携をスムーズにするためには、仕事上の関係者とのコミュニケーション能力を磨くことも大事なポイントです。
共感力
子どもや家族の気持ちに寄り添い、信頼関係を築く力が不可欠です。ただし共感しすぎて自身の精神状態に影響が出ないよう、適度な距離感を保つことも重要です。 あわせて読みたい
児童精神科医には医学的な専門知識だけでなく、子どもたちの心に寄り添える豊かな人間性も求められます。
児童精神科医に向いている人の特徴3つ
児童精神科医として成功するためには、特定の資質や適性が重要です。ここでは、この児童精神科医に向いている人の特徴を詳しく解説します。
人の話を聞くのが苦にならない人
児童精神科医の診療時間は一般的な診療科と比べて長くなります。1人の患者に30分から1時間以上かけることも珍しくありません。
子どもの話はもちろん、保護者の悩みや心配事にも丁寧に耳を傾ける必要があります。
また同じ話を何度も繰り返し聞くことも多いため、根気強さと集中力が求められます。話を聞くことで疲れを感じにくい人や、相手の気持ちに寄り添える人は、この専門科目との相性が良いでしょう。
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地道に努力できる人
児童精神科での治療は、すぐに効果が表れるとは限りません。数か月、時には数年かけて少しずつ改善していくケースも多く見られます。 あわせて読みたい
そのため短期的な成果にとらわれず、長期的な視点で患者の成長を支援できる忍耐力が必要です。
目に見える成果が出にくい場面でも、地道に取り組みを続けられる人は、児童精神科医として働くのに向いています。
メンタルが強い人
児童精神科医は、深刻な問題を抱える子どもたちや、強い不安を持つ保護者と向き合う機会が多くあります。時には厳しい言葉を投げかけられることもあり、精神的なストレスは決して少なくありません。 あわせて読みたい
自身のメンタルヘルスを適切に管理しながら、患者のケアに取り組める強さが必要です。ストレス管理が得意な人や、困難な状況でも冷静さを保てる人は、この職業に適していると言えます。
このように、児童精神科医には特定の素質や適性が求められます。ただし、これらの特徴は生まれ持った才能だけでなく、経験を重ねることで徐々に身についていくものでもあります。自身の適性を見極めながら、必要なスキルを磨いていくことが重要です。
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児童精神科医の需要は高く、様々な医療機関が人材を求めていますが、公募されていない求人情報も数多く存在します。
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