医師の仕事は、人の体の怪我や病気の治療です。
一方、精神科医は人の心の状態に目を向ける仕事のため、他の診療科とは少し異なるイメージがあるのではないでしょうか。

「精神科医になる方法は?」
「精神科医の仕事事情や給与は?」
「精神科医の転職事情は?」

精神科医になるには、医師免許取得後に専門の病院での研修が必要です。
初期の臨床研修で精神科は必須の研修項目となっていますので、臨床研修が終われば精神科医師として就業できるようになります。

今回は、精神科医のお仕事事情について、転職エージェントの目線で解説していきます。
気になる給与や転職事情まで詳しく紹介するので、参考にしてください。


精神科医とは

精神科医とは、精神科に属する医師や専門医の資格を持つ医師で、主に精神疾患、精神障害及び神経症や心身症といった症状の診断と治療を行います。

精神科医が治療する病気として、統合失調症やうつ病などがよく知られています。
近年ではストレス性の心身症やトラウマ、PTSD(心的外傷)などの症状もよく聞かれますが、これらも精神科医の治療対象です。

さらに、アルコールや薬物などの依存症に関する治療は、臨床心理士やソーシャルワーカーといった、患者のケアや相談を受け持つスタッフと連携して治療にあたります。
精神科医は、こうしたチーム医療をまとめていくのも役割です。

精神科医になるには? 学歴や資格について

精神科医も基本的には他の診療科と同じように、国家試験に合格した後、臨床研修と専門医研修を行って目指すことになります。
ここからは、精神科医になるために必要なステップを解説します。

ステップ1:後期研修医として3年間の研修

臨床研修を終えたら、後期研修として専門医研修を3年間行うことになります。
精神科の場合は、日本精神神経学会の会員となり、認定されている研修機関へ申し込み、面接を受けるなどの手順が必要です。

研修プログラムの受講が決定したら、専門医研修が受けられるようになります。
なお、精神科医として働くこと自体は、臨床研修が終われば可能です。

ステップ2:専門医の認定試験

専門医研修を3年以上行うと、専門医試験の受験資格を満たすことになります。
専門医の資格は学会が認定する民間資格ですが、持っていると先々有利となります。

受験資格は以下のとおりです。

(1) 日本国の医師免許証を有するもの 

(2) 5年以上の臨床経験を有し、うち3年以上の精神科臨床経験を有するもの。 ただし、3年以上の精神科臨床経験については、研修に関する施行細則に定める研修施 設群において、専門研修指導医の指導のもとでの研修プログラムに沿った精神科臨床研修 を3年以上おこなったこと。

日本精神神経学会より引用

直近数年の受験者数と合格率は以下のとおりです。

実施年月受験者数合格率
2021年7月625名72.48%
2021年4月547名69.28%
2019年8月554名66.25%
2018年9月509名68.57%
2017年8月527名71.73%

日本精神神経学会より一部引用

併せて取りたい資格「精神保健指定医」

精神科の専門医資格以外では、おすすめの資格として「精神保健指定医」があります。
専門医が学会認定の民間資格なのに対し、精神保健指定医は厚生労働省が定めている資格です。

専門医との違いは、患者の意思にかかわらず強制入院させる権限を持つ点です。
また、精神医療審査会委員として、精神科病院への立ち入り検査なども可能となります。
患者を治療するだけでなく、医療機関の健全性を保つ活動もできるようになるのです。

精神保健指定医の資格取得には、以下の要件を満たす必要があります。

  • 5年以上の診断又は治療に従事した経験を持つ
  • うち3年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を持つ
  • 厚生労働大臣が定めた精神障害についての診断又は治療に従事した経験を持つ(ケースレポートの提出)
  • 厚生労働省令で定められた研修を修了している(資格申請前1年以内に限る)

*厚生労働省「精神保健指定医とは」を参照に作成

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精神科医の仕事内容とは

精神科医の仕事内容は、勤める病院の体系によって多少異なります。
自身で開業したり、診療所やクリニックなど規模の小さい医療機関に勤める場合、問診や紹介状などをもとに患者と話し合いながら診断し、心理療法と投薬が主な治療内容です。

病院の精神科に勤務する場合は、入院の必要があるような重度の患者を診ることが多い傾向です。
また、緊急時には患者の意思にかかわらず入院治療を行うこともあります。
総合病院など大きな医療機関の精神科であれば、内科・外科といった他診療科からのオファーで診療を行うケースも出てきます。

医療機関以外では、一般企業の産業医としての働き方も知られているところです。
この場合は、社員の健康相談や保健指導を行うほか、職場視察なども担当します。

労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、精神科医の年収は平均で1,230万円程度です。
しかし、年収の分布を見ると平均よりやや高く、1,000万円〜2,000万円の年収をもらっている層が多いと言えます。


精神科医から他の科への転職事情

研修医がどの診療科に進むのかを決断するのは、臨床研修が終わる段階が一般的です。
精神科医を目指していた医師が、他の診療科へ転科することは可能でしょうか?

また、すでに精神科医として働いていても、思ったより症例が診られない、給料が少ないなどの理由で転職を考えることもあるかもしれません。

ここからは、精神科医の転科や転職事情についてご紹介します。

精神科医から他の科に転科する難易度は?

精神科医は患者の内面に向き合う仕事のため、患者とのコミュニケーション能力が高くなる職種です。このスキルは何科においても有効と言えるでしょう。

また、精神障害を抱える患者は、身体的な問題も起こしていることが多く、チーム医療で治療にあたることもよくあります。
内科や外科、救急やリハビリテーションといったさまざまな診療科と連携している医師が少なくありません。
こうした経験を活かすことができるので、転科の難易度はあまり高くないと言えます。

ただし、実際に転科するとなると、やはり一から学び直す覚悟が必要となるのは、どの診療科でも同じです。
特に外科などの手技を伴う科の場合は、技術面での修行も必要になってきます。

それでも覚悟を決めることができれば、今までの精神科医としての経験が、転科を十分に助けてくれるはずです。

精神科医が他の病院への転職は簡単?

精神科医がより良い待遇やキャリアアップを求めて転職する際の事情も見てみましょう。
精神科医のニーズは年々高まっています。
理由としては、ストレスのある環境で働く人が多く、企業もメンタルヘルスに注力するようになっていることが挙げられます。

精神的な疲れや異変を感じて、精神科のクリニックなどに通院するケースや、企業の産業医へのニーズは増加傾向です。

精神科医の転職先としては、主に以下の機関が挙げられます。

  • 診療所やクリニック
  • 病院
  • 企業の産業医
  • 精神保健福祉センターなど公的なケア機関

医師は人手不足の売り手市場でもあり、転職先を探すことは難しくない状態です。

転職・転科を成功させるコツ

診療科を問わず、医師の転職を成功させるには情報収集がカギとなります。
特にハードワークを強いられている状態の医師であれば、忙しい合間を縫って転職活動をするのは大変な負担です。
十分に転職先の情報を集められず、その場の判断だけで転職先を決めてしまうと、後で後悔することもあるかもしれません。


精神科医が転職を成功させるコツは、転職エージェントを活用することです。
転職エージェントには、さまざまな悩みを持った医師の転職を数多く支えてきた実績があります。
また、医療機関の情報量も豊富で、一般に公開されていない求人情報も知ることができる点も大きなメリットです。
まずはどのような求人があって、その中で自分のスキルや経験からどんな転職ができるのかという、自分の市場価値も知ることができます。

今の職場を辞める決心がついても、人手不足から引き止めにあってしまうこともあります。こうしたケースもサポートも受けることが可能です。
転職を成功させたいのであれば、医師転職のプロである転職エージェントに相談するのがおすすめです。

 

まとめ(精神科医になるには)

この記事では、精神科医の事情についてご紹介しました。
精神科医になるには、医師免許取得後の研修を終えて、精神科に勤務して実績を積んでいく必要があります。
専門医や精神保健指定医の資格を取得しておくと、活躍の幅が広がり、精神科医としての評価にもつながるので有利です。

精神科医は、患者の心に寄り添った診断や治療が必要なため、他の診療科とは患者へのアプローチ方法が異なることが多々あります。
精神科から別の科に転科したいと思った時には、こうした患者へのアプローチ法は大きな武器となるでしょう。
また、社会構造の変化から生まれるストレスや、超高齢化による認知症の増加などから、精神科医のニーズは年々高まっています。
キャリアアップやより良い待遇を求めて転職を希望する場合でも、転職先を見つけるのは難しくないでしょう。

医師が転職を成功させるためには、情報収集が重要です。
忙しい中でスムーズに転職活動を進めるなら、転職エージェントを積極的に活用することをおすすめします。