昨今「QOL」という言葉が取り沙汰されています。
医師の方もQOLに関して以下のような疑問を持っていませんか?
- 医師にとってのQOLとはなにか?
- 医師が選ぶQOLの高い科とはなにか?
- QOLを高めるにはどうしたらよいか?
上記のように思っている方に向けて、今回は医師の目線から見たQOLをはじめ、QOLの高い診療科や今の医療現場でQOLを高める重要性について詳しくご紹介します。
QOLとは、人生・生活がどの程度豊かなのかを測る指標です。
医師にとってQOLが高い職場は、健康面でストレスが少なくいい職場と言えるでしょう。
また、医師は一般的に見て給与が高いとされていますが、一方で働き方や勤務時間の課題も挙げられています。
今回の記事を読んで、自分が働きやすくなるようなアクションを一つでも起こせるようになり、理想のキャリアプランを歩んで行ってください。 あわせて読みたい
医師にとってのQOLとは?
この章では、本来のQOLにおける定義を踏まえたうえで、医師におけるQOLの基準を解説します。QOLの基礎知識を押さえたうえで、次章で具体的な内容を学びましょう。
そもそもQOLとは?
QOLは「Quality Of Life(クオリティオブライフ)」を略した言葉です。
直訳すると「生活の質」を意味します。
QOL自体が広まるようになったのは1970年代です。
欧米を中心にQOLを測る尺度が次々と開発されました。
日本では、国際QOL学会が開催された2000年代を皮切りに現在へ至ります。
QOLを測る尺度として厚生労働省でも取り上げられているSF-36があります。
SF-36とは、36つの質問から8つの健康概念でQOLのスコアを算出します。
8つの概念における内容は以下の通りです。
- 「身体機能」:日常生活の動作が自力でできるか
- 「体の痛み」:激しい苦痛で仕事に支障が出ていないか
- 「日常役割機能(身体)」:身体的な理由で仕事に支障が出ていないか
- 「日常役割機能(精神)」:精神的な理由で仕事に支障が出ていないか
- 「社会生活機能」:心身の理由で身内や職場との関係に支障が出ていないか
- 「全体的健康感」:健康状態が総じて良いか
- 「活力」:疲れがなく、活力があるか
- 「心の健康」:神経質でなく、穏やかであるか
出典:厚生労働省「介護予防市町村モデル事業中間報告」
参考:下妻 晃二郎「QOL 評価研究の歴史と展望」
医師における「QOLが高い」の基準
医師の方に不可欠なQOLの項目は「全体的健康感」「活力」「心の健康」と言えるでしょう。
医師が仕事だけでなく、日常生活においても充実している状態と説明できます。
具体的には以下の通りです。
- 全体的健康感:健康に問題なく働いている状態
- 活力:仕事が充実している
- 心の健康:日々の業務で急いている状態でない
これらが満たされていると感じれば、医師における「QOLが高い」と言えるでしょう。 あわせて読みたい
医師が選ぶQOLの高い科とは?
QOLが高いと、それだけ仕事での体・心の健康面が良い状態だと言えます。
ここでは、医師が選んだQOLの高い診療科を、前章で説明した3つの項目から解説します。
評価ポイント「全体的健康感」が高い科は?
健康面で不安を感じているかを表す調査として、以下に診療科ごとの健康不安を感じている割合をご紹介します。
<全体的健康感(QOL)が高い科のランキング>
順位 | 診療科 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 内科 | 48.10% |
2位 | 整形外科 | 48.30% |
3位 | 脳神経外科 | 49.60% |
4位 | 麻酔科 | 49.70% |
5位 | 産科・婦人科 | 51.00% |
6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 51.20% |
7位 | 外科 | 53.50% |
8位 | 小児科 | 54.10% |
9位 | 救急科 | 63.90% |
参考:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(p.67)
上記のように全体として、約半数が健康不安を感じている状況です。
とりわけ健康不安の低い診療科、すなわち全体的健康感の高い診療科は「内科」となっています。 あわせて読みたい
評価ポイント「活力」を維持できる科は?
最も「活力」がある診療科を定量的に評価することは比較的困難です。
今回は「やりがいを感じやすい」ことが活力に繋がると仮定し、各診療科におけるやりがいを以下にまとめました。
あくまで参考としてご覧いただけたらと思います。
診療科 | やりがい |
---|---|
救急科 | 最前線で命を救う/多種多様な症状を経験できる |
小児科 | 子どもの姿に励まされる/子どもに関するあらゆる治療経験ができる |
外科 | 手技による治療ができる/全身にわたる外傷の治療ができる |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 専門性が高められる |
産科・婦人科 | 出産に携われる/女医を活かせる |
麻酔科 | 他の診療科と比べて主治医制でない/拘束時間が読みやすい |
脳神経外科 | 脳の手術ができる |
整形外科 | スポーツのサポートが多くできる |
内科 | カバー範囲が幅広い |
もちろん、やりがいには正解がなく、ご自身で定義する必要があります。
現在の医療現場でやりがいを感じていない医師は、「活力」が出るようにご自身を顧みたほうがよいでしょう。
場合によっては転職も視野に入れておくことをおすすめします。 あわせて読みたい
評価ポイント「心の健康」を維持できる科は?
ここでは、勤務医のアンケート調査から「心の健康を維持できる」すなわち「現在の診療科で満足している」と感じている医師の割合をご紹介します。
結論として、ほとんどの診療科で満足しているという結果でした。
なお、多くの診療科では平均して
- 「まあ満足している・満足している」:58.6%
- 「不満である」:18.4%
と答えているのに対して、以下の診療科は満足という回答が突出していました。
- 麻酔科(n = 153):69.3%
- 産科・婦人科(n = 147):68.7%
出典:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(p.80)
このように、今の診療科で満足している医師が過半数を占めている反面、不満な医師もいることが現状です。 あわせて読みたい
QOLを高めるにはどうしたらいい?
ここでは、医師がQOLを高める方法についてご紹介します。
対策してもなかなかQOLが高まらない際は、思い切って今の医療現場から転職するという解決法もあります。
まずはQOLが低い原因を考えて対処する
QOLを高めるには、まずQOLが下がってしまう原因を突き止めましょう。
その際の参考として、医師のよくある転職理由から考えることがおすすめです。
第一ステップとして、医師という職業に従事する上で、最も重視している項目に順位をつけてみましょう。
優先順位の選定には、以下の転職理由を参考にしてください。
- 勤務内容・やりがい:魅力度、働く前とのギャップ
- 家庭・生活事情:家事・育児・介護
- 人間関係の不満:上司や部下、同僚、他の診療科
- 加齢による勤務内容の変更:体力の問題
- 給与・待遇:勤務実績に満たない、給与が上がりにくい
- より多くの経験を積みたい:転科・他の医療機関・開業
- 過剰な業務負荷の軽減:勤務時間・頻度
- 勤務先の将来が不安:経営状況、上層部との相性
- 資格取得:産業医・弁護士・カウンセラー
- 臨床の医療現場以外を経験したい:研究職・開発職・健診医・医療系以外
第二ステップとして、今働いている医療現場は優先順位を満たしているか分析します。 あわせて読みたい
上から順に一つひとつの項目を解決することで、QOLを高められるでしょう。
それでもダメなら転職がおすすめ
もし上記の優先順位を満たせず、QOLを高められなければ、今の医療現場から離れることも選択肢の一つです。
転職することで、根本的な悩みを劇的に解決できる可能性があります。
労働環境の良好な医療現場や、やりがいを感じやすい医療現場へ転職することでQOLを高められるでしょう。 あわせて読みたい
転職ならプロの転職エージェントに相談
医師が転職するなら、医師専門の転職エージェントに相談するとよいでしょう。
転職エージェントは経験豊富な相談のプロです。
ご自身が不満として抱えているQOL低下の原因や本音をヒアリングしてから、医師の方に適性がある転職先をご紹介してくれます。
また、医師専門転職エージェントなら、未公開情報も含めた医療機関の求人を多数持っています。
転職を成功させ、QOLを高めるためにも転職のプロであるエージェントに相談するのがおすすめです。
まとめ(医師が選ぶQOLの高い科)
今回は、医師にとってのQOLや、QOLの高い診療科についてご紹介しました。
全体の健康不安という観点では、救急科を除くと全体の傾向として半々の結果でした。 あわせて読みたい
また、診療科全体で満足度が高いという傾向があり、突出した診療科はありませんでした。
QOLは定性的な内容でもあり、医師の方ご自身の解釈次第ではあります。
ご自身でQOLについて困っていることがあれば、転職エージェントや身内、同僚に相談することをおすすめします。