医師として働いていても、「ボーナスが支給されない」「大幅に減額された」というケースは珍しくありません。

本記事では、
「医師でボーナスが出ないケースとは?」
「医師のボーナス平均額は?」
「病院経営が与える影響」

などについて、厚労省の統計データや業界動向をもとに解説します。
転職先で思わぬ待遇の違いに戸惑わないために、医師のボーナス事情を転職時の判断材料として役立つよう整理しました。


そもそもボーナスがない病院も

初めに認識しておきたいのは、そもそもボーナス支給がない病院もあるということです。
代表的な例としては、年俸契約で勤務している場合が挙げられます。
年俸制の場合、年収額を12で割って月々支給にしているケースが多いので、必然的にボーナスはないです。

中には年俸制でも報酬額とは別にボーナスが支給される病院も存在しますが、決して多くはありません。
転職の条件確認などで報酬が年俸制の場合は、ボーナスが別途支給されるかどうか確認していた方がいいでしょう。

医師のボーナスの平均は?

それでは本題の勤務医のボーナスについて見ていきましょう。
勤務医のボーナスは、他の業種の会社員と同じパターンで支給される例がほとんどです。
支給月は6月と12月の年2回で、金額はおおむね基本給の2カ月〜4カ月分相当となります。

しかし、年齢や経験年数、役職や勤務先の規模によって、回数や金額は変わってきます。
平均的には、どのくらいのボーナスが支給されているのかをご紹介します。

医師全体のボーナスの平均額

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、医師のボーナスの平均は以下の通りです。

 平均年齢平均勤続年数年間ボーナス
男女計44.1歳7.5年106.9万円
男性医師45.8歳7.8年122.4万円
女性医師39.4歳6.6年65.1万円

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに作成

病院の規模別のボーナスの平均額

従業員数男女計男性医師ボーナス平均女性医師ボーナス平均
1,000人以上113.5万円134.6万円64.0万円
100〜999人105.3万円109.6万円84.7万円
10〜99人37.0万円40.3万円33.5万円

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに作成

男性医師は、規模の大きい病院の方がボーナス額が高い水準となっています。
一方、女性医師の場合は規模が小さい医療機関の方が、ボーナス額が高い傾向があります。
一番事業所数が多い100〜999人規模の病院では、ボーナスの男女差はほとんどありません。

しかし、大規模(1,000人以上)と小規模(10〜99人)では、男女の差が大きく出ていることがわかります。
医療機関の規模ごとに、男女医師の在籍数とも比例しそうなデータと言えそうです。

年代別のボーナスの平均額

ボーナスの金額は、年齢によっても変わってくるものです。
年代別のボーナス平均額を一覧にしました。

年代医師ボーナス平均
20代18.15万円
30代66.67万円
40代156.76万円
50代171.14万円

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに作成

20代医師の場合、ボーナス額はとても少ないことがわかります。
この年代の医師は医局に所属していることが多く、いわゆる「医局人事」で半年や1年といった短いスパンでの転勤が重なります。
転勤先でボーナスの支給条件を満たさずに、ボーナスがもらえない医師が多数いるのです。
これが、若年層のボーナスの平均額を押し下げている要因となっています。

30代になると専門医の資格や学位などを取得して、独り立ちする医師が出始めます。
医局所属のままでも頻繁な転勤は少なくなり、ボーナスをもらい損ねる層も減ってくるため平均額が上がり始めます。

そして40代になるとボーナス額は一気に上昇していますが、勤続年数が長くなってきたことの現れと言えるでしょう。
経験も豊富になり、人によっては昇進して責任ある地位に着くことで、ボーナス額も一気に上がります。この傾向は50代まで続き、男性医師の平均額は50代で最大に達しています。

その一方で、女性医師は大きくはボーナスが増加していません
女性医師は、出産や育児で第一線を退いてしまうことや、ブランク明けを非常勤などに切り替えたりすることが影響していると思われます。

経営悪化により相次ぐボーナスへの影響

ここまでは医師のボーナスの平均額をもとに傾向を見てきました。
しかし、ボーナスはあくまで病院の業績に応じて増減するものであることは覚えておきましょう。

昨今はボーナスがカットになったり、減額されたりする事例もあります。
ここからは、昨今の医師のボーナス事情にスポットを当ててみます。

ボーナスを引き下げた医療機関は約4割

新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、多数の医療機関が人手不足と共に、収益悪化に悩まされています。
日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会が合同で行った調査では、2020年の冬のボーナスについて、全体の4割近くの医療機関が減額したという結果でした。

背景には病院の減益があり、2019年と比較しても最大で2割近い減益が出た月も見られます。
また、感染患者を受け入れている医療機関の方が利益率の悪化度合いも高い傾向がわかりました。
感染症への対策のため、一時的な病床の減少を余儀なくされることや、外来を閉鎖するなどの影響が原因です。

対象の病院には国からの補助金制度もありましたが、補助金入金率が芳しくなかったことも関係しているようです。
中には身銭を切って満額のボーナスを支給している病院もあり、苦しい中でスタッフの遺留や慰労に力を入れている様子も伺えます。

その後も原油高騰や物価上昇などによるコスト圧迫など、負の要因が多い状況は続いているのが現状です。
医療機関の経営状態は、しばらくの間は苦境が続くと懸念されています。

ただ、福祉医療機構が行なっている「病院経営動向調査」では、一部医療機関では増益の動きが見られます。
必ずしも暗い未来ばかりではないと思いたいですが、コロナ禍で受けた減収を取り戻せているかは気になるところです。
病院の体力が戻らなければ、ボーナス減額が止まるかどうかは様子見となるでしょう。
実際に、ボーナス減額に遭っている医師からは、下記の声も聞かれます。

・新型コロナウイルス感染症を診た施設が損をするのは腹に据えかねる。・外来患者数も入院患者数も減少しており、今後減俸が検討される可能性が高い

m3.com「月8億減収で冬ボーナスなしか」「非常勤先を解雇」 ◆Vol.14」より引用

ボーナスのある病院で働きたいなら、転職エージェントに相談してみるといいでしょう。

東京女子医大の事例

ボーナスはあくまできっかけに過ぎない事案ですが、ニュースでも大きく報じられたのでご存じの方も多いでしょう。
東京女子医大で、2020年の夏のボーナスをカットするという通達を受けて、看護師を中心に大量辞職が発生したという報道です。

結果として通年の半額程度のボーナスが支給されることにはなりましたが、いわゆる「コロナ禍」における医療従事者の不遇を世間に知らしめることとなりました。

経営に余裕がない医療機関であれば、似たようなボーナスカットが行われていたということが、この件からもお分かりいただけるのではないでしょうか。

本章では新型コロナ禍を中心に記載していますが、近年では物価上昇・人件費増加などの要因で、今もなおボーナス支給に苦しむ医療機関は少なくありません。

まとめ(医師のボーナス事情)

医師のボーナスの平均は、男性で122.4万円、女性では65.1万円となっています。
病院の規模や収益状況、医師の経験年数などによって、大きく差が出るのが実情です。

特に20代の若手医師は、ボーナスがほとんど支給されないケースもあり、早い段階で待遇の差を実感することもあります。
それでも、経験を積み重ねていけばボーナス額は徐々に上がっていきます。

ただし、ボーナスはあくまで病院の業績に左右されるため、「どれだけ働いても支給されない」というリスクがつきものです。
医師の仕事は責任が重く、簡単に転職や離職ができないからこそ、勤務先の経営状況や報酬制度は慎重に見極める必要があります。

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