医師にとってコミュニケーション能力は、知識や技術と同じくらい重要なスキルです。コミュニケーション能力があることで、患者の症状を詳しく把握できたり、チームでの連携がスムーズになったりして、医療の質が向上します。

「患者とのコミュニケーションがうまくいかない」
「患者にうまく説明できず、不安にさせてしまった」

本記事では、医師にコミュニケーション能力が必要な理由を解説します。コミュニケーション能力が高い医師の特徴や能力を向上させる5つの方法も紹介するため、患者やチームでの会話に悩んでいる方に役立つでしょう。

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なぜ医師にコミュニケーション能力が必要なのか?

医師にとってコミュニケーション能力が必要な理由は、以下のとおりです。

  • 患者との信頼関係を構築するため
  • 患者の健康を守るため
  • チームで連携するため
  • 治療効果を高めるため

なぜコミュニケーション能力が必要なのか理解したうえで、スキルを高めましょう。

患者との信頼関係を構築するため

患者が安心して治療を受けるためには、医師との信頼関係が不可欠です。患者は自身の健康状態や治療法に不安を感じている場合が多いため、コミュニケーションを通じて、不安を軽減する必要があります。

実際に、2018年にNTTコムリサーチと京都大学大学院が行った医師と患者のコミュニケーションに関する調査では、医師と患者間で情報提供に関する理解に差があると示されました。
医師の4~5割が十分に情報提供していると回答した一方、患者で必要な情報を受けていると回答したのは3割程度です。

このように認識に差ができやすいため、医師は患者の不安に寄り添い、情報をわかりやすく届け、信頼関係を構築することが求められます。

患者の健康を守るため

医師と患者間のコミュニケーションは、患者の健康を守るうえで重要です。
コミュニケーションが不十分な場合、診断や治療方針に食い違いが起こり、患者の生命を脅かす危険さえあります。

たとえば患者が自身の症状やアレルギー情報を正確に伝えなかった場合、医師は誤った診断を下したり、患者に合わない薬を処方したりするリスクがあります。

逆に、医師が患者の話を丁寧に聞き、疑問点を解消すると、健康に関する認識の相違がなくなり、安全な診療や治療につながるでしょう。

チームで連携するため

現代の医療は医師だけでなく、看護師や薬剤師、理学療法士など、多職種が連携して成り立つため、良好なコミュニケーションが求められます。

例を挙げると、各専門職がそれぞれの視点から患者の情報を共有し、意見交換することで、よりよい治療計画を立てられます。

また、日頃から良好なコミュニケーションが取れていれば、経験の浅い医師のミスや判断の遅れを周囲のスタッフが早期に発見しフォローも可能です。

医師が積極的にコミュニケーションを取り、チーム全体の連携を強化することで、それぞれの専門性を活かした治療やケアを提供できるでしょう。

治療効果を高めるため

医師が良好なコミュニケーションを取れると、患者の満足度を向上させるだけでなく、治療効果向上につながります。

わかりやすい説明により、患者が症状や治療方法に納得でき理解を深められ、治療に積極的になるためです。それに伴い、治療効果が高まり、早期回復につながるでしょう。

例えば、医薬産業政策研究所の「医療消費者と医師とのコミュニケーション」では、医療現場において良好なコミュニケーションが取れていると、患者の満足度が増加し、自主的な健康管理が増えることが報告されています。
これにより、治療が中断されず効果が高まるでしょう。

このように、医師と患者のコミュニケーションは、治療効果にも影響を与えます。

コミュニケーション能力が高い医師の3つの特徴

コミュニケーション能力が高い医師には、下記のような特徴がみられます。

  • 患者の話を注意深く聞き、理解する姿勢がある
  • 専門用語を避け、わかりやすい言葉で説明する
  • 患者に共感している姿勢を示す

上記の特徴を知り、診療時に心がけることで、コミュニケーション能力が向上します。それぞれの特徴を詳しく解説します。

1.患者の話を注意深く聞き、理解する姿勢がある

コミュニケーション能力が高い医師は、患者の話を深く聞くことを大切にしています。

単に話を聞くだけでなく、言葉にしていない思いも理解する姿勢があります
患者の表情の変化や声のトーン、話す速度など、言葉以外の情報にも注意を払うところが特徴です。

患者の言葉と非言語的な情報を総合的にとらえて、深く理解しようとする姿勢が、信頼関係構築につながります。

2.専門用語を避け、わかりやすい言葉で説明する

コミュニケーション能力が高い医師は、難しい情報をわかりやすく伝える能力に長けています。
医療の専門用語は、患者にとって難解な場合が多いため、わかりやすい言葉に置き換えて説明しましょう。

たとえば「高血圧症」を「血圧が高い状態」と伝えたり「心筋梗塞」を「心臓の血管が詰まる病気」など、具体的な言葉で表現します。

さらに、図やイラストを用いたり、身近なものに例えたりするのも有効です。
患者が理解しやすい説明を心がけると、治療に対する理解が深まり、納得して取り組んでもらえるようになります。

3.患者に共感している姿勢を示す

コミュニケーション能力が高い医師は、患者の気持ちに寄り添い、共感を示すことを大切にしています。
患者の不安や悩み、痛みなどに対し共感の言葉をかけています。

そのため、患者の考えや行動を認め、同じ立場に立って理解するよう努めましょう。

具体的には、治療への不安を訴える患者に対し「不安に感じるのは当然です」と、気持ちを受け止めます。そのうえで「一緒に頑張りましょう」と励ますと、患者は「自分を理解してくれている」と感じ、信頼関係を深められます。

医師がコミュニケーション能力を向上させる5つの方法

医師がコミュニケーション能力を高める方法として、以下の5つが挙げられます。

  • 自分4:相手6の割合で話す
  • 定期的なフィードバックをもらう
  • 非言語コミュニケーションを意識する
  • 返答が思い浮かんでも、1秒間は黙る
  • 傾聴する

普段から心がけることで、コミュニケーション能力が上がるため実践してみましょう。それぞれの方法を詳しく解説します。

1.自分4:相手6の割合で話す

コミュニケーションにおいては、説明を聞いてもらい相談しやすい雰囲気を作るために、自分と患者の会話の割合に気を配りましょう

具体的には、自分4:相手6の割合で話してください。自分が一方的に話すことを避けられて、相手に話してもらいやすい黄金比です。

実践する際には、患者の理解度や疑問点を確認しながら、話を進めましょう。

「ここまでの説明で何かわからないことはありますか?」「〇〇をもう少し詳しく説明しましょうか?」など、こまめに質問を挟むと、患者がわからない点を聞きやすくなります。

4:6の割合はあくまで目安ですが、患者中心のコミュニケーションを心がけましょう。

2.定期的なフィードバックをもらう

医師としてコミュニケーション能力を高めるためには、定期的なフィードバックを受けることが重要です。コミュニケーションの癖や問題点は、自分だけでは気付きにくいからです。

指導医や先輩医師など、日頃から一緒に仕事をしている人に、下記のように意見を求めましょう。

  • 説明が早口になっていないか
  • 専門用語を使いすぎていないか
  • 患者の話を十分に聞けているか

また、ネガティブなフィードバックだけでなく、ポジティブな意見をもらうことも有効です。
「患者の目を見て話せている」「共感できている」などのよい点を評価してもらい、モチベーションアップにつなげましょう。

3.非言語コミュニケーションを意識する

コミュニケーションでは、非言語コミュニケーション(言葉以外の手段を使って情報を伝えること)も大切です。
人はコミュニケーションの大半を視覚や聴覚などの非言語的な要素から受け取っているからです。

たとえば、笑顔で患者に接すると、安心感を与えられます。逆に、腕組みをしたり、目を合わせなかったりすると、患者は不安や不信感を抱く恐れがあります。

非言語コミュニケーションを意識することで、言葉だけでは伝わりにくい感情やニュアンスを伝えられます。

4.返答が思い浮かんでも、1秒間は黙る

患者とのコミュニケーションでは、返答のタイミングも大切です。即座に返答すると、患者は話を遮られたと感じ、不快感を抱きやすくなるためです

また、返答のタイミングが速すぎると「話をきちんと聞いてくれていない」「受け流された」という印象を与え、その後の会話がぎくしゃくしてしまうでしょう。

患者の話を聞いている最中に返答が思い浮かんでも、すぐに反応せず、1秒間は黙ることを意識してください。
患者は「自分の話をしっかり聞いてくれている」と感じ、安心して話せるようになります。

5.傾聴する

傾聴とは、話をただ聞くだけでなく、相手の言葉に積極的に耳を傾け、内容を深く理解しようと努めることです
厚生労働省のこころの耳によると、傾聴(積極的傾聴)には下記の3原則があるとされています。

原則内容
共感的理解相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。
無条件の肯定的関心相手の話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずに聴く。相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く。そのことによって、話し手は安心して話ができる。
自己一致聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認する。分からないことをそのままにしておくことは、自己一致に反する。

引用:厚生労働省 こころの耳「傾聴とは

たとえば、共感的理解であれば、患者の気持ちに寄り添いながら言葉の背景にある感情や本当に伝えたいことは何かを考えながら聞きます。

具体的には患者が「最近、体がだるい」と言った場合「だるさ」の具体的な内容や程度、いつから続いているのかなどを質問すると、より詳しい情報を引き出せるでしょう。

また、先述したように相手の言葉を遮らず否定をせずに、関心をもって聞くようにしましょう。

【シーン別】医師が意識したいコミュニケーションのコツ

医師がコミュニケーションを取る場面はさまざまです。本章では、医師が取りたいコミュニケーションのコツをシーン別に解説します。

  • 外来診療の場合
  • 医療従事者同士で連携する場合

患者から信頼されチームで連携するためにも、次項の内容を実践してみてください。

外来診療の場合

外来診療では、信頼関係構築が特に重要です。そのため、問診開始時は、体を患者の方へ向け、目を見て話すことを基本姿勢としましょう。

患者は「自分の話をしっかり聞いてくれている」と感じ、安心して話せるようになります。

電子カルテの操作に集中しなければならない場合は、看護師や医療事務スタッフに電子カルテの入力を依頼するのも効果的です。患者の情報を入力してもらうことで、医師はコミュニケーションに集中できます。

また、説明の際は「結論→項目提示→具体例→短い言葉で説明」の4段階構成で話すと、より理解しやすくなります。
たとえば、高血圧の患者には、下記の流れで会話しましょう。

  • 血圧が高い状態です。(結論)
  • 原因はいくつかあります。(項目提示)
  • たとえば、塩分の摂りすぎや運動不足です。(具体例)
  • 血圧を下げることが大切です。(短い言葉で説明)

抽象的であいまいな表現は患者に伝わりづらいため、注意してください。

医療従事者同士での連携の場合

医療従事者同士であっても、職種や診療科によって背景知識が大きく異なります。例えば、同じ病気に対しても、医師は詳しい病態や治療法について深い知識を持つ一方、看護師は看護ケアの知識を有しています。

このような知識の違いを認識せず「相手もわかっているだろう」という前提でコミュニケーションを取ると、誤解が起きたり情報が伝わらなかったりします。

そのため、シンプルに重要なことから伝えることが大切です。例えば「急性心筋梗塞の可能性がある64歳の女性患者さんがいます。至急診察していただけますか?」と病状・緊急度・具体的な依頼内容を簡潔に伝えましょう。

状況や必要なアクションを明確に伝えることで、コミュニケーションの質が向上します。

医師にとってコミュニケーション能力は不可欠

医師にとってコミュニケーション能力は、患者との信頼関係を築き、質の高い医療を提供するために不可欠なスキルです
日々の診療でコミュニケーション能力を意識し向上させると、患者の満足度を高め、チームでの連携を強化できます。
本記事で紹介した非言語コミュニケーションや傾聴などの方法を実践して、コミュニケーション能力を高めましょう。

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