放射線科医の仕事には、レントゲンなどの画像診断を行う「画像診断医」と、がん治療などでの放射線治療を行う「放射線治療医」があります。
過重労働になりにくいと言われていて、昨今では医師の数も増えてきている診療科です。
しかし、一方でこのような声もあります。
「放射線科医がいらなくなるって本当?」
「その原因は?」
「今後放射線科医はどうしたらいい?」
医療現場のAI化が進むことで「放射線科医の仕事が減ったりなくなったりしてしまうのではないか」という不安を感じている方が増えているのです。
この記事では、このような不安や悩みを持つ方のために、放射線科医の重要性やこれから求められるポイントなどをまとめました。
放射線科医の現状についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
放射線科医の現状
放射線科医の1つである「画像診断医」は、CTやMRIなどの検査で適切な撮像範囲や撮影方法などの判断や、撮影後の画像診断を行うのが主な仕事です。
また、がんや悪性腫瘍の放射線治療で、放射線量の調整を担当する医師は「放射線治療医」と呼ばれ、どちらの業務をするかは医師自身が決めることができます。
放射線治療医の中には、IVRと呼ばれるカテーテル器具を使用した治療を担う人材も増えてきています。
労働政策研究・研修機構の調査では、放射線科医の平均年収は1,103万円で、週あたりの労働時間平均は46.1時間です。
放射線科の検査や治療は予約制のところも多く、勤務時間の管理がされやすい傾向があります。
このため、検査曜日ごとに複数の病院を渡り歩いたり、健診期間と掛け持ちで働いたりする放射線科医もめずらしくありません。
ワークライフバランスを重視したい子育て中の医師などにも人気のある診療科です。
放射線医の人数と推移
厚生労働省がまとめた「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、放射線科医の人数は増え続けています。
少し古いデータと直近の人数を比較してみました。
調査年度 | 人数 |
---|---|
2004年 | 4,780人 |
2006年 | 4,883人 |
2018年 | 6,813人 |
2020年 | 7,112人 |
*厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」を参照し作成
2004年には4,780人でしたが、2020年の調査では7,112人と1.5倍近く増えているのがわかります。
放射線科医は当直なども少ないことが多く、働きやすい職場としても知られることも人数が増えている要因です。
ただし、放射線治療の専門科がある病院などでは、緊急治療の対応や当直が発生するところもあります。
放射線科医は増えてはいますが、医師全体の人数からするとわずか3%程度しかいないのが現状です。 あわせて読みたい
特に放射線検査医は高齢者が多く、彼らが引退してしまうと人手不足が加速する恐れもあります。
放射線科医はいらなくなるのか?
最近時々聞かれるのが「放射線科医の仕事はAIに取って代わられるのではないか」という声です。
AIの進歩は加速していて、その波は医療業界にも押し寄せています。
Googleが開発したAIと放射線科医がCT画像の読影を行い、AIの方ががんの判定率が高かったという結果も出ています。(CNET Japan「グーグル、乳がん識別でAIが人間を上回ったと発表」より)
AIはディープラーニングが繰り返されることで、更なる技術の向上も期待されていて、予防や診断は特に開発が進んでいる分野です。
経験豊富な医師よりも高い精度で読影ができるとなると、放射線科医が抱く不安もあるでしょう。
結論としては「放射線科医はいらなくならない」と考えるのが正しいのではないでしょうか。
なぜなら、AIが診断を行うようになったとしても人の管理は必要だからです。
機械ですから故障のリスクもありますし、診断はAIでも100%正確なわけではありません。
万が一医療事故などが起きてしまった場合、AIだけが診断に関わっていると、責任の所在が問題になってきます。
このため、最終的には人間の医師による判断や決定が必要となってくるのです。
これからの放射線科医に求められること
医療機器の進歩やAIを駆使したベンチャーの参入など、医療の技術の革新が進む中で、これからの放射線科医に求められることとはなんでしょうか?
放射線治療は、技術の進歩により治療効果も高まっていて、手術による治療にも匹敵するほどです。
さらに痛みや出血などの負担を極力減らす治療方法としても注目が集まっていて、今後もニーズは増えていくと考えられています。
そのような中で、これからの放射線科医に必要なことや将来への考え方をご紹介します。
AIなど最新の機器を使いこなす
日頃からCTやMRIなどの機器を駆使して画像診断を行う放射線科医は、AIとの相性は良いのではないかと言われています。
ディープラーニングで精度を上げたAIの画像解析を活用することは、放射線科医の仕事を奪うことではなく、むしろ助けるツールだと考えることがポイントです。
判断の裏付けや読影の時間を短縮するために活用することで、AI機器は放射線科医にとって力強い相棒となります。
また、新興ベンチャーの参入が盛んな今の状態は、これからの医療現場の改革にも影響を及ぼすでしょう。
すぐにまた次の最新鋭機器が開発・導入されるかもしれません。
そうした新しい技術や機器を積極的に取り入れ、使いこなすことで、放射線科医としての存在価値がさらに高まるでしょう。
専門医資格の取得を目指す
先ほど放射線科医の平均年収は1,103万円とご紹介しました。
放射線科医の年収額は、画像診断医として検査業務を専門とするのか、放射線治療医として治療業務を専門とするのかで変わってきます。
実は、治療業務を専門とした場合は、検査業務より年収は高めです。
こうした好条件の職場で働こうと思ったら、専門医の資格を取得しておくことが望ましいでしょう。
放射線科医は、検査でも治療でも重要な診断に関わる存在です。
専門性は高ければ高いほど、キャリアアップにつながります。
また、専門医資格を取っていれば、転職を考えた時にも有利です。
放射線科だけでなく、治療で関係性のある脳血管治療などの専門医資格も保有していると、さらに自身の市場価値がアップするでしょう。
将来性を見据えて転職・転科の選択肢を持つ
放射線科医に限った話ではありませんが、将来性を考えた時、不安な要素があるのであれば、転職や転科で解消するという方法もあります。
放射線科医は、画像診断医と放射線治療医とで働き方を自分で選ぶことができます。
家庭と仕事の両立が必要で、ワークライフバランスを見直したいのであれば、画像診断医としてゆとりある働き方を選ぶことも可能です。
最新技術をどんどん吸収してキャリアアップを目指す場合は、放射線治療医として働きながら、更なる技術向上を目指すのも良いでしょう。
また、業務に関係する他の専門医資格取得を視野に入れるのも有効な方法です。
そのための転科であれば、病院側の理解も得やすいかもしれません。
将来に不安を感じる時は、医師としてどのようなキャリアを積み重ねていきたいのかを長い目で考えてみることをおすすめします。
そして、転職や転科を検討するのであれば、転職エージェントを利用することで転職失敗のリスクを減らすことができます。
医師専門の転職エージェントなら、たとえ転職につながらなかったとしても、キャリアプランを相談して見直すことも可能です。
さまざまな医師の悩みに向き合ってきた実績をもとに、一人ひとりの最適解を導く助けとなるでしょう。
まとめ(放射線科医の将来性とAIの影響)
「放射線科医の仕事はAIに取られてしまうのか?」という不安をお持ちの方に向けて、放射線科医の現状と将来性についてまとめてみました。
AIの精度は高く、ディープラーニングを重ねることで、患者さんそれぞれの状況も判断できるようになってきています。
また、AIは画像診断などに威力を発揮するため、普段から読影を仕事とする放射線科医とは相性が良いとも言えます。
「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIを活用して放射線科医としてさらにスキルを高める」ことができると考えるのが良いのではないでしょうか。
放射線科医は働き方をある程度自分で選ぶことができます。
ワークライフバランスを大切にしたい場合、画像診断医として時間管理のしやすい働き方を選択できるため、子育て中の医師にも人気があります。
また、最新機器を使いこなし、関連分野の専門医資格も取得しながらスキルアップすることで、自身の市場価値を高め、より良い待遇や環境のあるところへ転職することも可能です。
放射線科医がキャリアプランを考える上で、画像診断医と放射線治療医という2つの選択肢があるのは有利なポイントと言えるでしょう。
前述したような働き方で、結婚や出産・育児などライフステージの変化にも対応しやすい診療科と言えます。 あわせて読みたい
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