2018年から新しくなった新専門医制度では、19ある基本領域の中からの専門医資格を取ることが必須となりました。
さらにサブスペシャリティ領域の登場により、より多角的なスキルの獲得を目指すことが可能となっています。

「新専門医制度の種類とは?」
「19の基本領域の診療科とは?」
「29のサブスペシャリティ領域の診療科とは?」

この記事では、専門医資格やサブスペシャリティの取得について、転職エージェントの視点から詳しく解説していきます。
これから専門医研修プログラムを決める方の参考になれば幸いです。

新専門医制度の概要

最初に、新専門医制度の概要についてご紹介します。
2018年からスタートした新専門医制度は、医師免許を取得した医師が臨床研修を履修した後に選ぶ進路です。

次の段落から解説しますが、内科や循環器、外科などの各専攻から基本領域プログラムを選び、その研修プログラムを実施している病院で履修します。
履修後は、日本専門医機構の認定を受けることで専門医の資格を得られます。

研修プログラムの履修にかかる年数は3〜5年程度です。年数は実施している医療機関や部門によって異なります。
基本領域の専門医として認定を受けた後は、その分野をより深めるためのサブスペシャリティ領域での研修を受けることが可能です。

この二階建ての構造により、診療科により特化したスキルを身につけることができるようになります。
また、診療科によっては、基本領域と同時に研修が進められる「連動研修」制度も導入されています。

新専門医制度19の基本領域の一覧

新専門医制度で最初に履修する基本領域の19種類をご紹介します。

基本領域名特徴
内科消化器、循環器、呼吸器、血液など幅広い分野を履修
小児科子供の総合診療医、育児・健康支援、学識・研究者など5つの小児科医像を達成できる
皮膚科皮膚にまつわるすべての疾患について履修
精神科心と脳を対象に、多岐にわたる精神疾患を学ぶ
外科外傷をはじめ、消化器や呼吸器血管など内臓に関する外科治療も履修
整形外科運動期間を構成する組織に関して学ぶ
産婦人科生殖や婦人科腫瘍、女性ヘルスケアなど幅広い範囲を履修する
眼科目に関するあらゆる疾病や症状に対応できる基礎的な診療ができるようになる
耳鼻咽喉科耳、鼻や気管、食道などの診療を外科的にも内科的にもカバーする
泌尿器科腎臓・尿器系の外科的治療から内科的診断を学ぶ。また、小児科や前立腺がん、膀胱がんなどについても精通する
脳神経外科神経系の手術や救急対応、画像診断やリハビリなど、脳と神経に関する多岐にわたる分野を履修
放射線科画像診断やIVR、治療分野など最先端の機器や手技について履修
麻酔科手術や救急医療などでの麻酔管理をはじめ、ペインクリニックや緩和医療なども履修する
病理疾患を確定するための技術や知識を学ぶ。Doctor of doctorsとも呼ばれる分野
臨床検査患者さんの検査結果から疾患などの推測を行うため、生体メカニズムや生理構造などを幅広く履修
救急科救急救命や集中治療などのスキルを身につけます。
形成外科患者さんの欠損部位の再建を目指す診療科で、広く美容医療との親和性もある分野
リハビリテーション科疾患や外傷で生じた機能障害を回復するためのスキルを学びます。
総合診療プライマリケアのプロフェッショナルとして患者さんのあらゆる症状を見ることができる医師を目指します。

日本専門医機構のHPを参照に作成

それぞれの基本領域で研修プログラムがあり、履修期間は3〜6年程度です。
研修終了後は、学会認定を受けることで、専門医として認められます。
研修プログラムにはカリキュラム制やプログラム制があり、研修を実施している施設だけでなく関連病院などの連携施設を回るものもあります。

29のサブスペシャリティ領域の一覧

サブスペシャリティ領域は以下の通りです。

研修方式領域名
連動研修を行い得る領域
(連動研修方式または通常研修方式)
消化器内科
循環器内科
呼吸器内科
血液
内分泌代謝、糖尿病内科
脳神経内科
腎臓
膠原病、リウマチ内科
消化器外科
呼吸器外科
心臓血管外科
小児外科
乳腺外科
放射線診断
放射線治療
連動研修を行わない領域
(通常研修方式)
アレルギー
感染症
老年科
腫瘍内科
内分泌外科
少なくとも1つのサブスペ領域を習得した後に研修を行い得る領域
(補完研修方式)
肝臓内科
消化器内視鏡
内分泌代謝内科
糖尿病内科
放射線カテーテル治療
連動研修を行わない領域
(通常研修方式)
集中治療科
脊椎脊髄外科
新生児
小児循環器

日本専門医機構のHPを参照に作成

新専門医制度は基本領域とサブスペシャリティ領域の二階建て構造で、あらかじめ対象の専門医認定を受けてから研修を受ける仕組みです。
ある程度の専門性を身につけてから学ぶことで、研修がより効果的になるというメリットを目指しています。

ただし、一部のサブスペシャリティ領域は対象の基本領域が限定されており、ハードルが高い状況です。
また、前述した専門医研修と同時履修が可能な分野も15領域あります。
研修期間が長くなることで医師としての独り立ちが遅くなることや、転科を目指すと診療の空白期間が長くなってしまうことを防ぐのが目的です。
このため、要件を満たすことで、遡って連動研修として見なされる領域もあります。

従来の専門医制度と新専門医制度の違い

今までも初期研修を終えた研修医は、専門医制度を利用して各診療科の専門医の資格を取得していました。
しかし、従来の専門医制度は種類が多岐に渡り、プログラムは現在のサブスペシャリティ領域よりも細かかったことが大きな違いです。

さらに、専門医ごとの学会が独自に認定プログラムを作っていたため、言葉は悪いですが、専門医プログラムが乱立していた状況でした。
もちろん、従来の制度でも目指すキャリアに向けたスキルの研鑽はできますが、中にはレーザー専門医や温泉療法専門医などピンポイントなものもありました。
しかもそれぞれ認定する学会が異なるため、幅広い知見を得たいという場合などは、その都度研修プログラムを履修しなくてはなりませんでした。

新専門医制度での最大の変化は、認定期間が中立的な第三者機関として「日本専門医機構」に集約されたことです。
今までは各学会で独自運用されていた基準などの統一を図っています。
さらに、固定されたプログラムだけでなく、単位制で研修を組める制度を導入することで、研修医の結婚や出産、家族介護などのライフイベントにも対応できるようになったのが大きな変化です。

また、基本領域とサブスペシャリティ領域の二階建て構造にすることで、医師一人ひとりがより自分に合わせたキャリアプランを描けるというメリットもあります。
ある程度の制限はあるものの、関連する領域であれば履修できるプログラムの幅を広げる工夫もできるようになっているのです。

運用開始から7年経過。新専門医制度の課題は?

2018年4月から新専門医制度がスタートして、すでに7年が経過しました。制度の定着が進む一方で、依然としていくつかの課題が指摘されています。

まず、新専門医制度では基本領域の研修プログラム上、基幹病院と連携医療機関を行き来する必要があります。
そのため、基幹病院が集中する都市部に研修希望者が偏在しやすい傾向があり、地域医療のバランスを崩す要因となっています。
また、連携病院へ出向する際には
引っ越しを伴うケースもあり、育児や介護といったライフイベントを抱える医師にとって負担が大きいという課題も残されています。

さらに、基本領域とサブスペシャリティ領域の二階建て構造により、診療科によっては6年以上の研修期間を要するケースもあります。
その結果、現場で独り立ちするまでのタイミングが遅くなることが懸念されています。

また、専門医資格は原則5年ごとの更新が必要です。場合によっては、サブスペシャリティ領域の研修中に基本領域の専門医更新を迎えることになり、研修と更新作業を並行して行わなければなりません。
2025年現在、2018年度に新制度で研修を開始した医師が、
2026年に初めて更新時期を迎えることになります。
そのため、日本専門医機構としても、更新制度や研修の運用方法をさらに整備していく必要があるとされています。

まとめ(新専門医制度の基本領域とは)

2018年から導入された新専門医制度について見てきました。
従来の専門医制度と大きく異なるのは、研修プログラムの実施や認定を管理する期間が日本専門医機構に集約された点です。
基準や運用ルールの統一が図れ、患者さんサイドから見てもわかりやすくなるというメリットがあります。
一方で、まだ始まって間もない制度のため、課題もあります。今は都市部や大病院などの基幹病院に人が集中してしまっている状態です。

新専門医制度は基本領域とサブスペシャリティ領域との二階建て構造で、医師一人ひとりがより細かいキャリアプランを描きやすくなっていると言えます。
領域によっては基本領域との同時研修も可能なので、専門医として臨床現場に立つまでの期間を短縮することも可能です。
さらに、基本領域に関連する範囲内であれば、サブスペシャリティ領域を新たに取得することで、転科や転職などに有利なスキルを身につけやすいとも言えるでしょう。

キャリアプランを描いていく上で、どういったスキルを身につけていくかはとても重要です。
取得した専門医資格を活かした転職や転科を考えるのであれば、転職エージェント「メッドアイ」へ相談してみるのがおすすめです。
さまざまな医師の悩みに寄り添ってきた実績のある転職エージェントであれば、キャリアプラン作りから相談に乗ってもらえるでしょう。