高齢化社会によって在宅医療のニーズが高まっています。

在宅医への転職や将来的な開業を視野に入れている医師は、興味がある分野ではないでしょうか。

  • 「在宅医療はどのような医療?」
  • 「在宅医の専門医制度はあるのか?」
  • 「在宅医に向いている医師は?」

今回はこのような疑問をお持ちの方に向けて、医師専門の転職エージェントが在宅医療の定義や在宅医の働き方などを解説します。

在宅医への転職に有利な情報もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。


在宅医療(訪問診療)の定義

在宅医療(訪問診療)の定義は、一般社団法人「全国在宅療養支援医協会」によって以下のように記されています。

在宅医療の定義として、「医療を受ける者の居宅等において、提供される医療。」と定義する事が出来る。外来・通院医療、入院医療に次ぐ、「第3の医療」と呼ぶ場合もある。

参考:全国在宅療養支援医協会『在宅医療について』

これまで医療行為を行う場所は「診療所」や「病院」に限定されており、在宅医療は往診時の突発的な状態に対応するための例外的な位置づけでした。

しかし、1992年の「医療法二次改正」によって 医療を受ける患者さまの居宅なども医療行為を行う場として正式に認められるようになります。

それに伴い、在宅医療に対する従来の認識も変化し、現在では「病気や老衰の影響で身体機能が著しく低下し医療機関への通院が困難な方へ医療従事者が実施する医療」の総称として広く認知されることとなったのです。

在宅医とは? 概要と専門医制度

在宅医について、以下の2つの項目をご紹介します。

  • 「在宅医療専門医」の概要
  • 「在宅医療専門医」の取得条件

「在宅医療専門医」の概要

「在宅医療専門医」とは、一般社団法人日本在宅医療連合学会(以下、日本在宅医療連合学会)が定める専門医制度の「認定試験合格者」に認められる資格のことを指します。

日本在宅医療連合学会は、日本在宅医学会と日本在宅医療学会が合併して2019年に誕生した団体の名称です。

日本在宅医学会は1999年に設立され、2012年に一般社団法人化しました。

在宅医療をエビデンスにもとづいた医療として実現することを目的としており、活動内容は「在宅療養者のQOLの向上への寄与」「在宅医療に携わる医師が在宅での治療やケアについてより深く学べる土壌の発展」につながるものとなっています。

同団体の専門医制度の変遷は以下の通りです。

2002年発足
2005年経過措置
2008年研修プログラムの認定開始
2009年テキスト『在宅医学』の発行
在宅医療専門医研修開始

もう一方の日本在宅医療学会は1999年に発足され、同年1999年に「日本在宅医療研究会」、2008年に「日本在宅医療学会」と名称を変更、2015年に社団法人化しました。

こちらのさらに前身となる団体は「在宅癌治療研究会」で、1999年の発足当初はそれに則り、がん患者さまを対象とした在宅医療の確立と充実を目標として掲げていました。

その後はがん以外の疾患にも対象を広げ、学術集会の場を中心に在宅医療の問題点を取り上げ、その将来性を考慮した意見交換などに取り組んでいます。

日本在宅医療学会の特徴としては、大きく分けて以下の5つが挙げられます。

  • 理事長として急性期病院の経営にも携わる医師(とくに管理部門経験者)が多数参加している
  • 多職種連携の実現
  • 病院と地域における切れ目のない在宅医療体制
  • ICTによる情報共有への関心の高さ
  • 在宅がん治療における連携体制の構築と医療の質向上

参考:一般社団法人 日本在宅医療連合学会

「在宅医療専門医」の取得条件

在宅医療専門医資格の取得には、以下の2つの試験に合格する必要があります。

  • 書類審査による一次試験
  • 選択式試験とポートフォリオ面接で構成される二次試験

専門医試験の受験資格は以下の通りです。

  • 1年以上在宅研修プログラムを受講し修了している
  • 5年以上、医師としての経験を積んでいる

なお、5年以上の在宅医療(訪問診療)経験及び学会の認定を条件に、在宅研修施設での研修医期間(常勤勤務)が免除される「実践者コース」というものも存在します。
参考:一般社団法人 日本在宅医療連合学会『専門医制度』

在宅医の平均年収は?

在宅医の平均年収は、*1,515万〜1,989万円で、医師全体の平均年収と比較しても高い金額です。(*2022年3月時点のドクタービジョン掲載求人をもとに平均値を算出)

これは開業医・勤務医いずれの場合でも同じく高い傾向にあり、在宅診療医の求人でも年収1,500万から2,000万円以上のものが見受けられるほどです。

しかし、そうは言っても開業医のほうが勤務医よりも年収は高く、クリニックの開業で見込まれる平均年収は2,700万円以上という結果も出ています。

開業医の平均年収は2,763万円

引用元:第22回医療経済実態調査

在宅医の平均年収が高い理由としては、開業医が多いことや訪問診療も積極的に行うことによって診療点数を外来診療の10倍ほどに設定できる点が挙げられます。

ただし、その分診療に必要な機材が高額で初期投資が必要だったり、機材の取り扱い方法の熟知や新しい技法を常に取り入れる気概が求められるなどのハードルの高さもあるのでその点はご留意ください。

在宅医として働きやすい医師は?

在宅医に向いている医師の特徴は以下の2つです。

  • 患者の意思を尊重できる医師
  • スキルアップをし続けられる医師

患者の意思を尊重できる医師

1つ目に、患者さまの意思を尊重できる医師が挙げられます。

在宅医療では、療養中の患者さまの社会性の担保やご家族・介護者などの周囲の人間に対する負担の軽減なども考慮して、介護やその背景にある生活そのものが抱える問題に医師が直接向き合う必要があります。

そうやって真摯に対応する中で、患者さま本人やご家族の希望を最大限重視することが求められるのです。

特に終末医療の現場ではことさらその気が強く、診察や治療等すべての医療行為において患者さま自身の意思が尊重されることとなるでしょう。

その際には医師の意見を押し付けるのではなく、あくまでもご提案するという姿勢が大切になってきます。

スキルアップをし続けられる医師

2つ目に、スキルアップをし続けられる医師が挙げられます。

在宅医療はニーズの高まりに比例して、年々その選択肢も増えています。

患者さまごとに適切な医療を提供するために、日々新しい技術の獲得や既存の手技のスキルアップが必要となってくるのです。

また、病院・診療所とは異なり設備や機材が限られていることからも、そのような制限下で臨機応変に動くことができるように、柔軟な思考や対応力の向上が求められることになります。

在宅診療で開業を目指す時のポイント

在宅診療で開業を目指す時のポイントは大きく分けて3つあります。

在宅診療で開業を目指す時の3つのポイント

  1. 在宅医療に取り組む割合を決める
  2. 地域のニーズを把握して強みを用意する
  3. ホームページでのアピールに力を入れる

第1に在宅医療に取り組む割合を決めることです。
具体的には、クリニック(在宅療養支援診療所)の方針を在宅診療専門にするか在宅診療中心にするかを決めてください。

前者と後者では運営のハードルが大きく異なることになるので、開業前にはまずこの方針の決定が重要になります。

第2に地域のニーズを把握して強みを用意することです。
例えば、高齢者が多い地域では「訪問看護」や「往診頻度の増加」といった策を講じるなど、地域の特色に沿った医療供給体制の構築が大切になります。

第3にホームページでのアピールに力を入れることです。
ホームページの存在は開業前のコネクション作りや、開業後におけるビジネスの窓口として幅広く役に立ってくれます。

在宅医になるためには

在宅医になるためには、勤務医の求人に応募するか、自ら開業するかの2パターンがあります。

求人に応募する場合、多くの求人情報の中から自身にあったものを選定するのが大変なので、一人で悩む前に転職エージェントに相談するのがおすすめです。

医師専門転職エージェントメッドアイなら、医師のキャリアプランに合った職場探しを全力でサポートします。

まとめ(在宅医について)

今回は在宅医療の定義や在宅医の働き方などについて解説しました。

在宅医療専門医資格の取得に必要な試験

  • 書類審査による一次試験
  • 選択式試験とポートフォリオ面接で構成される二次試験

在宅医の平均年収

  • 1,515万〜1,989万円

在宅医に向いている医師の特徴

  • 患者の意思を尊重できる医師
  • スキルアップをし続けられる医師

在宅診療で開業を目指す時の3つのポイント

  1. 在宅医療に取り組む割合を決める
  2. 地域のニーズを把握して強みを用意する
  3. ホームページでのアピールに力を入れる

在宅医になるための方法

  1. 勤務医の求人に応募する
  2. 自ら開業する

在宅医は医療機関の勤務医に比べて求められる資格や技術が多い分、収入も高い傾向にあるということがわかりました。

現在転職を考えているという方は、在宅医という選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
その際には一度転職エージェントに相談されることをおすすめします。

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