救急医療は命を救う重要な役割を果たす分野であり、その現場ではさまざまな挑戦とやりがいが待っています。
救急医療現場の現状について知りたい方や、救急医療現場での仕事に興味を抱いている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、救急医療の現状について詳しく解説し、救急医療現場での仕事について知りたい方々に役立つ情報を解説します。
救急医療の課題や救急医療への転職についてのアドバイスまで、幅広い情報をまとめてお伝えします。

この記事を読むことで、救急医療に関心を持つ方々には、救急医療の重要性や魅力について深く理解していただけるでしょう。
また、救急医療現場でのキャリア構築や転職を検討している方々にも参考になりますので、ぜひ最後までお読みください。

救急医療とは何か

救急医療とは、予期せずに発生する急性な疾患や外傷に対応するための医療の一形態です。
これは、交通事故、スポーツの怪我、突然の病気、食中毒など、予測不可能な出来事によって引き起こされる健康上の緊急事態に対処するための医療体制です。

救急医療は、急性の状態にある患者に対して、素早い評価、治療、支援を提供することを主な目的としています。
救急医療の対象となる状況には、以下のようなものが含まれます。

  1. 交通事故による外傷: 自動車事故、バイク事故、自転車事故など、外傷を伴う事故による急性傷害への対応が含まれます。これには骨折、内臓損傷、出血などが含まれます。

  2. 急性疾患: 突然発症する急性疾患に対する診断と治療が救急医療の一環です。例えば、急性心筋梗塞や狭心症、中風(脳卒中)などが該当します。これらの疾患は、早期の医療介入が生死を左右することがあります。
  3. アナフィラキシー: アレルギー反応によって急速に進行する危険な状態であり、アレルギーを持つ人々がアレルゲンに曝露された際に生じることがある症状です。アナフィラキシーの治療には、迅速なエピペンの使用や薬物治療が必要となります。

  4. 食中毒: 食品からの感染や有害物質の摂取によって引き起こされる急性の病態も、救急医療の対象です。患者の水分補給や症状の緩和が必要です。

救急医療の成功には、救急指定病院の存在が不可欠です。
救急指定病院とは、都道府県知事による指定を受けた病院で、以下の要件を満たしています。

  • 救急医療に詳しい医師が常勤していること。
  • 必要な医療機器と設備を備えていること。
  • 救急患者の搬送が容易で、適切な施設が整っていること。
  • 救急患者のための特別な病床を有していること。

救急指定病院は急性な疾患や外傷の患者に対し、迅速で適切な治療を提供する専門機関として認められています。

また、救急医療機関とは、救急隊が緊急に搬送する必要がある傷病者を収容し治療する医療機関を指します。
これらの機関は知事による認定が行われ、更新制度があります。

救急医療の現状

日本の救急医療体制は、長い歴史の中で進化し、変化してきました。
その歴史は
1964年の救急告示制度の導入から始まり、1977年には初期・二次・三次救急医療機関の整備が行われ、1991年には救急救命士制度が導入されました。
しかし、現在の救急医療体制には新たな課題が浮上しています。

2006年時点では、全国に救命救急センターが189カ所に存在し、その数は2012年には249カ所まで増加しました。
一方で、二次救急医療機関は2006年の3,214カ所から2012年にはわずかに3,259カ所にしか増加せず、ほぼ横ばいの状況が続いています。
この差異は、救急患者の受け入れにおいて、
特定の病院が集中的な負担を強いられていることを示しており、人口密度が高い地域ほどこの問題が顕著です。

さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が顕著であり、感染者が増加すると、感染拡大を防ぐために当該医療機関の診療機能が制限されることがあります。
これにより、周辺の医療機関に負担がかかり、地域全体の救急医療体制に影響が及んでいます。
特に高齢化社会の日本では、
高齢者の緊急患者が増加しており、これに対応する仕組みが不足していると言えるでしょう。

救急医療の将来に向けて、国家レベルでの対策が必要とされており、体制の改善とリソースの適切な分配が求められています。
高齢化社会や感染症対策への適切な対応が、日本の救急医療体制の持続可能性に大きな影響を与えることになるでしょう。

救急医療体制には偏りがある

日本の救急医療体制において、救急患者の受け入れにおける明確な偏りが見られます。
最近の厚生労働省のデータから明らかなように、
三次救急医療機関である救命救急センターの数は年々増加していますが、一方で二次救急医療機関の数はほぼ横ばい、むしろ減少傾向すらあることが指摘されています。

具体的には、年間2,000件以上の救急搬送を受け入れる医療機関が約71%の救急患者を受け入れている中で、その大半が三次救急医療機関である救命救急センターに集中しているのです。
この救命救急センター数は年々増加しており、高度な医療ケアを提供する機関としての需要が高まっていることを示唆しています。

一方で、二次救急医療機関はほぼ同一水準で推移しており、救急利用の増加に対応していない傾向が見受けられました。
これは、急性な疾患や外傷患者の受け入れにおいて、特定の病院が過度な負担を強いられていることを意味しています。
特に、高齢化社会において高齢者の緊急患者が増加している中で、二次救急医療機関の数が増えていないことは、課題となるでしょう。

このような救急医療体制の偏りは、特定の病院が過度な負担を受け、他の病院がその受け入れをあまり行っていないという現実を反映しており、救急医療の均等な提供が求められています。
特に高齢化社会においては、急性心筋梗塞や脳卒中などの疾患に対する治療において、より効率的かつ均等な救急医療の提供が不可欠です。
今後、救急医療の体制改善とリソースの適切な分配が迫られているでしょう。

救急医療における5つの課題

現在の救急医療の現場における課題を5つ、順に解説します。

1.患者のたらい回しをなくすこと

救急医療は、緊急の状況で患者の命を救う重要な役割を果たしています。
しかし、現在の救急医療体制にはいくつかの課題が存在し、その中でも最も深刻な課題の1つは「患者のたらい回し」です。

「患者のたらい回し」とは、患者が適切な医療機関や病院が見つからず、救急車を含む救急医療サービスを受けることができない状況を指します。
これは、患者の健康と生命に深刻なリスクをもたらす問題であり、救急医療体制の疲弊や崩壊につながる要因の1つと言えるでしょう。

たらい回しの主な原因は、以下の要因に起因しています。

医療機関の過度な混雑: 一部の病院や医療機関が過剰に患者を受け入れ、混雑が発生しているため、新たな患者を受け入れる余裕がないことがあります。
医療スタッフの不足: 医療従事者不足により、十分な医療ケアを提供できない場合があり、患者は他の医療機関に転送されることが増えます。
医療機関の閉鎖: 地域の医療機関が閉鎖され、患者はより遠くの病院に行かなければならない場合があります。
医療提供力の偏在: 一部の地域では医療提供力が充実しており、他の地域では不足しているため、患者がある地域に集中的に向かうことが起きます。

「患者のたらい回し」の問題解決は、救急医療の効果的な運営と、患者の命を守るために不可欠なステップです。
すべての患者が適切な医療を受けられるようにするために、これらの課題への取り組みが急務となるでしょう。

2.適切な救急車の利用を促すこと

現代の救急医療体制において、適切な救急車の利用はますます重要な問題となっています。
近年、
軽症の症状にもかかわらず、安易な救急車の要請が増加しており、この現象がさまざまな課題を引き起こしています。

1つの問題は、救急車が本来の緊急な状況において、本当に必要な患者への迅速な対応が遅れることです。
過度な救急車の要請により、有限な救急医療リソースが無駄に消費され、本当に緊急な状況にある患者に適切な医療ケアが行き渡りにくくなります。
これは、救急医療体制の適切な運用を妨げ、患者の命に関わる深刻なリスクを生み出す可能性がある点で懸念されます。

もう1つの課題は、過度な救急車の要請が救急医療システムにかかる人員と費用の負担を増大させることです。
実際には救急車の要請が不要だった症例に対応するために、救急隊や医療機関のスタッフが割かれ、この結果、本当に緊急な患者さんに対する対応に支障をきたすことがあります。
また、過度な救急車の要請は医療費の増加につながり、医療システム全体の持続可能性に影響を及ぼします。

これらの課題を克服するためには電話相談サービスの拡充や地域医療の強化などが必要となってくるでしょう。
適切な救急車の利用を促すことは、救急医療体制の効率性と患者の生命を守るために不可欠と言えます。

3.プライマリケアを充実化させること

プライマリケアは、医療の最初の接点であり、患者が最初に診察を受ける医師や医療機関を指します
これは、高齢化社会において特に重要性が増しています。
高齢者は大きな病院へのアクセスが難しくなるため、地域のプライマリケア医師が初期の医療ニーズに応える必要があります。

プライマリケアの充実は、以下の点で重要です。
まず、かかりつけ医の整備により、患者は信頼性の高い医師に相談しやすくなり、緊急でない症状の適切な処置が可能です。

また、延命を望まない患者にとっては、かかりつけ医が医療選択をサポートし、不要な救急要請を減少させる役割を果たします。
さらに、在宅医療の充実化により、高齢者や慢性疾患患者が自宅で必要な医療を受けられ、救急要請の削減や入院回数の減少に寄与します。

プライマリケアは地域医療との連携、チーム医療の構築、医療資源の最適な利用などを通じて、救急医療の質と効率性を向上させ、患者の生命と健康を守るために不可欠な要素となるでしょう。

4.異なる機関同士での情報共有を的確に行うこと

現在、救急隊、医療機関、病院、製薬会社など、多くの関係者が患者の医療データを別々に扱っており、適切な情報共有が行われていないケースが多いです。
これにより、患者の状態に関する情報が分断され、重要な変化や経過の把握が難しくなっています。

特に問題となるのは、患者が初期に軽度と判断されたが実際には重症であった場合など、どこで変化が生じたのかを正確に把握できないことです。
情報の欠落や不明瞭さは、適切な医療判断を難しくし、患者の安全を脅かす可能性があるでしょう。

また、現場での情報共有においては、オンラインによるデータの共有化が進展していますが、まだまだFAXや紙による情報のやり取りが主流である現状も存在します。
これにより、情報の遅れや誤りが生じ、迅速な医療対応が妨げられる可能性も否定できません。

したがって、異なる機関同士での情報共有を向上させるためには、効果的な情報システムの導入やデジタル化の促進が必要です。
これにより、リアルタイムで正確な情報が関係者間で共有され、患者の安全性と医療の効率性が向上するでしょう。

5.積極的なタスクシフティングを促すこと

現在、医師と看護師の両方が過度な労働負荷にさらされており、その結果、医療提供の質や効率に影響を及ぼすことがあります。
この問題に対処するためには、
救命救急士へのタスクシフティングが必要です。

救命救急士は、医師や看護師のサポートとして、緊急医療の提供において重要な役割を果たします。
救命救急士は初期対応から患者の状態、緊急処置、患者と家族への情報提供まで幅広い業務を担当し、迅速な対応が求められます。
そのため、救命救急士への役割拡大は、医師や看護師の負担軽減につながり、効果的な医療提供が可能になるでしょう。

ただし、このタスクシフティングの成功には、救命救急士の適切なトレーニングが欠かせません。
救急救命士に求められるスキルと知識は高度であり、適切なガイドラインに従って行動する必要があります。
また、拘束時間の長さや責務の重さから、
救命救急士の待遇改善も重要な要素です。

さらに、医療従事者全般においてもタスクシフティングの実施と役割の拡充が必要です。
看護師や薬剤師などの専門家も、それぞれのスキルを活かして患者のケアに貢献できる可能性があります。
このようなタスクシフティングの促進により、医療提供者全体の負担が軽減し、患者への適切な医療が提供されるでしょう。

救急医療の現場は需要が高くやりがいもある

救急医療の現場は、確かに大変なことも多いですが、その分やりがいも非常に高い環境です。
救急医療従事者は、患者の緊急のニーズに応え、命を救う使命を担っています。
そのため、救急医療の現場で働くことは医療従事者にとって非常に充実感のある経験となります。

一瞬の判断や迅速な処置が患者の生死に影響を与えることもあり、その緊迫感が救急医療の特徴です。
しかし、その瞬間に適切に対応し、患者の命を守ったときの喜びは非常に大きいです。

救急医療は初期治療から患者さんの回復に至るまで一貫した治療を行うことができる分野でもあります。
患者の診断から救急搬送、緊急手術や治療、そして回復期のケアまでを担当することがあり、そのプロセス全体に貢献できることもやりがいの1つです。

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まとめ(救急医療の現状とは?)

今回は、救急医療の現状について解説しました。
救急医療は、高度な医療技術と専門知識が必要な分野であり、現場は緊迫した状況が日常的に発生します。
しかし、救急医療の現場はやりがいも大きいと言えるでしょう。

近年、救急医療においていくつかの課題が浮き彫りになっています。
このような課題を克服するために、啓発活動、電話相談サービスの強化、情報共有の効率化、そして地域医療の充実化が求められています。
地域医療の強化により、初期の医療ケアを提供できる医療機関を強化し、軽症患者に対する適切な治療を行えるようにすることが大切と言えるでしょう。

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