医大を卒業して研修医になると、生活はガラリと一変します。
国家試験合格のためにひたすらに勉強に集中していた学生時代と違い、研修医は実務に触れながらすきま時間を有効活用して学びを進めていかなくてはなりません。
「研修医としてどれくらいの勉強時間を確保すべきか知りたい」
「あまり勉強が確保できておらず、このまま研修医としての期間を終えてしまいそうで不安を感じている」
「研修医が勉強時間を確保するための方法を知りたい」
この記事では、勉強時間の捻出に悩む研修医に向けて、時間管理のコツやおすすめの時間確保方法をご紹介します。
また、研修医がどのくらいの勉強時間を確保できているかといった、リアルな状況もご紹介しますので参考にしてください。
研修医の平均勉強時間は1日60分未満
初めに、研修医の学習時間の実情がどうなっているのかについて解説します。
2024年から施行される医師の働き方改革を受けて行われた、水戸協同病院の医師グループの調査データが参考になるのでご紹介します。
研修医に実際にアンケートをとった結果、1日の自習時間がどれくらいあるかは、以下のような分布となりました。
1日の自習時間 | 割合 |
---|---|
0分 | 4.3% |
1〜30分 | 37.0% |
31〜60分 | 41.7% |
61〜90分 | 14.1% |
91分以上 | 3.0% |
(参照:ケアネット「研修医の勤務時間と自習時間に関連は?」)
全体の8割以上の研修医が、1日の自習時間が60分以下と答えています。 あわせて読みたい
研修医の自習時間は業務の隙間か、業務後のプライベートの時間から確保するのが一般的です。
1日1時間足らずで満足できるのであれば問題ないですが、ほとんどの研修医は自習時間が足りないと感じているのではないでしょうか。
研修医の自由時間と勉強時間は比例しない
前項でご紹介した調査では、研修医の週あたりの勤務時間別でも分析をしています。 あわせて読みたい
そこでは、勤務時間が短いグループよりも、勤務時間が長いグループのほうが、自習時間が長いという結果が出ました。
勤務時間が長い方が自習時間を捻出しづらいイメージがありますが、実際は勤務時間が長く自由な時間を取れない研修医ほど、工夫して自習時間を捻出しているのがわかります。
また、モチベーションが高くない研修医が、勤務時間が短い勤務先を選んでいる可能性も示唆していました。
確かに研修先の病院が忙しいと、時間管理が難しくなり、勉強時間を確保するのは困難だと言えます。
しかし、結局は自分のやる気次第で状況を変えることは可能であり、勉強時間を確保できるかどうかは、ある程度は「本人のやる気次第」なのかもしれません。
研修医が勉強時間を上手に確保する5つの方法
勉強時間を十分に確保したいけど、やはりどうしても勤務先が忙しくて時間確保が難しいと悩む研修医は少なくないでしょう。
逆に、勤務条件は悪くなく休日も確保できるが、やる気が出ず勉強を思ったペースで進められないと悩む人もいるかもしれません。
ここからは、研修医が勉強時間を確保できるおすすめの方法を5つご紹介します。
1.物事の優先順位を決める
ちょっとした用事でスマホを見始めて、ついつい関係のないコンテンツも見続けてしまうことはないでしょうか。
気になるテレビ番組を見た後、その後の番組もなんとなく見てしまうこともあるでしょう。
こうした「ついつい」をなくすことで、より多くの時間を確保できます。
そのためには、物事の優先順位を決め、日々のタスクを明確にしておくことがおすすめです。
ついつい触ってしまうスマホには、スクリーンタイムでアプリの時間制限機能を設定しておけば、リラックスタイムにスマホを眺めていても、時間管理を忘れずに済みます。
2.すきま時間を活用する
時間を管理する上で重要なのは、「積極的に時間を作る」という考え方を持ち、実践することです。
通勤中や休憩時間の一部など、ちょっとした時間を有効活用することで、トータルの勉強時間を増やすことができます。
すきま時間は電子書籍で医学書を読んだり、動画で学べるコンテンツを見たりといった、デジタルデバイスを活用した細かい学習に充てると効果的です。
また、研修中に学んだ内容を、休憩時間の一部を割いて振り返りに充てるルーティンにすれば、すぐ振り返ることができて学習効率が上がります。
3.勉強する時間をルーティン化する
休日に勉強を頑張ろうと思っても、なぜかやる気が出ないという方もいるのではないでしょうか。
また、すきま時間を活用しようと思ってはいても、忙しく過ごしているうちに、気づいたら1日が過ぎてしまうこともあるかもしれません。
時間管理に苦手意識がある場合は、勉強する時間を決めてしまうのも1つの方法です。
あらかじめ「△曜日の○時〜○時は勉強」と決めておき、その時間は必ず勉強する、ということをルーティンにできれば、徐々に増やしていくことも難しくありません。
4.雑談を上手に活用する
勤務中の休憩時間は、すきま時間として勉強にあてるのも効果的ですが、同僚とのコミュニケーションを積極的にとるのもおすすめです。
初期研修医は各診療科をローテーションで回りますが、別の診療科を回っている同期の情報を聞く時間と考えれば、休憩中の雑談も貴重な情報収集の場になります。
自分がまだ行っていない診療科のことを質問したり、逆にこちらから情報提供したりすることで、情報収集だけでなく自分自身の学びの復習にもなるでしょう。
また、休憩中だけでなく、そうした情報交換の場を積極的に設けることも、お互いの学びに役立つためおすすめできます。
5.無理に英語の論文を読もうとしない
学習を進めていく上で、論文を読む機会は少なくないと思います。 あわせて読みたい
しかし、英語の論文を読み進めるのはなかなか時間がかかるものです。
論文を読む場合、要旨(アプストラクト)やシステマティックレビューを読み、要点を把握する方法がおすすめです。
無理に全文読むのは効率が良くありませんし、情報量も多くなりすぎるため、かえって学習効率を下げるリスクがあります。
欲しい情報はピンポイントで集めるようにして、その上で掘り下げたい内容がある時は論文本体を読むようにすると、時間の節約になります。
時間管理が苦手な人のための対処法2選
毎日忙しく働きながら、学びも進めていかなくてはならない研修医の日常は、割とハードなものです。
時間管理を徹底したくとも、医療現場の仕事は患者という「相手」によっても忙しさが変わってきます。
ここでは思い通りに勉強時間を捻出できない、時間管理が苦手だと感じている方のために、おすすめの対処法をご紹介します。
1.勉強アプリや時間管理アプリを活用する
勉強系アプリや時間管理ができるアプリを活用することで、自分の勉強時間がどのくらいかや、勉強の進み具合を可視化できます。
視覚的に実情がわかれば、十分な勉強時間が確保できているのかそうでないのかが把握できるため、改善がしやすくなり効果的です。
すきま時間を活用した勉強をする際でも、いつも携帯できるタブレットやスマホですぐに使え、簡単で利便性が高いのもメリットです。
2.友人と一緒に勉強する
モチベーションが上がらず、せっかく時間があっても勉強に充てずに過ごしてしまうという方には、同期や友人と一緒に勉強するという方法があります。
約束しておけば、相手のあることなので、やる気がないからといって無視するわけにはいきません。
結果として強制的に勉強することになり、繰り返していくことで勉強時間を持つことが習慣化できます。
同期と勉強するメリットは、ローテーション先の診療科の情報交換ができたり、自分も情報提供することで、学んだことをアウトプットできたりすることです。 あわせて読みたい
時間管理だけでなく、勉強の効果も高められるため、協力してくれる同期がいる場合にはおすすめの方法です。
確実に勉強時間を確保するためには
勉強時間が確保できない背景には大きく分けると2種類あります。
1つは時間管理が苦手だったり、モチベーションが上がらなかったりといった要因から、確保できるはずの時間が確保できていないケースです。
そしてもう1つは、どう頑張っても勉強時間が確保できない環境にいるというケースです。
ここからは、確実に勉強時間を確保するために必要な考え方をご紹介します。
まずは「勉強時間を確保しよう」と心がけることから始める
時間管理が苦手な方や、モチベーションが上がらなくて困っている方の場合、なによりも「勉強時間を確保する」気持ちを保つことが大切です。
何も考えず、流れに任されるまま1日を過ごしていると、結局今日も勉強はできなかったと後悔して終わってしまいます。
例えば朝起きたら、「今日は○時間は勉強時間を確保しよう!」と声に出して宣言してみてください。
または、スケジュール帳やその日のTodoリストの最上位に「勉強時間を○時間確保する」と記載するのもいいでしょう。
そうして気持ちをしっかり持った上で、この記事でご紹介している方法を活用しながら、勉強時間を捻出してみてください。
どうしても時間が取れない場合は働き方から見直す
研修先のスケジュールが忙し過ぎたり、勤務時間が長過ぎて、どう頑張っても満足がいくだけの勉強時間を確保できないと悩む方は、働き方そのものを見直すのも1つの方法です。
研修医の勤務環境は、研修先の病院によってさまざまですので、転職も視野に入れて考えてみてはいかがでしょうか。
研修中に勤務先を変える研修医は少ない印象ではありますが、まったくいないわけではありません。
忙しい業務から学べることは多いですが、本当に学びたいことが極められないのでは、その研修自体が無駄になってしまうリスクもあるでしょう。
環境を適切に変えることができれば、学びたいことに適した経験を積めるようになったり、勉強時間をきちんと確保できる可能性は上がります。
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将来のキャリアプランに悩んだら
研修医として学んでいく中で、診療科を選ぶのに迷ったり、研修中の環境がどうしても合わないといった悩みは、大なり小なり出てくるものです。
悩みをうやむやにしたまま進んでしまうと、後々仕事のモチベーションを維持できなくなる場合もあります。
将来のキャリアプランに悩んでしまったら、医師専門の転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。
今すぐ転職するわけでなくとも、悩みやキャリアプランの見直しを相談したり、転職を意識した情報収集をしてみたりすることで、解決の糸口が見つかることもあります。
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まとめ(研修医の勉強時間の長さは?)
研修医の学びの環境は、臨床現場の最前線で働きながら、技術や知識を身につけていくものです。
どんな症例を診ることができるかや、指導医の個性、研修先の病院の環境など、自分の力だけではコントロールできない要素が多い環境でもあります。
忙しく働きながら、勉強の時間も確保していくのは並大抵のことではありません。
モチベーションを高く保ち、積極的に時間管理を行って、「勉強時間を獲りにいく」ぐらいの心構えが必要となってくるでしょう。
勉強時間をうまく捻出するための工夫については、本記事の内容を参考にしてください。
しかし、頑張ってみてもやはり満足できる量の勉強ができないという場合は、環境を変えるという選択肢もあります。
研修先の環境や、将来のキャリアプランに不安を覚えたら、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談してみることをおすすめします。
転職エージェントが持つ豊富な病院情報を知ることは、キャリアを考える上では大変有効です。