初期臨床研修を終え、医師としてスタートを切った方の大半は、それぞれの専門領域での知識を深めるべく、後期研修に進むのではないでしょうか。
後期研修医は、初期研修医とは異なり、ある程度職場の戦力としても認められるため、環境や給与の違いが気になる方もいるかもしれません。

「後期研修医の給料・年収の相場は?」
「後期研修医の仕事内容とは?」
「初期研修医との違いが知りたい」

この記事では、後期研修医の年収事情や仕事内容について解説します。
後期研修医が年収を上げるためのポイントもご紹介しますので、参考にしてください。

後期研修医の平均年収とは

後期研修医(専攻医)の平均年収は、相場では650万円から850万円程度と言われています。
20代後半の医師の平均的な年収額は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、およそ700万円程度です。
後期研修に入る医師の多くはこの年代にあたるため、上記のデータは参考値になるでしょう。

また、後期研修医の年収は、研修先によっても違いが出てきます。
後期研修医は初期研修医とは異なり、医師として一通りの業務ができるため、病院側にとっては「戦力」です。
人手が欲しい病院であれば、それなりの好条件で募集するケースもあります。
一方で、大学病院や公的病院を研修先に選ぶと、民間病院よりも年収が低めになる傾向があります。

給与の内訳について

先述の通り病院の戦力としても数えられる後期研修医の給与構成は、一般の医師と同じ扱いで、主に以下の3つの要素で構成されます。

  • 基本給
  • 当直手当
  • 賞与

1つずつ詳しく見ていきましょう。

基本給

基本給は給与のベースとなる固定された金額です。
基本給の金額は病院によって異なり、それぞれの規定によって定められます。
一般的には年齢や能力、勤続年数などが考慮されて決まります。
また、たいていの職場では年1回程度の昇給がありますが、昇給するのは主に基本給の金額です。

基本給にプラスして、時間外手当や役職手当、福利厚生に応じた通勤手当や家族手当などが加算されて毎月の給与となります。
そして給与からは、所得税や住民税、健康保険料などが控除され、差し引きで支給される金額がいわゆる「手取り額」です。

当直手当

医師の給与で特徴的な加算要素として当直手当があります。
夜間の宿直や休日の日直を総称して当直勤務と呼びます。いわゆる残業手当のような時間外手当とは異なり、労働基準法で定められた当直手当の支給が必要です。(正確には「宿日直手当」と言います)
当直手当の金額もまた医療機関によってまちまちですが、労働基準法で「基本賃金の1/3以上」と決まっています。

当直手当の支給は、あくまでシフトで当直勤務を行なった場合のみです。
何かしらの対応で夜遅くまで勤務が続いてしまった場合には「残業手当(時間外手当)」となり、当直手当の支給対象にはなりません。

賞与(ボーナス)

月給(給与)の構成要素とは別に、年収の構成要素として賞与があります。
賞与すなわちボーナスの支給要件もまた、病院によって独自に定められているものです。
一般的な支給パターンとしては年1〜2回の支給で、2回支給される場合は夏と冬に分かれています。
また、決算時に定例とは別の特別賞与が出るなど、利益が出ている医療機関であれば、賞与の条件が良いところもあります。

ただし、賞与は給与と違い必ず支払われるという性質のものではありません。
業績によっては減額されたり、支給を取りやめるというケースがあります。

初期研修医との給与の違いについて

初期研修医の給与は、後期研修医と比べると低い傾向にあります。
研修のゴールが見えてきている後期研修医とは異なり、初期研修医はいわば「見習い」のような立場です。
研修先や業務内容によって多少の変動はあるものの、後期研修医より高い収入を得られることはほとんどないでしょう。
初期研修医の段階で高収入を得ることはほぼ不可能です。

しかし、後期研修になれば、現場の観点で見るとほとんど即戦力のようなものです。
初期研修を終えた段階で即戦力を求めている求人に応募すれば、収入のベースを大幅にアップさせることも不可能ではありません。

後期研修医の仕事内容

後期研修医は、専門分野を固定して対象の診療科の仕事に従事するのが一般的です。
同じく研修医に分類される初期研修医は、研修期間中に以下の診療科などを回り、医療技術の基礎や知識を身につけます。

  • 内科
  • 外科
  • 産婦人科
  • 小児科
  • 救急科
  • 精神科

医療業界に入ったばかりの初期研修医は、さまざまな診療科で経験を積むことが求められます。
対して後期研修医は、1つの診療科に特化してより専門的なノウハウを身につけます。

専門性に乏しいという観点から、患者と一対一で対面することの多い外来診療の担当になることはほとんどありません。
2年間の研修期間を修了した「上級医」と共に従事できる病棟での勤務や、救急外来で仕事をするのが一般的です。

研修医とはいえ、医師免許を取得しているという点では立派な医者の一人です。
特に地方の医院などは、医師の数がそもそも少ないため、後期研修医が現場に立つ場合もあります。

外来業務や患者への説明などは上級医が担当するため、後期研修医の努力は患者から見えにくいのが特徴です。
しかし、患者の健康を陰で支えながら、医師としてのレベルアップを図る重要な役割と言えます。
はじめのうちは上級医のサポートを受け、次第に上級医は見守るだけでもよくなるよう、日々の業務に取り組んでいくことが大切です。

後期研修医の年収を上げるための3つのポイント

ここからは、後期研修医が年収をアップさせるために考えたい3つのポイントをご紹介します。

1.研修先は慎重に選ぶ

後期研修の際の年収を少しでもアップさせたいのであれば、研修先を慎重に選ぶことをおすすめします。
中には年収800万円以上を得られるような好条件の研修先もあり、しっかり情報収集して選べば年収アップは不可能ではありません。
初期研修の医療機関で引き続き後期研修を受ける方もいますが、後期研修では研修先の医療機関を変えることは可能です。

すでに何度か触れましたが、後期研修医は医療現場においては立派な戦力です。
このため、人手を欲しているところへ行くようにすれば、年収アップの可能性も高まるでしょう。
例えば、地方都市やあまり交通の便が良くない場所では、病院や医師が不足しているケースがあります。
自分が希望する領域の研修が受けられるかという点がクリアできれば、こうした場所を選ぶこともおすすめです。

2.アルバイトの可否を確認する

後期研修医は初期研修医と異なり、他の医療機関でのアルバイトが可能です。
ただし、副業やアルバイトを禁止している研修先もあるため、事前に研修先の就労規則を確認しておきましょう。

アルバイトを探す際には、当直を依頼される可能性を加味しておく必要があります。
アルバイト先での当直を優先し、研修先での業務に支障をきたす状態は避けなければなりません。
自分のスケジュールと体力をしっかり管理し、研修先の業務と両立できることを前提にアルバイトを検討しましょう。

アルバイトで経験を積み、他の後期研修医よりも早くキャリアやスキルを磨き上げている方もいます。
また、アルバイトすることで、奨学金を研修期間中に多く返済することもできます。
アルバイトを有効活用できれば、キャリアや資金面含めたさまざまな観点で優位に立つことが可能です。

3.転職・転科を検討する

現時点ですでに後期研修医として働いていて、職場の待遇に不満があるのであれば、研修先を変えることも1つの選択肢です。
また、研修を受けながら適性に不安が出てきているといったケースの場合は、転科も含めて検討するのもいいかもしれません。

研修中の転職は、転職先で引き続き研修プログラムを履修できるかという問題もあり、転職活動が難しくなるという側面はあります。
しかし、合わない条件下で無理を続けるよりは、キャリアを築き続けるためのモチベーションも上げられるのではないでしょうか。
転科を伴う転職や、後期研修医の転職では、情報収集がカギとなります。

研修医としての働き方に悩んだら医師専門のエージェントに相談しよう

今の職場では年収アップが見込めない、望んだキャリアを築くことが難しそうだと感じると、働く意欲も低下してしまいがちです。
また、研修を進めてみて初めて、自分の適性との食い違いに気づくこともあるでしょう。
そうした状況に置かれてしまったら、思い切って転職を考えるのもいいのではないでしょうか。

医師はキャリア形成に合わせて転職することが珍しくない職業です。
そして、目的があり転職するとなると、転職先の環境や条件などをより詳しく知る必要があります。
そんな時におすすめなのが、転職エージェントの利用です。
医師の転職に特化しているエージェントであれば、求人情報の豊富さだけでなく、求人を出している病院の情報にも精通しています。

メッドアイでは、無料相談を通じ、医師のキャリアプランに寄り添ったサポートを行います。
少しでも転職を検討しているなら、まずは相談だけでもしてみてください。
アルバイト探しや非常勤の情報も豊富で、非公開情報も含む豊富な求人の中から、一緒に最適解を探していきましょう。

まとめ(後期研修医の年収は?)

今回は、専門医としての資格を取得するためのフェーズである後期研修医の給料について解説しました。

後期研修医の平均年収は650万円から850万円が相場とされており、一人前の医師と比べるとどうしても下がってしまいます。
ただし、研修の初期段階である初期研修医よりは高いため、初期研修期間を終えれば収入が上がることをモチベーションにして働く方もいるでしょう。

後期研修医は研修期間とはいえ、現場レベルで考えれば即戦力に値します。
慎重に研修先を選べば、より高い収入を得られる医療現場に移れる可能性もあります。

アルバイトができる研修先なら、さらに収入を上げることも可能です。
研修期間の転職やアルバイト探しに不安のある方は、医師専門転職エージェントの「メッドアイ」を利用するのもおすすめです。自身のキャリアを見直すきっかけにもなるため、ぜひ一度ご相談ください。