DMATの正式名称は、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)です。
厚生労働省管轄の日本DMATは大規模災害時に全国から派遣され、都道府県管轄の都道府県DMATは基本的に地域災害に従事するという違いがあります。
そして医師としてDMATで活躍するためには、指定の医療機関に属して研修や試験を受ける必要があります。数多くの命を救うDMAT隊員に憧れる医師は多く、人気の高い分野と言えます。

この記事では、

  • DMATに興味があり、働き方やなるための方法について知りたい
  • 日本DMATと都道府県DMATはどう違うのか、それぞれの仕事について詳しく知りたい

このように思っている方に向けて、当記事では、DMATの仕事内容や資格取得方法について具体的に解説します。「災害医療に興味がある」「日常診療とは違った特殊な業務に従事したい」と思っている方はぜひ参考にしてください。

日本DMATと東京DMATの違いは?

日本DMATと東京DMATの大きな違いは、管轄と対応するエリアです。

日本DMATとは

平成17年に厚生労働省が発足したのが日本DMATです。
日本DMATの管轄は厚生労働省で、対応するエリアは日本全国です。大規模災害や広域災害発生時に全国から招集がかかります。

都道府県DMAT(東京DMAT)とは

都道府県DMATの管轄は都道府県で、原則としては地域内の災害に対応します。
東京DMAT・神奈川DMAT・大阪DMAT・大分DMATなどが代表的です。
都道府県DMATは災害現場や事故現場に出勤して、傷病者のトリアージや治療、搬送中の医療行為をメインとして活動します。
例として東京都では、救命センターを中心に25病院が東京DMAT指定医療機関として登録されています。

DMATの主な仕事内容

DMATは、緊急治療やトリアージなどの現場活動をメインに行っているイメージがありますが、実際には本部活動・患者を航空搬送する広域医療搬送や地域医療搬送・病院支援・医療活動内容の報告など多岐に渡る業務を分担しながら行っています。DMATのチームは医師や看護師、その他の医療従事者や事務員で構成されています。救命活動以外にもチーム内で

  • DMAT隊員が泊まるホテルの手配
  • 交通手段の手配
  • 提出書類の作成
  • スケジュール管理

などの業務があります。このような後方支援は医師以外のスタッフがメインに行うことが多いですが、隊員同士で助け合う精神から医師が担当する場合もあります。
また、近年のDMATの活動実績と内容を以下に紹介します。

  • 2011年東日本大震災:患者の域内搬送や広域医療搬送、病院入院患者避難搬送、病院支援をメインで行った。
  • 2016年熊本地震:車中避難患者が多かったため静脈血栓塞栓症が発生し、災害医療が求められた。
  • 2020年ダイヤモンドプリンセス号:船内での医療行為、感染者の指定医療機関への搬送、家族対応を行った。

医療機関は防災対策をそれぞれ行っているはずですが、災害時は支援なしに完璧な医療を提供することは困難です。DMATの活動が日本の災害医療を支えているのは明白です。

日本DMATの派遣要請はどこでできる?

DMATの派遣に関しては、災害の規模に応じて派遣要請基準が設けられています。
基本的には被災地域の都道府県が都道府県DMATに派遣要請を行いますが、緊急を要する場合や、医療の需要が拡大した場合などは厚生労働省が都道府県の要請を待たずに派遣要請を行うことができます。
実際に、東日本大震災では、一番遠い九州ブロックからもDMATの派遣を受けました。

従って、都道府県DMATの隊員であっても、いざという時に備えて居住地以外の災害の情報にも常にアンテナを張っておくことが必要です。

DMATに向いている人

DMATに向いている人の特徴は救急医療の経験があり、突然の要請に応えられて、かつ常に冷静な判断ができる人です。

1.救急医療の経験がある人

DMATでは、命の危険がある患者への救命活動が主体となります。災害時ではライフラインに混乱が起こり、十分な医療体制が整っていない状況も数多くあります。
過酷な環境で、一人でも多くの患者を救うためには高度な医療技術が必要です。
普段から救急医療に従事している医師は、さらに災害医療に特化した専門性を身につけることでDMATの隊員としても、即戦力として活躍できるでしょう。

2.突発的な要請に対応できる人

災害はいつ、どこで発生するか予測できません。それ故、DMATの出勤要請は必然的に突発的であるという特徴があります。
時間帯や季節、さらには自分の休暇日を問わず出勤できるような機動性に優れた人はDMAT向きです。
災害の状況によっては、管轄している都道府県や、DMATブロック以外からも派遣要請が出ることもあるため、育児や介護など日々のルーティンが決まっている医師にとってはハードルが高いと考えられます。

3.冷静かつ臨機応変に対応ができる人

災害現場では衛生面の心配や感染のリスク、過酷な環境における自身の生活もあるため、想像以上にストレスが溜まります。
救命活動のほか、DMAT隊員や本部への情報伝達・報告書の作成や後任への引継ぎなど仕事量は多く、ゆっくり身体を休ませる余裕もありません。
災害現場ではさまざまな事態が想定され、予想外の事態にも状況に合わせて行動することが求められるため、DMAT隊員として活躍する医師は臨機応変な対応力が必要です。

DMATになるには

DMAT隊員は、急な出勤要請に対して業務調整が可能な医療機関で働く必要があります。
そのため、普段はDMAT指定医療機関や、災害拠点病院の職員として勤務します。DMAT指定医療機関は「EMIS」で検索できるので、希望の地域を検索しましょう。
DMAT隊員を希望する場合は、
都道府県を通じて厚生労働省に推薦された上で全4日間のDMAT養成研修を受講し、筆記と実技試験をパスしなければなりません。

さらに、大規模災害に対応するための大きな組織としてのリーダーを養成する、「統括DMAT」の研修も設けられています。
統括DMAT研修の受講者は、都道府県から推薦された医師のみとなっており、複数のチームを過不足なく運用するための組織論やリーダー論などの知識習得や専用の実習、訓練を行います。
2日間におよぶ研修を終了すると統括DMAT登録者になることができ、各本部の本部長や指揮所のリーダーに就任できます。そして本部や指揮所運営に関して必要な統括者権限を付与されます。
参考:広域災害救急医療システム「EMIS」

資格は5年ごとの更新制

DMAT隊員の資格は5年ごとの更新制となっています。
実災害の経験を分析し、時代と共に変化する理念や教育内容をアップデートする必要があるからです。
実際に、DMAT発足時は急性期における重症外傷患者の救命活動を第一に考え、現場での医療技術習得や医療搬送拠点臨時医療施設(SCU)での活動に関する技術習得が重視されていました。

しかし各種の災害教訓から、被災地の医療情報を早く正確に把握して適切な医療供給をすることが重要である、という考え方が優先されるようになりました。
また、従来は地震災害を中心に捉えて構築していましたが、近年頻発する水害や土砂災害・自然災害・原子力発電が関連した場合などさまざまな状況による対応力と最新の知識が求められるようになっています。

DMAT研修の申し込みについて

厚生省DMAT事務局が定めるスケジュールや実施要項に従って申し込みを行います。
北海道から沖縄まで、全国を8つのブロックに分けて、各地で研修が行われます。
開催時期はそれぞれ異なっており、参加人数も制限があるため、DMATに興味がある人は情報を集めておくことが大切です。
参考:厚生省DMAT事務局

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まとめ(日本DMATと都道府県DMATの違いは?)

DMATは厚生労働省管轄の日本DMATと、都道府県管轄の都道府県DMATの2種類が存在し、前者は大規模災害や広域災害発生時に全国から派遣要請が出されて被災地での医療支援をチームごとに数日間かけて行います。
後者は、地域の災害現場に出勤して傷病者のトリアージや患者を搬送中の医療行為をメインに活動します。DMAT隊員になるためには、DMAT指定医療機関や、災害拠点病院に就職してDMAT研修と試験を受けることが必要です。

DMATは救急医療の経験があり、かつ突発的な出勤要請に応えられる人が適しています。
さらに、災害医療は予測不能な事態が多々起こることがあるため、常に冷静で臨機応変な対応ができる人が重宝されます。
医師はDMATのチームでリーダーとなって活動するため、隊員をまとめる統率力も必須です。

更新は5年ごととなっており、時代に合わせた理念や教育方針をアップデートしながら自己研鑽を続けることが大切です。DMATに興味がある人は、メッドアイがお届けする最新情報をぜひご活用ください。