医師としてある程度キャリアを積んできた方の中には、後進の育成に興味を持たれる方もいるかと思います。
医療業界の慢性的な人手不足の緩和や、医療技術のさらなる発展のためには、後進の育成は疎かにできない課題です。
「臨床教授の仕事について詳しく知りたい」
「臨床教授の役割や給与について知りたい」
この記事では、臨床医の学びに欠かせない存在である臨床教授について、仕事内容や年収事情をご紹介します。
臨床教授になるために必要なキャリアや、向いている人の特徴についても解説しますので参考にしてください。
臨床教授とは?
臨床教授とは、医科大学において臨床研修の指導にあたる指導医のことを指し、これには臨床現場で活躍する現役医師が就任します。
文部科学省が制定している指標では、地域の中で医療人を育てていくために、医療の現状に練達した優れた医療人に、臨床教授の称号を与えて、医療人の育成に参加できるよう提案するとあります。
臨床教授の称号を与える規定は各大学ごとに独自に決めていて、称号種別にも臨床准教授や臨床講師、助教などがあるところが多いです。
主に医師としての経験年数や取得資格を基準に称号を分けている例が多く、例えば以下のような規定を設けている大学がよく見られます。
- 臨床教授とは学位を有し、学会指導医の資格を持ち、10年以上の実地医療経験がある者
- 臨床准教授とは専門医又は認定医の資格を有し、7年以上の実地医療経験がある者
- 臨床講師とは専門医又は認定医の資格を有し、5年以上の実地医療の経験がある者
(参照:山口大学医学部「臨床教授等の称号の付与に関する規定」)
上記は資格と年数に関する部分のみまとめましたが、当然のことながら、教育実績の有無や人柄、見識、臨床現場での実績などを踏まえ、厳選な審査を踏まえて決定されています。
臨床教授と教授の違い
臨床教授と教授とは、担う仕事の範囲では重なるものが多々あります。 あわせて読みたい
同じ役割を担う両者の違いは、大学の正規職員であるか否かという点です。
臨床教授はあくまで現役の外部医師に与えられる称号で、医学生や研修医の指導を行う傍ら、自身も臨床医として別の医療機関等で仕事を続けていきます。
一方で教授は大学の正規職員で、医局内での最高職位にあたる役職です。
外部から大学に招聘される教員として、客員教授という称号もありますが、こちらは大学の非正規職員にあたり、教育だけでなく研究の分野でもゲストとして招かれることがあります。
臨床教授の役割とは
臨床教授に求められる役割は、大学の附属病院や実習の協力提携をしている医療機関での、臨床実習指導です。
学生だけでなく、初期臨床研修医の指導医としても活躍します。
臨床教授は、大学と実習医療機関や学会で決められたカリキュラムや研修プログラム、実習プログラムなどに沿って指導を実施します。
大学の教授や教員が基礎や座学分野を確実に指導していく傍らで、最新技術や、医療現場での応用力の訓練などが、臨床教授に期待される領域です。
それに加え、医療技術は対象疾患、部位、治療法が幅広く、大学の教授という限られた人数だけではカバーしきれない面も出てきます。 あわせて読みたい
それぞれの専門分野のプロフェッショナルに臨床教授として関わってもらうことで、学生の学びやキャリアプランの選択肢を増やすきっかけにつなげるのも大学の狙いです。
臨床教授の給料はどれくらい?
実は臨床教授になっても、それ自体にはほとんど報酬がありません。
あくまで称号を与えられるだけで大学の職員ではないため、大学からの給与や報酬はないことが一般的です。
いくつかの医療系大学の臨床教授称号に関する規定には、全て給与や謝礼金の支給はなしとされていました。
このため、臨床教授の年収は、あくまでも本業の勤務先の収入がメインです。
しかし、臨床教授に選ばれる医師は、高い実績や技術を持つベテランの域に入っている人が中心となるため、年収はかなり高い水準になっていることが多いです。 あわせて読みたい
また、本業の勤務先の給与体系によっては、臨床教授となったことで手当がつくケースはあるかもしれません。
臨床教授に向いている人の3つの特徴
臨床教授になるためには、高いキャリアや豊富な経験が必要なのは言うまでもありません。
しかしそれだけではなく、後進を育成するという立場上、性格の向き不向きも出てきます。
ここからは、臨床教授に向いている人の特徴を3つご紹介します。
1.好奇心・探求心を持って取り組める人
医師は常に学び続けることが求められる職業です。
その中でも臨床教授に選ばれるような実績を築いている人は、常に人一倍高い探究心や好奇心を持って仕事に取り組んでいます。
自分の専門領域の中で極められる技術や知識を旺盛に吸収し、数多くの症例に向き合い、その領域を牽引する勢いを感じられるタイプの人は、結果として臨床教授に向いていると言えます。
2.論理的な思考を持っている人
高い知識や経験を持っていても、それを学生指導の場で上手に理論立てて教えることができなければ、あまり教職向きとは言えません。
臨床教授には、自分の知見をわかりやすく解説でき、学生や研修医が何につまづき悩んでいるかを見抜く力が求められます。
論理的な思考力を備えている人に教わることで、学生の理解も深まり、悩みの相談もしやすくなります。
3.リーダーシップを取れる人
周囲と積極的なコミュニケーションを取りつつ、全体を率いていけるリーダーシップもまた、教授職や教員に求められるスキルです。 あわせて読みたい
臨床教授になれるほどの実績を積んできた医師であれば、病院内でもある程度の立場にいることが多いです。
そこまでの道筋で、同僚や若手の医師、コメディカルスタッフや事務スタッフと良好な関係を築けている人は、新しい環境でも関係性を作りやすいでしょう。
それに加えて、若手を引っ張っていく「頼り甲斐」を身にまとうことができれば、学生から慕われる臨床教授になれるはずです。
臨床教授になるには
臨床教授という名称は職種名ではなく称号のため、基本的には大学が実績のある現役医師から選出して指名や打診をするのが一般的です。
また、自分が卒業した母校から声がかかることもあります。
いずれにせよその大学に雇用されるわけではないため、医師の側からアクションを起こしてなる性質のものではありません。
しかし、各医療系大学では臨床教授の選考基準を定めているため、熱意がある人で基準を満たしていれば、応募を受け付けてもらえるケースもあります。
各大学の選考基準はそれぞれのホームページ上で公開されています。 あわせて読みたい
一般的な選出条件としては、専門医や指導医を取得している医師であることや、一定の臨床経験年数、学位や論文業績が求められます。
大学によっては、指導経験の有無を求めているところや、その大学の実習協力機関の役職者から選出するところもあります。
臨床教授の選出条件は、通常の大学教授職のような国が定めた基準がありません。
このため大学によって選出基準が異なり、目指したい大学の基準を事前に確認しておくといいでしょう。
働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントへ
臨床教授に指名されるような医師を目指したいのであれば、自身の専門領域で高い実績を築いていかなくてはなりません。
そのためには、しっかりとしたキャリアプランを持ち、着実に経験を積み重ねていく必要があります。
最低でも専門医資格を取り、さらに強みとなるサブスペシャリティも取得しておきたいところです。
さらには指導医資格を取るなど、人材の育成に関わる分野にも関心を強めていくのがおすすめです。
こうした高いキャリアを築いていくためには、しっかりとしたキャリアプラン作りとそれを実現する職場選びが大事になります。
キャリアプランの作り方や、それに沿った職場選びに迷ったら、医師専門の転職エージェントに相談することをおすすめします。
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まとめ(臨床教授とは?)
医師を育成していく上で欠かせないのが、臨床教育の場における実習です。
医学生や初期臨床研修医に対し、現場で培った豊富な経験を持って指導にあたる臨床教授には、大学の教員だけではカバーしきれない専門的な知識や、臨床現場での対応力の伝授が求められます。
実際の治療の場で高い実績を上げている現役医師に学ぶことで、学生側にも将来のキャリアを描く選択肢が増えることが期待でき、臨床教授は今や医学教育の場において欠かせない存在です。
臨床教授は大学との雇用関係は発生しないため、その職を引き受けること自体には報酬や給与が発生しません。
しかし、後進を育てたいという熱意のもと、大学からの要請に積極的に応じている医師がたくさんいます。
臨床教授を目指そうと思ったら、確かなキャリアプランとそれに基づいた経験の蓄積が必要です。
より理想に近いキャリア形成を希望する場合は、転職エージェントに相談しながらプランを練ることをおすすめします。