現在、医師の労働時間は過労死レベルとも言われています。
咋今コロナ禍により医療業界がひっぱくしたことで、労働時間に不満を持っている医師は多いのではないでしょうか?
- 医師の労働時間はどれぐらいか?
- 医師の労働時間はなぜ長いのか?
- どのような改革が予定されているのか?
このような不満・疑問を持っている医師に向けて、今回は医師の労働時間は平均何時間なのか、どうして長いのか、また仕事や人生にどのような影響を及ぼしているのかについて解説します。
この記事が医師として、また一人の労働者としての今後の働き方の参考になれば幸いです。
人の命を預かる仕事ですが、まずは自分の健康について考えてみましょう。
医師の労働時間問題
日本の医師は「過労死ライン」レベル
「令和元年医師の勤務実態調査」によると、病院・常勤勤務医の週当たりの勤務時間の平均は、男性医師で57時間35分、女性医師で52時間16分でした。
厚生労働省が過労死を警告する労働時間は「月に80時間の時間外労働」とされていて、時間外労働時間を含まない月の労働時間が1日8時間の20日間とすると、過労死を警告する週の労働時間は60時間です。
また、先ほどの「令和元年医師の勤務実態調査」を年代・性別に見ると、20代男性医師の週の労働時間は61時間34分、30代男性医師は61時間54分と過労死を警告する労働時間の60時間を超えていました。
他にも全国の医師を対象とした「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を見ると、有給休暇をほとんど取れていない医師は全体の40%で、有給休暇の取得日数に満足していない医師は60%にのぼります。
つまり明らかに異常な長時間労働をしていて、さらに十分な休暇も取れていないということがわかります。
長時間労働と休暇が取れないことによって、自身の健康を害したり、仕事とプライベートの両立の実現が非常に難しいといった状態も懸念されます。
また、長時間労働は医師の転職における最も大きな理由となっています。 あわせて読みたい
長時間労働の原因
長時間労働になってしまう原因はいくつかあります。
特に日本は、世界的に見ても下記のような問題があげられます。
- 慢性的な人員不足
- 医師数に対する病床数の多さ
病床の数は患者1,000人に対して医師13人程となっており、世界で最も医師1人あたりの担当している入院患者数が多い現状です。
他にも、医師の業務が診察だけでなく診断書の作成や学会など多岐にわたることや、勤務形態が特殊であることも長時間になる要因となっています。
これらの業務の中には、本来医師がやるべきことではないことも含まれているので、長時間労働の環境を改善するには、多くの課題があるといえます。 あわせて読みたい
長時間労働が医師に与える影響
ここまで、日本の医師が長時間働いている現状とその原因について解説しました。
ここからは、長時間労働が医師に与える影響について解説します。
(1)医療ミスの原因に
2万人の医師を対象にした2017年の「勤務医労働実態調査」によると、医療過誤の原因の第2位は疲労による注意不足でした。
また当直明けの連続勤務で「集中力・判断力が低下する」と感じている医師は全体の8割もいます。
つまり、疲労により判断力・集中力が低下していることを認識しながらも、人手不足から働かざるを得ない状況に追い込まれていることを意味しています。
人の命を預かる重要な立場の医師が、このような状況であることは見逃せない問題となっています。
(2) 健康への影響
長時間労働は、健康にまで影響を与えるのです。
「勤務医労働実態調査」によると、4割の勤務医が実際に健康への不安を抱えています。
医療の場におけるストレスは、緊急オペや病床からの緊急コール、オンコールなどのタイミングが読めない仕事の負担が一因になっています。
また当直日の平均睡眠時間が「4時間以下」と答えた割合が4割にのぼるなど、健康への悪影響が起きても不思議ではない状況です。
長時間労働のストレスだけでなく、人の命を預かるという大きな精神的負担から健康を害する人も少なくありません。
参考:医師の転職理由とその背景とは? | 医師転職研究所 (dr-10.com)
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(3) 転職の原因に
医師が転職する理由には、長時間労働が含まれることが多くあります。家庭や・生活の事情で転職する方も多いため、おそらく実態は更に多いといえるでしょう。 あわせて読みたい
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は1,200万円程度ですが、「労働時間に対してあまり稼げていない」として転職する人も多いようです。
2024年開始「医師の働き方改革」とは
ここでは、2024年に開始される「医師の働き方改革」について解説します。
「医師の働き方改革」の概要
医師の労働時間があまりに長いことから、2024年に医師の働き方改革が行われます。
メインの改革は「各医療機関における医師労働時間短縮計画」という仕組みです。
具体的には
- 勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間とする
- 連続勤務時間制限、長時間勤務医師の面接指導などで、勤務医の健康確保を目指す
など、主に医師の労働時間に関することを中心として、働き方の適正化に向けた取り組みについての改革です。
簡単にまとめると、厚生労働省が介入し労働時間の基準を厳しくして、過労を防ぐという制度です。
定められた労働上限時間を超えて勤務する場合には、各水準ごとに面接指導のほか、各種義務や処置が課せられることになります。
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時間外労働上限規制
時間外労働上限規制については、医師の中でも職種や環境によって状況が変わることから、種別に分けて対応していくことが決められています。以下表の通りにまとめました。
参考:https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010169.html
対象 | 時間外労働上限 | |
---|---|---|
A水準 | 全ての医師 | 年960時間以下/月100時間未満(休日労働含む) |
B水準 | 地域医療暫定特例水準 | 年1860時間以下/月100時間未満(休日労働含む) |
C水準 | 集中的技能向上水準 | 年1860時間以下/月100時間未満(休日労働含む) |
詳しく解説すると、一般的な勤務医はA水準、地域医療確保のために長時間労働が必要となる医師がB水準、特定の高度な技能習得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要のある医師がC水準となっています。 あわせて読みたい
B水準は地域の中核病院など、救急医療を行う病院が該当しますが、対象医療機関になるには都道府県の指定が必要になります。
上記の表にある月の上限を超える場合、面接指導がA水準、B水準、C水準のすべてのケースで必須となっています。
健康措置についてはA水準では努力義務、B水準とC水準では義務とされています。
医師の働き方改革については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
医師にかかる負担の軽減方法などについても触れていますので、合わせてご確認ください。
まとめ(医師の労働時間)
医師はコロナ禍だけでなく、人類の長寿化も相まって今まで以上に勤務時間が長くなっています。
ですが、医師も一人の人間のため、当然限界があります。
病院は適切な勤務環境を提供することが求められますが、病院の努力だけではなく医師自身も客観的に自分の勤務時間を理解し管理していく意識改革が求められているのです。
質の高い医療を提供するための働き改革として、きちんと自分の限界を把握し、一労働者として当然の権利である休息を主張してください。
今の勤務先の勤務時間に限界を感じているのであれば、働き方改革の実施が進んでいる勤務先に転職するというのも選択肢の一つです。
求人情報は一人で探すより、転職エージェントを活用することをおすすめします。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」は相談したら必ず転職しなければいけない、というわけではありません。まずはお気軽に相談してみてください。
人の命を預かる大切な仕事だからこそ、医師の長時間労働が少しでも改善されることを願っています。