医師として海外で働いてみたいと考えてはいるものの、どうすれば海外で働けるのかわからず悩んでいる方もいるでしょう。
「医師として海外で働きたい」
「海外で働くにはどうすれば良いか知りたい」
医師が海外で働くには主に2つの方法があります。本記事では医師として海外で働くための具体的な方法と、必要なスキルや注意点について紹介します。
日本の医師免許は海外で使える?働くための条件と現実

結論から言うと、日本の医師免許だけで海外において自由に臨床医として働ける国は、基本的にありません。多くの国では医師免許が国家資格として厳格に管理されており、日本の医師免許はそのままでは通用しないケースがほとんどです。
一方で、一定の条件を満たすことで活動できるケースや、追加試験・資格取得によって働ける国は存在します。ここでは現実的な選択肢を整理します。
日本の医師免許で働ける国一覧
日本の医師免許のみでそのまま臨床医として働ける国はありませんが、以下のように分類できます。
【追加試験・資格取得により働ける主な国】
- アメリカ
- カナダ
- イギリス
- オーストラリア
- ニュージーランド
- シンガポール
- ドイツ(語学要件+資格審査(場合により試験)が必要) など
【日本の医師免許を活用して限定的な臨床研修・留学プログラム等で活動できるケースがある国】
- イギリス
- フランス
- ドイツ
- シンガポール など
日本の医師免許のみで「自由に開業・臨床勤務ができる」国はありません。ただし、大学間の交流協定や特定の臨床フェローシップ、指導医の監督下で行う限定的な研修プログラムなどを通じて、医療行為に参加できるケースがあります。
なお、シンガポールのように「特定の指定大学(東大・京大・阪大・慶應等)の出身者であれば、現地の国家試験免除で臨床医として働ける(条件付き登録)」といった独自の制度を設けている国もあります。
なぜ日本の医師免許は海外でそのまま使えないのか
医師免許は各国ごとに制度が異なる国家資格であり、基本的に相互互換が認められていないためです。医療は各国の法律や教育制度、医療水準に強く依存しており、安全性の観点からも外国の医師が自由に診療を行うことは制限されています。
また、語学力や医療文化の違い、診療ガイドラインの差などもあり、単に資格を持っているだけでは現地の医療現場で即戦力として働くことが難しいという背景もあります。
医師が海外で働く2つの方法
医師が海外で働く方法は、大きく分けて次の2つがあります。
- 日本の医師免許を活用して海外で活動する方法
- 海外で医師免許を取得して働く方法
それぞれ、求められる準備やハードルは大きく異なります。
1. 日本の医師免許を活用して海外で活動する方法
日本の医師免許を活用して海外で活動する方法もありますが、自由に臨床医として働けるケースは極めて限られています。
多くの場合は、研修・研究・教育目的、もしくは診療範囲が限定された活動にとどまります。
具体的には、以下のような形が一般的です。
- 大学病院や研究機関での研究留学
- 医療機関同士の交流プログラムによる臨床研修
- 国際医療支援(JICAや民間団体)
- 特定の条件下で認められる限定的な診療業務(研究・研修に付随するものなど)
日本と一部の国の間には医療分野の協定(外国医師等臨床修練制度など)が存在しますが、これは主に「海外の医師が日本で研修・指導を受けるための制度」や「限定的な交流」として運用されています。
お互いに自由な就労を認める協定ではないため、「二国間協定があるから日本人医師が手続きなしで簡単に現地で働ける」というわけではない点に注意が必要です。
2. 海外で医師免許を取得して働く方法
海外で本格的に臨床医として働きたい場合は、現地の医師免許を取得する方法が現実的な選択肢となります。
研修留学として海外の医療機関で経験を積むルートもありますが、多くの場合は研修医扱いとなり、給与が支払われない、または非常に少額となるケースもあります(特に見学・一部フェロー)。そのため、事前に資金計画を立てておくことが重要です。
また、日本の医師免許を取得した後、各国の試験や研修制度を経て現地の医師免許を取得する方法もあります。アメリカであればUSMLEへの合格が必要となるなど、国ごとに制度や難易度は大きく異なります。
日本で取得した医師免許を活かして海外で働く場合、国によって必要な試験や語学力、臨床を始めるまでのステップが大きく異なります。
ここでは、日本人医師の渡航先・留学先として特に人気の高いアメリカ・イギリス・シンガポールの3カ国をピックアップし、必要な手続きや難易度を比較まとめました。
| 項目 | アメリカ | イギリス | シンガポール |
|---|---|---|---|
| 主な必要資格・試験 | USMLE(Step 1 / Step 2 CK) | PLAB(※UKMLA制度へ統合中) | SMC認可大学卒+現地登録 |
| 必要な語学力(目安) | OET(Medicine)等 | IELTS 7.5以上 / OET | 高い英語運用能力(業務・診療用) |
| 一般的な準備期間 | 3年〜5年 | 2年〜3年 | 1年〜2年(指定大学卒の場合) |
| 医師就労の難易度 | ★★★★★(超難関) | ★★★★☆(やや難関) | ★★★☆☆(大学による) |
| 特徴・ポイント | レジデンシー(研修)からのやり直しが必要。ビザ取得・マッチングの壁が高い。 | NHS(公的保険医療サービス)での勤務。実技試験(PLAB 2)の渡航受験が必要。 | 日本の指定医学部卒であれば国家試験免除枠あり。アジア圏で生活しやすい。 |
※海外医師向けの試験はPLABの名称のまま、内容がUKMLA基準に統合されています
海外の医師免許で日本で働くことはできる?
外国の医学校を卒業した、または外国で医師免許を取得した場合、日本で医師として働くには、厚生労働省による「医師国家試験受験資格認定」を受けた上で、日本の医師国家試験に合格する必要があります。 あわせて読みたい
審査の結果によっては、医師国家試験予備試験から受験することになります。
海外で働く医師に求められる3つのスキル
海外で働く医師に求められるスキルは主に以下の3つが挙げられます。
- その国に必要な語学力
- 海外生活に対する適応力
- コミュニケーション能力
1.その国に必要な語学力
医師は患者とコミュニケーションを取ることが欠かせません。円滑に診療を行うためにも、その国に合わせた語学能力は必要です。
もちろん、働きながら勉強するという方法もあります。現場でその国の言語に触れる中で、慣れていき自然と話せるようになるケースもあります。しかし、ある程度は海外に行く前にスキルを身につけておきましょう。
例えば英語圏を目指す場合、一般英語のテストではなく、OET(Occupational English Test:医療従事者向け英語試験)やIELTS(Academic)、TOEFL iBTの受験が求められます。
特に近年は、実際の医療現場でのやり取りを想定した「OET」を採用・要求する国(アメリカ、イギリス、オーストラリア等)が増えています。
一般的なTOEIC等は医療現場でのビザ申請や医師登録に評価されないケースがほとんどのため、目指す国やビザの要件に合った試験を選び、早めに準備を始めましょう。
2.海外生活に対する適応力
海外生活に対する適応力も医師として働く上では欠かせません。
医師としての能力に問題はなかったとしても、海外での生活に適応することができず、精神的に負担がかかってしまうこともあります。
海外で医師として働きたいと考えている方は、事前に国ごとの文化や気候、食生活などをチェックしておきましょう。
例えば、食事においてお米が欠かせないと考えている方は、米食の文化があるベトナムやインドネシアといった国々で働くのがおすすめです。
他にも、国によっては治安が悪く、安全に働くことが難しい場合もあります。戦争や社会情勢の変化によって、日本人医師が働くのが難しくなってしまうケースもあるでしょう。
3.コミュニケーション能力
語学力があってもコミュニケーション能力がないと、業務を円滑に行うことはできません。医師は一人で仕事を行うのではなく、看護師やスタッフなどのサポートが必須です。
そういった方々とコミュニケーションを取る能力は欠かせないと言えるでしょう。
現地のスタッフの方々は、こちらが日本人医師であるため、コミュニケーションの取り方に戸惑ってしまうかもしれません。自分から現地のスタッフの方々と積極的に交流を行うことが大切です。
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医師として海外で働く前の注意点
医師として海外で働く前に注意するべき点は以下3つです。
- 医師としての勤務が可能な国か確認する
- 応募条件についてよく確認する
- 必要な資金についてよく把握する
1.医師としての勤務が可能な国か確認する
国によっては日本人医師を受け入れていない場合があります。外国人の医師免許取得を認めていない国もあるため、事前に確認しておかなければいけません。 あわせて読みたい
JICAや民間ボランティアなどに応募する場合は、条件を満たせば海外で医療活動に従事することが可能です。
ただし、募集人数は多くなく、数人規模のケースもあるため、狭き門となる傾向があります。
2.応募条件についてよく確認する
応募条件についてもチェックしておきましょう。海外で医師として働くためには、臨床経験年数や語学力といった一定の基準をクリアしなければいけないケースが多いです。 あわせて読みたい
若くキャリアがまだない医師がすぐに海外で働こうとすると、難しい場合があります。
働きたいと思っている国を決めたら、応募要項をチェックして、医師として働くのがどれくらい現実的かを確認するようにしましょう。
3.必要な資金についてよく把握する
最後に重要になるのが資金面です。医師として働くのであれば給料が支払われるため、生活に困ることはないと思うかもしれません。 あわせて読みたい
しかし、先ほども述べたように研修医として働く場合は、給料が支払われない場合もあるため貯金を崩しながら生活をする必要があります。貯金が少ないとすぐに生活に困ってしまうことになるでしょう。
海外ボランティアであれば給料は支払われますが、通常の医師と比べると少ないです。現地の物価次第では、貯蓄がないと生活に困るかもしれません。
移住したいのか、一時的に海外で働きたいのかでも必要な資金は異なります。事前に生活する上でどれくらいの資金が必要かを計算しておきましょう。
目的別|医師が海外で働くおすすめの方法
医師が海外で働くといっても、目的によって選ぶべき方法は大きく異なります。
ここでは、目的別に向いている方法と、注意すべきポイントを整理します。
本格的に海外で臨床医として働きたい場合
海外で日本と同じように、あるいはそれ以上に責任ある立場で臨床医として働きたい場合は、現地の医師免許を取得する方法が現実的な選択肢となります。
向いている人
- 長期的に海外で働く覚悟がある
- 数年単位の準備期間や費用負担を受け入れられる
- 語学力の習得に積極的に取り組める
向いていない人
- 数年以内に日本でのキャリア復帰を前提としている
- 収入の空白期間を作れない
- 試験や制度変更への対応が負担になる人
この方法はハードルが高い一方で、海外での臨床キャリアを本格的に築ける道でもあります。
一定期間、海外で医療経験を積みたい場合
「将来的なキャリアの幅を広げたい」「海外の医療現場を経験してみたい」という場合は、研究留学や研修留学、日本の医師免許を活用した医療交流プログラムが向いています。
向いている人
- 海外経験をキャリアの一部として位置づけたい
- 日本での医師キャリアを今後も継続する予定がある
- 専門性や研究実績を高めたい
向いていない人
- すぐに海外で高収入を得たい
- 常勤臨床医として安定的に働きたい
この方法は、海外での経験を積みつつ、日本の医師キャリアに戻れる点がメリットです。
国際医療協力・社会貢献を重視したい場合
医療を通じた社会貢献や国際支援に関心がある場合は、JICAや民間ボランティア団体への参加が選択肢となります。
向いている人
- 発展途上国や医療資源の乏しい地域での活動に関心がある
- 医療技術だけでなく、柔軟な対応力や協調性を活かしたい
- 収入面よりも経験や社会的意義を重視したい
向いていない人
- 安定した高収入を重視したい
- 家族帯同や生活環境に強い制約がある
このルートは、一般的な臨床キャリアとは異なる価値を得られる点が特徴です。
海外で働く目的を明確にすることが重要
海外で医師として働く道は一つではありませんが、目的が曖昧なまま動き出すと、時間やコストを無駄にしてしまう可能性があります。
- 海外移住を目指すのか
- 一時的な経験として海外で働きたいのか
- キャリアアップや専門性強化が目的なのか
目的を明確にしたうえで、自分に合った方法を選ぶことが、後悔しない海外キャリアにつながります。
海外留学への支援がある病院に転職する
自力での留学が難しいと感じた場合は、海外留学を支援してくれる病院へ転職するという手もあります。
たとえば日米医学医療交流財団が行っている海外留学支援プロジェクトに参加している医療機関であれば、年間300万円の助成金を3年間受けられます。
留学前に該当医療機関に2年間勤務、留学後も最低1年間は勤務しなければなりませんが、自身で留学の手配や資金調達が難しい方にとっては有難い制度ではないでしょうか。
このような留学支援制度のある病院への転職は、まずは転職先候補を探すのに時間がかかるかもしれません。時間や手間が惜しいという方は、求人情報に詳しい医師専門の転職エージェントへ相談するのがおすすめです。
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まとめ(医師が海外で働く2つの方法とは?)

医師として海外で働くのは、決して簡単な道ではありません。
しかし、本記事で紹介したように、目的に応じた方法を選び、必要な準備を進めれば、海外での医師キャリアを実現することは可能です。海外で医師として働くためには、医師としての専門性に加えて、語学力やコミュニケーション能力、現地環境への適応力なども求められます。
また、海外で働くことは、単なる環境の変化ではなく、今後のキャリアの選択肢を広げる一つの手段でもあります。一方で、制度や条件の違い、資金面などを十分に整理しないまま進めてしまうと、思わぬ壁に直面する可能性もあります。
海外での勤務や留学を視野に入れたキャリア設計を検討する際は、個人で情報収集を進めるだけでなく、医師のキャリアに詳しい第三者の視点を取り入れることも有効です。
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