外科医は主に手術で病気を治す医師です。
平均年収について詳しく把握した上で、外科医を目指したいと思う方もいるでしょう。
また、年収を上げるために、外科医へキャリアチェンジしたいと考えている方もいるかもしれません。

  • 外科医の平均年収は?
  • 外科医と他科の年収の違いは?
  • 外科医が比較的高収入な理由は?

このような疑問を持っている方に向けて、プロの転職エージェントが詳しく解説します。
外科医が年収をアップする方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


外科勤務医の平均年収と年収分布

労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、外科医の平均年収は1,374万円です。

厚生労働省が毎年公表している「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、医師全体の平均年収は1,378.3万円となっています。
外科医の年収は、医師全体年収と比べてもほぼ同額であると言えるでしょう。

以下は、一般外科の年収割合をまとめた円グラフです。
外科医の年収割合のグラフ

勤務医の就労実態と意識に関する調査を参考に作成

外科医の年収は比較的高水準にあり、「1,500万円~2,000万円」の層が最も多く、全体の約4割(39.1%)を占めています。次いで多いのが「1,000万円~1,500万円」(27.9%)で、全体の8割近くが年収1,000万円を超えています。

一方で、「700万円未満」の年収層は1割未満と少数であり、若手や勤務年数の浅い医師に限られると考えられます。
さらに、「2,000万円以上」の高収入層も12.1%存在しており、手術件数や役職、勤務先の形態などによっては非常に高い年収を得ている外科医が一定数いることがわかります。

全体として、外科医は高年収帯に集中しており、医師の中でも収入面で恵まれている診療科といえるでしょう。

外科医の年代別年収

外科医の年収は、年齢によっても大きく異なります。
以下は、外科医の年代別年収をまとめたグラフです。
外科医の年代別年収割合のグラフ

外科の年収事情|リクルートドクターズキャリアを参考に作成

外科医の年代別年収では、30代の時点で「1,000万円~1,500万円」と「1,500万円~2,000万円」がそれぞれ50%ずつを占め、すでに高い水準に達しています。
40代・50代になると全員が「1,500万円~2,000万円」に属しており、非常に安定して高収入が得られていることが分かります。
さらに、60代以上になると40%が「2,000万円以上」となり、年齢とともに一層高年収化が進んでいる様子がうかがえます。

リスクの伴う手術では経験と高度なスキルが求められるため、さまざまな症例を経験したベテラン医師の方が年収は高くなる傾向にあります。

外科医と他診療科医の年収を比較

ここでは、外科医と他診療科医の年収を比較していきましょう。

順位診療科目平均年収
1脳神経外科1,480.3万円
2産科・婦人科1,466.3万円
3外科1,374.2万円
4麻酔科1,335.2万円
5整形外科1,289.9万円
6呼吸器科・消化器科・循環器科1,267.2万円
7内科1,247.4万円
8精神科1,230.2万円
9小児科1,220.5万円
10救急科1,215.3万円
11その他1,171.5万円
12放射線科1,103.3万円
13眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科1,078.7万円

引用:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年)」

外科の平均年収は1,374.2万円で、全体の3位です。
13位の眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科1,078.7万円と比べると、約300万円高いことがわかります。
他診療科と比べても、外科医の年収は高いと言えるでしょう。

外科医が高収入な理由

近年、外科医を遠ざける若手医師が多く、外科医は減少傾向です。
20〜30代の外科医の約4割が年間3,000時間超の時間外労働に従事していることや、医療事故・訴訟リスクが高く、リスク・勤務量・将来性を加味すると年収が見合っていないと考える医師が多いためです。

医師不足である上に、地域偏差によって医師確保が難しいことから、地域によっては高額報酬を提示している医療機関もあります。

オンコールや日当直などの手当の他に、人材不足でもともと高額報酬が提示されていることから、外科医の給料は高い傾向にあります

収入と働き方のバランスに満足できていない医師が多い

他の診療科医と比べると、外科医は責任が重くハードワークです。
長時間に及ぶ手術や緊急手術があり、術後の回復状況や治癒状態、合併症の兆候がないかなどの術後管理と並行して、外来のフォローも仕事です。

術後の急変も珍しいことではないため、基本的に24時間、患者さんの状況を把握しています。そのため常にオンコールに備えておく必要があり、外科医自身のワークライフバランスは保ちにくいと言えます。

賃金水準の高い外科医ですが、「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、外科医の給与に対する満足度は約38.8%とやや低いことがわかりました。

同調査によると、外科医の1週間あたりの平均労働時間は52.5時間で、60時間を超えて勤務している外科医は43.1%です。これは、全診療科の中でもっとも高い割合です。
また外科医の96.5%はオンコールのある働き方で、29%の外科医は月に4回のオンコール対応しているとのことです。

他の診療科と比べると給与水準が高い外科医ですが、収入と働き方のバランスに満足できていない医師が多いことがわかります。

外科医が年収をアップする4つのポイント

ここでは、外科医が年収をアップするポイントを紹介します。

  • 専門領域を極める
  • 外科医の経験を活かして診療の幅を広げる
  • より高収入の病院へ転職する
  • 開業する

それぞれ、詳しく解説します。

①専門領域を極める

外科には、下記の6つの専門領域(サブスペシャリティ領域)があります。

  • 消化器外科
  • 呼吸器外科
  • 心臓血管外科
  • 小児外科
  • 乳腺
  • 内分泌外科

上記のサブスペシャリティ領域の専門医を取得するためには、外科専門医を取得しなければいけません。

専門医試験を受験するには、日本外科学会指定の「外科専門制度修練施設」で卒後初期臨床研修期間を含めて通算5年以上の修練が必要です。

医療は日々進歩し、専門領域はますます細分化しています。
専門領域を深堀していくことは同時に自身の市場価値を高めることにもつながるため、外科医のキャリアパスとして多くの医師が選択しています。

②外科医の経験を活かして診療の幅を広げる

地域医療に密着した急性期施設の外科では、広範囲な外科疾患を扱う場合が多く、診療の幅を広げられるでしょう。

また、高齢化とがん罹患率の上昇によって、緩和ケア施設の需要も高まっている昨今、がん治療に携わってきた外科医が緩和ケアで活躍している例もあります。

厚生労働省が治療を終えたがん患者さんが自宅療養するための政策を進めていることで、地域の緩和ケアのニーズは高まっています。しかし、患者数自体が多くなく、手術もないため年収は一般外科よりも少し低い傾向です。

③より高年収の病院へ転職する

より高年収の病院へ転職するのもおすすめです。
勤務医の平均年収は、勤務先の経営母体によって大きく異なります。

以下の表は、中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)」のデータに基づき作成したものです。

順位分類勤務医の平均年収
1その他
(公益法人、学校法人、医療生協、その他の法人など)
1,535万円
2医療法人
(医療法人である民間病院など)
1,506万円
3公立
(都道府県立、市町村立などの病院)
1,472万円
4社会保険関係法人
(健康保険組合・連合会、共済組合・連合会など)
1,427万円
5公的
(日赤、済生会、北海道社会事業協会、厚生連など)
1,384万円
6国立
(国、国立病院機構、国立大学法人など)
1,323万円
7診療所
(入院診療収益のある診療所を含む)
1,078万円

1位の医療法人の年収は、7位の診療所1,078万円と比べると約500万円の差があり、医療法人が運営する民間病院(市中病院)は、勤務医の年収がもっとも高いことがわかります。
勤務医は民間病院の方が高い年収を得やすいことが一目瞭然です。

転職する際は、給与水準が高く、労働環境や条件もよい職場を探したいと考える方は多いでしょう。
納得のいく転職を実現するには、医療専門職に特化した転職エージェントを利用することがおすすめです。

④開業する

開業して年収をあげる方法もあります。
一般的に開業医は内科医が多いイメージがありますが、外科出身の医師も開業できます。

開業後、手術ができなくなってしまうことに心配を抱きがちですが、呼吸器外科は呼吸器内科へ、消化器外科は内視鏡に強い消化器内科へと、勤務医時代に行っていた医療経験を活かして開業している外科医は多くいます。

開業するにはさまざまな準備が必要です。詳しくは以下の記事で紹介しているので、こちらもぜひ、参考にしてください。

まとめ(外科医の年収について)

今回は外科医の年収について紹介しました。

外科医の平均年収は、1.374万円です。
リスクの伴う手術では経験と高度なスキルが求められるため、さまざまな症例を経験したベテラン医師の方が年収は高くなる傾向にあります。

オンコールや日当直などの手当の他に、人材不足でもともと高額報酬が提示されていることから、外科医の給料は比較的高いと言えます。

他の診療科と比べると、1位の脳神経外科、2位の産科・婦人科に続き外科医は3位です。
年収は高いものの、ハードワークかつ責任の重い診療科であるため、働き方と収入のバランスに満足できていない医師が多いです。

外科医が年収をアップする方法は、下記が挙げられます。

  • 専門領域を極める
  • 外科医の経験を活かして診療の幅を広げる
  • より高収入の病院へ転職する
  • 開業する

転職する際は、医療専門職に特化した転職エージェントを利用することがおすすめです。

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本記事が、外科医の年収に関する疑問を解消するきっかけになれば幸いです。