医師が研修先や仕事先として医局に入る場合、待遇や人間関係は気になるところではないでしょうか。
特に大学病院の医局ともなると、若手ほど苦労を強いられるヒエラルキーがあるというイメージがつきまといます。
「医局の序列とは?」
「年齢によって医師のランクや階級があるのか?」
「こんな医局は入局してはいけないなどはある?」
この記事では、医局での序列や人事制度を気にする方のために、転職エージェントの視点で医局の階級について解説します。
また、いわゆる「ブラックな医局」を避けるために知っておきたいポイントについてもご紹介しますので参考にしてください。
医局の階級・どんな構造?
まずは医局のヒエラルキーを頂点から順にご紹介します。 あわせて読みたい
中には呼称の違いや例外もありますが、ここでは一般的な例を見ていきましょう。
なお、文中の各職級の平均年収は、独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を参考にしています。
院長(病院長)
大学病院の全診療科を統率する医師としてのトップの役割です。 あわせて読みたい
院長の上は大学組織そのもののトップが続きますが、病院内では最上位となります。
医局トップのさらに上の立場なので、医局ヒエラルキーとは一線を画す立場と言えるでしょう。
その責任は重く、病院の運営についても監督するため、多岐にわたった視野が必要となります。
平均年収は1,500〜2,000万円です。
教授・准教授・講師
院長に続く医局のトップが教授です。
准教授や講師などが経験を積み、おおむね50代前後で就任するケースが多く見られます。
教授は医局内の人事を掌り、大学病院内や関連病院などでの適正な医師の配置などを差配します。
また、講演会や論文執筆など、診療以外の業務が増え、多忙なことでも知られています。
さらにその下に、准教授・講師など若手医師や研修医に教育を行う責務を負いながら臨床現場を管理する立場があります。
講師や准教授は40代〜50代で就任する例が一般的です。
教授・准教授・講師と序列があるものの、このクラスの医師の年収は似通っていて、平均すると1,000〜2,000万円となっています。
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助教(助手・専門医)
教授職の下にいるのが助教や助手、専門医などです。 あわせて読みたい
医員と共に臨床現場に赴くほか、教授職のアシストなどを主な業務としています。
専門医資格を取得後の医師は、博士号を取得すると助教へ昇格できます。
助教まで昇格すると、長時間労働など若手が苦労している局面から脱することができることが多いようです。
このクラスの平均年収は700〜1,000万円程度です。
医員
臨床研修を終え、専門医研修中などの一般勤務医を指します。 あわせて読みたい
専門医資格取得後も、博士号を取るまでの間は医員として勤務する医局もあり、この辺りの区切りは少々曖昧です。
医院は臨床現場で診療業務をこなしながら研修を進めつつ、教授職の手伝いなども請け負います。
また、当直などの割り当ても多くなっていて、長時間労働がしばしば問題になるポジションです。
医員には若手からベテランまで様々な層の医師が所属するため、平均年収にはばらつきがありますが、どの年代も民間病院よりは低い水準です。500万円台〜1,000万円台がだいたい中央値となっています。
研修医
医師国家試験に合格して臨床研修中の医師を指します。 あわせて読みたい
指導医に学びながら経験を積んでいる段階で、まだ医師としては勤務ができない段階です。
研修医の年収は低く、厚生労働省の調査によると、大学病院の場合は平均で300万円程度となっています。
医局の人事制度
医局の中で教授や講師などの上級職につけるのは一握りです。
研修医は別としても、医員として所属する場合は、常に上層部との関係性やしがらみを考慮しながら働いているという方も少なくないでしょう。
なぜなら、医局内の人事権は教授にあるからです。
教授は医局内や大学病院、それに提携病院などに適切に医師を配置するため、頻繁に人事の調整を行います。
地域医療の医師不足を補填したり、研修医や若手医員に経験を積ませたりすることが主な目的です。医員の側は望まぬ転勤や出向にも従わざるを得ません。
若手ほど影響を受けやすく、数年で次の病院へ異動することになります。中には半年から1年程度で次々と異動を強いられるケースもあります。 あわせて読みたい
この転勤先や出向先でも、医局や派閥の恩恵をいかに受けることができるかが重要です。
待遇や収入に具体的に差が現れてくることもあります。
医局内で出世を目指すのであれば、常にヒエラルキーを意識して立ち回らなくてはならないのです。
医局に入局する人は減っている?
大学病院の医局に入局する人数は減少傾向にあるのでしょうか?
実際は減少しておらず、少しずつですが増えています。
臨床医研修が終わった医師が、専門医の研修プログラムを受けられる病院を選ぶことが理由です。
ただし、厚生労働省の統計を見ると増加曲線は緩やかで、一般病院や診療所のほうが増加の度合いが高いと言えます。
また、病院の種別別の平均年齢を見ると、一般病院が47.2歳であるのに対し、大学病院などの医育機関病院は39.3歳です。
大学病院には若手が多いことと同時に、長く勤める人が少ないということを示すデータです。
専門医研修プログラムを民間病院でも受けられる道筋ができてきたことで、最初から医局に入らない選択をする医師もわずかながら増加しています。 あわせて読みたい
厚生労働省の「臨床研修修了者アンケート」によれば、医局への入局予定がないと回答した割合が2013年度で22.7%なのに対し、2019年度では26.8%に増えています。
こうした傾向は、これからも少しずつ増えていくのではないでしょうか。
ブラック医局を避けるには? 入局前に知っておきたいこと
医師国家試験を通過した医大生が、研修先として大学病院を選択するのはある程度自然な流れです。
しかし、専門医研修のために医局に入局するとしても、人使いが荒かったり、パワハラがあったりする不快な環境の医局には入りたくないのは誰しも同じでしょう。
もちろん、医局の全てが理不尽な長時間労働や受け入れ難い人事などを振りかざしているわけではありません。
ここからは、いわゆる「ブラックな医局」を避けるために、医局選びの時に気をつけたいポイントをご紹介します。 あわせて読みたい
1:退職者が多すぎないか
専門医研修プログラムに応募する前に、その医局で専門医資格を取得した研修医がどれくらいいるのかを調べてみることをおすすめします。
研修半ばで退職してしまう人が多い場合は、ブラック医局である可能性があるためです。
専門医資格の取得前に辞めてしまうというケースでよく聞かれる理由としては、以下のようなものがあります。
- 残業や当直などが多く、長時間労働を強いられる
- パワハラがある
- 人間関係が悪く、居心地が悪い
- 退職者が多くいることをなんとも思わない空気がある
このような環境で専門医取得を目指すとなると、相当な覚悟が必要です。
うまく乗り切ることができれば鋼のメンタルが手に入るかもしれませんが、医局の空気に染まって他者を思いやれなくなってしまうかもしれません。
医師としてとても大事なものを失ってしまうことにもなりかねず、リスクがあると言わざるをえません。
退職者が多いかどうかは、その医局に関わった知り合いがいれば直接聞いてみることをすすめます。口コミを調べてみるのもいいでしょう。
ただし、実態が掴みにくいケースもあるので、自分一人では調べきれないこともあります。
そんな時には、転職エージェントに相談してみるのも一つの方法です。 あわせて読みたい
医師専門の転職エージェントなら、人間関係に悩んで転職を考える医師などの相談を多数受けていますし、医療機関の情報も豊富に持っています。
求人情報を見ても伝わってこない内部の雰囲気などにも精通しているので、キャリアプランを相談しながら、医局の評判を教えてもらうこともできます。
2:辞めたい時に辞められる環境か
退職者の数が調べられない場合は、「辞めたい時に辞められそうか」を調べてみるのもおすすめです。
医局の中には、辞めていく医師に対して制裁を加えるようなところもあると言われています。
例えば、退職の意思を伝えた途端に態度が変わってしまい、待遇などがいきなり悪くなったり、退職後近隣で働きづらくなったりするケースです。
これを見極めるためには、他の医局で評判をヒアリングしてみるといいでしょう。
また、その医局を辞めた医師がいれば、直接話を聞くことで状況がわかります。
思い切ってストレートに見学時などに聞いてみてもいいかもしれません。
その際にお茶を濁されたり、「専門医習得後は一定期間医局で働く決まり」だなどと言われたりしたら危険なサインです。
直接聞く勇気がない方や、知り合いなどからうまく口コミを拾えないという方は、医療機関の人事や内部情報に詳しい転職エージェントを頼ってみてもいいでしょう。
退職に関しては、もう一つ気を付けておくことがあります。 あわせて読みたい あわせて読みたい
たとえブラック医局ではなくても、その地域で中心的な役割を果たしている病院の場合、専攻している診療科によっては同じ地域に転職できる病院がないケースもあります。
特に病院の数が少ない地域では、医局がブラックかどうかに関わらず、転職先を見つけるのに苦労することになってしまいます。
まとめ(医局の序列について)
この記事では医局の階級構造やブラック医局の見分けかたについてまとめました。
臨床研修を修了した医師の8割近くは、専門医研修のために医局へ進んでいます。
わずかながら医局を頼らずとも専門医資格取得を達成できる道はありますが、まだまだ少ないのが現状と言えるでしょう。
医局内では教授をトップとした階級構造があり、その中で出世を目指すとなると、出身大学のヒエラルキーなども関わってきます。
しかし、専門医研修を無事に終え、専門医資格取得後は臨床の現場で活躍したいと考えているのであれば、あまり気にする必要はないと言えます。
そうは言っても、入った医局がブラックな環境ですと、志半ばで挫折してしまうことにも繋がりかねません。
医局探しで失敗しないためには、医師の悩みに寄り添いながら転職を成功に導いてくれる転職エージェント「メッドアイ」に力を借りてみてはいかがでしょうか?