医師を題材にしたドラマや映画はいろいろありますが、その中で花形として人気の高い診療科の描写も見かけます。
では、実際の医師にとっても人気の診療科というのはあるのでしょうか。
「花形とされる診療科はどこ?」
「人気がある診療科の年収は?」
「現役医師がおすすめする診療科は?」
この記事では医師に人気がある診療科や、ドラマや小説の世界では人気がある診療科の実情について転職エージェントの視点から解説します。 あわせて読みたい
あわせて、現役医師がおすすめする診療科についてもご紹介しますので、キャリアプランを考える医師の参考になれば幸いです。
医者の花形といえば難易度が高い外科系の診療科
「医者の花形」というと、一般的には脳神経外科や心臓外科などがイメージされているようです。 あわせて読みたい
その理由としては、手術などの手技を伴い難易度が高く、誰でも気軽に目指せるわけではないという点や、メディアで取り上げられるようなスーパードクターの存在が目立つことなどがあげられるでしょう。
また、収入が高いことや、その活躍が命を救うことに直結する特性もエリート診療科と思われる要因と言えそうです。
一方で、医師志望者に実際に人気があるのは内科系の診療科です。
少し古いデータですが、2015年に医学生を対象として日本医師会総合政策研究機構が医学生に対して希望する診療科の調査を行っています。
その結果、将来希望する診療科として内科(33.8%)や小児科(19.3%)、総合診療科(14.4%)などの回答がトップに並びました。
そして外科は4位(14.4%)、脳神経外科は11位(4.7%)と内科系に比べると志望者が少ないことが明らかになったのです。
以下にそれ以外の診療科についてもまとめましたので参考にしてください。
順位 | 診療科 | 回答率 |
---|---|---|
1位 | 内科 | 33.8% |
2位 | 小児科 | 19.3% |
3位 | 総合診療科 | 14.6% |
4位 | 外科 | 14.4% |
5位 | 救急科 | 10.0% |
6位 | 整形外科 | 9.2% |
7位 | 産婦人科 | 8.9% |
8位 | 神経精神科 | 7.5% |
9位 | 眼科 | 5.3% |
10位 | 皮膚科 | 4.8% |
11位 | 脳神経外科 | 4.7% |
12位 | 麻酔科 | 4.5% |
*日本医師会総合政策研究機構「医学生のキャリア意識に関する調査」より一部抜粋し引用 あわせて読みたい あわせて読みたい
高収入のエリート診療科は? 診療科別平均年収ランキング
エリート診療科と言ってもその捉え方は人よってさまざまかと思いますが、その要素のひとつに、収入の高さもあげられるのではないでしょうか。
ここでは、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を参考に、診療科別の平均年収をランキング形式でまとめてみました。
順位 | 診療科 | 平均年収額 |
---|---|---|
1位 | 脳神経外科 | 1,480.3万円 |
2位 | 産科・婦人科 | 1,466.3万円 |
3位 | 外科 | 1,374.2万円 |
4位 | 麻酔科 | 1,335.2万円 |
5位 | 整形外科 | 1,289.9万円 |
6位 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2万円 |
7位 | 内科 | 1,247.4万円 |
8位 | 精神科 | 1,230.2万円 |
9位 | 小児科 | 1,220.5万円 |
10位 | 救急科 | 1,215.3万円 |
11位 | 放射線科 | 1,103.3万円 |
12位 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7万円 |
*労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」より一部抜粋し引用
脳神経外科と産婦人科が頭一つ抜きん出た年収となっていて、その後に外科系、そして内科系の診療科が続いています。
激務として知られる救急科は1,215.3万円と、ランキングでは下位につける結果となりました。
救急科の場合、気力体力が必要な過酷な現場のため、体力にゆとりがある若手医師が多いという特徴があります。
医師は若手のうちは年収が低めの傾向があるため、全体として平均を押し下げる要因になっているようです。
このように、収入額という側面から考えると、「エリート診療科」としては、脳神経外科、産婦人科、外科が挙げられそうです。
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花形=必ずしも人気ではない理由とは
ここまでのデータを元にすると、一般的なイメージでの花形診療科は、必ずしも医師の間で人気があるとは限らないということがわかります。 あわせて読みたい
医師が進路を決める動機としては、どのような治療をしたいのかや、どんな病院で働きたいかなどの要素もあります。
また、仕事先の環境や勤務時間などの労働条件も判断材料となってくるでしょう。
そうした中で、年収も高い花形診療科が人気の志望先として選ばれない理由とは何なのでしょうか。
実際に志望者が多い診療科や、現役医師がおすすめする診療科にはどのような特徴があるのかをご紹介します。
きつい印象があっても志望者が多い診療科も
先にご紹介した日本医師会総合政策研究機構の調査と同じ頃に、メドピア株式会社が会員医師を対象に行ったアンケートがあります。
そこで「一番きついと思う診療科」について尋ねたところ、以下のような結果となりました。
順位 | 診療科 | 回答率 |
---|---|---|
1位 | どの科も同じ | 24.4% |
2位 | 産婦人科 | 21.9% |
3位 | 外科 | 14.5% |
4位 | 救急科 | 11.6% |
5位 | 小児科 | 7.1% |
6位 | 脳神経外科 | 6.3% |
7位 | 内科 | 4.9% |
8位 | 精神科 | 1.0% |
*MedPeer医師アンケート調査「一番きついと思う診療科目は?」より一部抜粋し引用
例えば小児科は「一番きついと思う診療科」として脳神経外科よりも上位にランクインしています。 あわせて読みたい
しかし、医学生に人気のある志望先としては2位と高い順位になっているのです。
同じく脳神経外科よりきつい印象が強い救急科も、医学生の志望先としては脳神経外科を大きく上回っています。
このことから、花形である脳神経外科を目指す人が少ない背景には、単に激務という印象があるからだけではないことが想像できます。
脳神経外科を目指す場合、激務だけでなく、手術の際に必要な手先の器用さなども求められます。
医学生がこうした条件から向き不向きを考慮した結果、選択肢にならないということが考えられるのです。
現役医師がオススメするのもやっぱり内科系
一方で現役医師が後輩におすすめしたい診療科というアンケートもあります。
m3.comの実施したアンケートでは、後輩にすすめたい診療科として、以下のような診療科があがってきています。
順位 | 診療科 | 回答率 |
---|---|---|
1位 | 内科 | 22.5% |
2位 | 総合診療科 | 14.6% |
3位 | 整形外科 | 6.8% |
4位 | 外科 | 6.7% |
5位 | リハビリテーション科 | 5.9% |
6位 | 麻酔科 | 4.9% |
7位 | 精神科 | 4.7% |
8位 | 放射線科 | 3.7% |
9位 | 救急科 | 3.4% |
10位 | 小児科 | 3.1% |
11位 | 皮膚科 | 2.9% |
12位 | 病理診断科 | 2.7% |
*m3.com「医師1600人の「後輩に薦めたい診療科」」より抜粋して引用
現役の先生が後輩におすすめする診療科もやはり内科系がトップになっています。
おすすめする理由として、以下のような回答が集まっていました。
・開業向き、需要が増える、つぶしがきく。・高齢者が増えることにより慢性疾患が増え、内科医の需要はますます高まると思う。・予防医学の発展により、病態を未然に防ぐ治療が発展しそう。その最前線はやはり内科と考える
*m3.com「医師1600人の「後輩に薦めたい診療科」」より抜粋して引用
同アンケートでは将来的に重要度が増す診療科はどこかという問いもしていて、その解答としても内科や総合診療科、リハビリテーション科が上位に上がっていました。 あわせて読みたい あわせて読みたい
超高齢化時代の到来に伴って、患者の年齢層も上昇が続いています。
こうした中、がんや慢性疾患などを幅広く対応できる内科や総合診療科などの必要性は高まっているという考え方がうかがえます。
特に新専門医制度で新たに導入された総合診療医の分野は、看護師やコメディカルと連携しながら、地域医療を担う働きを期待されています。
今後のキャリアプランを考えよう
医師にとってキャリアプランを明確にすることはとても重要と言えます。 あわせて読みたい
なぜなら、選ぶ診療科によっては労働環境が過酷になることもあり、ハードな業務をこなす日々の中で目標を見失うことも考えられるからです。
何を志して医師になったのか、また医師として将来どのような医療に携わりたいのかを考えて、そのためにどのような経験を積んでいけばいいのかを考えておくことが大切です。
もちろん、道半ばで進路を変えたいと思うことも出てくるでしょう。
そのような時でも、変更した進路で目指せる姿はどのようなものなのか、そして進路変更したことで新たに必要となる知見にはどのようなものがあるのかを知り、熟考の上で判断しなくてはなりません。
単純に収入や勤務時間の長さ、激務の度合いだけを見て進路を決めてしまうと、後々後悔をしたり、適性がないと諦めざるを得なくなるリスクが増えてしまいます。
本当に自分が没頭できる分野なのか、自分の適性にあっている診療科なのかを考えながらキャリアプランを考えてみてください。
医師にとってキャリアプランが大事になる理由については、以下の記事でも詳しく解説しています。 あわせて読みたい
まとめ(医者と花形の診療科について)
一般人から見ると、脳神経外科や心臓外科などは、医者の花形のように映るイメージがあるようです。
その理由としては、細かな手技を用いた手術や、常に難しい症例を扱っている描写のあるドラマなどの影響もあるかもしれません。
また、天皇陛下の執刀を担当したり、手術数のギネス記録を持つ医師などがメディアで取り上げられることも影響しているでしょう。
こうした花形と言われる診療科には、重い責任と、高い技術が必要になります。
このため、手先の器用さや集中力の高さなど、ある程度適性が求められるという実情もあります。
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その一方で、実際の医療の現場では内科系の診療科を目指す若手が多くなっています。
さらに現役医師も後輩には内科系をすすめたいという声が多くあるのです。
こちらは、これからの医療現場で必要とされる分野であり、将来的に重要性が増すと見られています。
将来の進路を選択するためにはキャリアプランを熟考する必要があります。
就職先やキャリアプランを描くのに悩んだ場合、転職エージェント「メッドアイ」に相談してみるのもおすすめの方法です。
転職するためだけでなく、医師としてどういったキャリア形成を行いたいのかを丸ごと相談することが可能です。