現在少子高齢化の加速によって、訪問診療(在宅診療・在宅医療)の分野に注目が集まっています。
訪問診療の医師として働くことを検討する場合、まず気になるのは収入面ではないでしょうか。
「訪問診療(在宅医療)の収入は?」
「訪問診療のクリニックを開業するポイントは?」
今回は、このような不安をお持ちの方に向けて、プロの転職エージェントが訪問診療医の年収や開業時のポイントなどについて詳しく解説していきます。
開業前に知っておきたい転職エージェントの情報もご紹介しますので、クリニックの開業を考えているという方はぜひ参考にしてみてください。
【訪問診療】勤務医や開業医の年収は高い?儲かるの?
まず初めに、「訪問診療の勤務医や開業医の年収は高いのか?」という疑問にお答えしていきます。
一般的に訪問診療の方が外来よりも儲かるイメージがあるかと思われますが、実際のところはどうなのでしょうか?
やはり収入が多い分、ハードワークが待ち受けているのでしょうか?
訪問診療医の収入の多寡が決定される理由とともに、その内情について解説していきます。
訪問診療(在宅医療)の診療報酬は高い
結論から言うと、訪問診療(在宅医療)の診療報酬は開業医・勤務医いずれの場合でも高いです。
正確には、訪問診療は外来に比べて、一人当たりの「診療報酬単価」が高く設定されており、必然的に収入も高くなるという仕組みです。
診療1回あたりの収入平均は患者一人につき2万~3万円程(※月2回の訪問診療を行うケース)で、そこにプラスして、下記のような勤務体制・実績による診療報酬が加算されます。
- 24時間365日対応
- 緊急往診対応
- 看取りの実績あり
これらのことから、訪問診療は外来に比べて収入面において優れた業務体制であるということが言えるでしょう。
訪問診療(在宅医療)は勤務医でも年収は高い
前項でも述べた通り、訪問診療(在宅医療)は勤務医でも年収は高い傾向にあります。
一般的には勤務医のほうが開業医に比べて収入が低い傾向にありますが、訪問診療の現場においてはその限りではありません。
移動やコール対応など医師側の負担が大きいこともあり、在宅診療医の求人では年収1,500万から2,000万円以上のものも見受けられます。
その分医師に要求されることも多く、在宅での診察や検査・投薬治療、現場で起こった事故等に対する外科的な処置、認知症患者に対する専門的な対応などのさまざまな知識やスキルが必要となります。
TPN(中心静脈栄養)や在宅人工透析の知識なども必須です。
さらに基本的なところでは、車で診療に向かう際の運転免許証なども必要になります。
加えて、末期がん患者等への精神的・身体的な緩和ケアも、場合によっては求められることになるでしょう。
なお、在宅診療医が扱う機器としては、下記のものが挙げられます。
- 心電図
- ポータブルエコー
- 人工呼吸器
これらの機器を駆使しながら現場に応じた柔軟な対応をとることが重要となってきます。
基本的な業務内容は勤務医でも開業医でも変わらないので、開業のリスクを鑑みて、勤務医として訪問診療の道を目指すのも一つの賢い選択肢だと言えるでしょう。
開業で見込まれる年収は2,700万円以上
医療経済実態調査によると、クリニックの開業で見込まれる平均年収は2,700万円以上とされています。
開業医の平均年収は2,763万円
引用元:第22回医療経済実態調査
医科にもよりますが、外来の勤務医の方からしてみれば、その金額の多さにいささか驚かれたのではないでしょうか?
そのうえ訪問診療医には「往診の手数料」が加わるため、上記以上の年収が見込めることも往々にしてあり得ます。
また、通常のクリニックよりも揃えておく医療機器が少なくて済むため、開業費用も抑えられるという利点があります。 あわせて読みたい
【訪問診療】開業に向けた3つのポイント
では、訪問診療のクリニックを開業する事前準備として、具体的にはどのようなことが大切になってくるのでしょうか?
続いては訪問診療のクリニックの開業の際に重要となる「3つのポイント」について解説していきます。
クリニックの運営のスタートをスムーズに切るためにも、これら3つのポイントをあらかじめ抑えておきたいです。
それでは1つずつ見ていきましょう。
在宅医療に取り組む割合を決める
1つ目のポイントは、「在宅医療に取り組む割合を決める」です。
在宅療養支援診療所は、在宅診療専門と、在宅診療中心の場合では運営のハードルが異なります。
診療所運営の根幹に関わることなので、開業前にはまずこの方針の決定が必要な部分になります。
基本的に、前者(在宅診療専門)と後者(在宅診療中心)では、前者のほうが診療報酬が高くなる傾向にあります。
ただし、在宅医療を専門的に行う「在宅療養支援診療所の開設要件」は要件のハードルが高いため、選択する際には注意が必要です。
(厚生労働省「在宅医療のみを実施する医療機関に係る保険医療機関の指定の取扱いについて」に掲載あり)
その点、訪問診療・往診を中心的(専門ではない)に取り組む在宅療支援診療所は「総患者数の5%以上を外来患者とする」基準のため、クリアすべきハードルの低さという観点からはおすすめできると言えるでしょう。
地域のニーズを把握して強みを用意する
2つ目のポイントは、「地域のニーズを把握して強みを用意する」です。
例えば、高齢者が多い地域では「訪問看護」や「往診頻度の増加」などの方策を講じる。
都心部にあり、仕事帰りのサラリーマンを多く見込める場合は、診察時間を「午後診療」や「24時間対応」にするなど。
このように、クリニックの運営を成功させるためには地域の特色に沿った医療供給体制の構築が大切になります。 あわせて読みたい
その際には、例えば「末期がん患者の在宅ホスピスケア」や「人工呼吸器必須の重度障害患者対応」など、ニッチな医療ニーズに対応する気概や、他院との違いを如実に打ち出すことができると、より効果的な集客が期待できるでしょう。
ホームページでのアピールに力を入れる
3つ目のポイントは、「ホームページでのアピールに力を入れる」です。
開業するクリニックが「在宅診療と外来を両立させる」のか、あるいは「在宅診療のみを専門的に行う」のか、いずれの場合でも、ホームページでのアピールは積極的に行うようにしましょう。
特に在宅診療メインで開業する場合、患者さんだけでなく医療関係者にもアピールするホームページ作りをおすすめします。
外来における診療科目では、患者さんに向けた受診を促すような内容のホームページ制作が基本となりますが、在宅診療においては医療従事者の方に対する発信が後々のクリニック運営の肝になってくるからです。
具体的には、拠点となる場所の付近で勤務している医師や基幹病院の従業員・関係者、近隣の老人ホームの運営者など、同業者を中心とした多方面に向けたアナウンスを充実させましょう。
また、前の章で紹介した自院の強みなど、他院と差別化できる部分もアピールするとさらに良いです。
こうしたホームページの存在は、開業前のコネクション作りだけに留まらず、開業後におけるビジネスの窓口として必ずや役に立ってくれることでしょう。 あわせて読みたい
開業前に知っておきたいことは?
その他、クリニックの開業前に知っておきたいこととしては以下のようなものが挙げられます。
- 現行の医療保険制度
- 導入する医療機器の種類
- 開業のトレンド
開業には診療内容や診療費の決定、医療機器の導入費・人件費を含む診療報酬体系の見直しなど綿密な計画や長期的な準備期間が必要になってきます。
このような開業に関する事前準備に対しての不安があるという方は、転職エージェントの力を借りるのも有効です。
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医師のキャリアプラン形成や医療機関の内部情報にも精通しているため、開業の心強い味方になってくれるでしょう。
まとめ(訪問診療医は儲かるのかと開業のポイント)
今回は、訪問診療医の年収事情や開業のポイントなどについて解説しました。
訪問診療医の収入
- 訪問診療(在宅医療)の診療報酬は高い
- 訪問診療(在宅医療)は勤務医でも年収は高い
- 開業で見込まれる年収は2,700万円以上
開業の3つのポイント
- 在宅医療に取り組む割合を決める
- 地域のニーズを把握して強みを用意する
- ホームページでのアピールに力を入れる
訪問診療医は基本的に給料も高く、外来に比べても優れた点の多い魅力的な職業ですが、転職や開業にはきちんとした準備が大切だということがご理解いただけたかと思います。
この記事を読んで訪問診療医にますます興味が湧いたという方は、これらの内容を精査し、ぜひご自身の転職や開業に活かしてください。
そして、クリニックの開業に関してまだ気になることがあるという方は、まずは医師専門の転職エージェント「メッドアイ」に相談してみてください。
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