救急医療とは、私たちの日常生活において突然の緊急事態や疾患が発生した際に、迅速かつ適切な医療対応を提供する重要な医療分野です。
何気ない日常でも、突然の急病や怪我に見舞われる可能性があるため、救急医療に関心を寄せている方も多いのではないでしょうか?

この記事では、救急医療の仕組みや救急医の仕事内容について詳しく紹介します。
救急医療ではどのような状況でどのような対応が行われているのか、また、救急科の医師がどのような役割を果たしているのかを知りたい方に向けて、具体的に解説します。

この記事を読むことで、救急医療の背後にある医療体制や医師の働きについて深く理解できるでしょう。
救急医療の重要性と専門家の貢献について理解するためにも、ぜひ最後までお読みください。

救急医療とは

救急医療は、急性外傷、急激な病気、食中毒などの緊急の医療ニーズに対応する医療分野です。
日本の救急医療体制は、患者の症状の重さや緊急性に応じて、初期(一次)、二次、三次の医療段階に分かれています。

一次救急は、緊急性も重症度も低い症例を対象とし、在宅当番医制を導入している医師会及び休日夜間急患センターや診療所で受診が可能です。

二次救急は、入院治療や手術が必要な患者に対応し、専門的な治療を提供します。共同利用型病院方式と病院群輪番制があり、これらを活用して患者への速やかな対応が可能です。
共同利用型病院方式では、主要な地域病院が特定の場所で専門医師による診察・治療を行えるように施設を提供し、対照的に病院群輪番制では、都道府県知事による指定を受けた救急指定病院が順番に患者の受け入れと診療を担当し、連携を強化しています。

そして、三次救急は、救命救急センターや、高度救命救急センターにて提供されます。
交通事故や生死にかかわる緊急な病態を持つ患者に対応し、高度な医療ケアが役割です。この分類によって、患者の緊急性に応じた適切な医療を迅速に行うことが可能となるのです。

しかし、現状の救急医療体制では、患者自身がどの段階の医療機関を選択する必要があり、時には適切な医療機関へのアクセスに遅れが生じることがあります。
この問題を解決し、緊急性の高い患者が適切な医療を受けるために、
ER型救急が注目されています。ER型救急では、専門の医療スタッフが患者を診察し、緊急性に基づいて診療を優先的に行い、迅速な医療対応をする制度です。

救急外来には、さまざまな患者が訪れます。
特に、精神疾患を抱えた患者や夜間に診療を必要とする患者が多く見られます。
また、冬季には感染症の症状を訴える患者も増加します。救急外来は一般病棟と異なる患者層に対応し、迅速な診療を提供する重要な医療施設と言えるでしょう。

救急医療の現場の課題と未来

救急医療の現場は日々、多くの患者に対応し、その迅速かつ専門的な医療が求められています。
しかし、この重要な医療分野にもさまざまな課題が存在します。

救急医療の提供における医師や看護師の過重な労働負担が挙げられ、これを軽減するための対策が求められています。

また、救急医療の専門性を持つ医師とその他の医師との協力関係の強化が未来の課題として浮上しており、より効果的な連携の構築が必要です。

今後の救急医療においては、患者への適切な医療提供と医療従事者の健康を守りながら、効率的な体制を整える必要があります。
厚生労働省を中心とした政策策定や情報提供、啓発活動が、救急医療の未来を明るくするために不可欠な要素となるでしょう。

救急医療の現場の課題と未来について以下で詳しく解説します。

医師及び看護師不足の解決が必要

救急医療の現場では、医師と看護師の不足が深刻な課題として浮き彫りになっています。
この問題の解決が、救急医療の未来において急務です。

まず、医師の不足が救急医療に大きな影響を及ぼしています。
救急の現場では医師が過重な労働を強いられ、これでは安全な医療提供が難しいと言えるでしょう。
そのため、救急隊へのタスクシフティングを含む法改正が検討され、医師の労働環境改善が求められています。

一方で、看護職の体制充実も欠かせません。
看護師は救急医療の中で重要な役割を果たし、その不足は医療提供に大きな負担をかけています。
特に、
救急外来の配置基準に関する検討が必要です。看護師の増員や専門的なスキル向上が、患者への適切なケアを確保する上で不可欠です。

救急医療の需要は今後ますます増加すると予測され、医師の専門性を持つ者の必要性も高まるでしょう。
しかし、これをすべての医師でカバーすることは難しく、新たなアプローチが求められます。
総合診療科と救急科を兼任する医師の存在が、地域の医療提供の偏在を緩和し、専門医の位置づけが重要とされています。

また、医療計画において、地域や医療機関毎の偏在に関する指標や充足目標が策定され、モデルが提供されることが望まれます。
医師の増員や働き方改革には限界があり、その制約を超えたシステムが必要と言えるでしょう。

働き方改革とのバランス調整が必要

救急医療の現場における課題と未来展望について、働き方改革とのバランス調整が必要な点に焦点を当ててみましょう。

救急医療の提供者である医師や看護師は、現場での極端な労働負担に直面しています。
この問題に対処するため、救急救命士へのタスクシフティングや法改正が提案されていますが、一方でそのバランスを取ることが重要です。

医師や看護師の働き方改革が進められる一方で、その過程で患者の受け入れ制限が発生する懸念があります。
救急医療の現場は24時間体制で患者さんの突然の来院に対応しなければならず、医師不足や労働時間の制限があれば、患者への適切な医療提供に支障をきたす可能性があります。

したがって、医師と看護師の労働負担軽減と患者の受け入れ制限のバランスを取ることが必要と言えるでしょう。

救急医の仕事内容

救急医の仕事は、命を守るために急な緊急事態に対応することを使命としています。その範囲は広く、状況に応じて多岐にわたるのです。
救命救急治療、ER型救急、病院前医療、災害医療について以下で解説します。

1.救命救急治療

救命救急治療は、致命的な危機に瀕した患者への専門的な救急医療を指します。
まず、救急搬送にて患者が運び込まれると、救命救急医(救急科専門医)は
初期診断を行い、現在の症状だけでなく可能性のある合併症や他の潜在的な疾患も検討します。

多くの場合、患者は複数の症状を同時に発症しており、正確な診断が不可欠です。
この段階で救命救急医は迅速な判断と行動が求められます。診断が終わると治療のフェーズに進みますが、救急患者はしばしば複雑な病態を持っているため、他の専門医や医療スタッフと連携し、チームとして治療を進めます。

必要に応じて、患者は集中治療室に移送され、専門的な治療が行われます。
これは、救命救急医が
初期救急から治療、そして入院期間全体にわたるケアまで、緊急かつ効果的に対応する必要があることを示しています。
救急医の役割は、迅速な対応と専門知識を結集し、患者の命を守ることに焦点を当てています。

2.ER型救急

ER型救急は運び込まれた患者の状態や重症度を確認し、必要な医療処置を迅速に行うことが主な使命です。
この医療モデルは、北米型の救急医療モデルに基づいていますが、日本独自の医療体制に合わせて柔軟に適用されています。

ER型救急の具体的な仕事内容は、患者の症状や身体状態を診断し、緊急性と重症度を判断することです。
この診断に基づいて、適切な医療処置や治療プランを立て、実行します。また、
患者が他の専門的な診療科へ適切に引き継がれるように調整し、協力を促進します。

日本の医療体制は地域や病院によって異なるため、ER型救急もさまざまな形態で提供されます。
一般的には、すべての患者に対して医療行為を行う特徴がありますが、地域や施設によってはその運用に関する柔軟性が許容されています。

3.病院前医療

病院前医療は、主に「ドクターカー」と「ドクターヘリ」などの専用車両を活用して展開されます。
通常の救急車と異なり、これらの特殊車両には直接救命救急医が搭乗し、現場に急行するのです。


ドクターカーは陸上での活動に特化しており、緊急な救急医療が必要な場所へ迅速に到達します。
一方、ドクターヘリは航空機を用いて、遠隔地や交通の不便な場所へも迅速に移動し、救急医療を提供します。どちらも救命救急医が乗り込み、現場での診療と処置を行います。

病院前医療の目的は、患者が病院に到着するまでの時間帯の医療処置です。通常の救急医療は、患者が病院へ運び込まれてから始まりますが、ドクターカーとドクターヘリを用いた活動では、救命救急医がいち早く現場に到着し、患者のもとに直接駆けつけることが可能です。
これにより、重要な時間の短縮が実現され、輸血等の緊急性の高い処置が早期に進められます。

4.災害医療

災害医療は、災害現場における人命救助が中心です。災害現場の特徴は、医療供給能力に対する需要が非常に高いことです。このような状況に対処するために、チーム医療が不可欠といえます。

災害現場における医療では、一般的には「DMAT(Disaster Medical Assistance Team)」として知られる医療チームを編成し、患者の治療にあたります。
DMATは、災害が発生してから約48時間以内に展開され、機動性と専門性を備えた救急医療のスペシャリストチームです。

災害医療の現場では、DMATをはじめとするさまざまな救命救急医が患者の治療と支援活動に取り組みます。ドクターカーやドクターヘリなどの特殊な設備を活用し、現場に直接急行し、傷病者の評価、治療、トリアージ(優先順位付け)、避難所での医療提供など、多岐にわたる任務に従事するのです。

災害医療は、通常の医療環境とは異なり、非常に緊急で複雑な状況での医療を提供する必要があります。
DMATを含む災害医療の専門家は、迅速な行動と専門的な知識を結集し、被災者の生命を支えます。

DMATについては下記記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてください。

救急医と救急救命士の違い

救急医と救急救命士は、救急医療に関与する役職ですが、役割と資格には重要な違いがあります。

救急医は医師の専門職であり、救命処置に特化した医師を指します。
救急医は救命医療センターや救急病院などで勤務し、重症な患者の治療や救命処置が担当です。
救急医は高度な医療知識とスキルを持っていて診断、処方、手術、重症患者の管理など、医療全般にわたる責任を担います。

一方、救急救命士は国家資格として認められている、救急業務に従事する専門職です。
彼らは一般的に救急車内での活動を主な任務とし、多くは消防士としても知られています。救急救命士は、救急現場で患者に応急処置を行い、必要に応じて医療機関へ患者を搬送します。
一般的な処置に加えて、特定の医療行為(特定行為)を行う資格がありますが、これらの行為は医師の指示が必要です。つまり、
救急救命士は医師ではなく、医師の指導の下で活動します。

救急医の平均年収と労働時間

救急医の平均年収は、他の診療科と比較すると真ん中よりやや下の方にランクインしており、少なめの傾向があります。
以下では、救急医の給与と労働時間について詳しく解説します。

救急医の平均年収はは約1,215万

救急医の平均年収は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば約1,215万円です。
このデータを見ると、救急医の年収は他の診療科と比較するとやや低い傾向があります。
参考:勤務医の就労実態と意識に関する調査

他の診療科目に比べると、脳神経外科や産科・婦人科、外科、麻酔科、整形外科などが高い年収を示しています。
救急医の平均年収は、
これらの診療科に比べてやや低めであり、全体の平均年収にも若干及ばない状況です。

この結果からわかるように、救急医は緊急の医療状況に対応し患者の命を救う役割を果たしていますが、その一方で医師としての経済的な報酬が他の医療分野に比べて控えめなことが調査結果から読み取れるでしょう。

救急医の平均労働時間は週54時間

救急医は、迅速で的確な医療判断を下し、さまざまな緊急状況に対応する必要があるため長時間の勤務が頻繁に発生し、週あたりの平均労働時間が54時間とされています。
この数字は他の診療科に比べて最も長い労働時間を要求されています。

救急医は24時間体制で患者の救命救急医療に当たり、急患や災害現場への出動も含まれます。
このような業務特性から、救急医は深夜や休日に勤務することが一般的で、
不規則な勤務スケジュールが絶えず変動します。その結果、労働時間が長くなりがちで、週に60時間以上勤務する人も少なくありません。

長時間勤務が続くことは、肉体的、精神的な負担を伴います。さらに、労働時間と収入のバランスが他の医療分野と比べてやや不利な側面も指摘されています。
救急医の仕事は大変重要でやりがいのあるものですが、その一方で労働環境や経済的な報酬の側面に不満を抱くことも理解できるでしょう。この点が救急医の労働における課題の1つと言えます。

救急医は大変な反面やりがいも大きい

救命救急医を目指す人々には、過酷な業務に対する不安が存在するかもしれません。
確かに、救急医療は忙しく、ストレスの多い現場が待っていますが、その一方で
大きなやりがいも存在します。

患者さんが心肺停止等の危機的状況から回復し、家族と再び笑顔を取り戻す瞬間に立ち会うことは、医師としての誇りと喜びです。

また、救急医療は患者さんの生死に関わる場面であり、高度な処置を施すことで奇跡的な回復を見ることもあります。
このような瞬間に感動し、自分の医療スキルが人々の命を救う手助けとなることに充実感を覚えることでしょう。

近年、チーム医療の充実や医師の待遇改善など、救急医療の環境は進化しています。
これにより、救命救急医はより働きやすく、やりがいを感じられる職場であり、患者さんに寄り添う医療のプロフェッショナルとして活躍できます。
不安に立ち向かい、救命救急医の重要な役割とやりがいを感じてください。

働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう

救命救急の現場で働くことは、高い専門性と責任を伴う充実感ある職業ですが、その働き方に悩むこともあるかもしれません。そんなとき、医師専門の転職エージェントのサポートが役立ちます。

その中でも、メッドアイは一押しです。
メッドアイは医師の転職に特化したエージェントで、多くの医療関連企業とのネットワークを持っています。転職を考えている方には、無料相談を行い、現在非公開の求人情報も多数取り扱っています。

メッドアイのコンサルタントは、医師の転職に詳しく、個々のニーズに合わせた最適な転職先の提案が可能です。
働き方やキャリアのアドバイスも受けられるため
、少しでも転職を検討しているのであれば、まずは相談してみることをおすすめします。救命救急の経験を活かしながら、より充実した医師としてのキャリアを築く一歩を踏み出しましょう。

まとめ(救急医療とは?)

今回の記事では、救急医療に関する情報を解説しました。

救急医療は、私たちの日常生活において突然の緊急事態や疾患が発生した際に、素早い医療対応が求められる分野であり、その仕組みや専門家の役割について詳しく紹介しました。

救急医療の仕組みには、救急車や救急外来、救急医療指定病院などが含まれ、迅速な患者対応を可能にするための体制が整備されています。
また、救急医の仕事内容には、重症患者の診断や治療、命を守るための医療判断などが含まれ、高度な専門性と経験が求められます。

さらに、救急医療の現場では医師や看護師の過重な労働が課題となっており、働き方改革のバランス調整が必要とされています。
この課題を解決し、患者の受け入れ制限を防ぐために、専門の救急救命士へのタスクシフティングや看護職の体制充実が模索されています。

最後に、救急医療の提供に携わる医療従事者や関係者にとって、適切な転職支援や情報提供が必要となることもあります。
その際には、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」が大変役立ちます。
メッドアイは無料相談や非公開求人の提供など、医師の転職をサポートする専門機関として、安心して相談できる存在です。是非ご活用ください。