救急医療は私たちの日常において、突如として訪れる緊急事態に対応する不可欠な存在です。
では、この救急医療体制の整備はどのように行われ、どのように変遷してきたのでしょうか？
また、この整備が働き方にどのような影響を及ぼしているのか、知りたいと思っている方々に、救急医療体制の詳細を解説します。
この記事を読むことで、救急医療の歴史的な変遷や現代の仕組みを理解することができるでしょう。
さらに、救急医療体制が私たちの日常生活や医療従事者の働き方にどのような影響を及ぼしているのかについても知識を得ることができます。
ぜひ最後までお読みください。
日本の救急医療体制における整備の歴史
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日本の救急医療体制は、長い年月をかけて整備され、重要な制度が次第に発展してきました。
その歴史的経過を詳しく振り返ります。
まず1948年に消防組織法の制定が行われ、これによって市町村ごとに独立した消防組織が設けられ、初期の救急対応がスタートしました。
これは、災害や医療緊急事態に備える基盤を築いた出発点と言えます。
その後、1963年には消防法の一部改正により、救急搬送業務が法制化され、救急医療における法的な基盤が整備されました。これにより、救急対応の迅速化が図られたのです。
続いて、1964年には省令により救急病院や救急診療所の告示制度が導入され、特定の施設が救急医療を提供する役割が明確化されました。
1977年には、救急医療対策の整備事業が開始され、初期、第二次、第三次救急医療体制の発足が実現し、救急医療の質が大幅に向上しました。
これにより、救急医療は地域社会において不可欠なサービスとして確立されたと言えます。
1991年には、救急救命士法の制定により、救急救命士の専門職が誕生し、救急現場での専門的な対応が可能となりました。
そして、1997年には救急医療体制基本問題検討会が設けられ、個別の課題や普及啓発について議論が行われ、救急医療の向上が継続的に追求されました。
2000年には、「病院前救護体制に関する検討会」が開催され、メディカルコントロールや地域連携の整備について議論され、救急医療の連携が一層強化されることとなります。
2008年には、救急医療の将来に関する検討会が行われ、二次医療機関や三次医療機関の充実、救急搬送における課題が取り上げられ、高度な医療提供体制が検討されました。
2018年には、「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」が開催され、DMAT事務局の体制強化や新型コロナウイルス感染対策などが議論の的となりました。
この時期には、災害時の医療対応も重要な議題となりました。
そして2021年には、救命救急センターの充実段階評価見直しや救命救急士法の改正に向けた議論が進行中です。
これらの歴史的変遷と制度整備により、日本の救急医療体制は、高品質かつ迅速な医療サービスを提供する堅固な基盤を築いています。
1985年より医療計画が開始
医療計画とは具体的にどのような制度なのでしょうか。
以下では、医療計画の重要性とその進化について、第8次医療計画を見据えて詳しく解説します。
医療計画について
医療計画は、日本の医療法改正により、1985年に導入された制度です。
これは、都道府県が、良質で適切な医療を提供するための基本的な方針に基づき、地域の現実に合わせた医療提供体制を策定する計画です。
医療計画は、第8次医療計画から新興感染症などの感染拡大時における医療に焦点を当て、5つの疾病（がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患）と6つの事業業（救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療（小児救急医療を含む））に関する具体的な記載が必須とされました。
また、在宅医療に関する情報も含まれます。この計画は、都道府県が国の指標や数値目標を参考にして策定し、地域の医療提供体制を整えるための重要な指針となっています。
現在、第7次医療計画に基づき、各地域で医療提供体制の確保が進行中です。 あわせて読みたい
この計画には、医師の確保や看護職員の需給見通しに関する情報も含まれ、地域の医療状況に合わせた対策が練られています。
医療計画は、地域の医療サービスの質と適切な提供を保障するために不可欠なツールとして、着実に進化し続けています。
第7次医療計画について
第7次医療計画は、救急医療を含む幅広い側面で地域医療の質を向上させるための綿密な戦略を展開しており、これにより患者への最良の医療サービスが提供されることを目指しています。
第7次医療計画は、日本の医療制度における重要な段階で救急医療に焦点を当てた見直しや改善が行われています。
まず、救急医療機関と関連機関の連携と協議体制の構築が重要です。これは、円滑な救急搬送と受け入れ体制を確保し、患者にスムーズな医療サービスを提供するための措置です。
医療機関や介護施設などとの緊密な連携を築くことで、緊急時の対応力が向上し、患者の生命と健康に寄与します。
救命救急センターの充実段階評価の見直しも注目すべき点です。 あわせて読みたい
これは、救急センターの機能向上を図り、地域連携の評価を含めた改善を行う取り組みです。現在の評価を見直し、地域全体の救急医療体制が向上するように計画されています。
さらに、中間見直しにおいては、具体的なポイントが示されています。
救急車の受け入れ件数や転院搬送の実施件数、要請から搬送までの平均時間などが評価対象とされ、これらの指標を向上させるための施策が検討されています。
特に、迅速な救急医療の提供と効率的な患者ケアの実現に向けた改善が焦点です。
救急医療体制の仕組み
救急医療体制は、突然の緊急事態に対応し、人々の命を守るために構築された重要な仕組みです。
この体制は、急患の受け入れから迅速な治療、適切な医療機関への患者転送に至るまで、包括的なプロセスを含んでいるといえるでしょう。
一般的な仕組みとして、まずは一次救急医療機関で初期の治療が行われ、それが不十分な場合、二次および三次救急医療機関への転送が検討されます。
以下で具体的に解説します。
初期（一次）救急医療機関
初期（一次）救急医療機関は、医療制度において重要な役割を果たしています。
これらの医療機関は、外来での診療が可能で、通院で対応できる患者を受け入れ、適切な医療の提供が役割です。
以下に、それぞれの初期救急医療機関の特徴と役割を説明します。
かかりつけ医：かかりつけ医は、患者の定期的な健康管理や疾患の管理を担当する主治医です。
一般的な病気や急性の症状に対応し、診療所やクリニックで平日に診療を行います。患者はかかりつけ医を通じて、日常的な健康問題や急性の症状に対処することができます。
休日夜間急患センター：休日や夜間、祝日など通常の医療機関が閉まっている際に、急患を受け入れるセンターです。急な病状悪化やケガなどの緊急の医療ニーズに対応し、患者の安心を確保します。
これらのセンターは非常に重要で、医療アクセスを維持する役割を果たします。
救急（休日）歯科診療室：歯の急なトラブルや痛みに対応するための医療機関で、特に歯の緊急治療が必要な場合に利用されます。歯科診療室も休日や夜間に患者の歯の健康を守るための診療が役割です。
地域の在宅当番医制度に参加する診療所：地域において、特定の診療所が当番医として設定され、休日や夜間に緊急の医療ニーズに対応します。この制度により、地域住民が迅速かつ適切な医療を受けることができます。
初期救急医療機関は、患者の急な医療ニーズに迅速に対応し、深夜や休日などにも安心して医療サービスを提供するために不可欠な存在です。 あわせて読みたい
二次救急医療機関
二次救急医療機関は、自力で医療機関を受診できない状態で救急車で搬送されてきた患者を受け入れ、初期の医療対応が役割です。
これには、緊急手術や入院治療が必要な場合も含まれます。各都道府県の医療計画に基づいて、都道府県知事によって指定されます。
二次救急医療機関は、同一地域内の救急指定病院と連携し、病院群輪番制や協力病院当番制を採用することが一般的です。
これにより、救急患者への適切な医療提供が確保されます。
患者が緊急の状況で運ばれた場合でも、迅速な対応が行われ、必要な治療や手術が適切に行われるようになっています。
二次救急医療機関は、地域の医療体制の一翼を担い、救急医療へのアクセスを確保する役割を果たしているといえるでしょう。
三次救急医療機関
三次救急医療機関は、救急医療の最上位に位置し、生命にかかわる重篤な状態を抱える患者に特化した役割があります。
この種の機関には、地域救命救急センター、救命救急センター、そして高度救命救急センターが含まれます。
まず、地域救命救急センターは、一次および二次救急医療では処理しきれない緊急事態に対応します。地域に広く配置され、24時間体制で患者を受け入れ、高度な救急医療を提供します。
これらのセンターは、交通事故や大規模な災害時にも不可欠な存在です。
救命救急センターは、より専門化された医療を提供し、重症患者のケアに特化しています。これらのセンターは、心臓発作、重度の外傷、中毒、重篤な感染症など、深刻な疾患や状態を持つ患者に焦点を当てています。
最後に、高度救命救急センターは、最も高度なレベルの救急医療を提供する施設です。ここでは、複雑な手術や高度な医療技術が必要な状況に対処します。例えば、臓器移植や高度な救急外科手術が必要な場合、高度救命救急センターが必要不可欠です。 あわせて読みたい
三次救急医療機関は、その専門性と高度なケア能力により、地域の医療体制において欠かせない存在です。
重症患者や多くの診療科にまたがる症状を持つ患者に対して、迅速で適切な治療を提供し、生命を救う重要な役割を果たしています。
救急医療体制の整備による成果
救急医療体制の整備が進む中、その成果は顕著に現れつつあります。
緊急時に頼りになる医療体制は、人々の生命を守り、安心感を与えるでしょう。
このような救急医療体制の進化は、私たちの安全と健康に大きな影響を与えており、今後もさらなる発展が期待されます。
具体的な救急医療体制の整備による2つの成果について解説します。
1.交通事故による死亡者数の減少
救急医療体制の整備により、交通事故による死亡者数が顕著に減少しています。
これは、救急医療機関がより迅速かつ適切な対応を行う能力を向上させ、事故現場から病院への患者搬送が効率的に行われるようになった結果です。
1つは、地域救命救急センターや救命救急センターの増設や充実により、交通事故の現場から瞬時に専門的な医療ケアが提供されるようになりました。
これにより、救急患者の生存率が向上し、死亡事例が減少しました。
さらに、高度救命救急センターの存在です。交通事故による重傷患者を受け入れ、最先端の医療技術と設備を活用して治療を行うことで、死亡を防ぐ可能性が高まりました。
また、高度救命救急センターが医療従事者の教育と訓練に貢献し、高度な救急医療のスキル向上に寄与しています。
交通事故における死亡者数の状態別分析も示唆的です。2021年中の交通事故死者数を見ると、歩行中の死者が最も多く、次いで自動車乗車中の死者が多いことが明らかです。
これらの状態別死者数の分析から、救急医療機関が特に歩行者への救急医療において効果的であることが示唆されます。
状態別の死者数および事故類型別の発生件数の分析は、救急医療の効果的な配分と改善に向けた方針策定に貢献し、交通安全政策の成功に寄与していると言えるでしょう。
2.迅速な受け入れ体制の確保
救急医療体制の整備により、迅速な受け入れ体制の確保が地域により異なる成果を上げています。 あわせて読みたい
その一環として、ドクターヘリの導入が挙げられます。
ドクターヘリは医師や看護師を搭載し、救急患者への迅速な医療提供が可能です。
特に災害現場や山岳地帯など、アクセスが難しい場所での救急搬送において効果的です。
また、整備の強化により、これまで遠くの病院へ患者を搬送していたケースも減少し、近隣の医療機関で迅速かつ適切な医療ケアを提供できるようになりました。
このような取り組みにより、救急患者が重篤な状態で受け入れ医療機関に到達するまでの時間が大幅に短縮され、その結果、生存率の向上や合併症の発症リスクの低減が実現しています。
地域における救急医療体制の迅速な対応力強化は、多くの命を救っており、安心して生活できる社会への貢献が顕著です。
今後の救急医療体制の整備
救急医療体制の整備は、急患の迅速な救命救急対応を確保するための不可欠な取り組みです。
未来を見据えた救急医療の整備には、いくつかの重要な課題が浮かび上がっています。
第8次医療計画策定に向けて、2つの整備のポイントを解説します。
1.在宅介護高齢者の増加に伴う医療・ケア体制の整備
第8次医療計画策定に向けた救急医療の整備は、在宅介護高齢者の増加に応じた医療・ケア体制の整備を重要な課題と位置づけています。 あわせて読みたい
単身世帯・高齢者単身世帯の増加、そして要介護高齢者の増加により、高齢者の最終段階における医療・ケアがますます重要となっています。
2040年を見据えると、単身世帯は5世帯に2世帯、高齢者単身世帯は6世帯に1世帯と予想されており、一人ひとりの生活状況に合わせた適切な医療・ケアが求められます。
また、高齢者の要介護認定率が年齢とともに上昇し、特に85歳以上では増加が顕著です。
このような要介護高齢者の増加に伴い、在宅介護や介護施設でのケアが必要とされ、それに対応できる医療・ケア体制の整備が不可欠といえます。
さらに、65歳以上の退院患者数が増加し、介護施設への退院患者数も増える見込みです。
このような状況に対応するため、地域包括ケアシステムにおける救急医療の役割が重要です。地域の保健医療福祉関係者との連携を強化し、地域のかかりつけ医での診療を促進する取り組みが必要でしょう。
第8次医療計画策定に向けた救急医療の一環として在宅介護高齢者を含む高齢者の医療・ケアを継続的に支え、適切な情報提供と説明を通じて本人が医療・ケアに参加できるような環境を整備するための努力が求められています。
2.新型コロナまん延時に対する受入れ体制の強化
新型コロナウイルス感染症のまん延時における受け入れ体制の強化も重要なポイントとされています。 あわせて読みたい
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、地域医療の課題や人口構造の変化が浮き彫りになりました。
この課題に迅速に対応し、地域の医療体制を強化することが求められています。
2021年の医療法改正により、新興感染症への対応に関する事項が新たに追加され、予防計画が策定されました。
この対応を通じて、新興感染症と通常の医療の提供体制を統合し、地域における役割分担を明確にすることが目指されています。
さらに、第7次計画期間中に追加された「医師確保計画」と「外来医療計画」についても、それぞれのガイドラインに基づき、第8次医療計画の策定と併せて見直しが行われます。
特に、二次医療圏の設定については先行して議論され、地域医療の効率性を向上させるための取り組みが進められるでしょう。
新型コロナウイルス感染症の教訓から、平時から最大規模の受け入れ体制を整備し、地域における新興感染症と通常医療の提供を確保するため、医療機関間の協定締結や役割分担の強化が行われます。
これにより、将来の感染症拡大時にも地域の救急医療が迅速かつ適切に対応できるようになるでしょう。
救急医のニーズが高まっている理由
救急医のニーズが高まっている理由は何でしょうか。
これは、社会のさまざまな変化や課題に起因しています。
高齢化社会が進行し、高齢者の増加に伴い、救急患者数が増加する傾向が顕著です。
少子化により医師数の減少も懸念され、これが救急医の需要増加につながっています。
また、単身の高齢者や介護者が増える中で、「出口問題」と呼ばれる退院後の適切なケア先の確保が重要なテーマとなり、これに対応するためにも救急医の需要が高まっています。
1.高齢化により救急患者数の増加が見込まれるため
救急医療のニーズが高まっている背後には、高齢化が大きな要因として浮かび上がります。
高齢化は医療の現場全般に影響を与えており、その中でも特に救急医療に大きな挑戦を投げかけています。
1つは、医師数の減少です。
高齢化に伴い、慢性疾患や年齢に関連した健康問題が増加しており、これらの患者を適切に診療するためには多くの医師が必要です。しかし、少子高齢化の影響で医師の数が減少しており、医療提供の限界が感じられています。
もう1つは、患者数の増加です。高齢者の要介護率が上昇しており、在宅ケアや施設ケアを必要とする高齢者が増加傾向にあります。
その中には、突然の病状の悪化や急性の症状を呈するケースも多く、これらの患者が救急医療を必要とすることが増えています。
このような状況から、救急医療の現場はますます多忙化し、迅速な対応が求められています。
高齢化による医師数の減少と患者数の増加は、今後も救急医療における大きな課題となり、効果的な対策が求められているでしょう。
2.単身の患者数の増加により「出口問題」が予想されるため
救急医療の需要が高まっているもう1つの要因に、単身の患者数の増加が挙げられます。 あわせて読みたい
特に高齢者や介護を必要とする患者が単身で生活するケースが増えており、これが「出口問題」として表面化しているのです。
出口問題とは、病院や医療施設で治療を受けた患者が、病状が回復しても自宅での生活が難しく、適切な施設や受け入れ先が見つからずに退院できない状況を指します。
特に単身の高齢者や介護者の場合、自宅療養が難しいことが多く、そのまま病院での滞在が長引くことが問題視されています。
このような出口問題が救急医療において重要な要素となっており、適切な受け入れ先やケア体制の整備が喫緊の課題となるでしょう。
単身患者の増加に対応するためには、在宅ケアや介護施設の充実が求められ、救急医療の受け入れ体制と連携が不可欠です。この課題に対処することが、今後の救急医療体制整備の一環として重要です。
医師のキャリアに悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう
医療の現場では、救急医師を含む医療従事者が常に高いプレッシャーの中で患者の命を救うために奮闘しています。
しかしながら、医師としてのキャリアや働き方について悩むこともあるでしょう。
特に、救急医療の現場では、厳しい勤務時間やストレスがかかる状況が多く、医師自身の生活に影響を及ぼすこともあります。
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まとめ（救急医療体制の整備状況とは？）
今回の記事では、救急医療体制の整備状況について詳しく解説しました。
救急医療は私たちの日常生活において極めて重要な役割を果たし、その整備は過去から現在にかけて大きく変遷してきました。
過去の流れを振り返ると、1985年に医療計画がスタートし、その後、医療体制の整備が進化してきました。
救急医療は新たな感染症への対応や高齢化社会への対策を含む多くの課題に直面しています。
また、現代においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、医療体制の再編や強化が急務となっています。
今後の救急医療体制の整備には、新型コロナまん延時に対する受入れ体制の強化や高齢化に伴う在宅介護高齢者の増加に対する医療・ケア体制の整備が求められていくでしょう。
これにより、より迅速で適切な医療ケアが提供され、安心できる医療環境が整備されることでしょう。
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