医師の地域偏在問題は長く取り沙汰されていますが、その一方で、地方での勤務を希望する方も少なくありません。
地方で働く場合、地域医療の現場に赴くケースが多くなり、行政や介護業界などとも連携した働き方が求められます。
「地域医療について今一度知りたい」
「地域医療の現場に転職するコツを知りたい」
この記事では、地域医療に携わる働き方に興味がある医師のために、地域医療の現状や問題点を解説します。
地域医療の現場に転職する際に必要な面接の心構えや、転職で失敗しないステップもご紹介しますので参考にしてください。
地域医療の現場への転職時に知っておきたいこと
地域医療に関わる働き方を目指した転職を希望するのであれば、まずは地域医療の現場がどういうものかを知っておくべきでしょう。
この章では、地域医療の定義を改めて解説すると同時に、現状の問題点や、求められる働き方についてご紹介します。
1.地域医療の定義について
地域医療とは、病院での治療に限らず、地域全体で住民の健康を支える医療のあり方を指します。かかりつけ医を中心に、病院、介護施設、行政などが連携し、疾病の予防から治療、在宅医療・介護までを切れ目なく提供することが特徴です。 あわせて読みたい
これは、2014年に施行された法律により、各自治体が自分の地域で包括的に地域住民の健康を守れるよう、医療体制や介護体制の指標を策定した「地域医療構想」をもとにしているのです。
その地域にある医療施設に適切な役割を分担し、必要な医療がスムーズに受けられるようにしたり、地域住民の健康促進のために必要な取り組みを行ったりします。
2.地域医療の問題点について
地域医療体制を構築するためには、問題点もあることを意識しておくことが大切です。
例えば、医師数の地域による偏りや、診療科によって医師数が不足したりといった医師不足や偏在の問題があります。
また、その地域の医療機関や介護を担う企業や団体との連携や、情報共有に必要なIT化の遅れがみられるケースも少なくありません。
そして、医師偏在や情報共有の難しさが原因となって、一部の医療機関や救急対応を行う病院などに負担が集中してしまうといった現象も起こりがちです。
医療業界においては、医師数を増やすための医学生の定員増加や、地方枠の設定などの対策が行われています。 あわせて読みたい
しかし、研修を利便性の良い都市部の病院で受けたり、ある程度スキルを身につけた中堅医師が都市部で開業したりすることもあり、医師偏在の解消はまだ道半ばだと言えるでしょう。
3.地域包括ケアシステムとの関係について
高齢化が加速する現代社会では、介護が必要な高齢者が安心して暮らしていくために、地域包括ケアシステムの存在も重要です。
高齢者が要介護の状態になった際に、医療や介護だけでなく、生活支援や帰宅支援の面でもサポートができるような体制の構築を目指しています。
地域包括ケアシステムと地域医療構想は対象者の幅に違いはあるものの、目指している点はまったく同じなのです。
この両者が実現できて、かつスムーズな連携を取れるようになることで、その地域が住民にとって老若男女を問わず、安心して健康的な暮らしを送れる場所になります。
地域医療においても、診断や治療だけでなく、退院後の生活支援や、病気予防にもつながる健康指導などの役割を負います。 あわせて読みたい
予防や指導、生活支援に関しては、地域包括ケアシステムと協力することで、より効率的な住民サポートが実現できるでしょう。
4.在宅医療の体制について
地域医療の現場においては、在宅医療体制の拡充も課題の1つです。
厚生労働省の調査では、在宅医療の患者数は2008年ごろから増加の一途を辿っています。
国や医療業界の在宅医療推進に関する取り組みは1980年代から見られるようになりました。
一方で、2006年以降は在宅療養支援を目的とした診療所や病院の創設が進んでいますが、近年では訪問診療を行う医療機関の数は横ばい状態です。
在宅医療を提供する医療期間には、国が以下の医療機能を求めています。
- 退院支援
- 日常の療養支援
- 急変時の対応
- 看取り
退院支援や日常の療養支援では、地域包括支援センターや訪問介護を行う事業者などとの連携も重要です。
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地域における医師の必要性とは
地方や地域医療に関わる仕事を希望する場合、地域医療の現場における医師の役割や必要性についても理解しておく必要があるでしょう。
どの地域でどんな役割で働くかを考えるためにも、地域における医師の必要性について解説します。
1.地域偏在による人手不足の場所が多いこと
地域医療体制が必要とされる多くの場所では、地域偏在による医師不足に悩む医療機関が存在します。
また、その地域の医師数が足りていないことから、一部診療科を閉鎖したり、診療時間を短縮することで凌ぐ病院もあるのです。
そのしわ寄せは当然、患者にも不利益となっていて、病院が遠くて通院ができないケースや、専門的な治療を地元で受けることができないケースも出ています。
地域によってはオンライン診療や訪問診療を充実させることで、病院が遠いという地理的な条件をカバーしているところもあります。
こうした機能を持つ病院や、地域中核病院などでは、地域の多くの患者を受け持つこともあり、激務をこなす医師も少なくありません。
2.住み慣れた自宅で最期まで過ごしたい人が多いこと
前項で在宅利用の推進について触れましたが、内閣府がまとめている「高齢化社会白書」では、60歳以上の人に「完治が見込めない病気の場合に迎えたい最期の場所」を尋ねた結果があります。
それによると、51%の人が「自宅」と答えていて、「病院・介護療養型医療施設」の31.4%を大きく上回っています。
世帯人数や男女、年齢などで状況は変わってくるものの、住み慣れた我が家で最後まで暮らしたいというニーズが高いのです。
訪問診療や看取りの重要性がこれまで以上に高まり、在宅医療や地域包括ケアシステムの拡充に貢献できる医師が必要とされています。
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地域医療に関する面接でよく聞かれる質問と評価ポイント
医師の面接では、志望先が地域医療の現場であるかどうかにかかわらず、「地域医療についてどう考えていますか?」「地域医療をどのように捉えていますか?」といった質問をされることがあります。
これは、地域医療への志望有無そのものを確認する質問ではありません。
医師として医療制度や病院の役割をどの程度理解しているか、社会的視点を持っているかを見極める意図があります。
特に、地域医療構想や医師偏在、在宅医療の推進といった流れが進む中で、採用側は「自院の役割を理解した上で働ける医師かどうか」を重視する傾向にあります。
以下では、地域医療に関連して面接でよく聞かれる質問と、その評価ポイントを解説します。
面接でよく聞かれる質問例
Q. 地域医療についてどう考えていますか?/どのように捉えていますか?
この質問では、地域医療そのものをどのように理解しているかが問われます。
地域医療とは、特定の医療機関や診療科だけで完結するものではなく、地域の医療資源や人口構成、疾病構造を踏まえながら、地域全体で住民の健康を支えていく医療の考え方です。
急性期医療だけでなく、慢性疾患の継続的な診療、在宅医療、介護や行政との連携などを通じて、切れ目のない医療提供を行う点が特徴とされています。
面接では、こうした地域医療の特性を表面的なイメージではなく、現実的に理解しているかどうかが見られています。
地域医療を「理想論」や「善意」だけで捉えるのではなく、限られた医療資源の中で成り立つ医療であることや、医療機関同士の役割分担・連携が不可欠であることまで踏まえて自身の意見を述べられるかが評価ポイントになります。
A. 回答例
地域医療は、理想論だけでは成り立たず、医師不足や医療資源の制約といった現実を前提に成り立っている医療だと考えています。
その中で、急性期から慢性期、在宅医療までを地域全体で支えるためには、医療機関間の連携や役割分担が欠かせません。
私自身は、個々の医療機関や医師が「自分の専門だけを見る」のではなく、地域全体の医療の流れを意識して関わることが、地域医療では特に重要だと考えています。
限られた医療資源の中で、自分に求められている役割を理解し、他職種と連携しながら現実的に地域を支えていく姿勢こそが、地域医療の本質だと捉えています。
Q. なぜ都市部ではなく、この地域(または地域医療)を選んだのですか?
この質問では、「人の役に立ちたい」「地域医療に興味がある」といった抽象的な回答だけでは、評価につながりにくい傾向があります。
採用側が見ているのは、以下のようなポイントです。
- 自身の診療経験と地域医療のニーズを結びつけて考えられているか
- 在宅医療や高齢者医療、慢性疾患診療への理解があるか
- 地域医療構想や病院の役割を踏まえて志望理由を語れているか
志望する地域や病院の特性を理解した上で、「自分がどのように貢献できるのか」まで具体的に説明できると、説得力のある回答になります。
A. 回答例
これまで急性期病院で、慢性疾患を抱える高齢患者の急性期治療から退院調整までを多く経験してきましたが、退院後の生活まで十分に関与できないことに課題を感じていました。
この地域では在宅医療や慢性疾患の継続的な診療が重要な役割を担っていると伺っており、自身のこれまでの診療経験を生かしながら、医療機関間や多職種と連携し、地域で完結する医療に貢献したいと考え、志望しました。
Q. 地域医療で大変だと思う点は何ですか?
この質問は、地域医療の「理想」ではなく、現実をどこまで理解しているかを確認するために聞かれます。
地域医療には、
- 医師不足による業務負担
- 多職種や行政との調整
- 医療資源や設備の制限
といった課題が存在します。
重要なのは、大変さを挙げること自体ではなく、
- その課題にどう向き合おうとしているのか
- 自分なりに工夫できる点は何か
まで言及できるかどうかです。
現実を理解した上で前向きに考えられている姿勢は、評価されやすいポイントです。
A. 回答例
地域医療で大変だと感じる点は、医師や医療資源が限られている中で、幅広い役割を求められることだと思います。業務負担が大きくなりやすく、多職種や行政との調整にも時間と労力が必要になると理解しています。
その上で、個人で抱え込むのではなく、医療機関内外での情報共有を丁寧に行い、チームとして地域を支える意識を持つことが重要だと考えております。 あわせて読みたい
採用側が本音で見ている評価ポイント
地域医療に関する質問を通じて、採用側が重視しているのは、次の点です。
定着してくれるかどうか
医師一人の影響が大きい現場ほど、「すぐに辞めてしまわないか」は重要な判断材料になります。
環境の変化や制約を理解した上で働けるかどうかが見られています。
地域や組織に溶け込めるかどうか
医療機関内だけでなく、介護事業者や行政との連携が必要な場面も多くあります。
多職種と協力しながら医療を進められるコミュニケーション力も評価対象です。
理想と現実のバランスが取れているか
地域医療への思いが強すぎるあまり、現実とのギャップに耐えられないケースもあります。
採用側は、理想を持ちつつも、現実を冷静に理解しているかを慎重に見極めています。
面接対策を万全にするために
地域医療に関する質問は、地域医療志望者だけでなく、すべての医師にとって無関係ではありません。
医療制度や病院の役割をどう捉えているかは、医師としての姿勢を示す重要な要素です。
面接前には、
- 志望先病院の役割や立ち位置
- 地域医療構想や地域の医療体制
- 自分がどのように貢献できるか
を整理しておくことが、面接成功につながります。
不安がある場合は、地域医療や医師転職に詳しい転職エージェントを活用し、
- 面接で見られるポイント
- 病院ごとの評価軸
- 志望動機のブラッシュアップ
といったサポートを受けるのも有効な方法です。
医師が転職や面接で失敗しない4つのステップ
医師は転職が多い職業とも言われています。
地方勤務を目指したり、地域医療の現場で働こうとするのであれば、転職が伴うケースがほとんどとなるでしょう。
ここからは、転職活動や面接で失敗しないための考え方と、必要なステップについてご紹介します。
1.自身にあった転職パターンを把握する
医師の多くはキャリアプランを立てて、それに沿って研鑽を積んでいくことになります。
その過程で必要に応じた転職をすることも珍しくありません。
医師のキャリア形成はある程度パターン化されていて、若手のうちはスキルアップや技術研鑽のための転職がメインになる傾向があります。
中堅医師になってくると、将来の出世や独立を考えた道筋づくりに必要な転職を求めるようになるケースも多くなってくるようです。
また、それとは別に、研修後に研究の道を選んだり、医業以外の道を選ぶといった転職パターンも出てきます。
地域医療を目指す場合、どの地域でどんな役割で働くのかを考え、それに適した転職時期はいつなのかを考えてみることをおすすめします。
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2.転職の準備と計画を立てる
医師の転職活動では、収集するべき情報が多くなります。
また、転職先から内定をもらっても、今の職場の退職がスムーズにいかないケースもあり、時間がかかるのも特徴です。
医師の一般的な転職活動にかかる期間は半年から1年ほどとも言われているため、計画的に行動する必要があります。
その一方で、志望先への応募から面接を経て内定までは意外とスピード勝負となり、長くても1カ月程度で決まってしまうのが一般的です。
転職活動序盤では、情報収集をして志望先を探しながら、履歴書や経歴書の作り込みや面接対策をしっかり進めておかなくてはなりません。
そして、先を見据えてスムーズな退職ができるよう、今の職場への根回しも早めにしておく必要があるのです。
転職を決断したら、まずはスケジュールをしっかり立てて、それに沿った転職活動を心がけましょう。
3.転職の先にあるゴールを明確化する
転職したいと思った時に、なぜ転職したいのかを整理して、転職によって何を叶えるのか、どんな状態を目指すのかを明確にしておくことも大切です。
地域医療を志して転職を考えるのであれば、地域医療ではどんな働き方があり、どのような医師が求められるのかを知る必要があります。
その上で、自分がどんな場面でどんなふうに貢献できるのか、またはどんな経験を積めてスキルを身につけられるのかを見極めなくてはなりません。
転職理由や、転職で目指すゴールを明確にしておくことで、転職活動中の情報収集にもブレがなくなります。 あわせて読みたい
そして、ゴールがきちんと見えていると、面接の際にも自分の考えをきちんと説明しやすくなり、先方の理解も得やすくなります。
また、いざ転職してから「こんなはずではなかった」と後悔するリスクも減らせるため、転職を考える時はまず初めにこの点を整理して明確にしておきましょう。
4.自身にあった転職方法を調べる
転職活動の方法は、大きく分けると以下の3つです。
- 知人や友人からの紹介
- 自分で情報収集して応募
- 転職エージェントを利用
知人や友人の紹介を通じての転職活動は、より詳しい条件を聞いたり、転職先の情報をよく知れるといったメリットがあります。
ただし、紹介者との関係性によっては、希望を通すための条件交渉がしづらいとか、転職後に合わないと感じても辞めづらいといったデメリットが出てくることも考えられます。
自分で情報収集を行う場合は、膨大な時間と手間を必要とするのがデメリットです。
転職エージェントを利用すると、情報収集にまつわる手間や時間を削減できるのがメリットです。
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地域医療の現場で働くなら医師専門の転職エージェントに相談
地域医療の現場で働こうと思ったら、通常の転職よりもより一層情報収集が重要になってきます。
一口に地域医療と言っても、地域ごとに必要としている医療リソースは異なってきますし、医師に求められる役割も違ってくるでしょう。
まずは自分が地域医療でどのような働き方をしたいのかを考えてみてください。
そして、その働き方を叶えるために合った環境がある病院を、転職先として探す必要があります。
今いる地域や、比較的病院数が多い地域であれば、仕事探しもしやすいとは思いますが、そうでない場合は自分で情報収集をすることにも難しさが伴うでしょう。
地域医療に関わる仕事を探すのであれば、転職エージェントを活用するのがおすすめです。
メッドアイでは、医師のキャリアプランに合わせた転職情報を提供しています。
また、無料相談サービスも利用できますので、まずは地域医療で働きたい旨を相談して、一緒に理想のキャリアプランを考えることも可能です。
数多くの医師に寄り添ってきたノウハウと、非公開を含む豊富な求人情報を駆使して、転職を成功へ導くお手伝いをしています。
まとめ(地域医療とは? 面接や転職の前に把握すべきポイント)
地域医療体制の拡充が進めば、その地域ごとに医療や介護、福祉にまつわるサービスを完結させることができるようになります。
そして、地域内の医療サービスが円滑に回り、健康指導を通して地域住民の健康維持が向上すれば、医療者の負担を減らすことにもつながるのです。
医師不足や連携不足など、課題はたくさんあるのが現状ですが、それでも地域医療での仕事に魅力ややりがいを感じる医師はたくさんいます。
地方で働きたいと思ったら、ほとんどの場合は転職が必要になってくるでしょう。
しかし、今住んでいる場所から遠くなればなるほど、求人情報を探したり、気になった病院を見学に行くといった活動がしづらくなります。
そんな時には、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」を活用し、気になる病院の情報を集めるのが効率的でおすすめです。
また、メッドアイであれば、求人情報が豊富なだけでなく、面接対策など、転職活動に伴うさまざまなサポートを受けることができます。
キャリア形成に悩んだり、地域医療現場への転職を考える際には、まず相談から始めてみてはいかがでしょうか。



















