医師として一人前に成長すると責任のあるポジションに就きたい、という出世欲が出てくる方も多いでしょう。病院ごとに微妙な違いはあるものの、ある程度のポジションとその役割は共通しています。
- 病院の主な役職や出世までの道のりについて知りたい
- 病院ごとの大まかな役職の違いについて知りたい
- 医師として出世するためのポイントを知りたい
このように思っている方に向けて、病院の役職やキャリア形成などについて紹介します。
出世に興味があまり湧いていない方、もしくは駆け出しの若手医師の方もぜひ参考にしてください。
病院の役職は医療機関ごとに異なる
病院での役職は、その医療機関の規模や種類によって微妙に異なることがありますが、大学病院の医局のみ、役職は共通です。
ここでは、大学病院、民間病院、クリニック、診療所における役職とその特徴を解説します。
大学病院の役職一覧
大学病院の役職とは、医局の職位を表し、トップから主に次のものがあります。
- 病院長
- 教授
- 准教授
- 講師
- 助教
- 医員、専攻医
- 研修医
病院長
病院長とは、大学病院のトップであり医師だけでなくすべての職員のトップでもあります。
さまざまな案件の決定権を持ち、病院の進むべき方向に舵を切る存在です。病院の診療科のなかで技術面が優れており、収益を挙げている診療科の医師が選ばれる傾向にあるでしょう。
教授
教授とは、医局のトップ、つまり診療科のトップを意味します。
教授クラスになるとメインとなる日々の診療からは少し離れますが、「教授回診」を行うことがあります。教授回診の目的は、患者のカルテをチェックし、治療の方向性を主治医とすり合わせた上で、実際に患者に話を伺いに行くことです。
カルテからの印象と差異がなければ問題ありませんが、現行治療の継続が不適切、または方向性を変える必要があれば、カンファレンスを行います。
また、教授は医局内の人事権を持ち、大学病院やその関連病院へ派遣する医師の配置の調整を行います。
さらに、教授クラスの医師は製薬メーカー主催の勉強会や講演会に呼ばれる機会が増える、論文執筆にかける時間が長くなる、など業務に拡がりが出ることが特徴です。
准教授
准教授は、40代半ばから後半で就任するケースがありますが、成果を出している場合は40代前半で抜擢されることもあります。
准教授の基本的な業務は、臨床現場の管理、そして若手医師の育成です。教授選を意識した論文作成が多くなるのも准教授です。
講師
講師は、日常的な診療の他に、医学生の講義や実習に携わる機会が増えて業務の幅に拡がりをみせます。今まで培ってきた経験を後進に伝えるべく教育面や指導に力が入る時期ともいえます。
病棟業務も行いますが、日当直やオンコールの回数は少なくなる場合が多いです。
助教
助教は博士号を取得することで昇格できる職位です。 あわせて読みたい
医員、専攻医などは、初期臨床研修を終えた医師が、日本専門医機構が定めるプログラムに沿って経験を積み、専門医を目指す時期です。
医師として、患者を受け持ってきっちり治療するスキルは身に付いているので、さらに場数を踏むために診察や手術に邁進します。関連病院をローテーションしながら、さまざまな症例を経験できるので医師としての知見が深まるでしょう。
民間病院の役職一覧
民間の病院で医師が就任する役職例の一覧は以下の通りです。
- 病院長
- 院長代行
- 副病院長
- 病院長補佐
役職の名称や体制は施設ごとに異なるため、ご自身の勤務先や、気になっている施設の役職などは個別でご確認ください。 あわせて読みたい
各役職は互いに連携し合って業務を行っています。
大学病院とも共通していますが、診療科ごとにトップが配置されています。看護部なら看護部長、薬剤部なら薬剤部長などです。
クリニック・診療所の役職一覧
クリニックや診療所ごとに設けられている役職はさまざまですが、一般的な例は次の通りです。
- 院長
- 副院長
- 事務長
クリニックや診療所は開業した医師が院長に就任することが一般的です。
規模が大きくなった場合や、院長のサポートが必要な場合は副院長をおくことがあります。
一族経営を行っている施設の場合、次期院長が期待される後継者を副院長に就任させて、院長業務を教えるというパターンもよくある構造です。
それ以外に、曜日や時間限定で診療を行う非常勤枠を設けている施設もあります。
また、開業医は診療業務の他に経営をすべて担う必要があります。 あわせて読みたい
労務管理、採用選考、広告運用、行政の手続きなど幅広くあるため本来の診療業務に専念できないというデメリットがあります。
そこで、事務長という役職をつけてこのような事務関連の業務をすべて担当させている場合もあるのです。なお、事務長は医師である必要はありません。
医師が出世するために必要なこととは
医師の出世には、まず医師としての実力が必要です。
その上で、周囲からの信頼が厚かったり、コミュニケーション能力に長けていたりする人がポジションに就くことが多いです。具体的な内容を解説します。
1.運やタイミング
准教授クラスになると人数も絞られ、教授や病院長のポストは一枠しかありません。
前任者が定年や退職を迎えるタイミングに、ちょうどよい年齢で、豊富な経験を持つ医師もその時代ごとに限られています。
また、直属の上司はもちろん、上層部から気に入られていることも少なからず必要です。
出世するためにはその時の上司の好みに左右されることが多いのが現状です。
2.周りからの信頼関係
出世する人は、上司だけではなく、同僚や部下からの信頼も厚いことが望まれます。
ただし、医師としての能力が高いことが前提です。医師の世界では、診療スキルや手術の技術は目に見えるかたちでわかります。
適切な判断をいかに無駄なくスピーディーに行えるか、術後に合併症や副作用を起こす割合が低いかなど、周囲は確実に把握しているので日々の業務は全力で取り組みましょう。
それに加えて、「この人についていきたい」「困ったことがあっても相談できる」「あの人の判断なら間違いない」このように思われるための人間性も重要です。
3.コミュニケーション能力
同じくらいのスキルの医師が2人いたとして、一人は周囲との関係も良好な医師と、あまりコミュニケーションを取らない一匹狼タイプの医師の能力が同等だとしたら、どちらの医師が出世するでしょうか。
もちろん前者のタイプです。医師は一人の力で患者さんの治療を行うことはできません。医師だけでなく、他の職種のスタッフとのコミュニケーションも大切です。
また、敵を作らないような接し方の方が、好ましいでしょう。
4.成果や実力
手術件数や診療成績などの医師としての成果、実力は出世に必要な要素です。
どんなにコミュニケーション能力が高かったとしても、医師としての実績がなければ周囲からの信頼を得ることはできません。
出世街道を歩みたいのであれば、日々の業務に全身全霊で取り組まなければならないことを忘れないようにしましょう。
5.研究や論文の数
研究や論文の数は、病院として対外的にも評価される指標となります。 あわせて読みたい
ただし、量が多ければ良いというわけではなく、インパクトファクターが大きく質が高いものが好ましいです。
大学病院においては年功序列に加え、研究の成果や論文の数が影響しやすいため、大学病院での出世を目指している人は、若手のうちから学会に参加したり、論文を読んだりして準備を進めておきましょう。
医師のキャリア形成における注意点
医師のキャリア形成においては、自分の理想像を明確にすることが大切です。
必要に応じて周囲に相談するようにしましょう。具体的に解説します。
1.将来の理想像を明確にする
自分が医師としてどのようなキャリアを積み、どのような働き方をしたいのか、理想像を明確にしましょう。
今いる医療機関で、周囲と切磋琢磨しながら出世を目指したいのか、それとも立場よりも経験を重視して環境の良い医療機関に転職をするか、などです。もちろん開業して自己研鑽しつつ地域の医療に貢献する、という道もあります。
出世を目指すのであれば周囲とのコミュニケーションを大切にすることを忘れてはいけません。 あわせて読みたい
もし、自分に足りないことに気づいた場合は、目標の理想像に近づけられるように改善していきましょう。
2.理想のワークライフバランスを明確にする
将来自分が目指したいキャリアとプライベートのバランスを考えておきましょう。
- 仕事一筋で生きたい
- 家庭を持っても仕事を優先させたい
- プライベートも充実させたい
など、自分にとっての重要な要素は何か、価値観を明確にすることでふさわしい働き方や選択肢が見えてきます。 あわせて読みたい
3.一人で抱え込まないようにする
インターネットを使って簡単に情報収集ができますが、さまざまな情報がありすぎて、自分を見失ってしまうこともあります。 あわせて読みたい
どのようなキャリアを築きたいのか、また目指すキャリアを実現するためにはどうすれば良いのか、悩んでしまったら、一人で抱え込まずに周りに相談してみるのも良いでしょう。
自分にはなかった発想や価値観が得られるかもしれません。また、医師専門の転職エージェントは、あなたの希望に沿ったさまざまなキャリアプランを紹介してくれます。
働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントに相談しよう
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まとめ(各病院の役職一覧と出世に必要なこと)
医師としての診療実績や普段からのコミュニケーション能力、周囲からの信頼感はある程度までの出世に必要ですが、教授や病院長クラスへの出世となると運やタイミングが重要になってきます。
上のポジションを目指すとなると、論文や研究などの実績も必要になるため、若いうちから志を高く持って努力を重ねましょう。
将来のことや出世に関わることを一人で抱え込んでしまわないように、周囲の人へ相談をしたり転職エージェントを活用したりして、理想の医師人生を歩んでください。