専門医制度は2018年に大きく見直され、現在は日本専門医機構が基準を統一して運用しています。
専門医を取得するために必要な研修期間や試験の難易度は、診療科によって異なります。

  • 専門医が取りやすい科はあるのか
  • 各専門医の取得状況や合格率はどう違うのか

この記事では、公的データ・日本専門医機構の資料をもとに、診療科ごとの取得率や合格率を比較し、「どの専門医が相対的に取得しやすいのか」を整理します。診療科選びの判断材料としてご活用ください。


専門医とは

専門医とは一般社団法人日本専門医機構が認定する、各診療科において標準的で適切な診断・治療を提供できる医師のことです。
専門医は科学的根拠に基づいた最良の医療を提供できる医師であり、日本の医師免許取得者の90%以上が専門医あるいは元専門医です。
参考:専門医とは|一般社団法人 日本専門医機構

専門医は原則として5年ごとに更新があり、医療の進歩を学ぶとともに診療実績を積むことなどが専門医の更新認定基準として義務づけられています。

専門医制度とは

専門医制度とは医師の専門性やスキルを高めるための教育制度です。
2018年から新しい専門医制度が始まりました。専門医制度では専門医の質を担保するために、日本専門医機構という第三者機関が認定基準を統一して運用しています。

また専門医は19の基本領域と29のサブスペシャリティ領域に分かれています。
基本領域は総合内科や外科などの幅広い診療科で、サブスペシャリティ領域は消化器や腎臓などのより専門性の高い診療科です。
サブスペシャリティ領域の専門医になるには、基本領域の専門医を取得してからさらに研修を受ける必要があります。
新しい専門医制度は医師の質の向上だけでなく、地域医療の充実にも貢献することを目指しています。

専門医の取得状況はどれくらい?

厚生労働省が令和4年に発表した「医師・歯科医師・薬剤師調査」のデータによると、専門医ごとでは大きな差が見られました。
専門医の取得状況を専門性資格及び麻酔科の標榜資格、医師少数区域経験認定医師ごとに分析した結果、最も取得率の高い専門医資格は総合内科専門医で8.4%が取得しています。次いで外科専門医が6.8%、そして内科専門医が6.2%と続いています。

性別による割合でも男女ともに総合内科専門医が最も多く、男性では8.8%、女性では7.4%という結果です。
一方で、いずれの専門医資格も取得していない医師は全体の37.5%であり、約6割の医師は何らかの専門医資格を取得していることがわかります。

出典:『厚生省:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

専門医試験の合格率ランキング

基本領域専門医とサブスペシャリティ専門医の合格率について、データをもとに解説します。

基本領域専門医の場合

基本領域専門医とは、内科や小児科、皮膚科など、幅広い一般診療を担う診療科の専門医です。
日本専門医機構が発行する「日本専門医制度概報2023年度版」によると、令和2~4年度における基本領域専門医の合格率には科ごとに差が見られました。

特に合格率が高い科としては、外科専門医(95.9%)や整形外科専門医(94.18%)泌尿器科専門医(93.01%)、内科専門医(91.97%)などが挙げられます。また、放射線科専門医(91.89%)リハビリテーション科専門医(89.46%)も高い合格率を維持しています。

一方で、合格率が相対的に低かった科は、総合内科専門医(71.85%)や精神科専門医(71.46%)眼科専門医(79.38%)、麻酔科専門医(75.35%)などでした。

令和2~4年度の平均合格率は以下の通りです。(小数第三位を四捨五入)

基本領域専門医平均受験者数平均合格者数平均合格率
外科専門医
(新制度試験は令和3年度から開始。令和3年度は令和4年度に実施。)
889.50853.0095.90%
整形外科専門医762.33718.0094.18%
泌尿器科専門医262.33244.0093.01%
内科専門医
(令和2、3年度は中止)
2,230.002,051.0091.97%
放射線科専門医271.33249.3391.89%
リハビリテーション科専門医123.33110.3389.46%
総合診療専門医175.00155.5088.86%
形成外科専門医171.67151.0087.96%
救急科専門医365.67321.0087.78%
産婦人科専門医465.33403.0086.60%
病理専門医122.67105.3385.87%
耳鼻科専門医250.00213.3385.33%
臨床検査専門医16.6714.0084.00%
脳神経外科専門医246.00201.0081.71%
皮膚科専門医283.33230.6781.41%
小児科専門医
(令和2年度は中止。令和4年度から出願者ベースに変更)
958.50771.0080.44%
眼科専門医344.33273.3379.38%
麻酔科専門医577.33435.0075.35%
総合内科専門医5,062.003,637.0071.85%
精神科専門医586.33419.0071.46%

出典:『日本専門医制度概報2023年度版

サブスペシャリティ専門医の場合

先ほどと同じ「日本専門医制度概報2023年度版」によれば、サブスペシャリティ専門医の中で最も合格率が高い診療科は脊椎脊髄外科専門医(平均99.57%)で、3年間ほぼ全員が合格している水準です。続いて老年科専門医(97.79%)、アレルギー専門医(94.81%)などが高い傾向にあります。

一方で、合格率が低い診療科もあり、糖尿病専門医(73.17%)、小児外科専門医(75.00%)、がん薬物療法専門医(77.38%)などは比較的低い水準です。

令和2~4年度の合格率の平均は以下の通りです。(小数第三位を四捨五入)

サブスペシャルティ領域専門医平均受験者数平均合格者数平均合格率
脊椎脊髄外科専門医310.33309.0099.57%
老年科専門医
(令和2年度は中止)
136.00133.0097.79%
腎臓専門医265.67252.3394.98%
アレルギー専門医
(令和2年度は令和3年度に実施)
414.00392.5094.81%
血液専門医
(令和2年度は令和3年度に実施)
249.00235.5094.58%
循環器専門医
(令和2年度の「合格者数」は「書類審査通過者数」であり「合格率」とは「書類審査通過率」のこと)
1,066.67981.3392.00%
内分泌代謝科専門医206.33187.6790.95%
肝臓専門医377.00341.3390.54%
放射線診断専門医232.00207.3389.37%
放射線治療専門医64.3357.3389.12%
消化器病専門医
(令和2、3年度は令和4年度に実施)
1,268.501,104.5087.07%
心臓血管外科専門医137.67117.3385.23%
集中治療科専門医264.67222.0083.88%
呼吸器外科専門医90.3375.3383.39%
リウマチ専門医188.00154.3382.09%
呼吸器専門医361.00296.3382.09%
消化器内視鏡専門医
(令和2年度は中止)
1,354.501,107.0081.73%
神経内科専門医265.00212.3380.13%
消化器外科専門医815.33653.0080.09%
感染症専門医108.3386.6780.00%
内分泌外科専門医19.3315.3379.31%
乳腺専門医128.33101.3378.96%
放射線カテーテル治療専門医79.0062.0078.48%
がん薬物療法専門医112.0086.6777.38%
小児外科専門医57.3343.0075.00%
糖尿病専門医374.00273.6773.17%

出典:『日本専門医制度概報2023年度版

【結論】専門医が取りやすい科はある?

解説してきたデータから見ると、取得率が高い傾向にあるのは総合内科専門医、合格率が高い傾向にあるのは外科専門医です。
しかし、必ずしも専門医資格と活かせる診療科が結び付いているわけではなく、どこの診療科が取りやすいとは一概に言い難い現実もあります。

どの科が取りやすいかは個人の能力や熱意にも左右されるため、全体的な合格率だけでなく、自身の将来像や志向性を踏まえながら検討しましょう。


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まとめ(専門医が取りやすい科はある?)

今回は、専門医資格の取得率と合格率について解説しました。
全体的に見ると総合内科専門医の取得率・内科専門医の合格率が高い傾向にあり、整形外科、放射線科領域も優れた成績を収めています。
一方で、精神科専門医、眼科専門医などは合格率が低い傾向が見受けられます。
総合内科専門医は取得率が高いに関わらず、合格率は他の科に比べて低いという結果でした。

専門医資格の取得は個々の能力や熱意に大きく左右され、専門医資格と活かせる診療科が必ずしも一致するわけではありません。自身の将来像や志向性を踏まえた上で診療科を選択しましょう。

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