医者は他の職業に比べて年収水準が高いことが知られています。
しかし、年齢や経験、勤務地や診療科など、収入レベルを左右する要素が多く、すべての医者が高収入を実現しているわけではありません。
また、ある程度高い給料がもらえていても、仕事のハードさを考えると割に合わないと感じる人もいるのが実情です。

「医者としてそれなりの年収はあるものの、それ以上の激務で割に合わないと感じている」
「収入以上に労働時間の長さや精神的負担の方が大きいと感じている」
「医師としての労働に見合う条件で働ける可能性はあるのか知りたい」

この記事では、医者が年収が割に合わないと感じてしまう理由や、働き方の現状をご紹介します。
収入を増やしたり、収入相応と感じられる働き方を実現する方法についても解説しますので参考にしてください。

医者の年収が割に合わないと感じてしまう3つの理由

収入が割に合わないと感じるのは、給料の額と仕事の量が噛み合っていないという実感があるからです。
医者の場合、どのようなケースでこの噛み合わなさが発生してしまうのかを考えると、主に以下の3つの理由が挙げられます。

  • 収入に見合わない激務である
  • 出世することで給料が下がることがある
  • 人間関係が複雑になりやすい

それぞれの理由について、詳しく解説していきます。

1.収入に見合わない激務である

医者の仕事は、地域や診療科によっては激務を強いられることが珍しくありません。
当直回数が多かったり、オンコール対応が多かったりすると、総じて長時間労働になりがちです。
また、医局に所属する場合、臨床業務以外にも勉強や研究といった負担が発生します。

病棟に入院する患者や自分が手術を受け持った患者への対応は、時間を問わず対応する医者もいて、お金を稼ぎたい気持ちよりは責任感から体を動かしている方も少なくないでしょう。
さらに若手のうちは給料がそこまで高くないケースもあり、忙しさと収入水準が噛み合わないと感じる場合もあるのが現実です。

2.出世することで給与が下がる場合がある

主に大学病院に勤めている場合は、民間病院に比べて給料が安めの傾向があります。
そのため特に若手の医師はアルバイトを掛け持ちして収入を確保している人も多いです。
しかし、年齢が上がるにつれてある程度収入は上がっていくものの、出世して役職に就いた時点でアルバイトができなくなるケースがあります

管理職となり臨床外の業務が増え、アルバイトをする余裕がなくなるからです。
また、勤務先によっては役職がある職員の副業を禁止しているケースもあり、若干給料が増えてもアルバイトによる副収入を絶たれた分、年収が減ってしまう可能性があります。

3.人間関係が複雑になりやすい

単純な仕事量と収入の比較だけでなく、職場での過ごしやすさもモチベーションに影響をもたらす要因です。
人間関係があまり良くない職場で気を遣ってストレスを感じながら働いていると、多少給料が良くても割に合わないと感じやすくなってしまいます。
特に規模の大きい大学病院に勤めていると、医局内のヒエラルキーや教授ごとの派閥といった複雑な人間関係に身を置くことになりがちです。
人間関係があまり良好でないと、仕事以外の余計なストレスを抱え込んでしまい、心身ともに疲れて職場を離れてしまう人も出てきてしまいます。

医者の働き方の現状

医者は収入は高いけど激務というイメージは、今や医療業界だけでなく、一般的にも認知されていると言っていいでしょう。
ここからは、医者の働き方の現状について、厚生労働省や転職エージェントなどのデータをもとに解説します。

1.ほとんどの医師が法定労働時間を超えて働いている

働き方改革が進められているとはいえ、医者の時間外労働の長さはあまり大きな変化を見せていないのが現状です。
厚生労働省が行った2022年の調査では、週あたりの労働時間が法定労働時間内で収まっている割合は22.5%と、1/4にも満たない結果となっています。

週あたり労働時間割合
週40時間未満22.5%
週40〜50時間未満32.7%
週50〜60時間未満23.7%
週60〜70時間未満12.1%
週70〜80時間未満5.4%
週80〜90時間未満2.3%
週90〜100時間未満0.9%
週100時間以上0.5%

(参照:厚生労働省「第18回医師の働き方改革の推進に関する検討会」資料より)

働き方改革のA水準の範囲内とされるのが、週50〜60時間未満までで、この割合が78.9%となっています。
2016年の同調査では60.8%でしたので改善傾向は見えますが、週40時間未満のいわゆる法定労働時間内で仕事を終えられている医師は4人に1人しかいません。
ほとんどの医者が、大なり小なり残業が避けられないという状態が解消される見通しは、残念ながらたっていません。

2.半数以上の勤務医がアルバイトをしている

勤務医がアルバイトとして兼業先を持っている割合がどのくらいかを調査したデータでは、全体で58.8%が兼業していると回答しています。
勤務医の大半がアルバイトをしていることになり、特に大学病院に勤める勤務医の兼業は9割以上にものぼることがわかっています。

勤務先兼業している医師の割合
全体58.8%
大学病院91.4%
大学病院以外43.3%

(参照:厚生労働省「第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会」資料より)

また、大手の医師専門転職エージェントでも独自にアンケートをとっていて、どのエージェントの結果を見ても、6割〜8割の医師がアルバイトをしているという結果が出ています。
株式会社エムステージホールディングスが行ったアンケートでは、アルバイトをする理由についてもヒアリングしていて、以下の通りの結果となっています。

非常勤勤務をする目的回答数
年収を上げたい263
空き時間を有効に使いたい185
常勤先と違う領域の診療に挑戦したい56
自身の専門領域の症例を多く経験したい44
常勤先や上司等から依頼された25
幅広い症例を経験したい24
特に理由はない14
人脈を作りたい11
開業資金を貯めたい6
その他5

(参照:Dr.転職なび「なぜ医師はアルバイトをする?非常勤先からの年収額やメリット、「非常勤のみ」という働き方も解説」より)

副業やアルバイトをするほとんどの医者が、収入を上げるためと答えていて、常勤先の給与だけでは満足できていない状況が見える結果です。

実際の医者の年収は?

働き方の現状の次は、医者の年収事情について見ていきましょう。
高収入というイメージがあるものの、その実情は年齢や役職、診療科や働く地域など、さまざまな要因で違いが出てきます。

年収は経験年数や年齢により大きな差がある

勤務医の場合、年収は若手ほど低く、経験を積み年齢が上がるほどに高くなるのが一般的です。
厚生労働省の調査では、医者の年代別の平均年収は以下の通りです。

年代平均年収
20代約507万円
30代約906万円
40代約1,410万円
50代約1,687万円
60代約1,773万円
70代以降約1,621万円

(参照:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)

また、診療科によっても年収事情が異なります。
診療科別の平均年収は以下の通りです。

順位診療科目平均年収
1位脳神経外科1,480.3万円
2位産科・婦人科1,466.3万円
3位外科1,374.2万円
4位麻酔科1,335.2万円
5位整形外科1,289.9万円
6位呼吸器科・消化器科・循環器科1,267.2万円
7位内科1,247.4万円
8位精神科1,230.2万円
9位小児科1,220.5万円
10位救急科1,215.3万円
11位その他1,171.5万円
12位放射線科1,103.3万円
13位眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科1,078.7万円

(参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」より)

時給換算すると安いことがある

多少給料が良くても割に合わないと感じる原因として、労働時間の長さがあることは言うまでもありません。
医者の仕事を時給換算すると、意外と安い結果になってしまいます。

例えば、前項でご紹介した厚生労働省のデータでは、20〜24歳の月給額は平均で37.9万円でした。
法定労働時間内で働いている場合、週40時間×4週で160時間となり、時給換算すると2,368円です。
しかし、法定労働時間の倍は働いているようなケースでは、時給は半分の1,184円になってしまいます。
どちらも一般的な業種で簡単に見つかりそうな時給であり、医者の高級取りイメージとは程遠いものです。

また、常勤先で当直をすれば、その時間は(臨床対応時以外)労働時間にカウントされませんし、当直手当も数千円程度です。
常勤先の当直時の時給は数百円程度となり、医者の仕事はコスパが悪いと感じてしまうのは仕方ないのではないでしょうか。

医者としての年収が割に合わないと感じたときの解決策3選

思ったより給料が上がらない、割に合わない気がすると感じたら、収入を上げることが一番の解決策です。
ここからは、医者が給料をアップさせたり、より良い環境で働くための方法を3つご紹介します。

1.アルバイトをする

アルバイトは医者にとって収入を増やす最も手っ取り早い手段です。
同じ当直でも常勤の勤務先でするのと違い、アルバイトならそれなりに高いお給料がもらえます。
また、スポット勤務で検診や予防接種などのアルバイトをすれば、時給換算すると1万円程度になるものがほとんどです。

ただし、2024年4月から開始した医師の働き方改革により、アルバイトの時間も労働時間とカウントした基準が適用されます。
トータルで時間外労働が上限に達さないよう気をつけながらアルバイトをしなくてはなりません。
常勤先での勤務時間が長い場合はアルバイトがあまりできないケースも出てくるので注意が必要です。

2.転職をする

今の職場で思ったように昇級できない場合や、労働時間が長すぎて割に合わないと感じる場合は、転職を考えるのも有効な解決策です。
例えば大学病院から民間病院に転職するだけでも年収アップができるケースはたくさんあります。
医師が足りていない地域では好条件の求人が出ていることが多いです。

ワークライフバランスを重視したいなら、年収水準が同レベルでも当直が少ない環境の勤務先を見つければ、割に合わないという感覚をなくすことが可能です。
例えば療養型病院であれば、かなりゆったりした働き方を実現できます。
キャリアプランを見直す際は、技術の吸収や成長とのバランスを考慮するのが大切です。
その上で、どの程度の条件の職場を選ぶべきかを考えながら仕事を探すのがおすすめです。

3.開業をする

医者が高収入というイメージは、開業医が牽引している一面があります。
開業して順調に運営できれば、その平均年収は2,900万円を超えるというデータがあり、勤務医よりも高い年収水準です。(参照:厚生労働省「第23回医療実態調査」より)
加えて開業医であれば、働く時間や提供する医療スタイルも自分で決めることができ、やりがいを感じながら働くことができます。

ただし、開業に漕ぎ着けるまでの資金準備や、開業後の経営といった、医療以外の能力が求められることが多いため、失敗するリスクが少なくないのも事実です。
キャリアプランのゴールに開業を置く人は少なくありませんが、入念な準備が必要なことは言うまでもありません。

働き方に悩んだら医師専門の転職エージェントへ相談しよう

激務をこなしても思ったほど収入が上がらないと感じたり、今の年収では割に合わないと思ったら、キャリアプランを見直してみるのはいかがでしょうか。
キャリアプランは仕事面だけでなく、プライベートも含めて人生計画を立てることで、ワークライフバランスや必要な収入額が把握できます。
一度客観的に見直して、今のままの働き方に疑問を感じたら、転職を考えるのも1つの選択肢です。
その際には、医師の転職に特化した転職エージェントを利用することをおすすめします。

メッドアイでは、無料相談を通じてキャリアプランのお悩みに向き合い、最適なアドバイスを行っています。
すぐ転職する決意までは持っていなくても、今の自分の市場価値を把握し、どんな環境で働ける選択肢があるのかを知ることが可能です。
非公開求人を含めた豊富な求人情報があり、非常勤やアルバイトを探したい方も気軽にご相談いただけます。

まとめ(医者の年収が割に合わないと感じてしまう理由)

医者の仕事はハードで、せっかくの高収入も割に合わないと感じる人は少なくありません。
特に研修医のうちは、資格を取得したり技術を磨いたりする必要があることから、給料が安くても今の職場で頑張るしかないというケースも出てきます。
しかし、無理を重ねて体を壊してしまったり、やりがいを見失ってしまっては本末転倒です。

働き方に疑問を感じてしまったら、一度立ち止まって周囲を見渡す時間を作ってみてはいかがでしょうか。
より良い条件の職場を探して転職したり、アルバイトで常勤先以外の職場の雰囲気を知ったりすることは、医者としての経験値を上げるためにもプラスに働きます。

医者が転職する場合、転職先の情報をどれだけ集められるかが重要になってきます。
自分一人で求人情報をチェックするのは、忙しい仕事の合間では大変です。
医師専門の転職エージェントを利用して、より多くの情報を集めることで、キャリアプランに沿った仕事探しを成功させてください。