医師として働く中で、
「このまま今の環境で働き続けていいのか」「医師を辞めたいわけではないが、今のキャリアに限界を感じている」
と悩む方は少なくありません。
近年は、医局に残ることや臨床一本で働き続けることだけが正解とは限らず、自分に合った働き方を選ぶ医師が増えています。
本記事では、転職エージェントの視点から
- 医師がいわゆる「ドロップアウト」を考える主な理由
- その後に選ばれやすいキャリア
- 研修医が悩んだときの具体的な対処法
について、現実的な観点で解説します。
医師のドロップアウトとは
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医師のドロップアウトとは、主に医局を離れた医師のことを指します。これは、医師として医局内でキャリアを積むことが成功の道筋だと認識されていたことがあり、途中で辞めた医師は脱落した者だと捉える人がいたからだと言われています。
しかし、近年では医師を取り巻く常識が変化し、医局から転職をする医師も増えてきたことから、「医局を離れる=ドロップアウト」というマイナスイメージな考え方は時代遅れと考える人も多くなりました。
研修医であっても、病気や産休を理由に休む医師がいることから、自身のワークライフバランスを意識した働き方を重視する医師が増えてきています。
特に初期研修期間中は、仕事自体や人間関係に悩むことが多く、転職を考える研修医も少なくありません。
医師がドロップアウトしてしまう5つの理由
ここでは、医師がドロップアウトしてしまうポイントとして5つの理由を紹介します。
1.家庭・ライフステージの変化
医師という職業柄、担当する患者の容態によって急遽出勤しなければいけなくなったり、勤務が長引いて帰りが遅くなったりと、ハードで不規則な働き方となってしまいます。 あわせて読みたい
特に結婚をして家庭をもっている医師であれば、「子供の成長を身近で見守りたい」「子育てのしやすい環境で働きたい」と考える人が多いです。
また、女性医師であれば、出産や子育てを理由に退職や転職を選ばざるを得ない人もいるでしょう。
そういった家庭環境の変化などで、より働きやすい職場環境に転職を希望し、ドロップアウトを選択する医師は多いでしょう。
2.労働環境と業務負担の限界
例えば、オンコール当直が多いことや、時間外労働が常態化している、などといったことがドロップアウトの原因となる場合があります。 あわせて読みたい
オンコールでは、勤務時間外であっても患者の急変時や緊急搬送時には出勤する必要があり、入浴時でも携帯電話を音が聞こえる距離に置いておかなければいけないといったルールもあります。
勤務時間外でも、プライベートの自由度が低いことがドロップアウトの原因となっているでしょう。
3.医局・職場の人間関係
これは上司や同僚との人間関係が上手くいかない場合や、チームワークが悪いことがあげられます。派閥争いにストレスを感じることも多く、派閥争いに巻き込まれると希望とは異なる派遣先に異動になるといった事例もあるので、そのような煩わしさからドロップアウトする医師も多くなっています。 あわせて読みたい
4.給与・待遇への不満
労働時間や仕事量に対して給料が割に合わないと感じている方も多くいます。 あわせて読みたい
激務でありながら、自分が思っていたより給料が上がらなかったり、他の医師と比較したときに自分の方が低かったり、待遇に満足できないと感じた場合には不満を抱きやすくなるでしょう。
特に、ライフステージが上がることによって若い時よりも出費が増えてくる人が大半です。介護費用や子供の教育費用にお金がかかってしまうため、その分給料が上がらなければ不満に思ってしまう人も多いでしょう。
5.キャリア形成への違和感
医師がドロップアウトを選択する背景には、「逃げ」ではなく将来を見据えた戦略的な判断が含まれているケースも少なくありません。
現在の病院では専門性を十分に高められない、目指すキャリア像と組織の方針が合わない、将来的に開業や別分野への展開を考えているといった理由から、一度レールを外れる決断をする医師もいます。
このような選択は、医師としての価値を下げるものではなく、自分にとって最適なキャリアを再設計するための前向きな判断といえるでしょう。 あわせて読みたい
研修医としてドロップアウトしたいと感じたら

1.辞めたい理由を明確にする
研修医としてドロップアウトを考えたとき、まず重要なのは「なぜ辞めたいのか」を感情ではなく言葉として整理することです。
「つらい」「しんどい」「もう無理」といった感覚だけで判断してしまうと、次の選択でも同じ悩みを繰り返してしまう可能性があります。
例えば、辞めたい理由は以下のように分解できます。
- 業務内容が自分の適性に合っていない
- 人間関係や指導体制など、職場環境に問題がある
- 当直や長時間労働による心身への負荷が大きい
このように、「嫌」という感情を、適性・環境・負荷といった観点で整理することで、自分が本当に変えたいものが明確になります。
「医師という仕事自体が合っていないのか」、それとも「今の研修先・働き方が合っていないのか」によって、取るべき行動は大きく異なります。 あわせて読みたい
転職、転科、研修の中断、環境調整など、適切な選択をするためにも、まずは自分の悩みを客観的に言語化しておきましょう。
2.一人で抱え込まずに相談する
友人や知人に相談することで、客観的に物事をみることができ、精神的な負担も軽減しやすくなります。 あわせて読みたい
特に上司や指導者からのハラスメントなどは一人で抱え込まないことが大切です。また、同じ医療関係者であれば、もし転職をしたい場合に受け入れ先などを紹介してくれる可能性もあります。
ストレスも感じやすくなってしまうので、第三者の視点を入れることが重要です。
3.転科を検討する
ドロップアウトしたい理由によっては転職まで行かずとも、転科をすることで自分に合う環境に出会える可能性があります。 あわせて読みたい
例えば、外科から精神科や内科など、働き方や専門性に合った診療科への転科を検討する医師もいます。
ただし、また給与や待遇に関する認識の食い違いが起きないように事前の詳細な情報収集が必要です。
臨床研修の中断と再開について
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やむを得ない理由がある場合は、臨床研修を中断することができます。また、希望があれば再開することも可能です。
例えば、妊娠・出産・育児・傷病・研究・留学などの多様なキャリア形成が理由であれば、研修管理委員会から中断の勧告の申出を受け、管理者が臨床研修の中断を認めればその時点で中断することができます。
研修先においても、研修をドロップアウトして再開したい人の受け入れ配慮が求められているため、再開しやすい環境になっています。
医局を離れた医師の主な3つの転職先

1.民間病院への転職
医局を離れた後の転職先として、民間病院を選ぶ医師は少なくありません。
民間病院は大学病院と比べて医局人事や派閥の影響を受けにくく、自分の専門性を活かしながら、比較的裁量を持って働ける環境が整っている点が特徴です。
特に、「これまで培ってきた診療スキルは活かしたいが、医局の人事異動や上下関係には縛られたくない」「臨床は続けたいが、働き方や条件について自分の意思を反映させたい」と考えている医師には、民間病院への転職が向いています。
また、勤務条件や給与体系が比較的明確で、交渉の余地がある点も民間病院のメリットです。
診療内容自体は大きく変わらなくても、職場環境や意思決定の自由度が変わることで、精神的な負担が軽減されるケースも多く見られます。
医局でのキャリアに違和感を覚えつつも、臨床医としての道は続けたいと考えている場合、民間病院への転職は現実的かつ有力な選択肢の一つといえるでしょう。 あわせて読みたい
2.クリニックへの転職
医局を離れた医師の転職先として、クリニックを選ぶケースも多く見られます。クリニック勤務は大学病院や大規模病院と比べて外来診療が中心となり、当直やオンコールがない、もしくは非常に少ない点が特徴です。そのため、勤務時間が比較的安定しており、プライベートの時間を確保しやすい働き方が実現できます。
現在の勤務環境が激務で心身の負担が大きいと感じている医師や、子育てや介護などライフステージの変化に合わせて働き方を見直したい医師にとって、クリニックへの転職は相性が良い選択肢といえるでしょう。
また、患者一人ひとりとじっくり向き合った診療を行いたい医師にとっても、クリニックはやりがいを感じやすい環境です。
一方で、症例の幅が限定されやすい点や、専門性をさらに高めたい医師には物足りなさを感じる可能性もあります。自身が今後どのようなキャリアを描きたいのかを整理したうえで、クリニック勤務が適しているかを判断することが重要です。 あわせて読みたい
3.医療系の民間企業への転職
医局を離れた医師は、医療系の民間企業へ転職するという道もあります。
以下は、医師が臨床以外でキャリアを活かせる転職先の一例です。
- 産業医
→労働者が健康に就労できるように支援や助言を行なう医師 - 製薬会社のメディカルドクター
→新薬の開発における臨床試験の実施や治験に対し医学的観点から指導を行なう医師 - 医療系サービス企業勤務
→医療機器や医療用具の販売・レンタル・保守・コンサルティングなど様々な角度から医療を支える - 保健所などの公衆衛生医師
→保健所や都道府県庁などの地域保健分野で住民の健康レベル向上の仕組みづくりを行なう - 保険会社の社医/診察医
→保険加入希望者の診査・提出書類を元に引取査定・保険金支払いにおける査定を行なう
特に、製薬会社や医療機器メーカーでは、医師としての経験を活かせるポジションが募集されることがあります。 あわせて読みたい
民間企業に転職すると勤務医時代よりも給料が下がってしまう可能性があるので、給料面を重視する場合は注意が必要です。
ただ、当直やオンコールなどといった不規則な勤務形態で働くことはなくなります。そのため、ワークライフバランスを重視しつつ、医師としての知見を別の形で活かしたい医師にとって、医療系民間企業への転職は有力な選択肢といえるでしょう。
まとめ(医師がドロップアウトする5つの理由)
医師がドロップアウトをする理由として、家庭や生活上の都合・労働環境や業務の負担・給与や待遇への不満などがあります。
ライフステージが上がるごとに当直やオンコールなどの不規則な勤務形態がキツくなってしまったり、仕事量と年収が見合ってなかったりといったことから医局を離れることを考える方も多いでしょう。
現在の働き方に悩んでいたり、この先のキャリアに不安があったりする場合は、周りの友人や先輩などに相談しましょう。
転職先を探す際にはぜひ、医師専門の転職エージェントに相談してください。「メッドアイ」では自社独自のルートから入手した非公開求人が多数あります。専任のコンシェルジュに条件交渉までサポートしてもらえるので、1人1人に合った転職先を見つけることができます。
相談は無料なので転職を考えている医師は一度相談することをおすすめします。「自分らしく働きたい」「もっと収入を増やしたい」といった方は、ぜひ医師転職エージェントをご利用ください。




















