医師として働いているうちに、いつか自分の病院やクリニックを持ちたいとイメージしたことがある方は多いのではないでしょうか?
- 勤務医と開業医はどっちがいい?
- 勤務医と開業医はどのように違う?
- 開業医になるメリット・デメリットは?
上記の悩みを持っている医師に向けて、今回は勤務医と開業医の違いやメリット・デメリットに関する内容を紹介します。
勤務医と開業医には勤務条件や年収などで大きな違いがあります。
どちらがいいのかは一概には言えませんが、この記事でそれぞれの特徴と違いを紹介するので、ご自身でどちらが適しているのか考えて見てください。
勤務医と開業医はどれぐらい条件が違う?
勤務医と開業医がどれくらい違うのか、疑問を持っている方も多いでしょう。
ここからは開業医と勤務医の違いについて、以下の4つに分類して解説します。
- 勤務時間
- 年収
- 人間関係
- キャリアプラン
(1) 勤務時間
勤務時間で比較すると、どちらも違いはありません。
しかし、勤務医は緊急オペや入院患者の急変で呼び出される可能性が常にあります。時間外に働くことも少なくありません。
一方、開業医は患者が予想外に多く来院しない限り、基本的に時間内に診療を終了できます。 あわせて読みたい
また勤務医と違って大きな手術や緊急手術は基本的になく、患者と会話することや診察することが主な業務となります。
その他にも休日を設けることもできるので、ライフワークバランスは開業医の方が良いといえるでしょう。
(2) 年収
どちらかと言うと開業医の方が高収入です。
勤務医と開業医の給与を比較したデータによると、開業医は勤務医の1.7倍程度高収入となっています。
なぜこのような差が生まれるのかというと、開業医は「事業収入」と呼ばれる給与形態であるためです。
事業所得とは、病院の売上から人件費や固定費など、すべての経費を差し引いた金額が手元に入ってくる給与のことです。
一方、勤務医は「給与収入」で、病院の売上から経費として渡されます。
つまり、そもそも開業医と勤務医では給与の内容や性質が異なります。
だからといって、一概に開業医の方が良いというわけではありません。
開業医は病院の院長として、病院経営や従業員の生活、医療過誤が発生した場合は責任を取らなければなりません。 あわせて読みたい あわせて読みたい
開業医は大きな責任を背負っているからこそ、勤務医よりも大きく稼げているのです。
(3) 職場の人間関係
開業医は勤務医に比べて、職場の人間関係をより重要視しなくてはいけない傾向にあります。
勤務医は主に職場の同僚や先輩、後輩などとの交流が多いといえます。
プライベートで関わる場合もあり、人間関係がこじれる可能性もあります。
しかし、仮に職場で人間関係がこじれても、違う病院に転職することで解決できます。
開業医はそうはいきません。 あわせて読みたい
スタッフの採用も自分の責任なので、特別な理由もなしに解雇という無責任なことはできません。
また、患者や地域の医師会など、経営者としてさまざまな方と交流する機会があります。
そのため開業医は人間関係をより重要視する必要があるのです。
(4) キャリアプランの違い
勤務医と開業医ではキャリアプランも異なります。
今回はキャリアプランの中でも、引退までのキャリアプランについて解説します。
勤務医の場合は、主に下記2つの選択肢があります。
- 病院に勤めて最後に開業する
- 働きやすい職場で働き続けたうえで退職する
開業医の場合は、主に下記2つの選択肢があります。
- 自身の病院を親族や後輩に引き継いでもらう
- 後継者に事業継承せずに病院をたたむ
現代社会では会社の後継者不足が問題となっているので、新たなキャリアプランとして若いうちに後継者として会社を引き継ぐという選択肢もあるでしょう。 あわせて読みたい
開業医のメリット・デメリット
ここからは勤務医との比較ではなく、開業医のメリット・デメリットについて解説します。
メリット・デメリットをよく把握してから開業するかどうか決めましょう。
開業医のメリット
①やり甲斐がある
開業医になると経営者としてすべての判断を自分で行います。
患者の治療方針だけでなく、スタッフの給料配分、手術の機器や薬も採用する必要があります。
他にも経営者として利益を出すための施策や患者へのマーケティングなどありとあらゆる判断が自分でできます。
裁量権が非常に大きい点にやりがいを感じる人が多くいるでしょう。
②休日を自分で決められる
開業医は、休診日を自分で決めることが可能です。
休診日だけでなく勤務時間も決められるため、自身のライフワークバランスを保ちやすくなったと言えるでしょう。
③理想の職場をつくれる
勤務医時代に病院の経営者と評価基準や経営方針などの考えが合わず、衝突したことのある方も少なくないでしょう。
開業すれば自分で好きな仲間を集め、理想の組織を作っていくことが可能です。
開業医のデメリット
①収入アップは力量次第
先ほど開業医が勤務医よりも1.7倍収入が向上するとお話ししましたが、それは開業医の力量次第です。
医師としてのスキルはもちろん、経営手腕がなければ勤務医の収入はおろか、自身の病院を経営破綻させてしまいます。
自身の努力と成果がそのまま報酬に直結するためやりがいはありますが、自身の力量がなければ簡単に経営破綻し、借金だけが残るような厳しい世界です。
②業務範囲が増える
開業医になると勤務医の時にはなかった経営に関する業務が増えます。
利益を出すための経営方針を決め、集客などの業務も行います。
他にも経理・労務・人事・法務・行政・営業・WEB更新など、医院に関するあらゆることが業務範囲です。
全部自分だけで行う必要はありませんが、人を雇って任せていくためにもすべての業務に関する知識は必要です。
③精神的な負担
精神的な負担も開業医は勤務医よりも多くのしかかります。
医師としての業務だけでなく、経営(マーケティング・経理・労務・行政手続きなど)業務が増えることによる負担が挙げられます。
また開業時の借入金がある場合、返済していくことへのプレッシャーもあります。
さらに医療過誤が発生した場合の責任は、すべて院長である自分の責任になるという負担もあるでしょう。
診療所に医師が自分一人しかいないことに不安を感じる方もいます。
開業の適齢期は?平均年齢や定年について
ここまで開業医と勤務医の比較から始まり、開業医のメリット・デメリットを解説しました。
ここからは具体的に開業医になるにはどうするのかという解説をします。
開業医を目指している方や、開業するか迷っている方はぜひ一読してください。
開業の適齢期は?
結論から述べると、開業の適齢期は30代後半~40代です。
開業医になるには3つの能力とその他の準備が求められるためです。
3つの能力とは下記です。
- 医師
- 管理者
- 経営者
まず医師として、専門医としての技能・経験に加えて幅広い臨床経験を積んでおく必要があります。
次に管理者として、組織の中で部下を持つ管理職としての経験も必要です。
さらに経営者として、長期の事業計画と戦略を練る必要があります。
資金面でも、開業時の内装工事や医療機器などの大きな設備投資することを考えると、ある程度お金と経験が溜まってきた30代後半〜40代が開業の適齢期です。
この適齢期よりも早い、または遅い開業の医師もいるため、正解はありませんが参考にしてみてください。
開業の平均年齢とは?
開業した人の平均年齢は41.3歳という調査データがあります。
やはりある程度は病院などの勤務先でキャリアを積んでから開業するケースが主流で、年齢的にも経験を積んだ40代前後が多い傾向にあります。
引用: 社団法人日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」
開業の定年について
開業医の定年はありません。
医師免許そのものに有効期限がなく、多くの勤務医は60歳で定年後に再雇用され、65歳を定年とするのが一般的です。
開業医なら定年の心配がなく、生涯現役として働き続けることが可能です。
ただし、高齢になるにつれ視力の低下や手指の動作に制限が生じて、最大限の能力を発揮できなくなる場合もあります。
特に手先の器用さや手術の腕で評判が決まる外科医や歯科医は年齢の影響を非常に受けます。
将来的に開業を考えているのであれば、勤務医を続けるとしても体力的に長時間立ち続けて緊張を強いられる手術主体の外科医よりも、開業医としてニーズが多い整形外科やリハビリ、訪問医療などの経験を増やすことを検討してみてもいいかもしれません。
まとめ(勤務医と開業医の違い)
開業医は勤務医と比べて収入面やライフスタイルの確立、ストレスのない職場という点において優れています。
しかし、勤務医よりも病院経営や従業員、医療の責任などの多くの負担があります。
どちらが良いというわけではないため、今回の解説により自分のキャリアについて深く考えるきっかけになれば幸いです。
更に詳しい開業の手順について知りたい方は、こちらで解説しているのでぜひご覧ください。
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