「勤務医は激務」とよく言われますが、実際に働いてみて初めて、その過酷さを実感した方も多いのではないでしょうか。
夜勤に休日返上、終わらない業務、思うように取れない休み……。

「なぜここまで大変なのか」と疑問に感じたり、「このままで大丈夫だろうか」と不安になる場面もあるはずです。

本記事では、勤務医が激務と言われる具体的な理由と、現役医師たちが実践している対策や選択肢をご紹介します。
心と身体を守りながら、長く医師として働き続けるためのヒントになれば幸いです。

勤務医が激務と言われる5つの理由

結論として、勤務医は激務というのは本当です。
ここでは、データをもとにした医師の勤務実態と、勤務医が激務になる理由を解説します。

①1週間の勤務は平均50時間以上

厚生労働省の「医師の長時間労働の実態について」の調査によると、勤務医が1週間で働く時間は平均50時間以上でした。

総務省統計局「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の要約」における、日本の労働者全体における週の平均労働時間は、35〜42時間が最も多い割合(36.7%)です。
中間値である38.5時間と比較しても、勤務医の50時間は週で10時間以上の差があります。
月で40時間程度、年間で500時間程度の差があることを考えると、相当な激務であることが分かります。

②夜勤がある

勤務医の特徴である「夜勤」という働き方も激務の要因です。

医療現場には、交代で医療現場を担当する「当直」の仕組みがあります。
当直には、日勤だけでなく夜勤も含まれています。

法定労働時間を超過した労働制度(変形労働時間制)(※)では、1日8時間以上の勤務を認められており、十分な休日をとることが決められています。
しかし、人手が足りていない医療現場では、法定時間外の労働が増えてしまうでしょう。
日勤からそのまま夜勤を行うこともあります。

当直が不規則にあると「朝起きて夜寝る」という本来の生活リズムは崩れやすくなります。
体調にも影響することから、勤務医は激務と言わざるを得ません。
(※)参考: 厚生労働省「変形労働時間制の概要

③そもそも完全な休みがない医師も

勤務医が激務である理由として、そもそもほとんど休みがない医師もいることが挙げられます。
医療現場は主治医制で動いていることが一般的なためです。
主治医制とは、患者1人に応じて医師の方が1人ずつ担当する仕組みです。

たとえば入院できる病棟で勤務した場合、入院患者の容体によっては主治医が昼夜にかかわらず駆けつける必要があります。
緊急を要する状況だと、医療現場での泊まり込みや休みの返上が日常茶飯事です。

④一般的なイメージより薄給

勤務医が激務だと感じる理由の一つとして、一般的なイメージよりも薄給であることが挙げられます。

たとえば、研修医だと以下の平均年収であるという調査結果(※1)があります。

  • 1年次:435万円 
  • 2年次:481万円

ただし社会人1・2年目で、日本の一般的な正社員の年収(461万円)(※2)に匹敵することを考慮すると、勤務医の給料は高い方とはいえるでしょう。
また、勤務医全体の平均年収も月120万円程度(平均年齢43歳程度)(※3)と高い傾向にあります。

しかし、時間外労働の多さから見ると、比較的高い給料をもらっている人でも勤務実績との釣り合いが取れていないといえるでしょう。
実際、給料に不満を感じている医師は約4割もいるという調査結果(※4)があります。

このように、医療現場の給与実態は一般的なイメージと大きくかけ離れていることが分かります。

出典:
(※1)厚生労働省「臨床病院における研修医の処遇
(※2)国税庁「平均給与
(※3)厚生労働省「「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について
(※4)労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査

⑤勤務シフトの変動が激しい

前述した当直や主治医制にかかわらず、不測の事態が起こった場合は、勤務シフトが大幅に変更されることがあります。

たとえば、急患や担当でない入院患者のフォローに回ることなど、イレギュラーな業務が続く場合もあるでしょう。

その際、やるべきことが終わっていなくても、目の前の対処を余儀なくされます。
結果、残業や長時間勤務が増えてしまうと、激務と感じやすくなります。


勤務医として激務に向き合うための5つのセルフケア・工夫

勤務医という働き方は、構造的に「急にはラクにならない」場面も多いです。
ただ、それでも少しの工夫や考え方の切り替えで、“消耗しきらずに持ちこたえる”ことはできます。

ここでは、日々の激務と上手につき合うために、勤務医だからこそ実践できるセルフケアや働き方の工夫を5つ紹介します。

1. 「睡眠時間」より「睡眠の質」を追求する

勤務医は夜勤や当直明けで「そもそも寝る時間が取れない」日もあります。だからこそ、「量より質」にこだわった睡眠管理が重要です。

  • ブルーライトカット眼鏡やアプリで入眠準備
  • 昼寝のときはノイズキャンセリング or 耳栓を使う
  • カフェイン摂取は当直の○時間前までと決める
  • 休日に寝溜めしすぎて生活リズムを崩さない

こうした工夫を重ねることで、たとえ3〜4時間でも「浅くてツラい睡眠」から「短いけどスッキリ起きられる睡眠」へ近づけます。

2. “完璧にやる”より“適切にこなす”を目指す

真面目で責任感の強い医師ほど、自分に厳しすぎて潰れがちです。
でも、「このレベルで十分」なラインを自分の中で決めるのもプロとしての大切なスキルです。

  • すべての患者に100点の説明はできなくても、「80点で伝わればOK」
  • カンファで完璧な発表資料を作るのではなく、「伝える目的」に立ち返る
  • 「やらないと気持ち悪い」仕事こそ、一度他人に振ってみる

“手を抜く”のではなく、“力のかけ方を調整する”という意識が重要です。

3. 「医師じゃない自分」に戻る時間を意識してつくる

激務の中で、ふと気づいたら「医師としての自分」しか存在していない——
そんな状態になると、精神的なバランスが崩れてきます。

  • 5分だけ推しの動画を観る
  • コーヒーをゆっくり淹れて飲む時間を確保する
  • 帰宅後は白衣を脱いで、まずシャワーで“医療現場”を洗い流す

「この時間は医師じゃない自分に戻る」と決めて過ごすだけで、オンオフの切り替えが上手になります。

4. 同僚・家族・信頼できる人に「今日、ちょっと大変だった」と言ってみる

日々の忙しさやストレスを言葉にして外に出すことは、想像以上に心を軽くしてくれます。

  • 同僚に「今日はなかなかハードだったね」と一言交わすだけで、共感による安心感が得られます
  • 家族には「ただ聞いてもらえるだけで助かる」と伝えて、少し話してみるだけでも気持ちが整います
  • 信頼できる先輩や友人には「最近なんとなく余裕がなくて」と打ち明けてみるのも一つです

感情を言語化して他者と共有することは、自分自身の状態を客観的に把握するきっかけにもなります。
“抱え込まない習慣”を少しずつ取り入れていくことで、精神的な疲労の蓄積を防ぐことができます。

5. 「今できること」と「将来変えたいこと」を分けて考える

「このままずっと続くのか…」と思うと絶望が強まります。
でも、「今はこうして乗り切る」「1年後にはこう変えたい」と時間軸を分けて考えると、精神的に楽になります。

  • 「今は経験値を積むフェーズ。半年後には週1回のバイトを減らしたい」
  • 「来年はQOL重視の科に移る。今は情報収集の準備期間」
  • 「今の職場は3年を目処に。その間だけ踏ん張る」

“今のしんどさ”に意味づけを与えることで、もう少しだけ頑張れるようになります。

激務で疲れ果てたら転職を考えよう


ここでは、激務を解決する方法の一つとして、転職について詳しく解決します。
医療現場を一定期間経験したあとで、勤務時間が良好で収入も高い医療現場に転職を目指すとよいでしょう。

転職で勤務時間改善の期待

緊急対応が少ない医療現場や、労働時間が短い診療科に転職すれば、勤務時間・頻度を含めた労働環境が改善に向かいます。

<緊急対応が少ない医療現場>
急患や救急医療がない医療現場は、イレギュラーな医療行為が比較的少なくなります。
他の医療現場に比べて、勤務時間の長期化や、不規則な勤務時間が起こりにくくなります。

<労働時間が短い診療科>
労働時間の長さは診療科によって異なります。
厚生労働省の調査によると、週60時間以上働いていると回答する割合が少ない(多い)診療科(上位3つ)は以下の通りです。

<週60時間以上働いている割合>
■少ない診療科

  • 臨床検査科:6.3%
  • 精神科:19.0%
  • 眼科:23.8%

■多い診療科

  • 脳神経外科:53.0%
  • 外科:50.9%
  • 救急:49.5%

出典:厚生労働省「08 参考資料3 医師の勤務実態について

勤務時間の少ない診療科の求人募集を探してみるとよいでしょう。

転職で収入アップの期待

別の医療現場へ転職すれば、前職の勤務経験を活かして収入の向上を期待できます。
参考として、医療機関別の平均月収をご紹介します。

  • 国立病院:82万6,811円
  • 公立病院:93万9,034円
  • 公的病院:97万9,344円
  • 社会保険関係法人:83万9,981円
  • 医療法人:119万7,484円
  • その他:85万1,092円

出典:厚生労働省「(参考6) 一般病院 職種別常勤職員1人平均給料月額等(開設者別)

前述の通り、勤務時間が多い割に、給与が低いと感じている人が多いことも事実です。
しかし、勤務経験をうまく活かして、収入の高い医療現場への転職も可能です。

転職ならプロの転職エージェントに相談

医師のキャリアアップに転職はつきものです。
また、医療現場では時間外労働の上限規制が進められています。

それに伴い「プライベートや家庭と両立したい」と考えている医師は、医師専門の転職エージェントに相談してみるとよいでしょう。

転職エージェントは、豊富な相談実績から医師が考えている要望に合わせて適切な医療現場を紹介してくれます。

  • 定時で帰れる医療機関
  • 労働環境の改善に取り組んでいる医療機関

上記はもちろん、年収アップも含めてメッドアイまでご相談ください。

まとめ(勤務医が激務と言われる理由)

今回は、勤務医の激務について解説しました。

勤務医は1週間の平均勤務時間が長く、夜勤もあるため負担がかかりやすい勤務形態と言えます。
また、完全な休みがないことや薄給であること、シフト変動が激しいことも大変と言われる理由です。

疲弊して医師の仕事を辞める前に、転職することも一つの選択肢です。
体調を崩す前に、転職エージェントや友だち、家族へ早めに相談して対策を考えましょう。