医師がどの診療科で働くかを決めることは、キャリアプラン作成の大元となる大事な決断です。
どのような視点で選べばいいのか、また、いつ決めるべきかというタイミングについて迷う方も多いのではないでしょうか。

「診療科の選び方のポイントは?」
「人気の診療科は?」

この記事では、診療科を選ぶときに意識すべきポイントを詳しく解説します。
また、診療科を選択するタイミングや、志望先として人気のある診療科もご紹介しますので、参考にしてください。

診療科を選ぶ際のポイントは?

診療科を決めることによって、その後のキャリアプランも決まりますし、収入や働き方も左右することになります。
診療科を選ぶときに意識しておきたいポイントはいくつかありますが、以下のポイントは特に重要です。

  • 興味の有無
  • 収入や待遇など
  • ワークライフバランス
  • 病院の雰囲気や人間関係
  • 将来性や継続性

日本医師会の総合政策研究機構(日医総研)が、若手医師の診療科の選び方を調査したレポートでは、興味以外のポイントについて、以下のような結果が出ています。

重視したこと割合
診療科や医局の雰囲気・人間関係が良いこと54.2%
休日・余暇等、自分の時間が取り易いこと29.4%
期待できる収入が多いこと28.9%
結婚や子育てとの両立がし易いこと26.6%
将来的に開業し易いこと15.0%

日本医師会総合政策研究機構『日医総研ワーキングペーパー 若手医師の診療科選択プロセスに関する調査』より一部抜粋して作成(割合は平均値を算出)

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

興味があるか

自分自身が実際に受診した経験や、実家が開業医であるなどのさまざまな背景から特定の診療科に興味を持つことは、医師を志す起点となっていることが多くあります。
そして、その興味がある診療科を選択するという医師も必然的に多いと言えるのです。
興味を持つということは学んでいく上での原動力にもなりますし、診療科を選ぶ動機としても自然なことです。
また、学生の間や研修医の間にさまざまな知見を得ることで、新たに興味が湧く診療科も出てくることがあるでしょう。

ワークライフバランスはどうなるか

医師として目指したい方向が見えていても、ワークライフバランスも考慮してから診療科を決めるという医師も増えています。
上の表では「休日・余暇等、自分の時間がとり易いこと」と回答した層が3割弱になりますが、これを回答者の時系列別に分けて見ると、少し状況が変わります。
医学部を志望した時点では27%だったものが、研修医時点では37.5%にまで上がっているのです。
初期臨床研修をスタートし、医療の現場の雰囲気を知ることで、ワークライフバランスを重要視する方向に考えが変わってきているのがわかります。

また、「結婚や子育てとの両立がし易いこと」の解答も同様で、医学部志望時点では21.4%だったものが、研修医時点では32.7%に上昇しています。
さらにこの項目では男女差も顕著に出ていて、女性の回答だけを分けると、医学部志望時点が42%、研修医時点で65%とかなり高い割合になっているのです。

勤務する病院の雰囲気はどうか

「診療科や医局の雰囲気・人間関係が良いこと」を重視すると回答した割合は最も高く、平均値で半数を超えました。
こちらもやはり経験を積んでいくごとに割合が増加していて、医学部志望時点で46%、研修医時点では62.8%です。
しかしながら、医師を志した時点でも半数近い人がこの点を重視していることがわかります。
医師としてのキャリアを磨きたいという希望だけでなく、職場の雰囲気や働きやすさなどを重視したいという思いは、ワークライフバランスを良好に保ちたいというポイントにも通じるものがあります。

収入・待遇はどの程度か

ワークライフバランスや職場の雰囲気とは逆のカーブを描くのが、収入面での回答です。
「期待できる収入が多いこと」という回答は、平均すると3割弱が重視しているものの、時系列が進むごとに割合が下がっています。
医学部志望時点で30.2%が重視していると回答していますが、研修医時点では27.4%と若干減少しているのです。
若手医師の多くが収入よりもワークライフバランスを重視していることにも繋がる結果と言えます。
それでも3割近くの若手医師は診療科選びに収入も重視していて、中には開業資金を貯めようと考える人も含まれてきます。

将来性があるか

自分が目指そうとする診療科に将来性があるかどうかという点も重要ポイントと言えます。
開業医として自分のクリニックを持ちたいと思っているなら、開業しやすく競合が多過ぎないなどの運営のしやすさがあるかどうかを考えておくといいでしょう。
また、現役を長く続けられるかどうかを基準に診療科を選ぶ人もいます。
例えば外科のように手技を伴う診療科では、歳を重ねるにつれてどうしてもスキルが落ちていきますが、その際の身の振り方まで含めて考えることができればベストです。

医師という職業そのものは、人々の生活に不可欠な存在ですので、失職の恐れなどを抱く必要はあまりないかもしれません。
しかし、選んだ診療科をずっと続けられるかどうかや、開業して安定して運営し続けられるかどうかは客観的な視点で検討しておきたいところです。
高齢化社会を見据え、今後需要が増えそうな分野や、自分が医師としてピークになる時点でニーズがある分野を見極めて診療科を選ぶことで、充実したキャリア形成につなげることができます。

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診療科はどのタイミングで決める?

以前の研修制度では、診療科の選択は医学部卒業直前というケースが大半で、医学生は診療科を決めてから初期臨床研修に臨んでいました。
しかし、2018年に新専門医制度がスタートすると、初期臨床研修中にさまざまな診療科を体験したのちに決めるという医師も増えてきています。

新専門医制度のもとでは、初期臨床研修と専門医研修プログラムを同じ病院で引き続き受けられるとは限らない点がその理由として挙げられます。
このため、初期臨床研修2年目や終了間際まで迷うという声も出ているのです。
初めから明確に目標を定めている人は別としても、初期臨床研修の後半に一度キャリアプランを見つめ直す機会を作ってみるといいでしょう。
そういった意味では、専門医研修プログラムを選択するタイミングが診療科を決めるタイミングになると言えます。

人気の診療科ランキングを紹介

診療科を選ぶ動機や決め手は人それぞれです。
しかし、昨今のワークライフバランス重視の感覚やキャリア形成のしやすさから鑑みると、ある程度「人気の診療科」に集中する傾向があります。
しかし、実際にその道に進んでみると思っていたのと違ったと感じる医師も少なからずいるのは事実です。
ここからは、現役の医大生が希望する「人気の診療科」と、先輩医師が後輩に「おすすめしたい診療科」についてご紹介します。

志望者が多い診療科ランキング

日本医師会総合政策研究機構が2015年にまとめた調査をもとに、現役の医大生が将来専門にしたい診療科をランキング形式でまとめました。
上位10個をご紹介します。

順位診療科回答率
1位内科33.8%
2位小児科19.3%
3位総合診療科14.6%
4位外科14.4%
5位救急科10.0%
6位整形外科9.2%
7位産婦人科8.9%
8位神経精神科7.5%
9位眼科5.3%
10位皮膚科4.8%

*日本医師会総合政策研究機構「医学生のキャリア意識に関する調査」より一部抜粋し引用

内科や小児科、総合診療科といったオールマイティ性のある診療科が上位にきています。
この調査では診療科を決める際に重視した要素として、「内容への興味」が最も高く7割以上となっていました。
また、「医局・診療科の雰囲気」や「生活のゆとり・家庭との両立可能性」といった要素も2割近い人が重視しています。

先輩医師が薦める診療科ランキング

上の調査と同じ2015年にm3.comが行った現役医師に対するアンケートがあります。
後輩にすすめるならどの診療科かという問いに対する答えをランキング形式でまとめましたのでご紹介します。

順位診療科回答率
1位内科22.5%
2位総合診療科14.6%
3位整形外科6.8%
4位外科6.7%
5位リハビリテーション科5.9%
6位麻酔科4.9%
7位精神科4.7%
8位放射線科3.7%
9位救急科3.4%
10位小児科3.1%

*m3.com「医師1600人の「後輩に薦めたい診療科」」より抜粋して引用

内科や総合診療科が上位にいるのは医大生の回答と同じですが、その理由としては現役医師ならではの視点がありました。
上位の診療科を選んだ理由についても一部ご紹介します。

【内科】

・高齢者が増えることにより慢性疾患が増え、内科医の需要はますます高まると思う。さらに内科的な先進的な治療法も開発されるだろう。・予防医学の発展により、病態を未然に防ぐ治療が発展しそう。その最前線はやはり内科と考える。

【総合診療科】

・かかりつけ医の重要性が増す。・細分化されすぎて、全体が見える医師が病院にいない。・高齢者の割合が多くなり、寄り添う医療が必要になってくると思われるから。

【整形外科】
・高齢者が増えることで、転倒、骨粗鬆症による骨折の増加、介護の必要性の増大が懸念される。整形外科医が必要とされる。高齢社会でロコモティブシンドロームが増えるため。

*m3.com「医師1600人の「後輩に薦めたい診療科」」より抜粋して引用

このように、高齢化社会が抱える課題や、それに伴うニーズが重要視されていることが伝わってきます。


診療科やキャリアに迷ったら?

上にご紹介した現役医大生の志望先では人気があっても、場合によっては現役医師からはおすすめされていないような診療科もあります。
自分が志望した診療科に将来性がないのかと不安になってしまう方もいるのではないでしょうか。
もし、診療科の選択や今後のキャリアプランづくりに迷ってしまったら、一度先輩や身近な人に相談してみてはいかがでしょう。

そして、キャリアプランの相談相手としては、実は転職エージェントもおすすめです。
医師専門の転職エージェント「メッドアイ」は医師の転職をサポートする際に、医師一人ひとりがどのような悩みを抱えているのかを知り、向き合ってきている実績があります。
また医療機関の情報にも詳しく、研修先にしたい病院の情報も得ることができるでしょう。
キャリアプランづくりの助けになる存在なので、困ったときは利用してみてください。



まとめ(医師の診療科の選択について)

医師にとって診療科選びは、その後のキャリアを決定する大きな決断です。
「医者になりたい」という当初抱いた思いのままに迷わず進むことができれば簡単ですが、将来性やワークライフバランスを考えて志望先を変えるということもあるでしょう。

新専門医制度では、初期臨床研修後の専門医研修プログラムを選ぶ際には診療科を決めることが必要になります。
初期臨床研修で学び、経験した実感も、診療科選びの判断材料となるでしょう。
それでも迷ってしまうという方は、先輩や指導医などに相談してみることをおすすめします。
また、医師専門の転職エージェント「メッドアイ」も気軽に活用してみてください。
キャリアプランづくりや研修先の病院の情報収集に役立ちます。