医師がブラックな職場で働くことはあるのでしょうか?
ネットでは「医者にならなきゃよかった」「医師にはならないほうがいい」といった極端な意見を見かけることもありますが、どういう職場や環境なのか気になる方も多いかもしれません。
「どのような状態だとブラックな職場の定義に当てはまる?」
「医師がブラックな職場にいると感じてしまう理由は?」
「医局は激務なのに薄給なイメージがあるけど実際は?」
今回はこのような疑問をお持ちの方に向けて、医師専門の転職エージェントが医師のブラック職場の実態や給料事情などについて詳しく解説します。
本記事では、医師のブラックな環境や薄給から抜け出すためのヒントや、医師の転職にまつわるお役立ち情報もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ブラック企業とは
ブラック企業とはどんな企業なのでしょうか。厚生労働省ではブラック企業の一般的な特徴として、以下の3項目を紹介しています。
- 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
- 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
- このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
1つ目の特徴である労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課すことは労働基準法に明確に違反する行為であり、違反した場合の罰則も設けられています。
2つ目の賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低いに関しても、特定の企業の異質な労働環境とそれが常態化している事実が大きな問題です。
3つ目のこのような状況下で労働者に対し過度の選別を行うでは、上記の2つの条件や劣悪な環境を労働者に押し付け、労働者側に相当不利な条件での過度な人員選別を行っていることを指し示しています。
これら3つの特徴が、ブラック企業として広く認識されている内容です。 あわせて読みたい
医師がブラック職場だと感じる3つの理由
続いてブラック企業の特徴と併せて、医師がブラック職場だと感じる3つの理由について解説していきます。
- 長時間労働をはじめとする激務
- コンプライアンス意識の低さ
- ヒエラルキーと過酷な選別
1. 長時間労働をはじめとする激務
1つ目の理由として、長時間労働をはじめとする激務であることが挙げられます。
医師の長時間労働問題は長らく問題視されていますが、あまり劇的な改善は見られません。
病院・常勤勤務医の週当たりの平均勤務時間
- 男性医師:57時間35分
- 女性医師:52時間16分
医師の年代・性別別(男性)の週の労働時間
- 20代男性医師:61時間34分
- 30代男性医師:61時間54分
厚生労働省が過労死を警告するのは「週の労働時間が60時間」を超えたあたりです。
上記のデータからも、勤務医の平均労働時間が「過労死ライン」レベルであることがお分かりいただけるでしょう。
また、全国の医師を対象としたアンケート調査では、有給休暇を満足に取れていない医師は全体の40%ほどで、有給休暇の取得日数に不満を抱いている医師は全体の60%にも及ぶ結果となりました。
有給休暇を取れていない労働者の割合は、医師以外の職業における平均が30%ほどなので、一般の平均値より約10%も下回っているという状況になります。
つまり、異常な労働時間を強いられている上に、労働者の当然の権利である有給休暇の行使すらままならない医師が多く存在している状態であるということです。
このような長時間労働・休暇の未取得の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 慢性的な人員不足
- 医師の人数に対する病床数の多さ
- 医師の業務内容が多岐にわたること
- 特殊な勤務形態
このようなさまざまな要因が絡み合った末に、ブラック企業にも似た長時間労働環境が作り出されてしまっているのです。
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2. コンプライアンス意識の低さ
2つ目の理由として、コンプライアンス意識の低さが挙げられます。
近年、多くの企業においてコンプライアンスを遵守する風潮が生まれるようになりましたが、医局などの大組織では、まだ浸透しているとは言い難いのが現状です。
医療業界全体では、現場主義的な旧態依然とした体質が受け継がれており、コンプライアンス意識は低いと言わざるを得ません。 あわせて読みたい
職場によっては医師の長時間拘束が当たり前の世界になっており、労働の過酷さに対して給与が割に合わないという事態に陥っています。
また、パワハラやモラハラといったハラスメントが横行しているという情報も業界内外から訴えられており、まさに前述したとおりの典型的なブラック企業マインドが染みついているのです。
3. ヒエラルキーと過酷な選別
3つ目の理由として、医局のヒエラルキーと過酷な選別が挙げられます。
<医局のヒエラルキー&各階級の平均年収>
- 院長(病院長):1,500万〜2,000万円
- 教授・准教授・講師:1,000万〜2,000万円
- 助教(助手・専門医):700万〜1,000万円
- 医員:500万〜1,000万円
- 研修医:300万円
参考:勤務医の就労実態と意識に関する調査
参考:医師臨床研修制度の評価に関するワーキンググループ(第3回)
呼称の相違や例外もありますが、一般的には上記のような階級制度となっています。
医局では院長(病院長)を筆頭とした厳格な階級制度が敷かれており、出世を望む場合にはこれらの体制に迎合することが必要です。
助教まで昇格することができれば、長時間労働などの若手医師が苦労している局面から脱却できるようになりますが、そこまでの道のりは苛烈を極めると言えます。
特に、専門医研修中などの一般勤務医である医員が長時間労働をはじめとする激務を強いられやすい立場にあるので、ここを乗り越えられるかどうかが一番の鬼門です。
また、大学病院・医局は人間関係の複雑さや転勤の多さなどがあり、ついていけなければ脱落という過度の選別状態にあることも大きな障壁となっています。
参考:【大学病院】医局(医師)の階級とは? ブラック医局の見分け方
こういった理由から、医局の中にはキャリアプランの選択肢として転勤を考える医師も多く存在しているのです。 あわせて読みたい
転勤を考えている方はこちらをご覧ください。
ブラック職場なのに低収入? 医師の給料事情
世間から高収入といわれる医師の中でも、「金持ち医師」「貧乏医師」といった収入格差が目立っているといわれています。
給料が労働量に見合っていない医師の給料事情について解説していきます。
- 医局には令和の現在も「無給医」がいる?
- 後期研修医はアルバイトをしている?
- 大学病院の勤務医など収入が低いパターン
医局には令和の現在も「無給医」がいる
驚くべきことに、医局には令和の現在も「無給医」がいます。
無給医とは、医学博士号の取得を条件に、無給で診療している大学院生の医者のことを指します。
残業代の不払いでさえ大きな問題として取りざたされている昨今、労働者が完全無給で働いているというのは異常事態と言えるでしょう。
しかし、政府が推奨する「働き方改革」によって、そんな無給医問題にも行政のメスが入り、ようやく解消の兆しが見えてきました。
2024年4月より労働基準法で勤務医の時間外労働に制限が設けられる見通しとなっているため、医師の雇用体制は今後改善されることが期待できるでしょう。 あわせて読みたい
後期研修医はアルバイトをしている
後期研修医は、アルバイトをしている場合もあります。
後期研修医は初期研修医とは異なり、他の医療施設でのアルバイトが許可されています。
その制度に則って、生活費の工面や奨学金の返済のためアルバイトに精を出す研修医も多く存在しているのです。
金銭面以外にも、アルバイトで経験を積むことによって医師としてのスキルアップが期待できるというメリットもありますが、当直や日々の激務の中で、掛け持ちで勤務することが大変な重労働であることは間違いありません。
それゆえに、研修中にアルバイトをする際には自身の体力とスケジュール管理を徹底し、くれぐれも研修先の業務をおろそかにしないようにバランスを取ることが大切です。 あわせて読みたい
しかし、研修先によってはアルバイトや副業を禁止している場合もあるため、事前に就労規則を確認しておくことも重要になります。
大学病院の勤務医など収入が低いパターン
大学病院の勤務医などで収入が低いパターンがあります。
大学病院・医局の勤務医は市民病院の臨床医に比べて給与が低いことで知られていますが、そもそも大学病院は臨床よりも医師の育成や医学の研究に重きを置いている機関です。
従って医師の育成や医学の研究に多額の運営費用がかかるため、結果として医師の収入が平均的に低く設定されているのです。
大学病院・医局の勤務医として給与を上げようとするのは、こういった構造上の問題からかなり難しいと言えるでしょう。
収入を増やしたいと考えている方は、医局以外の医療機関への転職を検討されることをおすすめします。
医師としての労働体制への不満の主な理由が収入面である場合は、転職によってその悩みは解消されるかもしれません。
まとめ(医師のブラック職場について)
今回は、医師のブラック職場や給料事情などについて解説してきました。
<医師がブラック職場だと感じる3つの理由 >
- 長時間労働をはじめとする激務
- コンプライアンス意識の低さ
- ヒエラルキーと過酷な選別
<医師の給料事情>
- 医局には令和の現在も「無給医」がいる
- 後期研修医はアルバイトをしている
- 大学病院の勤務医など収入が低いパターン
以上のことからも、医師の職場環境がブラック企業並みに過酷だと言われていることもあながち間違いではないことがわかります。
しかし、その過酷さの裏には、当然それを上回るやりがいがあることも事実です。
労働環境自体も、昨今の「働き方改革」の影響により大きく改善の兆しを見せています。
一概に医師の職場環境がブラックであると決めつけるのではなく、ご自身の置かれている状況をきちんと理解して、個人の適性に合った労働環境を一人ひとりが模索していくことが重要となるのです。
なお、本記事を読んで転職に興味が湧いてきたという方は、ぜひ一度転職エージェントにご相談してみてください。
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